沖縄県立中部病院呼吸器内科 玉城 仁
【要旨】間質性肺炎は、病変の主座が肺胞領域、細気管支領域の間質に見られる疾 患群で、炎症・線維化病変を主体とする疾患である。原因が特定できない場合を特 発性間質性肺炎とよぶ。日本呼吸器学会からの「特発性間質性肺炎診断と治療の 手引き」によると、鑑別診断のために胸部CT(HRCT)撮影後に気管支鏡検査や 外科的肺生検を行うか検討する必要があり、患者背景、画像の正確な評価、臨床経 過を基に侵襲的検査を行うか決定していく。比較的まれな疾患であるため、診断時 には呼吸器内科医にコンサルトして総合的に検討することが望ましい。特発性間質 性肺炎では、病理組織型により臨床経過や治療反応性などの差異があると認識され ている。一般にステロイドや免疫抑制剤を中心とした治療を行う。最近、特発性肺 線維症では抗線維化剤ピルフェニドンの効果が期待されている。
呼吸器は、気道(鼻腔、咽頭、気管、気管 支、細気管支)、肺胞領域、縦隔、胸膜等の解 剖学的領域より構成されており、そこへ炎症、 腫瘍性変化、変性などの病態が加わることによ り、種々の特徴的な疾患が発症してくる。胸部 X 線や胸部CT 画像上、両側肺野にびまん性陰 影を認める疾患は表1 に示すように多岐にわたり、「びまん性肺疾患」と総称される1)。一方、 間質性肺炎は、病変の主座が肺胞領域、細気管 支領域の間質に見られる疾患群で、炎症・線維 化病変を主体とする疾患である。
間質性肺炎の原因は薬剤、無機・有機粉じん 吸入などによる場合や膠原病やサルコイドーシ スに付随して発症する場合、さらには原因が特 定できない特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonia:IIPs)など がある。IIPs の臨床的診断基準に合 致した正確な罹患率は不明であるが、 人口10 万人あたり20 名程度と推定 されている。さらに呼吸器症状が乏 しく診断に至っていない患者はさら に10 倍程度存在することが推定され ているため、一般診療所においても、 間質性肺炎を発症している患者を診 ることがある。
ここでは、特定の疾患に伴わない 原因不明の特発性間質性肺炎(IIPs) に焦点をあてて解説する。
表1.びまん性肺疾患
1)肺拡散能(ガス交換能)の低下
肺の間質組織の肥厚により肺胞を取り囲 む毛細血管と肺胞壁が引き離され、その結 果、分圧差に依存しているガス交換(拡散) 効率が低下する。酸素は二酸化炭素の20 分 の1 の拡散能のため、まず、酸素の拡散が障 害される。
2)肺コンプライアンスの低下
肺の間質組織が炎症、線維化により肥厚 することで、肺弾力性が低下する。いわば 「肺が硬くなってくる」ことである。これに より肺活量が低下してくる。
間質性肺炎の胸部症状として、乾性咳嗽(初 診時の50 〜 90 %に認められる)、労作時呼吸 困難が主なものである。有症状群において労作 時呼吸困難はかなり高頻度で約80 %以上に認 められる。急性期には発熱も認められることが ある。
健康診断が普及している我が国では、検診や 他の疾患で通院中に撮影した胸写にて胸部異常 陰影を指摘されて、精査目的で来院するケース も少なくない。
間質性肺炎の診断には、表1 にあげた多くの 疾患を鑑別するためにまず、詳細な問診が必要 である。そして、身体所見、画像検査を行う。 気管支鏡検査や外科的肺生検検査を行うことも ある。問診や身体所見により明かな粉じん暴露 歴や膠原病を示唆するような所見、疑わしい薬 剤があれば、IIPs 以外のびまん性肺疾患を考 える必要がある。逆に問診にてびまん性肺疾患 の原因が不明であれば、IIPs として精査してい く。IIPs の診断のためのフローチャートを図1 に示す。
1.問診
