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平成21 年度女性医師の勤務環境整備に関する
病院長等との懇談会

沖縄県医師会女性医師部会 銘苅 桂子

去る9 月10 日(木)沖縄県医師会館に於い て標記懇談会を開催した。公的・民間病院を含 めた施設の代表者や事務長、女性医師等が多数 参加し、女性医師が抱える諸問題の解決や働き やすい勤務環境整備に向けて、意見交換が行わ れた。

参加者は院長が16 名、医師8 名、事務方15 名、女性医師部会役員10 名の計49 名であっ た。その概要について次のとおり報告する。

挨 拶

沖縄県医師会女性医師部会長 依光たみ枝

平成19 年8 月、女性 医師が育児と仕事を両 立できる職場の環境改 善や出産・育児などに より離職、休職した女 性医師への支援などを 目的に女性医師部会を 立ち上げた。

本懇談会は、昨年に引き続き2 回目の開催と なる。本日は公的・民間病院を含めた施設の責 任者に多数ご参加頂いた。形式ばった会ではな く、双方が本音で語り合うことが出来ればと考 えている。

また、今年は国からの補助を受けて、県医師 会に女性医師専用の相談員2 名を配置し、女性 医師を支援するための女性医師バンク事業を行 うことになった。

本日の会が、小さな進歩でも大きな進歩の一 歩になることを期待している。新政権は子育て 支援を掲げている。近い将来日本の医療界も大 きく変わることを祈願して私の挨拶とする。

報 告

(1)「全国女性医師の勤務環境報告」と「県内女性医師への個別聞き取り調査報告」
沖縄県医師会女性医師部会委員
仁井田りち

近年、医師全体に占める女性医師の比率が増加傾向にある背景をもとに、女性医師を取り巻 く現状や課題などについて説明を行った。ま た、本年6 月、県内4 ヵ所の病院(公的病院含 む)、計10 名の女性医師からレポートで得た就 労環境に関する悩み等を報告し、今後の対策と して、国が奨励する各種支援事業(1)勤務医の過重労働を解消する環境整備、2)女性医師の働 きやすい環境の整備など)の活用が必要である とし、こうした補助金の活用には、裏づけとな るデータが必要なため、この様な会合から現場 の声を吸い上げたいと訴えた。

(2)「女性医師求人・復職研修支援に関する調査」結果報告
沖縄県医師会女性医師部会副部会長
涌波淳子

本年5 月下旬、県内女性医師勤務状況把握と その改善のための一環として、県内94 病院(公 的病院含む)を対象に行ったアンケート調査結 果について報告を行なった。(回答率は63 %)

調査では施設における女性医師の常勤・非常 勤の割合や育児中の女性医師の勤務や受入経 験、また、勤務条件や女性医師へのサポート体 制等について現況を伺った。

その結果、以下のまとめと問題を提起した。

● 常勤女性医師のいない施設は13施設(32%) であり、そのうち9 施設(69 %)が医師数1 〜 5 人の施設であった。→少ない医師数では 常勤女性医師の雇用は困難か?その場合の困 難である理由は何か?

● 非常勤女性医師のいる施設は27施設(73%) で、さらにそのうち12 施設(44 %)で非常 勤医師の半分以上が女性医師であった。→非 常勤女性医師の声

● 育児中女性医師の勤務している施設、または 勤務既往のある施設は15 施設(37 %)であ り、その中には医師総数が10 人以下の施設 も6 施設存在した。→医師数が少ない中でど のように対応しているのか?

● 女医の勤務条件の3 項目について60 %以上 の施設が柔軟に対応する姿勢を見せている。 しかし、対応できないとする施設も存在す る。→その理由は何か?

● 保育所、夜間保育所などのハード面に関しては 改善の余地があると思われる。急な休みの対 応、相談窓口などのソフト面は整ってきたか?

また、病院管理者の視点から女性医師を多く 採用した場合の要素をS(強み)・W(弱 み)・O(機会)・T(脅威)の四つに分類し、 さまざまな視点から現状の分析を説明した。

S :医師数が確保できると、施設の機能拡張が 望める

W :当直医の確保が難しい、急な休み、休職・ 退職の可能性が高い。

O :「働きやすい職場」という評価が次の採用 を生み、医師のゆとりが医療の質の向上に 繋がる。

T :常に医局に不安定要因を抱えている気分で 管理者のストレスの1 つとなる。

意見交換

「女性医師が就労継続を困難としている問題点」

女性医師が就労継続を困難としている点につ いて、女性医師側の視点や病院側の視点から、 それぞれ問題点を挙げて貰い、自由な意見交換 を行った。なお、同懇談会の開催に向けて、事 前に女性医師や施設からあがった意見や要望に ついて報告を行なったあと、意見交換を行った。

女性医師からの意見(2 件)

1)匿名希望

個人契約や琉大医局からの派遣契約など雇 用形態は様々であるが、大学からの派遣と個人 契約では待遇に差がある。病院側は大学からの 派遣に気をつかい、個人契約を軽く扱う傾向 にある。

しかし、理解ある病院があることも事実であ る。完全な常勤形態の勤務でなくても、ある一 定の基準を満たせば福利厚生をきちんとしてく れる病院もある。

非常勤で働く女医には、それなりの理由があ り、決して勉強を怠っているわけではない。講 習会や勉強会への出席、中には学会発表や医学 雑誌に論文投稿する人もいる。ただ残念なこと に、非常勤を粗末に扱う病院があることは事実 である。

