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日本医師会長に原中勝征氏が当選
−第122 回日本医師会定例代議員会−

副会長 小渡 敬

去る4 月1 日(木)、2 日(金)の両日にわた り日本医師会館において第122 回日本医師会定 例代議員会が開催された。

なお、当代議員会の概要は以下のとおり。

第1 日目(4 月1 日)

当日は定例代議員会に先立ち九州ブロック日 医代議員連絡会議が開催され、九州医師会連合 会前担当県として横倉福岡県医師会長から、九 州医師会連合会の諸行事が滞りなく無事終了す ることが出来たことに対するお礼の挨拶があ り、引き続き、議事運営委員として横倉会長よ り、3 月27 日(土)に開催された議事運営委 員会で協議された当代議員会の運営について説 明が行われた。

定刻になり、仮議長に森下立昭氏(香川)が 選出され、仮議長より開会宣言が述べられた 後、出席代議員の確認が行われ、定数である 357 名の代議員の出席をもって会の成立を確認 し、続いて森下仮議長より議事録署名人とし て、鶴谷嘉武代議員(群馬)、福田稠代議員 (熊本)が指名され、議事が進行された。

先ず、議長選挙が行われ、定数1 名に対し候 補者は1 名、投票によらず石川育成氏(岩手) を当選人と決定した。その後、副議長選挙に移 り、定数1 名に対し候補者は1 名、投票によら ず藤森宗徳氏(千葉)を当選人と決定した。そ の後、石川議長より8 名の議事運営委員(各ブ ロック)が指名され、役員選挙の進行を確認す るため議事運営委員会が開催された。

なお、議事運営委員会終了後、会長選挙に入 る前に、愛知県医師会代議員から、出席者数について、1 人欠員になっている大阪府医師会の 日医代議員の枠を埋めるため、予備代議員が出 席していることについて指摘があり、石川議長 がこれに対し、規定により代議員が欠けた場合 は予備代議員が職務を代行することができると なっていることから有効である旨説明したが、 愛知県医師会代議員から、初めから代議員が欠 員の場合は該当しないのではないかとの更に指 摘があったことから、急遽議事運営委員会が開 かれ協議が行われた。協議の結果、議長より、 大阪府医師会は2 月に日本医師会へ日医代議員 1 人の欠員を報告していることから、規定の代 議員が欠けた場合にはあたらないとし、予備代 議員の出席は認めないとして、出席者につい て、定数357 名中、出席356 名、欠員1 人の訂 正があり、改めて会の成立が確認された。

役員選挙

○会長選挙

定数1 人に対し候補者は現職の唐澤人氏、 茨城県医師会長の原中勝征氏、京都府医師会長 の森洋一氏、京都府医師会員の金丸昌弘氏の4 人、選挙立会人並びに開票管理人の立ち会いの もと投票による選挙が行われ、開票の結果、原 中勝征候補者が当選した。

※原中氏131 票、森氏118 票、唐澤氏107 票、金丸氏0 票

○副会長選挙

定数3 人に対し候補者は、唐澤、森両陣営か ら推薦を受けた中川俊男氏(北海道)、横倉義 武氏(福岡)、内田健夫氏(神奈川)、原中陣営 から推薦された松原謙二氏(大阪)、吉原忠男 氏(埼玉)、多田羅浩三氏(大阪)、単独で立候 補した羽生田俊氏(群馬)、中嶋寛氏(三重) の8 人のため、投票による選挙が行われ、開票 の結果、中川俊男氏、横倉義武氏、羽生田俊氏 の3 人が当選した。

※中川氏174 票、横倉氏173 票、羽生田氏165 票、松原氏151 票、吉原氏122 票、内田氏 97 票、多田羅氏83 票、中嶋氏41 票

○理事、常任理事、監事、裁定委員選挙

続いて、理事、常任理事、監事、裁定委員の 選挙が行われ、常任理事選挙については、定数 10 人に対し当初19 人が立候補したが、会長選 挙の結果を受け2 人が辞退したことから17 人 で争われた。

