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那覇市立病院医師会会長 喜屋武 幸男 先生

喜屋武幸男先生

昨年冬の新型インフルエン ザ流行の際には那覇市医師会 の先生方には多大な診療応援 をしていただきました。

本当にありがとうございました。

Q1.那覇市立病院医師会長に就任され、約半 年が経ちますが、これまでを振り返っての 感想と、今後の抱負をお聞かせ下さい。

前任の川野幸志先生から引き継いで約半年に なりました。幸い副会長を前回から引き続いて 田端一彦先生が引き受けてくださり、その点で は戸惑いも少なくすみました。

実は当医師会は単一病院での医師会であり、 院内・院外活動ともに独自の活動としては活発 とは言えない状況にあります。院内には医局会 が別の組織として存在し、院内における問題は 医局会で処理されますので、医師会として医局 員に直接関わる機会は少ないわけです。当院の 医師数は研修医を含めて約130 人にのぼり、そ の約1/3 の医師が毎年入れ替わるなかで、沖縄 県医師会への登録者は約50 %にすぎません。 そこで私の当面の課題としては、医師会の存在 意義についてもっと医局員の認識を深め、興味 を持っていただけるようにすることだと考えて おります。

Q2.貴会の基本的な活動内容、また、特に力 を入れている取り組みがありましたら教え て下さい。

県医師会からの情報をスムーズに会員にお知 らせし、何らかの対応が必要な場合には関係部 署と連絡を取り合いながら処理するようにして おります。単純な作業ではありますが、そのこ とを通じて当会会員に院内の問題だけではな く、那覇・浦添地区さらには沖縄全体の医療問 題にも問題意識が持てるような環境作りにつな がるものと考えます。

昨年冬の新型インフルエンザ流行の際には那 覇市医師会の先生方には多大な診療応援をして いただきました。当時、時間的にも人員面でも 切迫し、職員の精神的緊張も高まりつつある中 での応援は、当院の医療スタッフに勇気を与え てくださいました。その時前任の川野先生は地 域連携室室長も兼任されておられましたので、 重要な調整役をされたと伺っております。包括 的な地域医療は決して単一病院で完遂すること は出来ません。地域の多様な医療福祉施設や医 院・病院などとの連携も重要になります。当医 師会も、その際の窓口・パイプ役としての役割 の一端を担っていければと思います。

Q3.那覇市立病院では、臨床研修指定病院と して熱心に研修医の指導をされております が、指導方針、今後の計画等をお聞かせく ださい。

また、地域がん診療拠点病院として、がん 医療を積極的に行っておりますが、地域医療機関との連携、今後の課題等をお聞かせくだ さい。

当院には現在短期研修も含めて28 名の初期 研修医と18 名の後期研修医が研修中です。

初期研修または後期研修終了後、巣立った医 師も約40 名にのぼり、それぞれが、次のステ ップで元気に研修、活躍中だと聞いておりま す。幸い当院の研修医は皆診療に前向きで、ま たチームワークがとてもいいように思います。 また当院の医局部屋はほぼ全科、それも1 年目 から各科の統括部長まで同じ空間(大部屋)に 机を並べ、昼食や休憩なども同じ空間を共有し ております。それが各診療科の垣根を無くし、 医師どうしのつながりも深めているように思い ます。そこで気軽に患者さんの相談や診療上の 質問のやりとりなどが行われています。これは 研修医にとって恵まれた環境とも言えますが、 一方で、研修医自ら患者の問題点を見つめ、解 決していくという機会を少なくしてしまう側面 もあります。また、定期的に症例検討会や勉強 会も活発に行われてはいますが、他の研修病院 と比較して決して多いとはいえません。もっと いろんな形での議論の場を増やしていきたいと 思います。幸い、後期研修医を中心にその辺の 議論がすすんでいるようですので、私たちとし てもできるだけサポートしていきたいと思いま す。当院は、医師として最低限必要な知識・技 術を身に付けるには最適な病院だと思います。 また一人の医師として患者さんやそのご家族と 向き合うための姿勢も指導しております。簡単 に申しますと、自分自身の家族がその診療を受 けて納得・満足できるような診療を行うように 心がけるようと話しております。高度な医療知 識や技術の習得は、年月が解決してくれます が、医師としての基本的な診療態度は初期研修 の時に身に付けることが大切だと思います。そ のような中に、早ければ来年にも当院の研修終 了1 期生がティーチングスタッフとして帰って くる見込みですので、これからがますます楽し みな病院です。

