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停年後の医師生涯教育

眞喜屋實佑

眞喜屋 實佑

停年で現役をリタイアすると毎月送られて来 る専門診療科(救急医学、外科)関連のジャー ナルもタイトルにさっと目を通し、最新の知見 に基づく特集があればそのアブストラクトを読 む。医学新聞、業界紙は四大疾病に関する記事 を読むよう努めている。現在、検診の手伝いを させて頂いてる関係で本来の専門診療科よりも 内科系、特に最近国民が強い関心を持っている 高血圧症、高脂血症、虚血性心疾患、糖尿病、 脳血管障害等生活習慣病の学習に費やす時間の 方が多くなった。図書は部厚い教科書ではなく 卒前・卒後の研修用テキスト類を利用してい る。他科専門領域についても機会があればその up-to-date の診断、検査、治療法についての情 報に気を配っている。というのもこれからの科 の病気が疑われその診断、治療法について被検 者から質問を受けることも少なくないからであ る。本コーナーをこの目的に役立てている。

カリキュラム〈2009〉のテーマについて若 干私見を述べさせていただく。3)公平・公正 な医療のうち前者すなわち公平については医療 資源の地域的、診療科的偏在が現存するから当 然重視されて然るべきである。しかし公正な医 療とは何だろうか。それを学習しなければなら ないほどわが国の医療は不正で荒廃していると いうのだろうか。次に4)医療倫理は本来医療 実践の基本原理である。近時の自然科学・技術 の著しい進歩による医学・医療技術の専門化、 細分化が人間疎外というかたちで医の原理を脅 かす危険性があり常にその擁護に努めなければ ならない。5)医師−患者関係とコミュニケー ション、6)心理社会的アプローチの重要性は 社会の複雑化、価値観の多様化が進みつつある 状況では今後ますます強調され改善されるべき である。8)医療の質と安全、9)医療情報、 10)チーム医療、81)終末期医療はその充実、 整備が急がれる。80)在宅医療は医療費抑制 のための政策のように思われる。誰が看てどれ だけ負担するのか、住宅事情はどうするのか課 題は多い。カリキュラムの内容や優先順位をそ の地域の事情を考慮に入れて決める必要がある と思う。医師は職責上その時点で最適の医学知 識と医療技術を修得する義務があり、さらにそ の実践のため豊かな人間性をも涵養しなければ ならない。生涯教育が重視される所以である。 老いて時の速さを痛感している。最後に本コー ナーを担当しておられる広報委員会ならびに関 係者の皆様に深く感謝申し上げます。

くらいおこたらざるは たみところなり(左伝) (人の主たる人は、その位に相当する仕事を おこたらずにやるべきだ。それが民を安息せ しめるもとである)

○人に為られんと思うことは、人にも亦たその 如くせよ。(マタイ7-12、ルカ6-31)

2010.夏