立候補したのは、1)唐澤、原中、森の3 陣営 から推薦を受けた藤川謙二氏(佐賀)、高杉敬久 氏(広島)の2 人。2)唐澤、森両陣営推薦から 推薦を受けた今村定臣氏(長崎)、三上裕司氏 (大阪)、石川広己氏(千葉)の3 人。3)唐澤、 原中両陣営から推薦を受けた石井正三氏(福 島)、今村聡氏(東京)の2 人。4)唐澤陣営のみ の推薦を受けた前田美穂氏(東京)、新田國夫氏 (東京)の2 人。5)原中陣営のみの推薦を受けた 鈴木邦彦氏(茨城)、樋口正士氏(福岡)、葉梨 之紀氏(神奈川)、石渡勇氏(茨城)、青木重孝 氏(三重)、千葉潜氏(青森)の6 人。6)森陣営 のみの推薦を受けた川出靖彦氏(岐阜)。7)単独 立候補の保坂シゲリ氏(神奈川)であった。

理事、監事、裁定委員については、いずれも 定数内の候補者で投票によらず当選人を決定 した。

なお、選出された新役員等の陣容は以下のと おり。

会長  原中 勝征(茨城)

副会長
中川 俊男(北海道)横倉 義武(福岡)羽生田 俊(群馬)

理 事
鈴木 勝彦(静岡) 小森  貴(石川) 池田 琢哉(鹿児島)井上 雄元(千葉) 井戸 俊夫(岡山) 長瀬  清(北海道) 笠原 吉孝(滋賀) 小山田 雍(秋田) 大西雄太郎(長野) 宮城 信雄(沖縄) 鈴木 聰男(東京) 川島 龍一(兵庫) 森下 立昭(香川)

常任理事
今村  聡(東京) 高杉 敬久(広島) 藤川 謙二(佐賀) 石井 正三(福島)三上 裕司(大阪) 今村 定臣(長崎) 保坂シゲリ(神奈川)鈴木 邦彦(茨城) 石川 広己(千葉) 葉梨 之紀(神奈川)

監 事
伊東 潤造(宮城) 嶋津 義久(大分) 妹尾 淑郎(愛知)

裁定委員
舳松  洋(東京) 鈴木 弘祐(千葉) 小谷 秀成(岡山) 福田  孜(富山) 山本 光與(東京) 佐々木 繁(新潟) 島田 保久(北海道)佐々木義樓(青森) 油谷 桂朗(京都) 宮川 政久(神奈川) 秦 喜八郎(宮崎)

第2 日目(4 月2 日)

代議員会に先立ち前日同様九州ブロック日医 代議員連絡会議が開催され、議事運営委員につ いて、横倉会長が日医副会長に就任したことか ら、蒔本長崎県医師会長が議事運営委員に就任 した旨報告があり、その後、日医副会長に当選 した横倉福岡県会長より「原中会長の下という ことで皆さん複雑な思いはあったかもしれない が、今後しっかりと日医は一枚岩だということ を宣伝していかないといけない。原中会長から 第一副会長を指名され、これをお受けした。九 州ブロックの先生方のご支援をお願いしたい」 との挨拶があり、引き続き、蒔本長崎県医師会 長から、議事運営委員会で協議された当代議員 会の運営、代表質問・個人質問の順番等につい て、代表質問に立たれる嶋田代議員(大分)、 個人質問に立たれる松田代議員(福岡)、原 代議員(長崎)より、質問項目の提案要旨につ いて説明が行われた。

定刻になり、当代議員会が再開され、原中会 長から、会長に選出していただいて、今後の重 責を身に染みて感じている。自分のこれからの 日本医師会に対する考え方を述べさせていただ くとして次のとおり挨拶があり、引き続き高久 日本医学会長より、「日本医学会の動きを原中 会長始めとする医師会執行部の方々とご相談申 し上げながら、医学会としての貢献をしたい。 日本医師会には日本全体の医師の考え方を国民 に表明する団体を目指してほしい」と挨拶が述 べられた。

原中勝征会長挨拶

これから強い医師会をつくるためにどうすれ ばいいのか。開業医8 万人、勤務医20 万人と いう日本医師会の医師偏在の問題をまとめて、 政治に対して専門家集団として物が言える医師 会にならなくてはいけない。