鑑別診断を行っていく上で、問診は非常に重 要である。患者自身、家族、前医や検診情報 等、広範に情報を取り寄せる必要がある。間質 性肺炎を疑ったら(可能であれば画像所見より ある程度の疾患を考慮し)、有症状者では症状 の経過(急性、亜急性、慢性)、喫煙歴、既往 歴、薬物内服歴(健康食品、サプリメントおよ び漢方薬を含む)、職業歴、生活歴(家屋の状 態や寝具など)、家族歴、ペットの有無、出身 地等を問診する。
問診は、じん肺や薬剤性肺障害、環境因子の 影響が大きい過敏性肺臓炎等の鑑別の大きな助 けとなる。
図1.特発性間質性肺炎診断フローチャート
2.身体所見
fine crackles(乾性ラ音、捻髪音): 90 % 以上に聴取され、ほぼ必発と考えられており、 診断上、最も大きな手がかりとなる。
ばち指(clubbed finger):慢性に経過する 肺線維症(IPF: idiopathic pulmonary fibrosis) では、3 0 〜 60 %前後に認 められると報 告されてい る。米国胸部 学会では、25 〜 5 0 % と報 告れている (図2)。
図2.ばち指
3.一般検査
1)胸部単純X 線写真
CT が普及してきた現在においても、びまん 性肺疾患に対する画像診断の第一歩は胸部単純 X 線写真である。両肺野全体が描出されている ため、病変の分布が理解しやすい。上、中、下 肺野のどこに異常所見が優位に分布するか、中 枢と末梢の分布も確認ができる。また、CT よ りも経時的に比較して肺容量の変化をとらえや すい(図3)。
図3:特発性肺線維症の胸写
びまん性網状影が両中下肺野、末梢側優位に広がっている。
下肺野の胸膜直下には蜂巣肺を認めている。提示した画像は
COPD にIPF を合併しているため、IPF に特徴とされる肺容
量減少が乏しくなっている。
特発性間質性肺炎の初期変化は一般に両側背 側肺底部にわずかなすりガラス陰影もしくは浸 潤影であり、肺血管陰影の不鮮明化や若干の容 量減少を読み取る必要がある。吸気不十分や高 度の亀背、骨粗鬆症のため胸椎圧迫骨折がある 場合には、肺容量が低下しているように見える 場合があるので、可能な限り正側2 方向の撮影 が望ましい。
びまん性肺疾患は、ある程度その分布に特徴 がある。代表的疾患を下記にあげる2)。
a.上肺野優位な疾患:肺Langerhans 細胞組織球症、結核、じん肺 症、いわゆる上肺野優位型特発性肺線維症、 過敏性肺臓炎6)など
b.中肺野優位な疾患: サルコイドーシス、肺水腫など
c.下肺野優位な疾患:誤嚥性の肺疾患、びまん性汎細気管支炎、 IPF、膠原病肺など
d.びまん性分布: 粟粒結核、肺脈管筋腫症(Pulmonary LAM)、 ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイル ス肺炎など
また、単純胸写の経時的変化から情報を捉え ていくことにより、急性、亜急性、慢性の経過 で鑑別する疾患が変わってくる2)。
a. 急性・亜急性発症の場合:呼吸困難、咳嗽、喀痰、喘鳴、発熱 特発性間質性肺炎(急性型、亜急性型、慢性型の急性増悪) 薬剤性肺炎、過敏性肺臓炎、器質化肺炎、肺胞出血・血管炎
b. 慢性の発症:呼吸困難、咳嗽 間質性肺炎(慢性型)、サルコイドーシス、 慢性過敏性肺臓炎、肺胞蛋白症、肺 Langerhans 細胞組織球症、肺脈管筋腫症、 石綿肺
胸部単純X 線写真は肺野の情報の他に、心 拡大の有無、肺門・縦隔リンパ節の腫大、胸水 の有無、骨病変の情報も与えてくれる。膠原病 が背景にある場合は、間質性肺炎の陰影に併存 して、胸水、細気管支病変、気管支拡張所見、 無気肺、閉塞性細気管支炎による過膨張所見、 リウマチ結節等を認めることがある。
