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平成22 年第1 回マスコミとの懇談会
「沖縄の肥満:現状と対策」について

玉井修

理事 玉井 修

去る5 月21 日(水)、本会館において、標記 懇談会が開催されましたので、以下のとおり報 告します。

沖縄県の肥満に関してはこれまでも様々な機 会に取り上げ、県民公開講座などにおいても扱 ってきたテーマであります。今回のマスコミと の懇談会は肥満やそれを取り巻く多くの問題に 関して昨年の秋に琉球大学医学部第2 内科教授 に就任された益崎裕章教授にご講演いただきま した。何度も取り上げたテーマで、やや食傷気 味の感が否めないところではありましたが、し かし、未だに多くの発見があり今回のご講演を 拝聴し、まさに目から鱗が落ちる思いを致しま した。益崎教授による研究成果のご講演のあ と、各マスコミ関係者からは戸惑いにも似た驚 嘆の言葉が聞かれました。医学の進歩は決して 止まる事なく、すでに常識とされている多くの 事が再評価され、あるものは廃れ、あるものは より輝きを増すようです。

人工甘味料を使用したダイエット飲料の問題 や、米を中心とした日本食への回帰などは日頃 の間違った嗜好性を今正すべきと思いました。 1980 年代まで、アメリカにおいてさえ肥満は 深刻な問題ではなかったという事です。肥満に 関連する問題は実は新たな問題であり続けてい るのだと思いました。そして今回の講演の様に 最新の研究成果に触れる事ができるのを大変う れしく思いました。

懇談内容

挨 拶

宮城信雄会長

宮城信雄会長

皆さん今晩は。

本日は、日中のお仕 事でお疲れの中、ご参 加頂きありがとうござ います。

さて、本日は「沖縄 の肥満」をテーマとし て懇談会を開催させていただきました。

近年では“メタボ”という言葉が一般の方々 にも浸透しており、健康志向の高まりと共に、 肥満に対する様々な対策が取られております。

しかしながら、我が沖縄県が全国の中で肥満 率が男女ともに飛び抜けて高いことは皆さんご 承知のとおりであり、正に今、全県民をあげて 対策に取り組まなければならない時にきており ます。

そのようなことからも、以前より私は肥満解消 元年を提唱し、その対策を訴えてまいりました。

本日は、この分野のスペシャリストである琉 球大学第2 内科の益崎 ますざき 教授にお越し頂き、「現 状と対策」についてご講話頂きます。

全国一の肥満率という不名誉な地位を返上 し、長寿県の復活を図るため、マスコミ各社の 方々には是非とも忌憚の無いご意見、ご質問を いただき、ご協力を賜りますようお願い申し上 げ、甚だ簡単ではございますが挨拶に代えさせ て頂きます。

懇談事項

沖縄県の肥満:現状と対策
琉球大学医学部第二内科教授 益崎裕章
益崎裕章

沖縄県は男女を問わ ず、日本の中で最も肥 満が進行している地域 です。体重(キログラ ム)をメートル表示の 身長の数字で二回、割 り算して得られる体格 指数(BMI)は肥満度の国際標準指標として世 界中で用いられており、BMI 値が25 を超える と肥満と認定されます。沖縄県では2004 年の 段階でBMI25 以上の男性が47 %にも達してお り、第二位の北海道(35 %)に比べても相当 な差をつけての“堂々の一位”です。BMI25 以上の割合が47 %というレベルは世界で比較すると、フランスやオランダ、イタリアなどの 西欧諸国に匹敵します。沖縄県では女性につい てもBMI25 以上の割合は26 %であり、二位の 青森(23 %)に一定の差をつけての第一位と なっています(表1)。

表1

表1

肥満は糖尿病や心筋梗塞、脂肪肝、高血圧 症、癌の発病を誘発することが知られており、 適正な体重維持は健康長寿の鍵を握っていま す。図1 には肥満が糖尿病の発症に対していか に大きな影響力を持っているかを示すものです。

運動習慣や食物繊維の摂取、青味の魚などに 多く含まれる多価不飽和脂肪酸の摂取を励行す ることで糖尿病の発症リスクは20 〜 40 %程度 に軽減できると言われていますが軽度肥満(BMI が25 から30)を来たすだけでも糖尿病 の発症リスクは7 倍にも増大し、地道な生活習 慣の改善努力を吹き飛ばしてしまう威力を持っ ていることがわかります。

