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第1 回沖縄県医師会県民健康フォーラム
誰もがなりうる『うつ病』
〜気付きの大切さと関わる勇気〜

玉井修

理事 玉井 修

平成22 年2 月6 日13 : 30 よりパシフィック ホテルにおいて第1 回沖縄県医師会県民健康フ ォーラムが開催されました。え?どうして第1 回?という声も聞こえて来そうです。実はこれ までの県民公開講座はずっと沖縄タイムスとの 共催でありましたが、今回の県民健康フォーラ ムは琉球新報との共催という事になります。最 近では多くの健康講座が開催されるようになり ましたが、500 〜 1,000 名を動員する様な大き な健康講座は沖縄県医師会がしっかりとリーダ ーシップをもって開催していきたい、そして県 民の多くに共感できる形で開催していきたいと いう思いで今回は琉球新報との共催という形を 初めてとりました。タイムスさんとのこれまで の協力関係を維持しつつ、新報さんとの連携も しっかりやっていきたいという事なのです。会 員の皆様是非今後とも県民公開講座と共々、県 民公開フォーラムへのご理解をなにとぞよろし くお願い申し上げます。

さて、今回初めての県民公開フォーラムはう つ病を取り上げました。開催が企業決算と自殺 者数のピークが重なる2 月という年度末に差し かかる時期、平成21 年の年間自殺者が過去最 高の406 名に達したという報道がなされる時期 に開催された事もあり、会場のパシフィックホ テルはこれまでにない熱気に満ちておりました。 専門領域の先生方の心に響くようなご講演のあ と、フロアから寄せられた質問は心から絞り出 すような痛々しい質問でした。血の滲むような 質問が寄せられたこの県民公開フォーラムはそ れだけで成功だったと思いますし、今後の課題 に関しても多くの事を考えさせられました。

パシフィックホテルで開催した今回の県民公 開フォーラムにおいて、開演の1 時間前からず っと会場の前の方で車イスの女の子がじっと私 たちの講演会を聴いていました。僕が傍を通る たびにその女の子は僕に会釈をしています。20 代前半ぐらいの女の子ですが、車イス生活はか なり長そうな感じでした。沖縄県医師会の主催 する公開講座を聴きたくて努力をしてこの場に いらっしゃっているのでしょう、僕が傍を通る たびに恥ずかしげに会釈をします。この仕事の 大切さがここにあるような気がします。

講演の抄録

誰もがなりうる『うつ病』
−気付きの大切さと関わる勇気−
近藤毅

琉球大学医学部高次病態医科学講座精神病態医学分野教授
近藤 毅

このたび、沖縄県医師会の主催により、“誰 もがなりうる『うつ病』−気付きの大切さと関 わる勇気−”をテーマに県民健康フォーラムを 開催することとなりました。うつ病は世界的に も全人口の5-10 %の有病率があり、誰もがな りうる“ありふれた病気”ですが、一方で、自 殺という形で命を落とすかもしれない危険性を 常に秘めています。早期に発見・受診して、医 師の診断を受けたならば、多くの人が治療につ ながるはずですが、実はその過程で以下の4つ の障壁が存在します。

第1 は、うつ病は自分で気付きにくい病気で ある点です。初めは頭重・疲労・食欲不振・不 眠などのからだのサインが発せられます。た だ、この時点では自分の中にいつのまにか起っ ている気持ちや考えの変化を自覚しないことが 多いのです。我慢を続けても、休息を取って も、なかなか回復しない体調不良が2 週間以上 続くのは普通の事態ではありません。その際に は、体調のせいばかりにせず、うつ病も疑って みてください。

第2 は、うつ病は相談しにくい病気である点 です。多くの方々がつらさを自分ひとりで抱え てしまいます。これは、周りに心配を掛けたく ない気持ちに、うつ病で自分を責め、恥じ入る 気持ちが加わって起こるようです。難しいとは 承知していますが、ここで必要なのは伝える勇 気だと思います。一人で悩まずに身近な人たち に打ち明ける行動こそが、真の解決の道につな がると信じています。

第3 は、うつ病の方には声を掛けづらいと感 じる方が多い点です。元気のない姿に気付いて はいても、「何と切り出せばよいのか」「対応に 自信がない」という思いが率直な所でしょう。 特に、一般の方々には、「死にたい気持ち」を どう扱うのか戸惑いも多いと思います。本フォ ーラムでは、「勇気を持って、どう関わるか」 を中心に、皆さんと対応への理解を共有したい と思います。