以上の情報より、びまん性肺疾患が疑われた場 合は、高分解能CT(high resolution CT: HRCT) の追加検査を行うべきである。サルコイドーシス や薬剤性肺障害などのIIPs 以外の疾患やIPF 以 外のIIPs では気管支鏡検査を行う。さらには外 科的肺生検を必要とする場合があるため、診療経 過や予後予測のためにも呼吸器内科医へ相談し て確定診断をつけることが望ましい。
2)高分解能CT(HRCT):
HRCT は、肺の二次小葉内での病変部位広 がりを捉えうることができるため、びまん性肺疾患において大きな役割を果たしている。代表 的なIIPs であるIPF とNSIP のHRCT 画像を 図4、図5 に提示する。
図4 IPF のHRCT 画像
すりガラス陰影(ground-glass opacity:GGO)、末梢血管影の不規
則な腫大、小葉間隔壁の肥厚、蜂巣肺の混在(病変の不均一さ)(a)
や牽引性気管支拡張(b)が描出される。
図5. NSIP のHRCT 画像 胸膜から少し離れて気管支血管束に沿った陰影やいわゆるsubpleural curvilinear shadow(矢印) がみられ、蜂巣肺は認めていない。
間質性肺炎のCT 所見は次のような特徴を有 する2)。
・すりガラス陰影、濃い浸潤影(air-space consolidation)がびまん性に存在すれば、急 性または亜急性の可能性がある。
・胸膜直下に分布する蜂巣肺と限局したすりガ ラス状陰影の存在はIPF/UIP とその周辺疾 患にみられる。
・胸膜直下から内部に広がるすりガラス陰影と 濃い浸潤影は、慢性から亜急性に経過した間 質性肺炎(NSIP)、特に膠原病関連の間質 性肺炎や薬剤性肺炎にみられる。
3)血液検査
IIPs において特異的な血清学的な検査はな い。肺胞上皮由来蛋白であるKL-6、SP-D、 SP-A は、多くの間質性肺炎にて高値となるの で、IIPs を疑うきっかけや、IIPs 診断の傍証、 病態のモニタリングの役割や治療反応性の評価に有用である。ただし、疾患特異性がないので IIPs の確定診断や組織型の診断には用いない。 また血清LDH の上昇を認めることがある。
IPF では通常、CRP は陰性あるいは陽性で も軽微であることが多い。
IPF の10 〜 20 %の患者で抗核抗体やリウマ チ因子が陽性となる。肺病変先行型の膠原病に よる間質性肺炎のことがあるので、注意深く経 過観察していく必要がある。
厚生労働省の特定疾患認定基準では、(1) KL-6 の上昇、(2)SP-D の上昇、(3)SP-A の上昇、(4)LDH の上昇のうち1 項目以上の 陽性を条件としている。
4)肺機能検査
IIPs は一般に拘束性肺障害、肺拡散能の低下 を認める。厚生労働省の特定疾患認定基準で は、% VC : 80 %未満、DLCO %: 80 %未 満、低酸素血症のうち一つを満たすことが条件 となっている。しばしば拡散障害(DLCO の低 下)は、肺容量の低下に先行して出現している。
4. 特殊検査
1)気管支鏡検査
気管支鏡検査には、気管支肺胞洗浄 (Bronchoalveolar lavage:BAL)と経気管支 肺生検(transbronchial lung biopsy:TBLB) の二つがある。
BAL の意義と適応:
IIPs の診断におけるBAL の有用性には限界 があり、補助的診断として用いる。ニューモシ スチス肺炎、結核、サイトメガロウイルス肺炎 等の感染症の除外や肺胞蛋白症、肺 Langerhans 細胞組織球症などの診断には有用 である。
間質性肺炎の鑑別では、BAL 液中のリンパ 球増多の有無が大きなポイントである(表2)。
2)外科的肺生検(surgecal lung biopsy:SBL)