今回の民主党の予算編成に関しては、本来な ら税金できちんと賄わなければならない政策医 療の分まで、医療費を使われてしまったという ことに対して、大変、義憤を感じている。今の ように経済が優先されて、本当の医療というも のが後手に回されているような環境は絶対に見 直さなくてはならない。良い医療制度ができて こそ、国民の安心と安全が確保される。もとも と医療とは国民に対する命、健康に対する保障 を与える職業であると思う。ここをもう一度考 え直し、政府にゼロから考え直していただくよ うな努力をしていく。

私たちの仕事は郡市区医師会、都道府県医師 会、この日本医師会と3 層構造になっている。 日本の医師会活動で、この3 層構造は必要なこ とだと考えている。地元の学校医や産業医、予 防注射、休日診療や時間外診療、2 次救急、慢 性疾患の病院、診療所の連携などを地域の医師 会がやっている。県の医師会ができないことを 地元の医師会が住民の方々と接しながら活動し ており、郡市区医師会は絶対に必要だと思う。 また政治の実権が地方に分散され、県全体の医 療、広範囲のいろんな保険者団体も県単位にな ってきていることから、そこでの交渉や、県政 での保健衛生の顧問や委員として活躍するのは 都道府県医師会だろうと思っている。日医は、 県や郡市区医師会のすべての動きを勘案して、 現実に先生方の医療活動、社会福祉活動を保障 していくよう大きな団体にならなくてはならな い。そのために政府や担当課などとの交渉は重要だし、政府に設置された審議会などの場でき ちんと意見を述べていくことが日医の仕事だと 思う。確かに、現在の日医は一般会員の声が届 かない。今後は、日医は1 人1 人の会員によっ て構成されているという原点に戻り、1 会員の 声も大切に聞くという医師会になっていかなく てはならないと思っている。

医療費や医療制度の改革もそうだが、今まで は示されて決定されたことにのみしか反論でき なかった。これではいつまでたっても、私たち の意見は国に反映されない。政府案を出す前に 相談を受ける医師会にならなくてはならない。 そうなることで、私たちが専門家集団として国 民のための医療を考えた上での判断でもって、 政府に助言ができるのではないか。

その後、横倉副会長から平成21 年度の会務 報告が行われた後、引き続き議事3 議案につい て審議されると共に、ブロック代表質問(8 題) 及び個人質問(11 題)についての質疑が行わ れ、日医の組織改革や日医役員選挙の見直し、 公益法人制度改革に係る質問が相次いだ。

日医の組織改革については、原中会長は、急 激に勤務医が多くなった時代に対応できていな い。勤務医が積極的に日医に入ってこなければ 全ての医師の意見ということにはならないとい う基本的な考え方は重要であると述べ、すべて の医師が参加できる組織づくりを喫緊の課題と 位置づけた。また、中長期的な展望として、医 師免許を持った人は全員医師会に入るといった ような制度ができないかとういことを考えてい きたいと述べた。その他3 層構造の変革を臨む 声に、現在の3 層構造を崩すことが必要とは思 わない。県医レベルで勤務医の直の意見を聞く 機会を持たなければならないと考える。代議員 メンバーの比例の問題もあると述べた。また、 三上常任理事は、勤務医の目を日医に向けても らうために、積極的に勤務医向けの事業を行 い、関心を高め、入会を促進したいと述べ、一 方、医師会の入退会などの手続きの煩雑さが入 会を阻害していると指摘、手続きの簡素化に取 り組んでいきたいと述べた。

日医役員選挙の見直しついては、会長選挙に ついて全会員の直接選挙の提案があり、中川常 任理事は、10 年前に「未来医師会ビジョン委 員会」の委員長として日医の会長選挙をインタ ーネットを利用した直接選挙にすべきと提言し た。その考えは今も揺らいではいないと述べ、 医師会組織強化につながるような選挙制度を実 現していくため、「定款・諸規程改定検討委員 会」を今期も会内に設置し、会長の直接選挙を はじめ、新公益法人制度の下での選挙制度その ものの在り方について特化した議論を行ってい きたいと述べた。また、原中会長も会長選挙を 会員の直接選挙とすることに前向きな姿勢を示 した。