第4 点として、精神科には受診しにくいとい う一般心理が挙げられます。われわれも精神疾 患への偏見是正に向けて啓発活動を行ってきま したが、うつ病になったとしてもかかりつけ医に診てもらいたいと考える方は少なくありませ ん。今、沖縄県では、一般医の先生方からも、 うつ病を見逃さずに迅速に対応していこう、と いう新しい動きが出てきました。それらの活動 状況と精神科との診療連携の流れについてもお 知らせいたします。

あなたの周りの大切な人たちを守るため、一 人ひとりが命をつなげていきましょう。

身体のサインから気づく“うつ病”
仲本晴男

沖縄県立総合精神保健福祉センター所長
仲本 晴男

1.うつ病は誰でもなりうる

うつ病は平成20 年には全国で患者数が100 万人を超え、さらにWHO の将来予測によると 2020 年には世界第2 位の病気になるという。 発病する年代も小学校低学年から、80 歳を超 える高齢者まで幅広く、最も多いメンタルヘル スの病気ということができよう。

一方、ごく普通に誰もがなりうる病気である にもかかわらず、高血圧や糖尿病などの内科疾 患に比べると、国民の理解はまだまだ乏しいの が現状である。

2.うつ病とは?

うつ病は一言でいうと、「ストレスのため脳が 疲れ、心身のエネルギーが枯渇する病気」とい うことができる。そのため心の症状である考え事 や判断ができなくなり、身体の症状である多彩な自律神経症状が出現したり活動できなくなっ てしまう。脳内の誰でも持っている神経ホルモ ンのうち、うつ病はセロトニンやノルアドレナリ ンが活性化できなくなって発病する。その神経 ホルモンを補うのが抗うつ薬である。(図1)

図1

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うつ病のおもな症状のうち睡眠障害や自律神 経症状、食欲低下はもっとも多い症状の一つだ が、うつ病以外の精神疾患でもよく起こる症状 である。(図2)うつ病に特有な症状は、憂う つ気分と興味・喜びの喪失であり、どちらか一 つがないと診断基準ではうつ病といわない。

図2

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3.うつ病は「気のせい」とか「なまけ」と誤 解されやすい

うつ病は「気のせい」と誤解されることが多 い。うつ病の初期によく出現する多彩な『身体 のサイン』すなわち自律神経症状は、内科や外 科を受診して採血やX 線など諸検査をしても異 常値がでない。そのため、「気のせい」と言わ れたり「更年期障害」、「自律神経失調」と言われることが多いためである。その結果、初期段 階で治療が中断してしまうことになる。(図3、 図4)

図3

図3

図4

図4

「なまけ」と誤解されやすいのは、うつ病の 中心症状である「意欲低下」や「集中力低下」、 「判断力低下」などの軽い症状は、ほとんどの 人が経験しているため、病気の症状としては認 知されにくいことによる。(図5)

図5

図5

4.身体のサインからうつ病に気付く

このような誤解のため、うつ病の方の3/4 は 医療機関で治療を受けていない(川上、2002)。 そして、うつ病の初期の『身体のサイン』のた め60 %は最初に内科を受診する。自殺予防は 国民的課題であるが、うつ病は自殺の最大の原 因であり、自殺者の45 〜 70 %にはうつ病があ る(高橋、2006)と言われている。つまり、自 殺予防の観点からも、うつ病を早期に治療に導 入するために、『身体のサインからうつ病に気 付く』ことが大切である。(図6)

図6

図6

5.うつ病のどの時期にどの医療機関を選ぶか?

