先代の二人の教授の「臨床 を大事に、その視点から研究 や学びを行う」という、教室 の伝統を受け継ぎつつ、大学 らしく、若い力を集め、自由 に、楽しく、新しいことにチ ャレンジできるような教室を 作りたいと思います。
Q1.この度は、琉球大学医学部病態解析医科 学講座循環系総合内科学分野教授就任おめ でとうございます。ご感想と今後の抱負を お聞かせいただけますでしょうか。
ありがとうございます。私の場合、7 年半の 間、琉球大学で准教授(助教授)として仕事を していましたので、今回、教授に選んでいただ いたことは、私自身の評価と同時に、私が行っ てきたことへの評価だったと思います。それら が認められたと安堵するとともに、皆様からの 期待に対する責任を感じているところです。抱 負としては、先代の二人の教授の「臨床を大事 に、その視点から研究や学びを行う」という、教 室の伝統を受け継ぎつつ、大学らしく、若い力 を集め、自由に、楽しく、新しいことにチャレ ンジできるような教室を作りたいと思います。
Q2.大屋先生は県内の医師の人材育成に力を 入れており、現在、地域医療再生基金事業 の中で、沖縄県全体の共同利用施設として、 医学・医療教育を行うクリニカルシミュレ ーションセンター設置計画を予定されてい るようですが、当事業の内容について、可 能な範囲で結構ですのでお聞かせいただけ ますでしょうか。
今回のクリニカルシミュレーションセンター 構想では、シミュレーターを中心とした医学教 育・研修施設とその運営団体を設立し、沖縄に おける医療者の育成システムのさらなる発展を 目指したいと考えています。今回の医療再生基 金に関する会議の中で、全県的に取り組むこと として、シミュレーションセンターを提案した 際に、偶然に(後で考えると、当然、必然だっ たのかも知れません)、県立病院や群星の先生 方が考えられていたことと、一致していて、と んとん拍子に計画が進みました。
具体的には、あくまでも私案ですが、シミュ レーションセンターの中には、基本的なスキル を学ぶゾーン1、救急医療を学ぶためのゾーン 2、専門的なスキルを学ぶためのゾーン3、の3 つのゾーンを考えています。その中に、用途に 応じたさまざまなシミュレーターを置き、それ らを使ってバーチャルな状態を作り、知識、技 能、そしてチーム医療を学ぶことができるよう にしたいと思います。沖縄県医師会に音頭を取 っていただき、県立病院、群星、琉大の Ryumic のグループが協力して運営団体を作り、 企画や運営を行っていく予定です。
従来の医療現場でのon the job training に加 えて、その前の段階で、シミュレーターを用い ることで、安全に確実にさまざまなスキルや知 識を身につけることができるようになると思います。また、シミュレーターですので、繰り返 し行うことで、自分が身につけたものを確実に することができます。医学部学生、看護学生、 若い医師や若い看護師の教育においてのみなら ず、しばらく医療から離れていた人たちの復帰 支援においても役立つものと思います。せっか く作る施設ですので、日本一の研修医教育を行 っている沖縄県の医療界がさらに飛躍できる日 本一、アジア一の施設を目指したいと思います。
Q3.本会が、平成15 年から健康長寿県復活を 目指して開催している県民公開講座の第1 回 目のシンポジストとして、大屋先生にご講 演いただきましたが、県民の生活習慣病等 の現状と今後の対策について、先生のお考 えをお聞かせいただけますでしょうか。
着任して間もない私を、県民公開講座の一回 目のシンポジストに選んでいただいたことは、 たいへん光栄であり、感謝いたしております。 今から考えると、あの時、シンポジウムのため に沖縄の医療について調べ、学んだことが、現 在につながっており、私にとって、大きな転換 点、出発点だったと思います。
県民の生活習慣病などの現状は、以前と同様 に肥満は多く、疾病の発症も大きくは変わって いないと思いますが、県民の健康に対する意識 は明らかに変わってきていると実感していま す。以前は、あまり見かけなかったウォーキン グする人も非常に増えていますし、弁当や食品 売り場でも健康を意識したものが増えてきてい ると思います。県民の健康状況の改善は一朝一 夕にはできませんので、私たちも医師会と伴 に、地道に活動していきたいと思います。
Q4.大屋教授が目指す講座運営の方針等につ いて差し支えない範囲でお聞かせ下さい。
大学教授の仕事は多彩で多忙と聞いていまし たが、そのとおりでした。自分1 人でそのすべ てをこなすことは困難ですので、むしろ、若い 力を育て、それぞれが活躍することで、臨床で も、研究でも、教育でも、教室全体のパワーに したいと思います。これは、私が諸先輩から、 そのように育てていただいたこともあります し、この7 年半、琉球大学で実践してきたもの でもあります。
若い医師たちの幅広い興味にも対応できるよ う、医学研究の手法は、集団レベルから遺伝子 レベルまで、身につけてきたつもりですので、 それらを若い人の育成に活かしたいと思いま す。琉球大学から1 人でも多くの日本、世界で 活躍できる人材を育成できたら、うれしいで す。また、そのことが教室の活性化につながっ ていくと信じています。
診療においては、4 月から、教室名を循環系 総合内科から、循環器・腎臓・神経内科と変え る予定です。内科全般は当然のことながら、専 門領域では、この3 つに関連した、循環器、腎 臓・高血圧、神経・脳卒中の診療で沖縄県の医 療に貢献したいと思っています。
Q5.県医師会に対するご意見、ご要望があり ましたらお聞かせください。
県民の健康増進の推進役として、また、今回 の医療再生基金の件も含め、沖縄県の医療機関 のまとめ役として、今後とも、ご指導をいただ ければと思います。
Q6.先生の座右の銘、日頃の健康法やご趣味 などをお聞かせ下さい。
座右の銘は決めておりませんが、「一期一会」 を実感しております。健康法では、最近、とき どきジョギングをしています。
この度は、お忙しい中インタビューにご回答 いただき、誠に有難うございました。
インタビューアー:広報委員 玉井修