公益法人制度改革については、今村聡常任理 事は、会員のために実施している医賠責事業と 年金事業の2 つが新法人移行への大きな課題と なっている。公益社団法人か一般社団法人のど ちらの法人形態を選択するかについては、最終 的には代議員会に諮ることと考えている。現時 点で、この2 つの事業を除いては公益法人認定 のための経理的、財務的要件はクリアしてい る。医賠責事業については、内閣府担当官から 助言をいただいており、多少の技術的工夫が必 要だが解決できると思うと述べ、年金事業につ いては、支出が多額な公益事業と考えられるた め、現時点では50 %という公益目的事業比率 をクリアするのは困難としたうえで、ガイドラ イン見直し或いは新法人移行経過措置延長が最 も現実的との見解を示した。

その他、会長と副会長3 人の協調を確認する 追加質問が出され、議事運営委員会で追加質問 が認められ、原中会長は、副会長3 人が推薦候 補以外から選出されたことに驚いた。必至にな って努力する。今は話し合う中で不自由は感じ ていない。今まで以上に議論して理解を深めた い。心配はいらないと述べた。横倉副会長は、 多少の意見の違いはあったが、国民医療を良く したいという大筋のところは変わらない。選挙 が終わればノーサイドであり、会長と一緒に一生懸命やりたいと述べた。羽生田副会長は、原 中会長とは以前からお付き合いがある。会長の 所信表明や答弁内容を聞く限り、意見の違いは 全くないと思っていると述べた。中川副会長 は、会長選挙の時点で、副会長候補を辞退しな かったのは、日本の医療のために働くという信 念が揺るがなかったからと説明し、全力で会長 を支えると述べた。

議 事

第1 号議案 平成21 年度日本医師会会費減免 申請の件 

 羽生田副会長より資料に基づいて提案理由 の説明があり、賛成挙手多数により原案どお り承認された。

第2 号議案 平成22 年度日本医師会事業計画 の件

第3 号議案平成22 年度日本医師会予算の件 追加議案

第4 号議案 日本医師会役員功労金支給の件

上記2 号議案、3 号議案については関連事項 として一括上程され、第2 号議案について横倉 副会長より、第3 号議案にていては羽生田副会 長よりそれぞれの提案理由の説明が行われた。

また、羽生田副会長より追加議案として日本 医師会役員等功労金支給の件について、今回退 任された前役員の先生方への功労金支給につい ての提案理由の説明があり、賛成挙手多数によ り原案どおり承認された。

なお、議案の審議について、議長より、第2 号議案、第3 号議案の一括審議を付託するた め、また代議員会閉会中も日本医師会の財務に 係る審査を適宜行えるようにするため、代議員 の任期と同じくする財務委員会を設置したい旨 提案され、賛成多数で承認され、財務委員15 人が指名され、別室にて審議が行われた。

その後、財務委員会の三宅財務委員長より、 第2 号議案、第3 号議案について、それぞれ担 当理事から説明を受け、慎重に審議した結果、 全会一致で原案どおり承認した旨の報告があっ た。以上の報告を受け、本会議における評決を 諮ったところ、賛成起立多数により、原案どお り承認可決された。

最後に、原中会長から閉会の挨拶が述べら れ、代議員会は閉会した。

印象記

小渡敬

副会長 小渡 敬

先日、日本医師会定例代議員会が日本医師会館で開催されました。周知の様に今回の代議員会 は、日本医師会長はじめ副会長や、常任理事を選ぶ選挙でありました。朝早く会館に着くと、玄 関前では各会長候補の選対の先生方がビラ配りをしており、異様な緊張ムードが漂っていました。 代議員会では、議長・副議長の選出はスムーズに行われましたが、代議員の定数問題で、大阪が 欠員で提出したにも関わらず、予備代議員を出席させた為、これを認める認めないで、定数確認 にかなりの時間を要しました。その後、会長選挙が行われ、緊張と静寂の中、原中先生が次期会 長と決まった瞬間、議場内に歓喜とどよめきが聞かれました。九州ブロックは森先生を支持しておりましたが、13 票差で惜敗しました。午後は、副会長選挙と常任理事選挙が行われました。副 会長選挙では、原中陣営が推薦した候補は一人も当選せず、唐澤・森陣営が推薦した横倉先生と 中川先生が早々と当選を決めました。最後の一人は独自に立候補した羽生田先生が選ばれ、その 時にはどよめきが起こりました。続いて、常任理事は副会長選と同様、唐澤・森陣営の推薦され た先生が多く当選し、どの陣営にも属しない保坂シゲリ先生(女性医師部会委員長)が当選した のは意外な結果でありました。