元来、ヒトは倹約体質を持っており、この仕 組みは人類が誕生してから今日まで を一年に置き換えたカレンダーをイ メージすると理解しやすくなります (図2)。この図に示すように、人類 の誕生後、6 月の半ばくらいに氷河 期が始まります。氷河期が終わるの は12 月31 日の午前5 時頃に相当す ることから人類の祖先はつい最近ま で繰り返す寒冷と飢餓という過酷な 環境を懸命に生き抜いてきたことが わかります。その結果、食べ物が得 られたときには出来るだけエネルギ ーを蓄えて逃さない仕組み、昨日ま での体重を維持する仕組みが何重に も張り巡らされたと考えられています。このよ うな仮説を支持する自然現象はたくさん知られ ています。たいした餌もない中東の砂漠に生息 するイスラエル砂ネズミは“低燃費”で細々と 生きている動物ですが、このネズミを捕まえて 実験用の普通の餌を与えるだけで途端に肥満に なり糖尿病を発病します。また、アメリカアリ ゾナ州に住むピマ・インデイアンはもともと過 酷な農作業をしながら質素な生活を送っていた“痩せたインデイアン”でした。第二次世界大 戦後、少数民族保護政策によって住まいが与え られ、ピザや清涼飲料、砂糖が配給された結 果、現在では彼らの70 %以上が重症肥満と糖 尿病を発症しています。ピマ・インデイアンの 多くにβ 3 アドレナリン受容体の遺伝子多型な ど、飢餓に対抗する節約型体質(遺伝子変異) が見つかっており、栄養環境の急激な変化に身 体がついていけなかった結果と考えられます。

図1

図1

図2

図2

最近の研究から、脂肪細胞や消化管から分泌 されるホルモン(レプチンやインクレチンなど) や生理活性物質が脳の食欲制御センター(視床 下部)に信号を送り、絶妙のバランスで体重を 維持する機構が解明されています(図3)。フラ ンス料理が始まって僅かに200 年。一方、環境 の変化に適応して遺伝子が変わるのには最短で も10 万年かかることから現在の食環境が続く限 り、人類は肥満と戦わざるを得ない状況です。

図3

図3

沖縄県は摂取カロリーの中に占める脂肪分の 割合が以前から突出して多い県として知られて います(図4)。最近の脳科学、代謝医学の研 究からわかってきたことは、本来、野生界には 存在しない高脂肪食が絶妙のバランスで体重を 維持するはずの脳のシステムをいとも簡単に撹 乱してしまうということです。月に旨いと書く “脂”の取り過ぎは脳の食欲調節を狂わせ、さ らには、消化管に住む細菌(腸内細菌叢)の顔 ぶれを変えてしまい、より太りやすい体質に変 えてしまうという衝撃的な実験結果もヒトで検 証され、世界的に大きな注目を集めています (図5)。美味しく、旨味のある高脂肪食の出現 は野生動物にとっては“想定外の出来事”であ り、はまってしまう、耽溺を引き起こすること がわかってきました。21 世紀の分子栄養学は このような食の嗜好性や耽溺のメカニズムの解 明に向かっています。

