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研修医に望むこと

嵩原安彦

沖縄協同病院内科 嵩原 安彦

私は昨年6 月に、沖縄協同病院の研修委員長 に就任しました。

外来では糖尿病を中心に診ていますが、病棟 医療では総合内科グループの指導医という立場 です。

根っから非社交的な私は、研修医達との距離 感(距離のとり方)にとまどいつつ、右往左往 しながら、日々彼らと相対しています。

内科医師体制が弱い中で、多忙な日常業務に 流され、「これもしてあげれていない」「あれも 不十分」というあせりにかられながら研修医た ちに接しているのが現状です。

研修医に望むこと・・・ですか。

まず、私は、彼らとは、「研修する・させる」 という関係以前に、「一緒に仕事をする仲間」 でありたいと願っています。

医療面接、診察手技、疾患の診断・治療とい った医療技術を身につけるのはもちろん大切で すが、対患者・家族関係をより良くしていくに はどうしたらいいのか? 所属する病棟ひいて は病院をより良くしていくにはスタッフとの関 係構築も含め、どうしたらいいのか?なんてこ とも共に考えていけたらいいな、と思います。

非難も大いに結構、でも建設的非難であって ほしいものです。

医療は医師単独で達成できるものではないの は自明のことで、研修医が、スタッフとの関係 を上手にとりながら、カンファランスを通して 患者の方針を深め、面談を通してインフォーム ドコンセントを確立していくのを見ると指導医 冥利につきるなーと実感します。

次に、対患者関係は、「give and take」では なく「give and give」だということを肝に銘 じてほしいと思います。

しょっちゅう入院してくるアルコール依存症 の患者さんを、「また飲んでしょうがない・・」 「どうしようもない人」と決めつけるのは簡単 ですが、「やめきれないのはどんな生活社会背 景があるのか?」「どうにか治療に結びつける 方法、酒をやめさせる道筋はないか?」と考え つづけることができるのか?

疾患の入院治療でのゴールは達成されている のに、家庭での受け入れが困難な状況の患者・ 家族を、その家庭環境、介護事情に鑑みて、ケ アマネやMSW、病棟師長と連携を取りなが ら、退院に向けていかにサポートできるのか?

そういった感覚がとても大切だと思います。

1 人の看護師に真剣につめ寄られたのを忘れ ることができません。

「こういう患者さんを救うことができなかっ たら何が協同病院ですか!」

私は、医療従事者にとって一番大切なもの は?と聞かれたら、迷うことなく、「思いやり とやさしさ、そしてそれに基づく行動力」と答 えたいと思っています。

最後に、地域医療を実践しているという自覚 を持ってほしいということです。

大きな病院にいると、地域を実感するのはな かなか難しいことです。

しかし、病棟医療の中でも、詳細な問診か ら、患者さんの家庭環境、介護状況、経済的問 題・困難さを把握することはできるでしょう。 また、協同病院は医療生協の病院なので、地域 の班会に参加して組合員さんと接触することが できますし、健康講話をすることで、啓蒙活動 を自覚することもできます。さらに、医療生協 の診療所の往診を通して、在宅医療を実感でき る機会もあります。

その中で、自分達が微力ながらも地域医療を 実践していることを少しでも実感でき、地域に 錨をおろして医療活動を行うことの意義を自問 自答しつつ確信につなげ、地道に医療人として の歩を進めて行ってほしいと思います。