図1 のアルゴリズムに従い、典型的な特発性 肺線維症の特徴を満たさない場合、多くは確定診断のためにSBL が必須とされている。最近 は開胸肺生検よりも侵襲性の少ない胸腔鏡下肺 生検(VATS)が選択されることが多い。しか し、SLB は潜在的なリスクを伴うので、臨床・ 画像診断の精度、治療可能なタイプのびまん性 肺疾患かを同定しうる可能性、および治療効果 とのバランスを考慮する必要あり1)。SBL の合 併症を高める因子(年齢> 70 歳、極端な肥満、 心疾患の合併、高度な呼吸機能障害)が存在す る場合は、十分に注意をする必要がある1)。
間質性肺炎は、本来、その病理組織像から 鑑別されてきた疾患群であり、肺胞領域にみら れる炎症細胞浸潤と場所などから、特発性間 質性肺炎は下記の7 つの病理組織型があり、臨 床経過や治療反応性などの差異があると認識 され、臨床的な疾患群を成している(表2)。
特発性間質性肺炎の際にみられる主な組織パ ターンであるUIP とNSIP を以下に述べ、他 は成書に譲る。
IPF/UIP の主要な組織学的所見(図6)
1)病変は胸膜側、小葉辺縁部に優勢で、正常肺 を介して斑状に分布する。
2)病変は既存の肺胞構造が改築された密な線 維化病変が主体で、しばしば蜂巣肺形成を 伴う。
3)密な線維化病変の辺縁部に活動性の線維芽細 胞巣が散在性に観察され、病変の時相は多彩 である。
4)蜂巣肺は、厳密には線維化病変内の末梢気腔 の拡張を示したものである。
5)蜂巣肺の内面はしばしば細気管支上皮で被覆 され、その壁には平滑筋増生を伴い細気管支 化を示す。
表2:特発性間質性肺炎の臨床画像病理学的特徴
IPF/UIP の主要な組織学的所見(図6)
胸膜側、小葉辺縁部に優勢で、正常肺を介して斑状に分布し、病変の時相が一様ではない。
図7.fibrotic NSIP の主要な組織学的所見 病変は胸膜側から背内側にまで比較的均一に分布し、間質は線維性肥厚を示しており、時相は一様で正常肺胞の 介在はみられない。
NSIP の主要な組織学的所見(図7)
1)病変は胸膜側から肺内側にまで比較的均一か つびまん性に分布し、小葉内でもびまん性に 存在する。
2)Cellular NSIP では、肺構造はよく保たれ、 間質にリンパ球、形質細胞がびまん性に浸潤 する。
3)幼弱な線維化としては壁在型腔内線維化が主 体で、時にポリープ型腔内線維化巣が散見さ れるが数は少なく、分布範囲も狭い。
4)fibrotic NSIP では、間質はさまざまな程度 に線維性びまん性肥厚を示すが時相は一様 で、正常肺胞の介在はみられない。
5)肺構造の改築は軽度で、線維化は壁在型およ び閉塞型が主体で、疎なものが多い。
6)時に小型の蜂巣肺形成を伴うが、限局してお り平滑筋の増生は少ない。
前述のように問診、身体所見、画像、気管支 肺胞洗浄、病理所見を参考に総合的に判定して いく。図1 のフローチャートに示されているよ うにHRCT にて間質性肺炎が疑われる症例で は、無症状であっても速やかに専門医への受診 を指示することが望ましい。
特発性間質性肺炎に含まれる7 疾患のうち、 IPF とIPF 以外の6 疾患に対しての治療方針 は異なるが、一般にステロイドや免疫抑制剤を 中心とした治療を行う。ここでは、特発性肺炎 の代表的な肺線維症(IPF)、非特異性間質性 肺炎(NSIP)、特発性器質化肺炎(COP)に ついて述べる1)。
1.特発性肺線維症(IPF/UIP)
現時点において、IPF の生存率や健康関連 QOL に対する有効性が明らかに証明された薬 物治療はない。とくに初診時年齢が高齢であれ ば、積極的な薬物治療や肺移植は適応ではな く、もっぱら対症療法により生活の質の維持と 若干の延命に努めることが、不利益をもたらさ ない戦略である10)。
@.典型的な画像所見ではあるが病変が早期の 場合:
症状がないか、軽度であれば、まずは治療 を行わずに3 ヶ月ごとに経過観察することが 一般的である。この時期に抗線維化剤ピルフ ェニドン(ピレスパ)はその効果が注目さ れている。ピレスパ内服IPF 群はプラセボ に比較し有意に肺活量低下を抑制することが 我が国での第V相試験にて証明されおり、早 期IPF 治療の選択薬の一つである。