うつ病の治療と回復は、急性期の十分な睡眠 と休養を必要とする時期と、再適応への援助を していく亜急性〜慢性期に分けることができ る。(図7)治療上の役割分担という点では、 一般かかりつけ医はうつ病の病像が軽度で安定 している患者さんを診ることが求められる。抗 うつ薬に反応せず治療抵抗性があったり、病状 が遷延化したり、再発したり、不安焦燥感が強いときなどは精神科専門医の治療を要すること になる。さらに自殺リスクが高かったり、逸脱 行為や躁状態が出現したり、昏迷状態の場合は 精神科病院への入院も想定した役割分担が必要 になる。うつ病診療において、そうした見立て ができる知識と技術は一般科においても必要で あり、その観察・吟味期間はおおよそ3 〜 6 ヶ 月が妥当ではないかと考えている。

図7

図7

うつ病に対する印象と対応を変えてみませんか?
薬師崇

琉球大学医学部高次病態医科学講座精神病態医学分野助教
薬師 崇

みなさんは、うつ病にどのような印象をお持 ちでしょうか。5 人に1 人が生涯のうち一度は かかる、誰もがなりうるごくありふれた病気と いえます。ゆううつな気持ちというのは誰でも 経験したことがあると思います。うつ病とは、 その「ゆううつ」がひどくなった状態といえま す。「気分が落ち込む」「やる気が出ない」「眠 れない」「食欲がない」「体調がすぐれない」な どのうつ病の中心的な症状も、自分が「ゆうう つ」になった時に体験したものの延長線上にあ ると考えれば、理解しやすいと思います。「ひ どく」とは「日常生活が困難になるくらいの 『ゆううつ』が長く(2 週間以上)続く」状態と いえます。

初期の段階から正しく治療を行えば、ほとん どの人が治ります。ただし、治療をしないで放 置すれば、「いつもの冷静な判断力がなくなり、事実上ありえないことを心配したり、自殺まで 考えてしまう」こともあります。過度に心配す る必要はないのですが、決して簡単な病気では ないといえるでしょう。

一方、うつ病であることを自分自身で気づく ことは意外に難しく、わかったとしても病院に 行くことに抵抗感を感じることが多く、周囲に 相談しようにもまだまだ偏見や誤解が少なくな いのが現状です。私たちが行った一般の方々へ のアンケート調査でも、うつ病の印象について は、「恐い」「恥ずかしい」「迷惑をかける」「性 格の弱い人がなる」などといった否定的なとら え方が多く見られました。さらには、うつ病に なったとしても「自分で気づくことができる」 「自分でなんとかしたい」「カウンセリングで治 したいし、薬は飲みたくない」といった回答が 多くみられました。

啓発講演を行うとこれらのうつ病への偏見や 誤解の多くは改善されますが、「うつ病になっ たら皆に迷惑をかける」という印象はなかなか ぬぐうことができませんでした。医師である私 でさえ、風邪を引いて仕事を休む時に「皆に迷 惑をかけるなぁ」と思うことを考えると、一見 ありがちな考え方かもしれません。ところが、 海外からの留学生に話を聞くと「アメリカで は、風邪を引いたのは自分の責任ではない、う つ病も同じである、と合理的に考える人が多 い」と話していました。この違いは、個人より も調和を重んじる日本独特の「恥の文化」が大 きく影響していると考えられます。

うつ病になった方の周りにいる人々は「悩み を抱え込まず、打ち明けてもらい、共に分かち 合いたい」と願っています。まずは、私たち皆 が、うつ病に対する偏見や誤解から自由になる ことが、真の意味での予防の始まりと言えるで しょう。ぜひ、ご自身がうつ病になった時には 勇気をもって周囲に打ち明けていただき、病気 を自覚できないでいる方たちには周囲の方から 気づいてあげて、援助の手を差し伸べることが 重要であると思います。

“死にたい気持ち”を抱える人への関わり方
田中治

琉球大学医学部高次病態医科学講座精神病態医学分野助教
田中 治

みなさんこんにちは。

現在、日本では、自殺が大きな社会問題にな っています。1998 年以降、1 年間に3 万人以上 の方々が亡くなられ、沖縄県でも年間4 百人ほ どの人が亡くなられています。自殺は、身近な 人にも大きな衝撃を与え、終わることのない精 神的な苦しみを残します。また、社会全体にと っても大きな損失となります。自殺は、多くの 要因が重なることで起きることが様々な調査で 解明され、失業、リストラ、負債、離婚などの 社会的・経済的・家庭的困難が精神的負担を引 き起こし、それらに引き続いて起るうつ病が最後の一押しを加えることで起きてしまうことが 明らかになってきました。(図1危機の進行度)

図1

図1 危機の進行度(自殺実態白書2008 より改変)

