標記連絡会議においては日本医師会委員会報 告として、社会保険診療報酬検討委員会につい て、熊本県医師会の飯星元博委員より、地域医 療対策委員会について、沖縄の安里哲好委員よ りそれぞれ報告があった。
報 告
(1)社会保険診療報酬検討委員会 飯星元博 委員(熊本県)
当委員会は、唐澤会長より1)「平成20 年度 診療報酬改定の評価」、2)「現在の診療報酬に おける問題点とその対応」(※追加事項として 「次期診療報酬改定に係る要望事項の取り纏 め」)について諮問され、9 回に亘る検討会を行 ったので、その経過について報告された。
1.総論
「医療崩壊の危機の回避」が最重要課題であ りながら、マイナス改定である財政論に縛られ 医療費削減が目的化され、財政中立での改定で あった。
本来、国家成立の基本である国民の生命と安 全を守ることが最大の使命である社会保障、と りわけその根幹を成す保健・医療・福祉の政策 を見直すよう日本医師会は主張していただきた いと言う前文となっている。
2.緊急課題への対応
(1)産科医療
ハイリスク分娩管理加算、ハイリスク妊娠管 理加算、ノンストレステストの見直しなど、一応の評価はしたい。最前線で活躍される産科医 師の待遇改善に繋がるような更なる配慮が必要 であるという方針としている。
(2)小児医療
小児入院医療管理料は再編され、一部の慢 性的な赤字に苦しんでいる小児病院には多少の 恩恵はあるものの、非常に厳しい施設基準から 大部分の病院小児科には恩恵はないものと見ら れている。従って、今後も小児入院医療は不採 算が続くと思われるので、大幅な改善が必要で ある。
(3)病院勤務医への負担軽減
負担軽減に向けた具体的な取り組みについて は評価したい。しかし、負担軽減策も総じてご く一部の急性期大病院にのみ資源配分がなされ、 地域の救急医療・二次医療を担う地域中核病院 及びその勤務医に対しては救済が必要である。
(4)今後の課題
産科・小児科・病院勤務医への負担軽減策等 に1,500 億円が投じられたが、果たして、こう した課題が解消されたのか十分に検証する必要 があると答申した。
3.各論
(1)夜間・早期等加算(初診料・再診料)
(2)外来管理加算(再診料)
意義付けの見直しと時間の要件について、ま た、厚労省が中医協で使用したデータの目的外 使用について問題とし、議論を醸し出したとこ ろである。
計画的な医学管理を行うという無形の技術料 について、診察の質を時間の概念で評価するこ とには到底容認できるものではない。
(3)後期高齢者診療料
一人の主治医にだけ医学管理料を支払うとい う後期高齢者診療料は、人頭払いを常態化し、 包括医療に導いて医療費をコントロールしたい という意図を強く感じさせる。全国の都道府県 医師会、地区医師会の算定地域から拒否反応が 出ており、今回の廃止に至ったのは当然の奇策 であろうと思う。
(4)軽微的処置の基本診療料への包括評価(耳 鼻咽喉科・眼科・皮膚科)
(5)後発医薬品への使用促進について
(6)DRG/PPS の一部導入について
平成20 年度の診療報酬改定で15 歳未満の鼠 径ヘルニア手術に係る5 日以内の入院を対象と して、従来の方式に代わって、DRG/PPS (Diagnosis Related Groups/Prospective Payment System)方式が採用された。
DRG/PPS 方式の導入にかかる問題点を以 下に指摘する。
(7)有床診療所の入院基本料について
4.特記事項
◆政管健保に対する平成20 年度国庫負担金の 健保組合等による負担のための特例法案の不 成立について
勤務医支援の財源には1,500億円が必要である。
健保組合は750 億円、共済組合は250 億円を 政府管掌の肩代わりとする代わりに診療所側も 外来管理加算等で妥当な処置をしていただきた いというものである。
いわゆるねじれ国会のために不成立になった ものであり、診療所の立場から言えば、空手形 を切られ、それが不渡りになったに等しい。
従って、公益側や1 号側の後付的意見の一切 を本委員会としては受け入れられないという答 申である。
【次期(平成22 年度)診療報酬改定に対する要 望書・最重点・優先要望項目】
平成22 年度診療報酬改定に対する要望を実現するためには「医療を立て直すための財源の 確保」が必要不可欠である。
国民の生命を軽視した医療費抑制政策により 「医療崩壊」といわれる状態に立ち至っており、 とりわけ救急医療、周産期医療、小児医療など は非常に厳しい状況である。
国は、国民に必要な最低限の社会保障は責任 を持って維持するとの立場がとられるべきであ り、そのため必要な財源が確保されなければな らない。
