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平成21 年度第5 回沖縄県・沖縄県医師会連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る1 月28 日(木)、県庁3 階第1 会議室に おいて標記連絡会議が行われたので以下のとお り報告する。

議 題

1.県立病院の医療機能見直し(試案)について(県医師会)

<提案要旨>

平成21 年11 月26 日に、県下の両新聞にて 「県立病院の医療機能の見直し(試案)」が報じ られた。あくまでも、試案の段階の過程である が、その一部は県公務員医師会や県議会の文教 厚生委員に説明されたと聞き及ん でいる。どのような試案か、また、 今後どこでどのような手順で検討 していくかご教示いただきたい。

<医務課の回答>

県立病院の医療機能の見直し (試案)は、「県立病院のあり方に 関する基本構想」及び各市町村と の意見交換を踏まえ策定したもの である。

試案は、まず、立案する上で前提とした県立 病院の役割・機能と政策医療の関係等を整理 し、以下、各病院ごとに見直しについての主な 内容を、また診療所の部分では運営主体の見直 しなどについて記述している。

当該試案は、今後実施する関係機関との調整 のための「たたき台」として策定したものであ り、県としての成案は関係機関との調整及びパ ブリックコメント等の手続きを経て策定したい と考えている。

各病院ごとの見直し(試案)の主な内容は次 のとおり。

<主な意見等>

□試案から成案、パブリックコメント等を実施 する過程で、様々な検討会が持たれるのか。

また、その検討会に医師会も加わるのか (県医師会)。

■特別な委員会等の設置予定はない。医療セン ターの大幅な見直しの内容が含まれているた め、南部地区医師会や那覇市医師会との調整 は必要と考えている(福祉保健部)。

■医療機能となると住民は責任のある発言は出 来ないだろうと思っている。そのため専門家 である医師が中心となって機能の見直しにつ いて案を作成し県民に提示する必要があると 考える。試案は現在の医療の状況を様々な統 計データを根拠に提示している。その前に各 病院の医師へ機能に関する意見を伺い、医師 会等との検討を考えていた。各病院を回って 医師と機能見直しについて意見交換したが、 機能を見直すことそのものについての反対意 見はほとんどなかった(福祉保健部)。

□まず一つ目にタイムスケジュールをお伺いし たい。二つ目は、これまでの独法化の検討の 中で知事は、全適で3 年間対応できなければ 独法化に移行するという結論を行った。その 上で県立病院は走り出している。そのために はスケジュールが必要である。独法化になっ てくると整合性が合わなくなる(県医師会)。

■医療機能の問題は、経営形態の問題とは切り 離して、どのような方向を辿れば良い方向に 向かうかという観点から見直しを行ってい る。県立病院の役割として掲げられるのが、 民間医療機関では困難な医療提供を行うこと と言われているが、果たして役割通りの機能 を果たしているのか、民間医療機関の充実も 含めた観点から見直しを行う必要があると考 えている(福祉保健部)。

■事務的なスケジュールは、24 年度以降、経 営形態の如何を問わず県としての政策医療の 範囲や財政負担の方針などを定める必要があ る。その方針を定めるには半年から1 年、前 景である機能見直しは1 年から1 年半で行う 必要があると考えている。事務方としては22 年度末までに成案を作成したいと考えている が、この問題は行革の重要な要素を占めるの で形式的に目標を追いかける事はしたくない (福祉保健部)。

□機能の見直しは絶対に必要になってくる。ど こかで案を作らなければならない。秘密に案 を作成しようが、初期の初期で案を示そうが 批判される事は間違いない。しかし、案を出 さない限りは議論が出来ない。むしろ極端な 案を出して、それでいいかどうかを問いかけ て議論展開した方が良いと思う(県医師会)。

□新聞紙上で県立病院の経営改善がなされたと 報道されたが、平成21 年度の状況は如何か (県医師会)。

■ 11 月までの締めの見込みではかなり改善さ れている。収益も上がり経費も削減している。 経営再生計画の1 年目としては上手く行って いるが目標には達していない(病院事業局)。

■新聞報道等では、目標を上回っていると報 道。その時の目標には改革プランがあり、そ のプランでは今年度約11 億の赤字が約3 億 で済みそうであるという見込である。病院と して違うのが、去年の繰り出し金(損益関 係)が40 億程度であったものが、今年は50 億程度入っているのではないかとの事で、実 際決算が終わって検証することになる(福祉 保健部)。

□外部委員を含めて、改革が進んでいるかどう かを検討する委員会を作る事になっていたは ずだが、動いているのか(県医師会)。

■ 21 年度決算は6 月末になるので、それから 検証となる。それまでの間に委員の人選等を 進めていくことになる(福祉保健部)。

■事務作業を終えて、早ければ7 月に第1 回目 を開催することになる(福祉保健部)。

■インターネットを介して県民に対し、病院に 求める機能に関するアンケートを考えている。

属性を細かくし、医師、看護師、市町村、 県の職員等に対し実施する予定としているの で、医師会にも協力を依頼することもあるが、その際はよろしくお願いしたい(福祉保 健部)