死にたいという気持ちを抱いている人は、た だ死にたいと考えているわけではなく、誰かに 打ち明けて助かりたい、でも打ち明ければ迷惑 をかけるのではないか、説教され批判されるの ではないか、といった迷いの中で揺れ動き、と まどっています。そのため、身近な人が死にた い気持ちを抱いていることに気付いてあげる必 要があり、気付いた人は率直に真摯な態度で尋 ね、傾聴し、その苦しい気持ちに共感を示し、 そして苦しみを受容するとともに、あなたにで きる具体的な解決策を提言してあげることが必 要です。しかし死にたい気持ちを打ち明けられ たときには、多くの人はつい説教をしたり、批 判したり、楽観を押しつけたり、また話をそら そうとしがちです。これらの態度をとられると 打ち明けた人は拒否されたと感じてしまい、そ れ以上話そうとはせず、黙って自殺を決行して しまうかもしれません。

講演では、もし身近に、死にたいという気持 ちを抱いている人がいたならば、その自殺の危 険度・切迫度を知るために、具体性・計画性を 持っているか、どこまで積極的に考えている か、自殺の衝動を抑制できるか、これまでも既 往があるのか、などの点に ついて具体的な尋ねかたを 提示いたします。

東尋坊で自殺予防活動を されている茂幸雄さんは、 岩場の先端で海をジーと見 ている人は、「自殺したらあ かん」と言ってくれること を待っている、だから言葉 をかけることは決して怖く ない、まるで旧友に会った ような気分になると話され ています。ここまで来るの は大変だったでしょう、こ の後どうされますか、宿は 取っていますか、と声をかけ、そのあとで、今まで苦しかったでしょう、 と慰めの言葉を話し、三人寄れば文殊の知恵、 一緒に解決法を探しましょう、と提案するそう です。このような率直な気持ちと言葉をかける ことが、死にたい気持ちを抱いている人を救う ことにつながる、ということを提案したいと思 います。

かかりつけ医の“うつ病”診療への取り組み
田名毅

首里城下町クリニック第一院長
田名 毅

私は内科を専門とした開業医であり、地域に おいてかかりつけ医(プライマリ・ケア医)と して日常診療にあたっている。一般的には内科 医とうつ病というとあまり関係がないのではと 思われがちだが、図1 のようにうつ病の患者が まず受診する診療科は内科が最も多いことがわ かっている。これは精神面の訴えよりも、不眠 症、食欲低下、頭痛などの身体の症状を理由に 受診することが多いためと考えられている。当 院に通院していた患者さんの中にも残念ながら 自殺された方がいるが、共通していた症状は不 眠症であった。また、あまり知られていないの が生活習慣病や脳卒中、狭心症、心筋梗塞の患 者さんにうつ病ないしはうつ状態になっている 人が多いということだ(図2)。このようにかか りつけ医はうつ病とのかかわりが大きいという ことが啓発されており、医師会や県はかかりつ け医を対象にうつ病の対応能力を向上させる研修を行うようになっている。

図1

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図2

図2

うつ状態を早めに気づくための当院の取り組み

(1)受付、問診と他のスタッフが患者さんの 変化に気を配る

(2)診察室を出る前に「他に困ったことは ありませんか?」と聴く

(5)ストレスによりうつ状態にあると判断し た場合は、自殺の危険度を確認する

(3)サポートが必要と判断したときは当院の 「町の保健室」の保健師につなぐ

(4)状態によっては心療内科、精神科に紹介 する

(5)啓発活動としてうつ病、自殺をテーマにし た講演会の開催、院内掲示による広報活動

保健師の面談からは多くの情報が得られる。 配偶者や肉親の死を受け入れられない話、高齢 夫婦が同居している無職の息子の将来を心配す る話、親の介護で疲れ果てた娘・嫁の苦労話、 高齢の方の死にかた(死生観)の相談、たくさ んの子供の世話で神経症になった方の相談な ど、そこには内科疾患に関する医師の診察では はかり知ることができない患者さんの状況があ る。図3 のような自殺のプロセスがあるとする と、これらの話はそれぞれのパーソナリティー やライフイベントからうつ状態になる前の段階 をみていると考える。サポート不足の状態が持 続しうつ状態、うつ病になると自殺の危険性が 増すわけであり、そうなる前に図4 のような関 わり方をかかりつけ医が行うことでうつ状態や うつ病になる人を減らし、ひいては自殺予防の 取り組みになると考える。