<最重点要望項目>
○初診料、再診料の適切な評価(引き上げ)
○外来管理加算の見直し(特に時間要件の廃止)
○入院基本料の適切な評価(引き上げ)
○救急医療、二次医療を担う地域中核病院 (DPC 病院を含む)や中小病院への配慮
○後期高齢者診療料の廃止
○基本診療料に包括されている各種処置料の 復活
○ 7 種類以上の薬剤の投薬に係る薬剤料、処方 料、処方せん料逓減の廃止
○短期滞在手術基本料3(DRG/PPS)の廃止
○特定疾患療養管理料の対象疾患の拡大・算定 要件の見直し
○急性期病棟における介護(看護補助)加算の 拡大と看護基準の柔軟な運用
<優先要望項目>
◇入院基本料等加算における救急搬送加算の新設
◇ A103 精神病棟入院基本料の引き上げ
◇ A108 有床診療所入院基本料の引き上げ
◇ A307 小児入院医療管理料の増点
◇有床診療所回復期リハビリテーション病室入 院料の新設
◇ B001 − 2 小児科外来診療料の引き上げと 対象年齢の拡大
◇ C106 在宅自己導尿指導管理料における 「在宅排尿指導管理料」への名称変更と区分 の追加
◇長期処方を原則1 ヶ月に制限する
◇手術時に使用する医療材料・ディスポ製品の 正当な評価
◇ M001 体外照射「3 高エネルギー放射線 治療」の点数引き上げ
諮問2)については、答申前の段階と言う事も あり、討論した項目と独自でのメモを基に簡単 に報告された(下記を参照)。詳細は答申書が 出来次第ご確認をお願いしたい。
1.政策的課題
2.技術的課題
3.中医協について
前文
2)地域医療対策委員会 安里哲好 委員(沖縄県)
当委員会については、唐澤会長より諮問された事項の検討経過について、答申書(案)を基 に報告された。
スライドでは、諮問事項検討経過の前に「医 師確保のための実態調査結果」による医師の充 足・不足等について説明が行われた。
【医師確保のための実態調査結果:日医定例記 者会見2008 年12 月】
○都道府県別の医師の充足・不足
・病院医師について、42 都道府県医師会 (89.4 %)が不足(やや不足・不足)。
・診療所医師について、18 都道府県医師会 (38.2 %)が不足。
○二次医療圏別の医師の充足・不足
・病院医師について、2 8 1 二次医療圏 (83.9 %)で不足(やや不足・不足)。
・診療所医師について、1 2 9 二次医療圏 (38.5 %)で不足。
○医師の偏在
・36 都道府県(76.6 %)が医師の偏在があ るとしている。
・219 二次医療圏(65.4 %)で医師の偏在 があるとしている。
○診療科目別の医師不足
・都道府県、二次医療圏ともに産科・産婦人 科、小児科、救急医療、麻酔科が多くあげ られた。
○医学部定員の過去最大規模への増員について の是非
・36 都道府県医師会(76.5 %)で「賛成」 「どちらかというと賛成」である。ただし、 財源の投入、診療料・地域偏在の解消、女 性医師離職問題の解決等とセットでなけれ ばならない。
【諮問事項】:「地域社会の医療ニーズと医療提 供体制の在り方」
1.医師の養成について
○日本医師会は「グランドデザイン2009」に おいて
・医師数は1.1 〜 1.2 倍が妥当であるとして いる。
・医学部教育及び臨床研修制度の一環とした 改革が必要。
○ 2008 ・2009 年度と2 回に亘り医学部定員増 が実施された。
○民主党マニフェストでは、医師養成数を1.5 倍にすると公約された。
(1)医師数の現状
<医学部定員数>
2007 年度(7,625 人)→ 2010 年度(8,846 人) ※ 1,221 人増
過去最大増である1982 年の8,280 人より 566 人増。
<医師数>
○医師数を1.2 倍にすると
2 0 0 6 年度(2 7 7 , 9 2 7 人)→ 2 0 1 9 年度 (333,512 人)
2025 年度には、OECD 加盟諸国平均(医師 数3.0 人/人口1,000 人)となる。
(2)医師の養成数増のあり方
1)「ベビーブーム世代」が医学部を受験した 時期の定員数
269.6 万人に対して3,500 〜 4,000 人程度、 18 歳人口の約0.15 %
*仮に医学部定員数を1.5 倍の約1.2 万人と すると
2)2007 年(出生時: 110.1 万人)、18 年後 18 歳人口の約1.09 %
3)2017 年(出生時: 83.6 万人)、18 年後18 歳人口の約1.44 %(1)の約10 倍)
4)過剰供給が問題視されている歯科医師を例 にとると1998 年以降、10 %程度の削減に 対して2 %にとどまっている