A.症状および機能不全が認められる場合(病 期が中等症以上の場合):
数ヶ月の経過で自覚症状や画像所見の悪化 を認める場合、HRCT 上明かな蜂巣肺を認め ない場合などは治療を検討する。これまでは ステロイドと免疫抑制剤との併用が推奨されていた。それにより若干の自覚症状と画像所 見の改善が認められるが、長期的には、生命 予後の改善はできないばかりか、かなりの症 例では副作用の発現のために予後不良となる 場合が多い(図8)。今後はピルフェニドンも 第一選択薬となり得ると思われる。
図8:特発性肺線維症の治療例
急性増悪時の治療
重症呼吸不全の管理を含めた包括的な介入が 必要となってくる。
@.薬物療法
明らかにIPF の急性増悪に対して、有効性 が確立した薬物治療はないが、ステロイドパ ルス療法が第一選択として用いられている。
メチルプレドニゾロン(mPSL) 1,000mg、 3 日間点滴静注(反応をみながら1 週間ごと に1 〜 4 回繰り返す)、その後安定期治療へ 移行、または治療終了とする。
ステロイドパルス療法に加えて、免疫抑制 剤を併用することがある。シクロフォスファ ミド500mg の点滴静注を1 〜 3 週ごとに繰り 返すことも有効とする報告がある。
好中球エラスターゼ阻害薬がIPF 急性増悪 で有効であったという報告があり、エラスポ ール(sivelestat)の併用も試みられている8)。
A.人工呼吸療法
IPF 急性増悪の呼吸管理は、ARDS に準 じて肺保護戦略をもって対応する。しかし、 IPF の挿管人工呼吸器管理をした症例の予後 は不良であり、広範囲に高度の蜂窩肺症例で は挿管の適応を慎重に検討する必要がある。
2.非特異性間質性肺炎(NSIP)
NSIP はIPF に比べ、ステロイドに反応する 割合が多い。しかし、NSIP の予後は炎症と線 維化の程度に関連しているため、c e l l u l a r NSIP とfibrotic NSIP で治療を区別する。
cellular NSIP は、ステロイド単独療法(プ レドニゾロン0.5 〜 1.0mg/kg/日を初期量で開 始)を選択、fibrotic NSIP では必ずしも予後 良好でないことがあり、IPF に準じて、ステロ イドと免疫抑制剤の併用が推奨されている。
3.特発性器質化肺炎(COP)(特発性閉塞性細 気管支炎・器質化肺炎: idiopathic BOOP)
ステロイドは経験的に、プレドニゾロン0.5〜1.0mg/kg/日、経口を1〜2ヶ月間内服後漸 減する。自然軽快もあり得る。
臨床病理学的疾患別に予後は大きく変わる。 一般にIPF の予後は診断確定後の平均生存期 間は2.5 〜 5 年間と報告されている。とくに急 性増悪を引き起こすと平均2 ヶ月以内とされ予 後不良である。IPF 以外のIIPs では、AIP を 除き予後は比較的良好といわれている。しか し、Travis らは、cellular NSIP の5 年生存率 は100 %、10 年生存率は90 %であり、fibrotic NSIP ではそれぞれ100 %と35 %と報告し ており、NSIP でもfibrotic NSIP はIPF ほ どではないが決して予後良好とはいえない。臨 床病理学的疾患名と治療反応性のイメージを図 9 に示す。
図9.臨床病理学的疾患名と治療反応性
両側肺にびまん性陰影を呈する疾患は少なく ない。その中で、原因が同定できない特発性間 質性肺炎は厚生労働省特定疾患に含まれてお り、身体所見、画像所見にて疑われたら、早め に呼吸器内科医にコンサルトし診断や方針を立 てることが望ましい。早期に介入・治療するこ とで予後が改善する可能性がある。しかし、 IPF やNSIP の一部、AIP 等の予後は不良で あるため、今後、新たな薬剤の開発や呼吸管 理、全身管理の発展に期待したい。