図4

図4

図5

図5

沖縄県における肥満問題の解決には子供のこ ろからの食習慣に対する正しい知識の普及、啓 発が重要であり、食事を作る母親、一緒に食事 を摂る父親の役割も大切です。大脳皮質から視 床下部への投射が大きいヒトの場合では視覚情 報や雰囲気、過去の体験や記憶が食行動に大き な影響を与えることから、人工的に作り出され た高脂肪食の旨味、高塩分食の食感が食欲感知 機構を破綻させます。エネルギー出納バランス が成立する適正摂取カロリーから僅か1 %オー バーした過食を30 年間続けた場合、平均で約 27kg の体重増加をもたらすと試算されています。例えば、一日必要エネルギー2,000kcal の 男性の場合、僅か2.5 %増の2,050kcal の食事 を機械的に継続すると一年で18,000kcal 以上 の余剰、体脂肪1g = 7.2kcal 相当であることか ら試算すると一年で約2.5kg の体重増加、10 年 間で約25kg の体重増加、55kg の体重のひとな ら10 年後には80kg に達する計算になります。 日々の食の小さなズレとクセの集積が肥満を作 り上げていくわけで、食習慣・食行動の見直し が重要なポイントとなります。朝食の欠食、早 食い、纏め食い、菓子類や清涼飲料水などの間 食習慣、ナイトイーター(夜食習慣、就寝前3 時間以内の食事習慣など)、高脂肪食に対する 嗜好性についてセルフチェックを促すことが大 切です。図6 に示すように朝食欠食の学童は肥 満の割合が顕著に高く、学業成績も思わしくな いという調査結果が出されています。さらに、 夜勤労働者や生活リズムが不規則な人々におい てメタボリックシンドロームの頻度が有意に高 いことも注目されており、体内の日内リズムを 形成する種々の時計遺伝子群を標的とした遺伝 子操作マウスがヒトのメタボリックシンドロー ムに類似した病態を示すことも注目に値しま す。夜間にはエネルギーを蓄積させる一連の遺 伝子群が活性化されており、そのタイミングで カロリーが流入すると渡りに船、という感じで 肥満が加速されることになるわけです。沖縄県 の肥満対策は栄養や食、ライフスタイルに関す る正しい知識の普及と啓発、特に小児期からの 食育活動が極めて重要であると考えられ、沖縄県医師会とマスコミの皆さんがちからを合わせ て取り組む恰好のプラットフォームであると思 います。思慮深い長期展望に立った沖縄県の肥 満・糖尿病対策が成功すれば日本全域、そして 東アジアに迫っているクライシスを回避させる ことができ、沖縄発の偉大な国際貢献にもつな がっていくことでしょう。

図6

図6

質疑応答

○司会(玉井) 益崎教授、どうもありがと うございました。

なかなかショッキングなお話が多かったと思 います。マスコミの方から、何かご質問等あり ますでしょうか。

○玉城(琉球新報)

玉城(琉球新報)

琉球新報の玉城です。 益崎教授、どうもあり がとうございます。

私もピザとノンカロ リーコークをよくとっ ているもので、すごく ショッキングなお話で、 ウチアタイしてしまいまいした。

低出生体重児のお話も出ていましたが、沖縄 は低出生体重児が一番多くて、そういう素地は すごくあるということだと思うんです。さらに 休みの日になるとマック等がすごく混んでいた り、お母さんたちが本当に小さい子供を連れて ファストフード店によくいる姿を見るんですね。 こんなふうに洗礼というか、素地ができてしま っている私たち沖縄県民が、今後肥満にならな いようにだとか、病気にならないようにしてい くためにはどうすればいいのか。多分、私もか なり曝露されていると思うので、個人的にはす ごく心配になったので、教えてください。

○益崎(医師会) 私たちも日々研究をしな がら、あるいは患者さんを診ながら、認識を変 えて進化しているというところですが、最近つ くづく思いますのは、子供の食ということに対 して県をあげて教育、正しい知識の普及、母親 の方々の教育、大人の教育でもあるんですけれども、かなり重点を置いて食育についての啓発 活動をやっていくべきと痛感しております。も っとさかのぼれば妊婦さんから始まっていると いうことです。長期的なスパンで対応しない と、小手先で簡単に何かをすれば痩せられます よとかいうレベルでは済まされないということ です。

それと、基礎研究でどんどんわかってくる新 知見、今日ご紹介したようなことが人間でもあ てはまるという知識を共有化して生かしていく という、そういう流れをつくっていくというこ とだと思います。

○司会(玉井) 啓発・啓蒙が大事というこ とで、マスコミの皆さんのお力に頼りたいとこ ろです。

そのほか、何かございますか。

○玉城(琉球新報) 取材しての感じです が、私は益崎先生の話を聞くまで、肥満と貧困 のことをとても考えていて、どうしてファスト フードにいってしまうのかということを考える と、ファストフードは安いんですよね。健康に いい食べ物というのは高くて、ちゃんと調理を して手間ひまもかかる。沖縄県内の所得だと か、勤労の形とかを見たときに、お金はない し、共働きが多くて忙しいし、ちゃっちゃとつ くれるものとか、そのへんにあるものを買って きて食べさせようというようになるので、いく ら啓発しても、知識もお金もある人たちは改め ていくと思うんですが、多くの、肥満や病気に なったときに受診が遅れたりする貧困層という のにどうアプローチしていくのかというのは、 医療界だけではなくて、いろんな各経済界もタ ッグを組んでやっていかないとちょっと限界が あるのかなというふうに、今感じました。