2.平成22 年度の医療連携体制推進事業の 継続について(県医師会)

<提案要旨>

医療連携体制推進事業は、国・県からの委託 を受けて、これまで県医師会・地区医師会にお いて実施している。

下表のとおり、平成19 年度は糖尿病対策に ついて中部地区医師会(事業費1,996 千円)、 平成20 年度は同じく糖尿病対策について中部 地区医師会と北部地区医師会にて、それぞれ実 施された(事業費各798 千円)。

平成21 年度は脳卒中対策について県医師会 (那覇市医師会、南部地区医師会、浦添市医師 会、中部地区医師会が参加)が事業費1,720 千 円、糖尿病対策について4 地区医師会(北部地 区医師会、中部地区医師会、南部地区医師会、 八重山地区医師会)が事業費各570 千円で実施 しているところである。

平成22 年度は、脳卒中対策を北部保健医療圏 へ展開し、糖尿病対策に関しては県レベル化や 継ぎはぎ連携パス等を実施していく計画である。

ついては、平成22 年度の医療連携体制推進 事業に係わる予算を今年度と同等額に計上いた だくようご検討いただきたい。

<医務課の回答>

医療連携体制の構築については、これまで医 療連携体制推進事業を活用して、平成19、20 年度中には、中部地区及び北部地区における糖 尿病対策を推進してきたところであり、今年度 については、事業の拡充を行い、北部地区、中 部地区に加え南部地区、八重山地区における脳 卒中、糖尿病対策を医師会、県等の連携のもと 推進しているところである。

平成22 年度については、さらに事業費を拡 充(予算額5,000 千円)して予算要求し、先日 内示があった。

県としては、今後も医師会と連携・協力し て、沖縄県保健医療計画に係る主要な4 疾病の 医療連携体制をさらに推進していきたいと考え ている。

<項目に関連して、医師会への協議>

地域医療再生計画では、沖縄県医師会におい て「医療連携体制総合調整事業」を実施するこ ととしているが、医療連携体制推進事業との関 係についてお伺いしたい。

(医療連携体制推進事業では、各圏域におい て地域連携クリティカルパスの作成・運用を推 進しているが、これを医療連携体制総合調整事 業にどのように結びつけていくのか。)

<主な意見等>

□医療連携体制総合調整事業は、当初県全体で 実施する事業として提案したが、北部医療圏 で実施するよう指導があった。仮に全県下で 当該事業が実施可能であれば医療連携体制推進事業の予算は必要なく展開す ることも考えられる。重複する 部分は出てくるので検討する必 要がある(県医師会)。

□実際には、脳卒中に関しては県 医師会が実施しており、糖尿病 は中部地区医師会が具体的に進 めている。それらを全県下を視 野に北部を絡めて進めていく必 要がある。地域医療再生基金の運用について 検討していく必要がある(県医師会)。

■事業の項目そのものを変えることは出来ない ので、事業項目でどのように実施するかを検 討する必要がある(福祉保健部)。

□基本的には北部で行っている事業に南部がア クセスすればいいと考えている(県医師会)。

□脳卒中医療連携は、県医師会と南部保健医療 圏と北部保健医療圏を中心に脳卒中に関する IT を用いた医療連携を実施し、そこに中部 保健医療圏を加えて全県下統一を図る。糖尿 病医療連携は、中部保健医療圏と北部保健医 療圏が一緒になって作り上げ、全県下統一を 図れればと考えている(県医師会)。

3.沖縄県内における脳脊髄液減少症の診療 体制について(報告・依頼)(福祉保健部)

<国保・健康増進課より報告・依頼>

(報告)

脳脊髄液減少症は、脳脊髄腔から脳脊髄液が 漏出することにより、頭痛、頸部痛、めまい、 耳鳴り等、様々な症状がみられる疾患といわれ ている。

今般、NPO 脳脊髄液減少症患者・家族支援 協会からの要望を受け、本県においては、県内 の脳脊髄液減少症を診療できる医療機関を沖縄 県ホームページ上で公表し、症状に悩む患者に 情報提供することとし、沖縄県医療機関検索シ ステム「うちなぁ医療ネット」に掲載されてい る「神経内科」、「脳神経外科」及び「麻酔科」 を標榜している医療機関あてアンケートを実施 しているところである。

今後、アンケート結果をとりまとめ、公表に同 意した医療機関を順次公開していく予定である。

(依頼)

