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学問立県をめざそう

上村昭栄

上村病院 上村 昭栄

明治時代、本県には素晴らしい人材がいた。 当山久三先生その人である。

学求の人、当山氏は師範学校を出て、教職員 のお仕事をなさっていて、沖縄の置かれている 状況に義憤を感じ、自由民権運動の先頭に立た れた。“いざ行かん吾等の家は五大洲”のスロ ーガンを掲げ、当県の無職の人々に呼びかけ日 本政府の許可の下、ハワイ移民を成功させた。 明治32 年12 月5 日、第1 回の移民は20 余人 とある。第2 回・3 回と続けたが移民運動も政 府の許可が下りなくなって、中途で中止させら れた。久三氏は45 才で他界、残念としか云え ません。

扨、家族制度では長男は家長の父から家屋 敷、田畑等を譲られ将来の心配はありません。 がしかし、次男3 男になると無一文で社会に放 り出され、将来の道は厳しいものである。その 中で一生懸命勉学に努め、中学その上の専門学 校へ進み卒業の暁には、教職員それから役場職 員等、当時の高級職にありつけて、立派な社会 人として働けた。

今、沖縄の置かれている立場は、就職難であ る。生活苦から自殺者が各県の頂点にあると云 われている。就職しようにも様々の事情で社会 に受け入れられず、学歴も低く就職率が低下し ている原因の一つは努力する場所がないかと思 われる。小・中・高校まではなんとか間に合っ ているが、努力して更に上級の学校に進もうと 思っても、大学が少なく現在、特に専門的な技 術力を向上させる大学の設置が望まれる。その 種の大学といえば他府県に頼らざるを得ないの であり、沖縄県民の貧困の状況をみれば学費を 出してまで他府県への派遣は困難と思う。地元 に専門的な大学があれば、皆頑張って勉学に専 念できると思う。

全国一小中学校の成績が悪いといわれるが、 私はその事はすべて生活苦が原因で、教師や親 の責任ではなく政治の貧困が原因と考える。高 校以上に学べる処は大学である。琉大も必要、 更に専門分野の大学も必要で、その種の大学を 作ればおのずと勉学にいそしみ将来を輝かしい ものにする為の意欲が湧いてくると思考する。

医療専門の社会で考えてみよう。琉大医学部 は勿論大変私達にとって素晴らしい大学である ことは百も承知している。看護学校も南部・中 部・北部に五校がある。更に100 %の就職率も 嬉しい事だ。医療面では更に専門分野が多種多 様あり私の云う大学とは、その事を指してい る。看護学生にも多くの優秀な学生がいるが、 更に上級を目指す場合、大学という養成機関も 必要と考えるが、地元での勉学ができる場所が あれば医療面で必要な科目を備えた医療福祉大 学の設立は必要と考える。100 %の就職率、且 つ全国一の医療サービスができる分野での大学 である。又、本県には薬科大学もない、薬の分 野でも薬剤師の養成の為に設立が望まれてい る。一案として昭和薬科大学附属高等学校との 併設も考えられる。勿論、国・県・市の協力も お願いする次第です。

県医師会でもこの様な見地から、医療界での 就職率を高める為の人材育成は必要だと思われ るので、医療サービスを目指し医療福祉大学の 設立を真剣に考慮すべき問題だと思う。その実 現が可能になる様に県理事会で検討してみては 如何がなものか。日本一、更に世界一の医療を 目指し頑張って戴けると有難い、同時に沖縄の 就職難の解消と生活の向上に老人医療福祉施 設・児童福祉施設・障害者福祉施設等、特に老 人の多い本県の事情を考慮して、老人ケア専門 の職種は相当数必要である。“年を取るとあの 世へ”という政治の貧困を考えると、更に児童 福祉施設・障害者福祉施設のケア専門の職種が 絶対に必要である。

努力すれば日本一になる事は、興南高校野部による春夏連覇で証明された。尚、ゴルフでは 現在世界ランク1 位の宮里藍、平成22 年度全 日本女子ゴルフ大会で優勝した宮里美香、その 他ボクシングでは元世界チャンピオン具志堅用 高等々、その他素晴らしい本県の若者達は頑張 っている。このことからも日本一の医療福祉県 にするには、人材の養成が急務である。興南高 校の我喜屋監督は言った“花は枝が、枝は幹 が、幹は根っこが…”実感のあるお言葉、吾々 はその事を肝に銘じ、頑張ろうではないか“学 問立県こそ吾等の目標である”。その他の事業 も必要である事は云うまでもない。就職率上昇 を全県民の望む所である。沖縄県科学技術大学 院大学が、2012 年の開学を目指している素晴 らしく、喜ばしい事である。

上村昭栄書作品
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