○益崎(医師会) 食物繊維であれ、イワシ とか、玄米とか安くて、今100 歳を迎えていら っしゃる沖縄のおじいちゃん、おばあちゃんた ちが若いときに食べていたものに回帰すればい いわけですよね。

今、中東諸国とかアフリカなんかでメタボが すごい問題になっているんですね。それは、保 存食が増えている。ナトリウムが多くて、野菜 不足、安価で高カロリーのものに栄養源がシフ トしているということで、私たちの一世代や二 世代前の先祖たちが食べていたもの、体にいい ものに回帰するという、そういう流れができて いかないと立ち行かない、そんな気がしており ます。

高脂肪食なんかも耽溺という、行列のできる ラーメン店というのがあるように、ますます‘は まっていく’わけです。このような食行動とか食 の嗜好性が脳科学から解明されてきているので、 その悪循環を断ち切らないといけないわけです。

○徳(タイムス住宅)

徳(タイムス住宅)

週刊ホームプラザの 徳と申します。

今日はとても非常に 考えさせていただく内 容で、どうもありがと うございました。

話を伺っている中で、 今も玉井先生もお話されていましたけれども、 嗜好性というものは人間の場合は、食欲をか なり左右するんだなということをとても感じた んですけれども、そうなっていくと、例えば沖 縄の方と、私は東北の方と一緒に旅行したこ とがあるんですが、皆さん東北だとワカメなん かは酢の物だったり、ワカメや昆布がお鍋だっ たりという形で出てました。油で炒めてないも のが2、3 日続くと、40 代、50 代ぐらいのツ アーの方々皆さんがそうだったんですが、油で 炒めているものを食べたくなるんですね。かと いって我慢しているとストレスになってしまっ て過食につながっていくというような悪循環と いうのがすごくあるのではないかと思うんです が、そのあたりを、例えば今先生は教育とおっ しゃいましたが、努力するというところももち ろん大事だと思うんですけれども、何か手立て として考えられることがないのかどうか。嗜好 性というものをコントロールしていく上で、そ のへんはどうお考えになっていらっしゃるんで しょうか。

○益崎(医師会) ときどきのお楽しみとい うのはやぶさかではないわけですよ。ずっと“は まる”というか、連続的に食べるというのがよ くないということだと思うんですね。今日お話 した実例を、お母さんや子供達に広く知ってい ただいて、ちょっと意識にとめていただくとい うだけでずいぶん違うのではないかと思います。

少しのずれの集積の結果であるということな ので、改善しようというアプローチが少しでも あるのと、ないので、アウトカムというか、結 果は違ってくると思います。3 回のところを1 回にされるとか。それぞれの中で改善というの があれば、随分違ってくるんだろうと思います。

今日の話は脂肪の耽溺(addiction)という のが脳のレベル、あるいは消化管の腸内細菌叢 のところで同時多発的に起こっているというこ とです。野生動物には高濃度の脂肪食というも のが天然には存在しなかったので、防御機構を すりぬけた現代特有の現象なんです。野生には 存在しなかったので、そういうものを備える必 要もなかったわけです。そういう状況に今、人 類が直面している。

おいしいものは人間にとってかなり危ないも のでもあると。特に長期間の安全の使用が検証 されていない人工的な食べ物、甘味料も含めて ああいうものは気をつけておかないと、大きな 落とし穴がある可能性を考えておかないといけ ないということです。

○徳(タイムス住宅) 大人は努力して頭で 考えて食べていきやすいと思うんですけど、私も 子供がいるのでとても思うんですけど、子供は なかなかそういうことを理解していくのは難しい と思うんです。例えば1 回の食事の中の脂肪の 量を減らしていくとか、それから脂肪を摂ると きにいい食べ合わせとか、そういうのがもしあれ ば教えていただけると有難いんですけど。

○益崎(医師会) 生体において中性脂肪に 変換できない油(脂)ってあるんですね。そう いうものは太りにくいという効果もあります し、「地中海ダイエット」という言葉を聞かれ たことがあるかもしれませんけれども、多価不 飽和脂肪酸を多く含む油です。オレイン酸と か、そういうふうなものは食欲を低下させ、メ タボリックにも良くて、油といっても一様じゃ ないんです。体にとって悪い油もあれば、非常 にベネフィットを与えて地中海圏で長寿をもた らしたという油もあるわけです。そのへんも子 供のときからの、お母様を含めた教育であり、 知識であり、正しい知識をどう日常生活の中に 生かしていくかということで、それは最もやり がいがある、うまくいけば効果があるもので。 県医師会とかマスコミの皆さんと協力してやっ ていけるプロジェクトの形ではないかなと思い ます。