今回は、キャビネット制を取っていない為、執行部が会長と副会長で、ねじれた結果となりま した。会の運用面ではこれまで以上の議論が必要になると思われます。しかし、前回の様に選挙 後に各陣営間でシコリが残る可能性は解消されると思われます。

最後に、選挙方法に関しては、すべて代議員一人一人が壇上に上がり、投票用紙に記載し、そ の後壇上で開票が行われる為、常任理事選挙の様に10 名連記で行う場合は、投票や開票作業に長 時間を要しました。これに関しては、各代議員からも選挙方法を見直すべきだとの意見が多く聞 かれました。

印象記

真栄田篤彦

常任理事 真栄田 篤彦

2 年に一度の会長選でしたが、今回の前哨戦は昨年8 月末の衆議院選挙での民主党が政権を取 ったことからに始まったといえます。衆・参議院選挙で日医のこれまでの支持政党(自民党)が 大敗を喫してしまい、民主党を支持していた茨城県医師会原中勝征候補の動向が脚光を浴び、一 筋縄では行かなくなっていました。政局が転換したことで、新たな政権政党を支持した茨城県医 師会は政権に直接太いパイプを持っているとアピールして日医会長選に名乗り上げています。こ れまで、日医のスタンスは自民党支持を継続してきたので、衆議院選挙での大敗がそのまま、現 執行部も弱体化へと加速したように見えました。そして九州ブロックからの代表である竹嶋日医 副会長の辞職と、米盛日医代議員会副議長の辞職とで、日医は更に困難な状況になったのかもし れません。九州医師会連合会では、次期会長を誰に決めるかで非常に苦労したと思います。九州 は一つとしてこれまで一致団結してきたのですが、時代の流れなのかも知れません、変革の時代 なのか、一本化へは容易ではなかったと思います。日医の在り方・方向性などに関しては、衆議 院選挙の結果の影響を受けるべきではないと私は考えていたのですが、しかし国選と同じ方向へ と転換した結果になり、356 票のうち森洋一氏118 票、唐澤人氏107 票、原中勝征氏131 票と なりました。唐澤人候補と森洋一候補が原中候補と対立する構造で最後まで選挙活動が続き、 漁夫の利を得たのが原中候補でした。

次いで副会長選に移り、従来のキャビネット方式ではなく、投票方式であったので、非常に興 味深い結果になりました。北海道ブロックからの中川俊男氏174 票、九州ブロックからの横倉義 武氏173 票、単独候補の羽生田俊氏165 票で当選しています。肝心の原中氏推薦の2 名・大阪ブロックの松原謙二氏151 票、関東ブロックの吉原忠男氏122 票で落選となり、いわゆる「ねじれ 現象」の結果となりました。

更に常任理事10 人の選挙になり、こちらも原中氏単独推薦は2 人、唐澤氏又は森氏推薦7 人、 単独立候補1 人が当選し、副会長選と同じようにねじれた結果でした。九州ブロックからは今村 定臣(長崎)、藤川謙二(佐賀)の二人が当選しており、今後の活躍に期待しています。

日医の選挙は上記のような結果なった今、今後の日医の方向がどのように行くのか、是非とも 全国の日医会員の意見を集約して頂き、日本全体・地域全体の医師会が発展し、疲弊している 個々の会員にも納得のいけるように、日医執行部が活躍して頂きたいと願っています。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