附記:特発性間質性肺炎:厚生労働省徳的疾患 認定基準
【主要項目】
(1)原因の明かな疾患の鑑別
膠原病や薬剤誘起性など原因の明かな間質 性肺炎や、他のびまん性肺陰影を呈する疾患 を除外する。
(2)主要症状、理学所見のおよび検査所見
1)主要症状および理学所見として、以下の1 を 含む2 項目異常を満たす場合に陽性とする。
2)血清学的検査としては、1 〜 4 の項目を1 項 目以上を満たす場合に陽性とする。
3)呼吸機能1 〜 3 の2 項目以上を満たす場合に 陽性とする。
4)胸部X 線画像所見としては、1 を含む2 項目 以上を満たす場合に陽性とする。
5)病理を伴わないIPF の場合は、下記の胸部 HRCT 画像所見のうち(1)および(2)を 必須要件とする。
(3)以下の1 〜 4 の各項目は診断上の参考項目、 あるいは重要性を示す。
1.気管支肺胞洗浄(BAL)の所見は各疾患毎 に異なるので鑑別に有用であり、参考所見と して考慮する。特発性肺線維症では正常肺の BAL 細胞分画にほぼ等しいことが多く、肺 胞マクロファージが主体であるが、好中球、 好酸球の増加している症例では予後不良であ る。リンパ球が20 %以上増多している場合 は、特発性肺線維症以外の間質性肺炎、また は他疾患の可能性を示唆し、治療反応性が期 待される。
2.経気管支肺生検(TBLB)は特発性間質性 肺炎を病理組織学的に確定診断する手段では なく、参考所見ないし鑑別診断(癌、肉芽腫 など)において重要な意義がある。
3.外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検、開胸肺生検)
本検査は特発性肺線維症以外の特発性間質性 肺炎の診断にとって必須であり臨床像、画像所 見と総合的に判断することが必要である。
4.これらの診断基準を満たす場合でも、例え ば膠原病等、後になって原因が明らかになる 場合がある。これらはその時点で特発性肺線 維症から除外する。
(4)特発性肺線維症(IPF)
(2)の1 〜 5 に関して、下記の条件をみたす確 実、およびほぼ確実な症例をIPF と診断する。
(5)特発性肺線維症以外の特発性肺炎の特発 性間質性肺炎
外科的肺生検(胸腔鏡下肺生検または開胸肺 生検)により病理組織学的に診断され、臨床所 見、画像所見、BAL 所見等と矛盾しない症例。
特発性肺線維症以外の特発性間質性肺炎とし ては下記の疾患が含まれる。
NSIP(非特異性間質性肺炎)、AIP(急性 間質性肺炎)、C O P(特発性器質化肺炎)、 DIP(剥離性間質性肺炎)、RB-ILD(呼吸細 気管支炎関連間質性肺炎)、リンパ球性間質性 肺炎(LIP)
文献・参考図書:
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fibrosing patterns.Am J Surg Pathol 24:19-33,2000
10)長井苑子: 特集IIPs の診断と治療特発性肺線維症
Idiopathic pulmonary fibrosis(IPF_UIP), 日呼吸会
誌, 42(1): 11-16, 2004
次の問題に対し、ハガキ(本巻末綴じ)でご回答いただいた方で6割(5問中3問)以上正解した方に、 日医生涯教育講座0.5単位、1カリキュラムコード(45.呼吸困難)を付与いたします。
問題
間質性肺炎に関する次の設問1 〜 5 に対し、○(正しい)か×(誤り)でお答えください。
頭部MRI の基礎 −頭部MRI で撮られる各画像について−
問題
次のMRI に関して次の設問1 〜5 に対し、○か×
印でお答え下さい。
正解 1.× 2.○ 3.× 4.× 5.×