図3

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図4

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座談会〜県民健康フォーラムを終えて〜

○玉井理事 本日は600 名の参加者という凄 い数でした。かなり辛辣な質問が多くどうして 良いか困ったところもありました。先ずお一人 ずつご感想を伺いたいと思います。

○仲本先生 まずは今日の質問の束を見て非 常にびっくりしました。非常に辛辣な質問もあ るかもしれませんが、皆さん真剣な表情をして いました。普通は研修ですと寝ている人がいる んですが、先ずそういう人はいませんでした。 おそらく自分の家族がうつであるとかという関 係者が多いのではないかという印象を持ちまし た。そういう情報を必要としているということ を今日講演しながら感じました。このような機 会を是非また作って頂きたいと思います。

○薬師先生 仲本先生と同じ意見なんです が、精神科、うつに関することは聞きたいが 中々そういう場が無いのだろうと、今日の参加 者の数を見て感じました。また、私の職場の看 護師さんや保健所の方も新聞の小さな記事を見 つけて「今度講演されるんですね」という言葉 をかけてもらい、相当関心が高いと感じました。 先ほどのセッションの時に言えなかったんです が、ご家族だけが精神科や保健所に受診したり、 相談することも可能です。それを何度か繰り返 していくうちに、病院に行きたがらない本人を 受診につなげられることがよくあるので、是非 家族だけでも良いので精神科外来、保健所、各 種関係機関に相談してもらいたいと思います。

○田中先生 やはり皆さん辛辣と言います か、少し批判も込めたメッセージ、不満という ものを感じざるを得なかったですね。私もうま く答えられなかったと思うんですが、精神科も何もいらないよというご質問があった点につい ては、真摯に受け止めるべきじゃないかと思い ます。ではどういう形で一般の方々にお話がで きるか、私たちが何ができるかということを見 つめ直すいい機会に私自身なったと思います。 ただ待っているだけじゃなく、こちらかも話し かけていく、伝えていくことがこれから必要で はないかと本日の皆さんの姿勢、ご質問から感 じました。

○玉井理事 これまでやってきた講演会等と 違う雰囲気は感じましたか。

○田中先生 全然違いますね。何か皆さん殺 気立っているという感じもしました。

○近藤座長 そうですね。5 年前にやったと きと全然違います。今日はもっと凄い殺気があ りました。これは危険ですよね。

○田名先生 近藤先生から振っていただいた 質問の中に、みんなどこに行っていいか分から ないというご意見がありましたが、やはり私達 かかりつけ医や非専門医の存在は大きくなりま す。今回、沖縄県も自殺対策強化事業として睡 眠キャンペーンを行っていることはすばらしい ことですし、そういった形で医療者側ももう少 し意識をもってやっていくことが大事だと思い ました。医療従事者も医師もゆっくり話しを聴 くことが大事なのですが、まだ認知されていな いように感じています。医師・コメディカル全 体でうつを見つけていく努力をすることが今後 も必要だと感じています。

○近藤座長 今回は一般の方が積極的に気づ いて、あるいはご家族の方が気づいて受診にむ すびつけられるよう呼びかけを行ったんですが、 むしろ向こう側から押されてきたという感じを 受けました。そうした場合、診療の質はどうな っているか、診療体制に問題はないか、連携は どうなっているかといった非常に要求のハード ルが高いと感じました。ひとつには沖縄をとり まく様々な状況が悪くなっていることから、う つ自体も増加していることもあるし、自殺は正 しく人数的にワーストを更新してしまった状況 にあることから、皆さんがそれぞれ非常なスト レスを抱えていらっしゃる状態にあります。ま た、大きな時代の流れで見ると人よりも自分が 中心である自己中心的な考え方を持つ方が多く なってきていること、それと共にそういった人 たちがクレームを出し要求を固執するという方 向にきています。ですから、これからは古典的 なうつ病モデルで説明すること自体が役に立つ のかどうかということも含めて考え直し、いま だにメランコリー親和型のうつ的な治療だけを しているのであれば、この先早々に時代遅れに なって、かみ合わない治療になり、不満を感じ させ、矛盾が一向に解消されないままに啓発活 動をおこなっていくと逆に不満を引き寄せる形 の講演等になってしまうことが起こりえます。