○赤嶺(沖縄タイムス)

赤嶺(沖縄タイムス)

今日は本当にありが とうございました。

先ほどの話にちょっ とダブるんですけれど も、これだけ脂肪とい うのはアディクション なり、脳のレベルまで というのはすごく私はショッキングでした。少 し食べればいいかなと思ったんですが、これを 食べ続けてしまっているとアディクションまで 至るというのは、私は不勉強なんですけれど も、意外と知らないのかなと感じたんですね。 こういうアプローチのところを、ちょっとショ ッキングなショック療法ではないんですけど、 危機意識というのを出していくのが一番いいの かなと、今お話を聞いて思いました。先生が考 える、この数字を出せばちょっとみんながびっ くりするような、そういう啓発の仕方というの もあるのかなと思うんですが、いかがですか。

○益崎(医師会) 県民の皆さまに対してど ういう出し方が一番インパクトがあるかという のはなかなか難しいと思うんです。

今、沖縄がこうなっていると。そのベースの1 つには間違いなく総摂取カロリー中に占める脂 肪の割合が高いというのがあるわけです。それを もう少し他の食品で同じぐらいカロリーを摂っ ていても、健康障害という意味ではもっと軽くできるという、青森との興味深い比較、なんで もあるわけですので、いくつかの具体的なお話を 示していくということなんでしょうね。どれが一 番というのは私もわからないんですけれども。

○司会(玉井) 先生、沖縄に長くいらっし ゃると、このところがツボだなというのがわか ってこられると思います。

○益崎(医師会) 大学病院でも勉強会でよ くお弁当が出てくるんですね。京都からまいり まして、とにかくまず驚いたのは1 人前の量が 多いということと、圧倒的にフライだとか、油 で調理したものの割合が多い。しかも、皆さん がそれをペロっと召し上がるのでびっくりしま したね。華奢な女医さん達でもあっという間に 食べてしまうので、すごいなと感じました。京 都から来て、その落差がすごく印象深かったの ですが、多分、子供の頃からいらっしゃると、 もうそれは日常化しているのですね。沖縄の方 が京都に修学旅行に行かれたら、何てちょっと しか出てこないんだろうと思われるんじゃない かと思うんです。いかがでしょうか。

○司会(玉井) そのとおりだと思います。

○玉城(医師会)

玉城(医師会)

1 人前が多いというの は、私も思いました。 東京から戻ったときに、 何でこんなにたくさん 食べないといけないん だと思ったんですけど、 いつのまにか慣れてし まって食べられてしまうから恐いですね。






○大城(エフエム沖縄)

大城(エフエム沖縄)

エフエム沖縄の大城 と申します。

先ほど実例をという お話があったんですが、 先生の体型を見ていま すと、やはり食事や運 動にいろいろと気を遣 われていらっしゃるんだろうなと思うんです が、先生が日頃食べ物や、健康管理をする上で 気にかけていらっしゃることというのが、生き た実例なのかなというふうに思うんですけれど も、先生ご自身で食生活ですとか、生活の中で 気にかけていらっしゃることがありましたら、 逆にそれが一番私は知りたいなと思うんですけ れども。


○益崎(医師会) 私が食べているお昼のお 弁当は玄米なんですね。一般的に消化管に長く とどまって便の量が多くなる食物というのは、 血糖を上げにくく太りにくいと一般化できるん じゃないか考えております。ステーキとかピザ というのは、便の量が少ないですよね。消化管 に滞在する時間も短いです。急速に吸収され て、さっとカロリーに入ってしまうというもの は大体太りやすいという一般化ができるんじゃ ないかと思います。

同じ糖でも水に溶けにくい多糖類とか、消化 吸収にすごく時間がかかって一定時間消化管に 長くとどまって、そして最終産物としての便の 量が多いもの。そういうものは太りにくいことに 貢献しているということで、大腸がんなども明 らかに便の量と関係していて、便の量が少ない ステーキばかり食べていると、消化管が短くな りますよね。日本の子供たちがどんどん足が長 くなって、胴が短くなっているというのは雑穀と か食べなくなっているからなんですけれども、肥 満とか癌の予防に関しては昔の日本人がやって いたことが1 つのお手本だと思います。

