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次期診療報酬改定の要望事項に係る
平成22 年度九医連医療保険対策協議会

理事 平安 明

去る1 月29 日(土)、城山観光ホテル3 階 「サファイアホール飛鳥」において標記協議会 が開催されたので、以下のとおり報告する。

挨 拶

○鹿児島県医師会 池田会長

本日はお忙しい中ご参集いただき感謝申し上 げる。

今回は日医より平成24 年度の改定を見据え て中医協に対応する為、各ブロックより意見を 収集して欲しいとの要望があった。これを受け て日医社会保険診療報酬検討委員会委員の飯星 元博先生(熊本県)からこの会議の開催依頼が あり、今回の運びとなった。

平成22 年度の診療報酬改定についてはご存 じのとおり、10 年ぶりに0.19 %のプラス改定 となったが、事実上は非常に厳しく、地方の医 療崩壊は進んでいるのが現状である。

本日は九州各県から予め診療報酬改定に係る 要望についてご意見を伺っており、この要望事項を基に本県で10 項目に纏めているので、皆 さまからは次期診療報酬改定に向けて忌憚のな いご意見をいただきながら有意義な会となるよ う祈念申し上げる。

○日医・鈴木常任理事

日頃は大変お世話になり感謝申し上げる。

いよいよ改定を控えた年となり、日医の社会 保険診療報酬検討委員会では各委員の方々に要 望事項を10 項目、その内の3 項目を重点項目 として2 月28 日までにご提出頂くようお願い しているところである。同委員の飯星先生には ご尽力をいただき、いち早く取り纏めて頂いた ということなので、今日はじっくり聞かせて頂 き、次回改定に備えさせていただきたい。次は ご存じのとおり介護保険との同時改定となる。 「財源がない」と既に予防線を張られているが、 皆さまと協力して国民医療を守らないといけな いと考えているのでご協力をよろしくお願いし たい。

協 議

(1)次期診療報酬改定に対する要望事項について

鹿児島県より概ね次のとおり説明が行われた。

標記の件については各県から事前に要望事項 をご提出頂いているが、その中から要望の多か った順に10 項目に絞り込んで別紙のとおり取り 纏めた。また、前文の「次期(平成24 年度)診 療報酬に対する要望(案)」は、日医社会保険診 療報酬検討委員会委員 熊本県医師会の飯星元 博先生に纏めて頂いている。前文及び要望事項 についてご協議いただきたいとの説明があった。

協議の結果、前文については原案どおりと し、要望事項10 項目については文言の一部加 筆・修正を行い、重要な要望事項を上位に記載 することとなった。

なお、修正案については後日各県へ送付し再 度ご確認頂いた後、日医へ提出することとなっ た。【別添:次期(平成24 年度)診療報酬改定 に対する要望・修正済原稿参照】

<日医コメント>

□日医・鈴木常任理事

たくさんのご意見を頂き感謝申し上げる。次 の改定は介護との同時改定となるが、基本診療 料や慢性期の入院料、在宅医療のあり方等がテ ーマになると言われている。ここで在宅医療に ついて各県の先生方からご意見をお聞きした い。現在、病院で亡くなられる方が8 割弱程度 だと思うが、今後は在宅や施設等の看取りを増 やしていかなければならない事情もあり、在宅 医療の担い手をどのように増やすかが問われる ことになると思う。在宅医療支援診療所、在宅 医療支援病院の他に、かかりつけ医として患者 さんを往診している先生方もいらっしゃると思 うが、そのような先生方が看取りにどのように したら係わっていけるのかについて、診療所の 先生方のご意見をお聞かせ願いたい。

■福岡県

福岡市内には在宅を専門にする医療機関が複 数あるが、在宅を希望する患者さんのうち、在 宅ターミナルケアまで希望するのは全体の2 割 程度である。

福岡市内は医療提供体制が整っているので非 常に恵まれた状況にあるが、郡部では状況が異 なると思われる。

■熊本県

4 年前に在宅支援診療所の調査をしたとこ ろ、約200 程度の医療機関が在宅に携わってい た。1 人の先生で患者7 〜 8 名、多いところで は50 名以上担当しているところもある。現状 は24 時間、365 日オンコールの状態で非常に ハードワークであるというのが本音である。

そこで一番問題になるのは訪問看護ステーシ ョンがどれだけ充実しているかだと思う。これ は中医協でも問題になっていると思うが、訪問 看護ステーションを出来るだけ拡充することが キーワードとなると思う。

■長崎県

今回、次期診療報酬に対する要望事項とし て、副主治医連携指導管理料、副主治医往診料 の新設を提案した。

長崎にはドクターネットというシステムがあ る。長崎市からスタートして、現在は長崎県全 体に広まりつつある。基本的には主治医と副主 治医で在宅の患者さんを看るシステムである が、ドクターネットで請け負っている患者さん は殆どが悪性腫瘍で末期の患者さんである為、 主治医の負担が大きい。そうなると副主治医の 協力は不可欠となる。

活動としては病院の退院カンファレンスには 副主治医、コメディカル等全てが参加し、最初 は副主治医も同伴で患者宅を訪問する。患者さ んにも副主治医の存在が十分認識されている状 況であるので、副主治医が往診した月には副主 治医連携指導管理料、副主治医往診加算が必要 だと考える。この制度は今後、全国的に広がっ ていくものと考えられることから、何らかの診 療報酬上の評価を与えてこの制度が広がってい くキッカケを作ってはどうか。