(3)臨床研修(初期、後期)について
1)2004 年度の新医師研修制度は、現在の医 師不足や指導医を含む勤務医の過酷な勤務 環境等を顕在化させたが、その見直しに当 たっては、同臨床研修制度導入の成否を検 証の上、臨床研修制度だけでなく、在学時 から卒後に至る一貫した医学教育全体の観点から、検討するべきである。
2)日医グランドデザイン2009 および全国医 学部長病院長会議による提言
CBT(Computer Based Testing )、 OSCE(Objective Structured Clinical Examination)に合格した者に「仮免許」を 与え、国民の納得を得てある程度の診療行為 を可能にする。
3)臨床研修病院群の適切な編成
日医グランドデザイン2009 においても推 奨されている医師は地域で育てるといった観 点から「地域医療研修ネットワーク」による 編成が理想的であるが要検討。
(4)メディカルスクールについて反対としてい る。また、新たな医科大学の設置及び医学部 の新設については、必要性を認めないとして いる。
(5)医師養成に対する公的支出について、医学 教育を含む高等教育費への公的財政支出の対 GDP 比(0.6 %)はOECD 加盟諸国でも (平均1.3 %)最低。
(6)医師確保に対する財源確保
1)地域医療に貢献している民間病院に対して も充実した財政支援が必要。
2)救急医療・へき地医療等の重要な担い手で ある診療所への財政支援も必要。
2.医師の偏在解消に向けて
(1)医師の偏在の対策とプロフェッショナル・ オートノミー
1)医師会は、高度な専門性と倫理性が求めら れる職業である医師によって構成され、か つ自律性を持つ集団として、国家の関与に よらず、自らの決定により、医師の養成や 研鑽をする義務がある。
2)自由開業医制:初期診療と専門医への紹介 の実践を含む生涯教育や、医療のフリーア クセスと表裏一体にあり、疾病の早期発 見・早期治療を始め、我が国の優れた医療 実績を守ってきた。
3)都道府県医師会が主導して、都道府県で医 師養成や医師配置を考える
(2)診療科と地域の適正な医師配置についての 検討
1)医師の「適正配置」とは何か
診療科や地域の偏在問題の解決に、ある程 度の実行力を持った制度と、財政的な誘導が 有効である。その是非は別として、過去の本委 員会、国の関係審議会・検討会等において出 された案・意見を基にして、医師の「適正配 置」を類型化してみると下記のとおりとなる。
2)医師の教育・生涯研修を通した「適正配置」
へき地・離島や、特定の診療科・診療領 域(産科、小児、救急医療等)での一定年 限の従事を返済免除条件とした制度とする。 3)臨床研修先の制限
3)地域や診療科ごとの「適正数」の設定
4)医師偏在対策の視点から見た専門医制度
専門医制度により医師偏在の解消を図るの であれば、各制度の整合性を図ることが前提 となる。それは、国の規制でなく、プロフェ ショナル・オートノミーの視点から、日本医 師会、日本医学会、日本専門医制評価・認定 機構や各大学等による第三者的な機関によっ て行われなければならない。
実際、種々の学会の専門医制においても方実際、種々の学会の専門医制においても方向が定まっていず、困難である。
5)健康保険制度上の「適正配置」
保険医の登録については、医師と厚生労働 大臣(或いは保険者)との契約であると理解 すると、契約の条件として、地域や診療科ご との医師の上限ワク設定や、へき地や救急医 療等での診療(実績)を求めることが考えら れる。
6)病院や診療所の管理者の要件として、救急 医療やへき地等での診療経験の追加(同時 に、個人立診療所を開設する場合も、届出 ではなく許可制にする)諸問題が指摘さ れ、充分な議論が必要であり、拙速は避け るべきであることが、再認識された。
7)地域の医療資源(医師、入院機能等)の集 約化
8)ドクターバンクによる「適正配置」
9)地域医療対策協議会による、医師不足の地 域への医師派遣、公的病院の医師の配置転 換などの「適正配置」
10)あくまでも医師の自由意志による選択を前 提とした、インセンティブの付与による 「適正配置」
(3)「適正配置」を行う者
プロフェショナル・オートノミー、地域医療 の視点から都道府県医師会による主体的な関与 が望まれる。
1)地域医療研修ネットワーク(日本医師会グ ランドデザイン2009)
2)大学
3)地域医療対策協議会
4)都道府県行政
(4)地域における医療機能に応じた分担と連携
(5)地域枠、奨学金その他、へき地離島や救急医療等での就業を魅力的なものとするための方策