また、当院は平成17 年に南部医療圏の地域 がん診療連携拠点病院としての指定を受けてお ります。その役割として1.沖縄県がん診療連携 協議会への参画 2.がん登録事業の推進 3.研 修会などの開催 4.啓発活動や情報提供 5.地 域ネットワークの確立などがあげられ、近日各 種がんの地域連携クリティカルパスなどの導入 が予定されています。現在は、がん相談支援セ ンターを窓口とし、セカンドオピニオン外来、 緩和ケア外来が設置され、外部からの患者さん にも対応しており、また地域のクリニックから のがん精査やがん治療の依頼は地域医療連携室 を通じて常時受け付けております。一方当院で 施行できない検査や治療に関しては、患者の希 望に合わせて適切な医療機関への紹介を行い、 その連携も比較的スムーズに行われておりまし て、私共も大変助かっています。

問題点もたくさんあります。当院の救急室受 診患者数は年間5 万件を超えますし、当然救急 入院患者も多数になります。時期によってはベ ッド確保に苦労しながら、かつ重症患者の診療 にあわただしく追われながら、一方でがん患者 さんの診療も行わなければならない訳です。本 来がん診療は落ち着いた環境で、患者さんやご 家族のお話にもじっくり耳を傾けながら診療を してさし上げるべきだと思うのですが、なかな かそうもいかない場合が多いです。当院には緩 和ケアチームが組織され、患者サロンなども精 力的に活動し、がん患者さんのさまざまな苦悩 に対応する体制はありますが、ホスピス・緩和 ケア病棟がないため、患者さんを最後まで看取 ってさしあげることができない場合も多々あり ます。患者さんからすると、命を預けたつもり でいた医者に最後まで診てもらえない不安と不 満もあるのではないかと心を痛めることがよく あります。そのような状況で、近隣の3 箇所の ホスピス施設には大変お世話になっています し、一方で、那覇・浦添には在宅診療をしてく ださる医療施設が充実しつつあり、その点でも 本当に感謝しています。

Q4.本会または日本医師会へのご意見・ご要 望がありましたらお聞かせ下さい。

特に要望はありません。むしろ日頃の救急医 療において小児科の先生方には多大な応援をい ただいておりますし、また昨年の新型インフル エンザ大流行の際には多くの内科の先生方にも 応援をいただき本当に有難うございました。今 後も感染症の大流行や、何らかの災害発生時な どにおいては地域の先生方はじめ、医師会のご 支援が必要なことがあろうかと予想されます。 よろしくご理解いただけますようお願い申し上 げます。また研修医の指導においても医師会の 先生方のご協力は大変ありがたいものです。こ れからもよろしくお願いします。

Q5.最後に日頃の健康法、ご趣味、座右の銘 等がございましたらお聞かせ下さい。

特別なことはしておりませんが、年に1 回の 那覇マラソンの完走を目指して、日常生活にお いても出来るだけ歩くようにしております。エ レベーターは極力使わず、階段を駆けあがるこ とと、本番の1 ヶ月前から体重コントロールを するようにしております。これがはたして健康 にいいのかどうかは分りませんが、幸い今のと ころ大病もせず健康です。

座右の銘も特にありませんが、心がけている のは、いつでも感謝!これに尽きます。

この度は、インタビューへご回答いただ き、誠に有難うございました。

インタビューアー:広報委員 旭朝弘