私も、田仲先生にご指導をいただいて、玄米 とか食物繊維をなるべく食べるようにしている とか、就寝前3 時間はカロリーのあるものは食 べない。これはよく「ナイト・イーター」とい うふうに表現されるんですけれども、太りやす い人は休まれる前、直近3 時間に食べる習慣を もっている人が多くいます。

それから「シフトワーカー」ですね。看護師さ んとか、夜勤の人というのは太りやすい、メタ ボが多いということがわかってきていまして、 生体というのはもともとは飢えていたわけで す。だから夜の10 時ぐらいから活性化されて エネルギーを身に付けさせようとする一連の遺伝子が存在しているんです。夜型にシフトする と、まさにそのような遺伝子が活動するとき に、どんぴしゃりでカロリーが入ってくるとい うことで、もっともっと太りやすくなるとい う、時計遺伝子があるんです。現代人はちょう ど太りやすくさせる遺伝子群が動き出す頃にカ ロリーを食べている。だから夕食を遅めにせず に、3 時間ぐらいお腹を空けて休むと。

私がいつも患者さんに話すのは、朝、目覚ま し時計を何台も置いてやっとやっと起きるとい うのはやっぱり食べ過ぎているんですね。消化 吸収というのはそれはそれでエネルギーを使う 活動で、寝る前の1 時間前ぐらいに食事をしま すと、体が全然休まらない、疲れきっているん ですね。起きられないと。朝、気持ちのよい空 腹で目覚まし時計なしに目覚めて、朝ごはんが とてもおいしいというぐらい、夜の食事を減ら しなさいと患者さんに勧めています。朝食を抜 いているという子どもたちが太りやすい、学業 成績が良くないというデータも、ご紹介したん ですけれども、今、琉球大学の医学部の学生さ んたちで朝ごはんを食べていない人は4 割ぐら いいるんです。非常に問題で、彼らに糖尿病の 検査をすると、大体6 人に1 人ぐらいが糖代謝 異常が見つかります。糖尿病の予備軍なんです。 驚くべき数字だと思うんですけれども、6 人のグ ループに1 人ずつぐらいに糖尿病の子がいるん です。医学部の学生ですらそうですから。

○三好(沖縄テレビ)

三好(沖縄テレビ)

沖縄テレビの三好と 申します。

関係ないかもしれな いですが、肥満と睡眠 時間というのは関係し ているんですか。

○益崎(医師会) 直接は関係ないと思います。

そのご質問の意味は、三好さんが睡眠不足だ と・・・。

○三好(沖縄テレビ) 睡眠不足ではあるん ですが、すぐ太る体質でもあるので。

○益崎(医師会) 睡眠時間が短いから太り やすいということはないと思います。今申し上 げたように、きっとお仕事で遅めのお食事とか が多いんだろうと思います。可能な範囲で気持 ちよく朝食を召し上がれるぐらいの夕食の摂り 方を工夫なさるとか。

○三好(沖縄テレビ) 1 点だけ。沖縄の子 供たちについてですが、例えば学校給食以外の 部分で肥満体質になる子が多いのか。それとも 学校給食も含めて沖縄の食生活というのを変え ていかないと、この先、危ない状況がどんどん 深刻化していくのかというところを伺いたいの ですが。

○益崎(医師会) 小学校の先生で肥満、あ るいは小学校の先生で糖尿病という患者さんを たくさん京大病院で診ていたんですが、一様に おっしゃっていたのは、今の学校給食のカロリ ーの設定というのが、戦後の痩せた栄養失調の 子供たちをいかに立ち直らせるかというのが原 点にあるそうで、今の学校給食そのものがとに かくオーバーカロリーなんだそうです。あのま ま子供と一緒に食べていたら、糖尿病になりま したという人がいっぱいいました。すごいカロ リーなんだそうです。そのへんもやっぱりずれ ていると思いますし、お家での夕食・朝食もか なり見直さないといけない。両方だと思います。

○司会(玉井) 益崎先生、ありがとうござ いました。

それでは、これでマスコミとの懇談会を閉会 させていただきます。

皆さん、今日はどうもお疲れさまでした。