同疾患を貴会会報誌等にて紹介し医療従事者 へ周知を図ることや、診療可能な医療機関の情 報を本県に提供すること等、ご協力願いたい。

<主な意見等>

■現時点で、47 施設にアンケート調査を実施 し27 施設から回答をいただいている。10 施 設が診断を行っており、その内8 施設から公 表の同意を得られている。県医師会のホーム ページ等でも掲載していただくことは可能か (福祉保健部)。

□県医師会のホームページに情報を掲載すると いう形よりも、県のホームページを確認して下 さいという案内が良いと考える(県医師会)。

■現在、うちなぁ医療ネットは1 万件のアクセ スがある。是非ご協力をいただきたい(福祉 保健部)。

□県医師会ホームページでの情報提供に併せ、医 師会報等での周知を検討したい(県医師会)。

4.沖縄県「がん登録事業」への「地域がん 登録標準データベースシステム」の導入 について(福祉保健部)

<国保・健康増進課より提案>

本連絡会第1 回開催において医師会から提案 のあった当該事業について、進捗状況を報告 し、今後の取り組みについて協力を依頼する。

本県では、これまで、がんの予防の推進や医 療の向上に資する目的で登録の精度向上に取り 組んできたが、今年度の緊急経済対策枠によ り、6 月の補正予算で全国標準データベースシ ステムの導入を行い、有効活用できるデータの 確保等について取り組みを進めているところで ある。

全国標準データベースシステムでは、データ 入力の効率化及び全死亡の入力等による生存率 調査が可能になるが、その実現のためには、登 録データ量を増やし、精度の高いデータの確保 が必要であるため、引き続き、地域がん登録へ の登録届出についてご協力をお願いしたい。

現在、各医療機関からの登録届出がスムーズ に行われるよう、登録票を修正するなど工夫し ており、医療機関における院内がん登録と連動 した登録体制やデータの活用等についての研修 会を開催しているが、今後も継続的に開催する ので、ご参加いただきたい。

<主な意見等>

■ 1 月12 日に宮城会長にお時間をいただき情 報提供したところである(福祉保健部)。

□現在、市町村から死亡情報を貰うことが難しいため、本システムにて突合できれば良いと 考えるが、どうか(県医師会)。

■新しい登録システムであれば、がん以外も含 め全死亡数が登録されるため、全死亡数が把 握される予定である。院内がん登録と、地域 がん登録との整合性として、院内がんに登録 すると地域がん登録にも反映される仕組みを 考えている(福祉保健部)。

□病院が行っているがん登録から遅れて地域が ん登録が始まる。当院においても年間200 例 の登録がある。これを再入力することはでき ない。手間数が多くなると医師は活用しない。 既に登録しているデータを提供するので、そ れを取り込めるようなシステムでないといけ ないと考える(県医師会)。

■検討していきたい(福祉保健部)。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

「県立病院の医療機能見直し(試案)について(県医師会)」については、南部医療センター・ こども医療センターと精和病院についての大幅な見直しを検討しており、特別な委員会の設置予 定は無いが、医療センターに関しては、南部地区医師会や那覇市医師会との意見調整等は必要と 述べていた。医療機能の問題は、経営形態の問題とは切り離して、どのような方向を辿れば良い 方向に向かうかと言う観点から見直しを行っており、平成22 年度末までには成案を作成したいと 述べていた。

「平成22 年度の医療連携体制推進事業の継続について(県医師会)」について、事業は国・県 からの委託を受けて、これまで県医師会・地区医師会において実施してきたが平成22 年度は500 万円を計上し内示があったと報告していた。一方、当該事業と地域医療再生計画の「医療連携体 制総合調整事業」との関係とその推進についての質問があり、運用において検討していく必要が あることを確認しあった。沖縄県医師会は「医療連携体制総合調整事業」として、4 年間で1.8 億 円の予算を獲得したが、5 年後も継続して地域医療に貢献できるシステムづくりを構築して行き たい。

「沖縄県内における脳脊髄液減少症の診療体制について(福祉保健部)」についての報告と依頼 があった。県下47 医療機関にアンケート調査を実施し27 施設から回答、10 施設が診断を行って おり、その内8 施設から公表の同意が得られ、県医師会のホームページに掲載が可能かに対して、 県のホームページを確認するよう案内することになった。また、医師会報生涯教育のコーナーに 脳脊髄液減少症についての論文を掲載することになった。

「沖縄県「がん登録事業」への「地域がん登録標準データベースシステム」の導入について(福 祉保健部)」の報告があり、地域がん登録への登録届出についての協力や研修会参加への依頼があ った。登録する際、現在どの様なルートでどこが管理しているのか、また2 重3 重記載や入力に なっていないのか危惧している。がん登録はICD10 で行っているのか、または別の診断名やステ ージ分類で行っているのか正確には把握していないが、仮にICD10 を利用できるなら、DPC 導 入病院の電子カルテや診療録情報管理室より取り出せないのかと考えたりしている。