そういう時代的背景をふまえた現代型のうつ に対してセンシティブな対応を求めることを真 剣に考えなければいけないと感じております。 僕らはそういう心構えは出来ているつもりでい たんですが、巷ではやはりそこまでいっておら ず、不満のマグマが渦巻いていると強く認識し ました。

○宮城会長

宮城会長

やはり専門家の質の 向上も当然です。精神 科といっても必ずしも うつに長けているとは 限らないわけですので、 そのレベルアップを図 らなければいけません。 また、一般のドクターもきちんと対応できるだ けの情報を持って連携を強化していかなければ いけないと感じました。





○奥村福祉保健部長

奥村福祉保健部長

本日は非常に参加者 が多かったということ と、先生方のお話が非 常に分かりやすく勉強 になりました。近藤先 生もおっしゃっており ましたが、自殺が増え てきて、行政の取り組みに求めるものも非常に大きくなってきていると思います。特に福祉医 療関係に対する要望が大きく、それにどう対応 していくかが大きな課題となっております。た だ、その症状に気づいて、本人と接していきな がら治療につなげていける状況を、いかに身近 なものにするか、また、つないでいく時にどこ につなぐか、さらにつないだ先がきちんと対応 できるかということを私共が力を入れていかな ければいけない点だと思います。現在、民生委 員など、身近な相談者を増やす研修を行ってお り、その方達が専門的な相談を含めていかにこ の人の悩みを聴いてきちんとつないでいける か、また、その人の要望に応えられる体制づく りを充実させていきたいと思っております。

先ほどお話があったように、精神科医とかか りつけ医のネットワーク、行政と医療機関との ネットワーク、相談機関とのネットワークが非 常に大事だと思いますが、簡単にできるもので もないので、みんなで地道に取り組んでいかな ければいけないと思います。

○芦原広告局長

芦原広告局長

本日はどうもお疲れ 様でございました。弊 社と沖縄県医師会とは 何度もこういった形で 講演会を開催してきて おりますが、今回年1 回開催の継続的な事業 としての第1 回目ということもあり、参加者数 など心配をしておりましたが、結果的に600 名 の参加者となりました。皆さん熱心に聴かれて おりました。

先生方に感謝申し上げます。本当にお疲れ様 でございました。





当日お越しいただいた方々の中から、数名の方にインタビューをさせていただきましたので、その 中から下記のとおり3 名の方のご意見・ご感想を掲載致します。

本会の広報活動にご協力いただきまして、誠に有難うございました。

インタビュー1):

本日のフォーラムに参加されての感想をお聞かせ下さい。

また、今後の日常生活でどのような事に気をつけようと思いますか。

インタビュー2):

医師会への要望をお聞かせ下さい。

(24 歳・女性・無職)

1)軽度のうつ社会不安障害と最近分かり、今回の講演に来て共感するところがたくさんあり、客観的にも見ることが できた。また、そういう人にはどう対応すべきか、しっかり理解することができた。

2)うつは怠けと思われることが多く、脳の神経伝達物質のバランスが崩れていることを理解していない人がまだまだ多 い。自殺者を減らすためにも、今後もこのような講演会や、ポスター、テレビでの周知を図ってほしい。

(60 歳・女性・主婦)

1)うつ病に偏見を持っていた。自分の年代は精神科に通院となると、どうしても周囲の目を気にしてしまう。自分自 身も、「えっ、精神科に通院?」と思っていた。薬も一度飲むと一生飲み続けるのでは?と思っていたが、フォー ラムに参加して自分の考えを正すことができた。「心のかぜ」の考え方は、心が「軽く、楽」になりました。

2)誰もがなりうる“うつ病”のテーマが、大勢の人を引き付けたと思います。昨年、医師会館での「尊厳死について 考える県民との懇談会」へ参加しましたが、会場が狭く2 ・3 階と分かれました。今日の会場は交通の便もよく、 会場としても適当ではないでしょうか。

(54 歳・男性・自営業)

1)参加者の人数が多いことにびっくりした。この講演が必要とされていることを感じた。うつの症状のある人への気 づきを高め、対処策について注意点を意識しながら対応しようと思う。

2)話し易い、相談し易い医師像の育成や、患者や市民の要望や思いを広く集め、医師、関係者に伝えていただきたい。




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