代議員代理で臨んだ定例代議員会は、初日が選挙で、二日目が会務報告・協議事項そして代 表・個人質問であった。選挙の前日の夜から、九州医師会連合会の代議員は新橋のホテルに集ま り意見交換会を行い、各陣営から、会長・副会長候補者を初め、立候補者からのアピールを受け た。1 人で来られた立候補者もいた。翌日早朝から、定例代議員会の前に、九州医師会連合会の 集まりがあり、会長候補者、副会長候補者、常任理事候補者の推薦についての方針が提案された。 最後まで悩んだ会長選挙であったが、原中勝征先生の会長就任を心から祝福したいと思う。さて、 原中陣営外の3 人の方が副会長になられ、その内1 名は前執行部の一員で独自の立候補で当選さ れ、ねじれた執行部と危惧された。しかし、会場から新副会長3 名の所信表明を要望された折り、 筆頭副会長の横倉義武先生は多少の意見の違いはあったが、国民医療を良くしたいと言う大筋の ところは一緒で、選挙が終わればノーサイドであり、会長と一緒に一生懸命やりたいと述べた。 羽生田俊副会長は、原中会長とは20 年来のお付き合いがありよく存じており、会長の所信表明や 答弁内容を聞く限り、意見の違いは全くないと思っていると述べていた。中川俊男副会長は、会 長選挙の時点で、副会長候補を辞退しなかったのは、日本の医療のために働くと言う信念が揺る がなかったからと説明し、全力で会長を支えると述べていた。小生は、3 名の副会長の所信表明 の際、一致団結して日本医師会運営にあたる心構えを聞き安堵した。常任理事は力のある素晴ら しい方が各陣営からバランス良く選出され、また元気で行動的な、日本医師会男女共同参画委員 会委員の保坂シゲリ氏も選出されたことは心より喜びたい。

原中会長は強い医師会を作るにはどうすれば良いか、開業医8 万人、勤務医20 万人の日本医師 会をまとめて、政治に対して専門家集団として物が言える医師会にならなくてはいけないと述べ ていた。また、今のように経済が優先されて、本当の医療が後手に回されているような環境は絶 対し見直さなければならないし、良い医療制度ができてこそ、国民の安心と安全が確保できる。 日医は、県や郡市医師会のすべての動きを勘案して、現実的に先生方の医療活動、社会福祉活動 を保障して行くような大きな団体にならなくてはならない。そのために政府や担当課などとの交渉は重要だし、政府に設置された審議会などの場できちんと意見を述べて行くことが日医の仕事 だと思うと述べた。医療費や医療制度改革においても、政府案を出す前に相談を受ける医師会に ならなければならない。そうすることで、専門家集団として「国民の医療を」考えた上での判断 をもって、政府に助言ができると力強く述べていた。

代表質問は8 題、個人質問は11 題で、日々の診療現場の問題、医療財源、日医の会務・組織運 営における諸問題と若き勤務医の医師会への参加と発言の場(代議員会)の確保、公益法人化、 外因死の警察届け出問題、ワクチンの無料化、医師会の治験事業、在宅医療の推進等の多くの質 問がなされた。代表質問の中で強く印象に残ったのは、栃木県より「地域医療再生へ向けての日 本医師会の考え・行動」で、医療の原点は地域医療にあり、危機に瀕している地域の医療再生に は、2 次医療圏での医療供給体制の整備が求められており、長期的なビジョンに沿った地域医療 再生計画を県行政に提案したが、行政の壁を越えることが出来なかった。国政レベルの問題であ ろうが、地域医療の再生に向けて、日医はどのように考え、今後どのように行動して行くかの問 いがあった。新執行部より、民主党政権は医療、医療制度に十分に精通していないのが現状で、 今後、いろいろ提言して行きたい。人口のみならず面積をも加味した医療圏を地域医療計画の中 で再検討し、地域医療対策協議会の活性化、地域医療ネットワーク充実等を、また、財源は企業 負担の保険料増と税金を考えており、個人負担は現行の3 割負担を2 割に提案したいと述べてい た。医師の地域偏在・診療科の偏在の改善は国家レベルで対応するのか(日医は国家の強制的関 与を望まない)、都道府県レベルで創意工夫するかが焦点であろう。日医は後者を提案している現 状を見るに、県行政に大きな壁があろうとも、都道府県での更なる自助努力が必要とされるので あろう。財源問題は、どうしても国家レベルの問題であろう、すなわち政治の問題で、国民の負 担少なくして高福祉は厳しい事を国民に問い協力を得ることが国政の仕事ではないだろうかと思 慮する。

常任理事の選挙の開票に1 時間45 分近くもかかり、その間に日医会館のすぐ隣にある六義園を 訪れ、しばし、巨大なしだれ桜の姿を堪能した。日医会館を出入りするようになってから何年た ったのだろうか、医師国保を担当していた時もあったので、理事になってすぐの頃からとすると 10 年以上も通っていることになるが、六義園に入ったのは初めてである。300 年以上も保持され ている名日本庭園のように、日本医師会も多くの苦難を乗り越えて「国民の保健・医療のために」 そして「会員のために」まい進していただきたいと切に思う。