嶺井医院泌尿器科 嶺井 定一
最近の若い人は集って皆で酒を酌み交わすこ とが少なくなったと年輩者からよく聞く。その ことは私も実感をしている。
世の中に酒類が好きな人、嫌いな人、全く呑 めない人がいるが、呑めない人にとっては酒の 話は面白くなく迷惑かもしれない。呑もうと酔 うと私の勝手と、一人酒の方が周囲を気にせず 呑めるが、「一人で飲む酒、不味い酒」と歌の 文句にもあるように酒は皆で呑む方が楽しい。 何れにしろ酒好きにとっては花も嵐も踏み越え て呑めることが男の生き甲斐である。私は一人 で呑むより皆揃って呑む酒宴が好きである。通 常はあまり喋らないがアルコールが入れば陽気 となり弁も爽やかに饒舌となるらしい。
酒類のブームは移り変わりが激しく、1990 年代後半はWine、2000 年代前半は焼酎、沖縄 でも泡盛ブームで、更にChu-hi 人気となり、 最近では昔流行っていたHi-ball が一般に受け ているようである。元々Hi-ball は英国式で Whisky を炭酸で割ったものである。(Whisky Soda)。承知のとおりOn the rocks はWhisky に氷を入れたもの、水割はWhisky に水を加え たものである。通に言わせると水割はWhisky 本来の味と香りが薄れてしまうと批判もある が、しかし、これまでBrandy を水で割ったら American と言われ、最近では氷を一杯詰め込 んだ大ジョッキにRed Wine を注いだカチワ リ・ワインと言う呑み方まで現れている。この ような呑み方はArgentine では以前より行われ ていたが、更に酸味の強いRed Wine を7-up で割って呑まれている。このような呑み方は戦 後泡盛を7-up で割って呑んだ戦後移民が伝え たものと思われる。これは実に呑みやすくて、 いくらでも呑めるが、翌朝は二日酔いをするの が欠点である。
若い頃はビール、日本酒等と何でも呑んでい たが、Wine は奥が深く中々見極めが難しく大 変である。その点、Whisky は自分の好みで気 軽に呑めるので、現在はWhisky 党で、呑み方 は水割が主である。Wine はコルクを開けたら 1 本呑み干さねばいけないが、その点Whisky は放置していても問題は無い。但し、長期間放 置あるいは未開封のビン詰めでも蒸発して減る ことがある。泡盛の甕も同様で、これを天使の 呑み代と一般に言われている。
Whisky は蒸留酒で穀物を原料として蒸留し、 樽で熟成させたものである。ブドウの採れない 寒いIreland で、ビールを蒸留して強い酒を造 っていたのがWhisky の起源とされ、Uisge beatha と呼び、18 世紀以後Whisky と呼ばれ るようになった。
W h i s k y が最初に醸されたのがI r i s h (Ireland 共和国、英連邦北Ireland 自治州) で、次いでScotch(UNITED KINGDAM の Britan 島北部)、American(Bourbon)、 Canadian、Japanese と次々に各国で醸造され るようになった。Irish はmild で、Scotch と Bourbon は強い香りの個性があり、Canadian はLight であると言われている。
Scotch はMalt Wisky(大麦麦芽のみを使用 し単式蒸留器で蒸留したもの)、Glen Whisky (トウモロコシ等を主原料として連続蒸留機で 蒸留したもの)、Blended Whisky(Scotch、 Glen をBlended したもの)に分けられる。 Malt Wisky の特にSingle Malt は一個所の蒸 留所で醸造されたMalt のみをビン詰めにした ものでそれぞれ独特な香りがある。Blended Whisky は歴史は浅く19 世紀半ばの誕生で、 Mild で口当たりがよく芳醇な味わいで今日よ く呑まれている。私も好んでBlended Whisky を飲用している。これまでRoyal Salute (21years)、Ballantine's(30years)等も好ん で呑んでいた。
英国人でLondon 在住の知人MICHAEL RUNGE は英国人でありながらScotch Whisky を呑めず、Wine を愛飲している変なEnglishman であるが、彼の友人のS c o t c h 党の連中は Scotland で最も人気の高い銘柄であるThe famous grouse gold reserve を勧められ、呑むと 確かに酷がありBalance のとれたScotch である ことが分かる。しかし、私は英国史上152 歳の 天寿を全うした人物THOMAS PARR が埋葬さ れているLondon のWestminster Abbey を訪れ、 跪き墓参をやりその後、Old parr Whisky を愛 飲するようになった。
「酒は天の美禄」という酒の旨さ、酔の心地 のすばらしさを賛美する諺があるが、酒名が長 生きしたTHOMAS PARR に由来するOld parr Whisky は正しくその通りで、Peat の香 りが素晴らしい深い味わいがある。その後、 Canadian Rockies のAthabasca glacier の氷 河へ行き、そこの天然の氷でOld parr500 を On the rocks にし、杯を挙げこのWhisiky と の出会いを神に感謝した。
友人のWine 党のS 君は、有名な女性作家、 兼女優、テレビ・キャスター等の美女達と Wine について蘊蓄を傾けながら嗜んでいる。 実に羨ましい限りで、一緒に仲間に入りたいが、 今更Wine 党に鞍替えすることはTHOMAS PARR に操を立てたからには申し訳がたたず、 色々な誘惑に屈することなく、これからも頑な にOld parr Whisky 党として志を代えないよう に幸せな日々を過ごしたいと思う。
我国においてもOld parr Whisky は明治時 代より多くの愛好家を持ち、政治家・岩倉具 視、吉田茂元首相も愛好家として知られており 肖りたいものである
Old parr Whisky 飲みて琥珀色の夢路かな。