(6)勤務医の負担軽減
(7)看護師等医療関係職種、事務職等との役割分担
(8)総合的な診療能力を有する医師の養成
(9)住民・患者とともに考える取り組み
(10)地域の医師の充足状況の把握と公表への取り組み
1.医療圏のあり方
(1)2 次医療圏の現状
1)地域の医療提供体制の変化と、2 次医療圏
2)2次医療圏の地域特性
3)「地域医療再生基金」を通じて顕在化し た、2 次医療圏の現状
4)救急医療・救急搬送と、2 次医療圏
5)「4 疾病5 事業」と、2 次医療圏
6)「基準病床数」の単位としての2 次医療圏
2.地域医療対策協議会のあり方
(1)「地域医療対策協議会」の現状
(2)地域医療対策協議会の活性化
3.地域の医療提供体制の今後
(1)地域連携
(2)病床区分の今後
(3)急性期・慢性期の入院医療体制の今後、在 宅医療との関係
(4)医療と介護との関係
【地域医療対策協議会の活性化:2007 年の医療 法改正により法制化された】
1)与えられた役割
2)委員の構成
3)座長の所属
4)協議会の権限
5)財源確保
6)地域医療対策協議会の全国組織の設置
【まとめ】
1)医師数は1.1 〜 1.2 倍が望ましく、2010 年 度の医学部定員数( 8,846 名)では、2025 年度前後にOECD 加盟諸国平均(3.0 /人口 1,000 人)に達する。
2)地域単位での適正数の算出は困難だが、日 本医師会が何だかの基準を示し、郡市医師会 が中心となって算出して行くことも検討すべ きだ。
3)国家の強制的制度による、医師の地域・専 門科の偏在の対策には慎重を要する。
4)保険医制度でもって、地域や診療科ごとに 医師の「適正数」を設定することには、定年 制も含め保険医の指定を制限することにもつ ながりかねない。
5)諸専門医制度の意思統一はまったくなされ ていず、専門科の偏在の対策に関しては困難 を極める。
6)病院や診療所の管理者の要件として、救急 医療やへき地等での診療経験の追加に関して は充分な議論が必要である。
7)医師の自由意志による選択を前提とした、 インセンティブの付与による「適正配置」。
8)地域医療研修ネットワークの実現。
9)地域医療対策協議会の活性化。
10)医師確保に対する財政支援が必要。
印象記
副会長 玉城 信光
九医連の会議の中で今回は大変印象に残った協議会であった。福岡の横倉会長のすばらしい演 出であったと思う。次期日医会長選挙に立候補している唐澤先生、原中先生、森先生の立候補演 説があった。立候補者皆の思いは同じである。医療崩壊を食い止め、地域医療を再生させるため には診療報酬など医療費を増やすことが求められると話し、会員の意見を十分に聞いていくこと で日医の力を強力にしていきたいと話していた。3 名の先生とも思いは一つであることが理解で きた。
その後の懇親会に3 名の先生とその応援団の先生方も加わり九医連の先生方との懇談が行なわ れた。皆積極的に選挙運動を行なっていた。このことは何を意味しているのか。選挙でどなたが 日医の会長になっても九医連と顔の見える関係ができると言うことである。日本全国でこの様な 懇親会にできたのは横倉会長率いる九医連のみであったらしい。全国各地でこのようなことがで きると日医の結束は強くなるであろうと予想される。また今度の選挙ではキャビネット制を取ら ず、各候補とも全国的に優れた理事を登用すると聞いている。日医の変革の時代が到来したので ある。新しい日本医師会に期待したいものである。
今年の協議会では日医の委員会報告がなされた。熊本の飯星先生が社会保険診療報酬検討委員 会の報告を行った。詳細は報告を参照して頂きたい。
もう一つは当県の安里先生が地域医療対策委員会の報告であった。1、医師確保対策、日医は 医師の増加は現状の1.2 倍ほどで良いとのことである。2、医師の偏在にたいしては国家の関与によらず、医師会として関与すべきである。地域枠や奨学金制度、地域医療研修ネットワークの実 現、拡充が大きな働きをするべきであるとの委員会答申であった。
沖縄県は研修制度がしっかりしており、全国的にもトップレベルに研修医の多い県である。昨 年は県医師会主催で本県のすべての研修医を招いて激励会を行ったと報告した。今後シミュレー ションセンターなどを活用し更なる研修制度の充実を図っていくと報告していた。医師確保は結 局、地域での努力が大きいと思われる。
他に来年度は持ち回りではあるが、九医連の代表として宮城会長と鹿児島の次期会長の池田先 生が日本医師会の理事として立候補することになっている。
2 年に一度の本協議会は日医会長選挙や新しい代議員、日医の理事等の選挙が大きな議題であ った。