■大分県

在宅診療は外来診療の延長線上にあり、その先に看取りがあると考える。病院から在宅で患 者さんを看てくれないかと紹介されるが、患者、 家族、主治医との間で良好な関係を築く前に患 者さんが急変してしまい、在宅医療・在宅での 看取りの体制が構築出来ないまま終わってしま うというケースが多い。看取りの頃になると患 者の家族は精神的にも肉体的にも大きな負担が 生じているので、最終的に患者は耐えられなく なって救急搬送となり、在宅医療が終了してし まう。私は在宅を現在やっている立場であるが、 このようなケースを何度も経験してきたので、現 状では将来は悲観的であると言わざるを得ない。

■沖縄県

一時期は長寿の県と言われ、この件について は先行していると思われがちだか、老人医療費 は入院がかなり突出している。在宅医療等は充 分には整備されておらず、一部の献身的なドク ターが身を投じて在宅をされているが広がる気 配はまだ無く、どちらかというと入院で亡くな るケースが多い。在宅ではマンパワーが重要だ がそれも薄く、在宅を支える訪問看護ステーシ ョンも充分には整備されていない。その辺りに お金を付けていくのかという問題もあるが、人 材の育成や制度としてどのようなものにしてい くのかをもう少し突き詰めていかないと地域ま では広がらないと考える。

■宮崎県

1 点は介護保険とリンクする良さを主治医の 先生方がいかに理解するかが重要である。

もう1 点はアクシデントがあった場合に緊急 に受け入れてくれる後方ベットをどう担保する のかが問題である。これがないとなかなか在宅 を担う仲間を増やすことはできない。

■佐賀県

佐賀県の在宅支援診療所の割合は38 %程度 であったと思う。

最近の動きとして、佐賀市内で数名の先生方 でチームを作り、在宅に取り組んでいるようで ある。医師が出動する必要性は殆ど無いのでは という意見もあり、訪問看護ステーションの充 実を図らないと在宅自体は進んでいかないと考える。ただ訪問看護ステーション自体の経営的 も厳しく、この辺が課題と考える。

□日医 鈴木常任理事

先週、中医協において早々と訪問診療、訪問 看護の話が出ており、在宅支援診療所や在宅支 援病院等を拠点にして、一人の先生に負担がか からないようなネットワークを構築し、かかり つけ医の先生方も含めた在宅の仕組みをどのよ うに作っていくのかが話題となりそうであるの でご意見をお聞かせいただいた。貴重なご意見 をいただき感謝申し上げる。

次期(平成24 年度)診療報酬改定に対する要望

総論

民主党政権下で初の診療報酬改定であった前回の 改定は、政治主導による大幅な医療費増額が期待さ れたものの、僅か0.19 %という低い引き上げに止ま った。社会的に緊急課題とされた救急、産科、小児 科や外科領域の再建、特に入院医療に最重点がおか れたため、結果として急性期大規模病院の診療報酬 は増額となったが、極論なまでに医療財源の傾斜配分 が行われ、その影響をうけた中小病院や診療所は疲弊 の一途をたどり崩壊の危機にある。一方のみに力点を 移動させることは、必ずや他方に歪みを生じさせ、制 度自体が破綻することは明白であり、次回改定では中 小病院や診療所への手厚い施策が望まれる。

その要望項目の第1 には、大幅な「医療費の引き 上げ」である。切れ目のない医療提供体制の構築に は、上流から下流への「医療の流れ」を重視するこ とが重要であり、濃淡の差はあっても医療費全体の 底上げが必要であることは当然である。

第2 には、前回改定の問題点の是正、すなわち中 小病院や診療所の基本診療料の在り方、特に再診料 や外来管理加算、地域医療貢献加算等の論点整理、 また入院中の患者の他医療機関受診および対診の取 り扱いや入院医療機関の入院基本料の減額等は早急 に是正するべきである。

第3 には、次回改定は「介護保険」との同時改定 となるため、医療と介護の接点領域の整備、特に高 齢者に対する在宅医療、訪問診療の在り方やリハビ リテーション、また介護保険適用施設での医療保険 の問題を現状に即した制度へ再構築すべきである。

以上の視点から、次回の診療報酬改定では次の項 目が整備・是正されるよう強く要望する。

平成23年1月29日
九州医師会連合会
会長 池田

印象記

平安明

理事 平安 明

平成23 年1 月29 日鹿児島県城山観光ホテルにて開催された次期診療報酬改定の要望事項に係 る医療保険対策協議会に参加したので報告する。

次期診療報酬改定は介護報酬との同時改定となるため様々な問題に対する議論が必要となるが、 九医連として早めに要望事項を取り纏めるために医療保険対策協議会に前乗りして協議会を行う こととなった。各県から要望のあった事項を整理し、特に重要と思われる項目を選択し、先の報 告書に記載のとおり要望書案を纏めている。最も優先すべき事項として、再診料(診療所の再診 料、地域医療貢献加算、外来管理加算)の見直し、特定入院料を算定している病棟等の他科受診 に際する入院料の減額等の見直しを求めることを挙げており、今回の改定で地域医療や医療連携 を著しく阻害することとなっている項目の改善が喫緊の課題であることを改めて強調するもので ある。日医の鈴木常任理事は「中医協でも既に議論が始まっているものもあるが財源問題でスタ ートから厳しい状況にある」と語っていたが、なにも余分にくれと言っているのではなく、最低 限の医療を維持するための主張であることを踏まえていただき今後の中医協での議論に反映させ てほしいと思う。