2)県立北部病院 大城真理子医師

女性医師の問題といわれている大部分は女性 医師特有の問題ではないと考えている。基本的 には育児をしたい男性医師も含まれると考え る。そのため、女性も男性も生き生きと働き続 けられる病院、職業人であり、生活者であるこ とが両立できる病院を目指すためには、1)院 内病児保育、2)緊急的託児サービス、3)地域 の小児デイケア、学童保育、ファミリーサポー ト事業等との組織的連携、4)生活日用品共同 購入支援などの措置を講じることが必要であ り、それが男女共同参画や育児支援に繋がる。

施設側からの意見

1)北部地区医師会病院 諸喜田林院長

当院では女性医師の希望に応じた雇用形態を とっている。現在務めている女性医師も全て雇 用内容は異なっている。勤務を希望する女性医 師へは、どの様な勤務が可能なのかを相談の 上、ニーズに合わせている。

また、院内保育所も開設しているが、補助金 を受けている関係上、地域からの受け入れは行 っておらず職員に限定している。定員は50 名で 通年満杯である。助成金を貰っても年間1 千万 円の赤字であるが福利厚生として扱っている。

2)宜野湾記念病院(欠席のため事前に頂いた意見より)

当院では女性医師が子育てをしながら働ける 環境を目指しているが、そのためには、他の男 性医師の理解(当直等)も必要である。

但し、経営的には女性医師を多く採用した場 合は成り立たない現状があり、問題解決のため には女性医師の採用に伴う補助金を出す等の措 置が必要である。(例:1 人当たり200 万/年間)

3)琉球病院 大鶴卓医長 (村上優院長の意見代読)

当院では、若手の女性医師が増えることを念 頭に置き、また自然な経過として結婚や出産・ 育児の時期に重なることを前提に研修・研究・ 勤務体制を考えている。

女性医師への一般的配慮として、女性医師専 用の1)当直室、2)更衣室、3)休憩室を設置して いるが、妊娠などを機会にして当直免除、危険 を伴う業務の回避などに配慮している。また、 男性医師も産後の育児休業(短期)に対しては 積極的に取得する方向で考えている。

出産・子育て支援に関しては、院内の保育園 (ゼロ歳より)を設置しており、出産後には1) 育児休業、2)短時間勤務、3)当直免除など仕事 と育児を両立できる体制に配慮している。

これらを可能とするためには次の5 つ条件が 必要だと考えている。1)医師の総数に余裕があ ること、2)医師相互の理解と協力があること、 3)管理者が女性医師の職務に配慮があること、 4)社会的環境(施設内保育所など)が整ってい ること、5)女性医師も職場への復帰を前提に医 師人生の設計を施設とともに考え、職場復帰の 敷居を低くすること。

医師数を増やす方略の一つに、女性医師が仕 事、専門医としての研修、研究、子育て、家庭 生活を調和し、少し先を見ながら長い時間軸で 勤務する体制や状況、計画を作るかだと考える。

個人的には女性医師も、適切な期間の育児休 業、短時間勤務制度などを利用し、現場のブラ ンクを長く作らないことだと思う。雇用する側が配慮すれば、仕事・研修・研究・育児・家庭 を並立させる環境は整う。また、片方では女性 医師が職業人や専門職としてのやりがい、喜 び、自負心、プライドを持つことができるか、 また配偶者がそれを理解するかと当事者の問題 もあると思う。

男女を問わず若手医師がライフサイクルに沿 って活躍できる体制と場を提供できるようにす ることは、少し長くこの職についた者の使命だ と思う。

琉球病院 久保彩子医師(追加コメント)

当院は、女性医師への支援に非常に意欲的で ある。当事者として施設側からこういうメッセ ージがあれば戻ってきやすい要因の一つである と実感している。

琉球病院 大鶴卓医長(追加コメント)

当院は、急性期の病院と異なり精神科の病院 である。そのため、欠員が出ても一人の負担を 皆で均等に割り、バックアップできている。

4)久米島病院 村田謙二院長

離島勤務にマイナスイメージを抱く人もいる が、視点を変えれば十分魅力的な勤務環境にな り得ることを訴えたい。1)重症患者の主治医に なることはなく、その様な患者は本島へドクタ ーヘリで搬送される。2)医師全員で7 人の小世 帯なため、お互いが良く分かり合えて、助け合 い、補い合って診療ができる。過去に3 人女性 医師が勤務した実績がある。3)夫婦共に医師で ある場合も受け入れ可能であり、その実績もあ る。4)町立の幼稚園、保育所があるので、子ど もが小さくても安心である。小児科の常勤医も いる。豊かな自然は、子ども達にとっても良い 環境と思う。5)当直業務は原則一人体制である が、サポートが得られる。病院に隣接して医師 住宅が2 棟あり、重症患者の場合は直ちに応援 を呼べる。

よって、当院は離島勤務義務のある女性医師 にとってふさわしい環境と考える。また、参考 までに平成22 年度へ向けて、現在3 人の医師 を募集している。

フリートーキング

民間病院での取り組み状況は如何か。

浦添総合病院 石川和夫副院長

当院でも女性医師の割合が徐々に増え始めた ため、女性医師専用の休憩室を設けた。

また、保育園は利用者が少なく、暫く閉鎖し ていたが昨年から再開した。金曜日に限り24 時間保育を行っている。さらに、地域にもオー プンにした病児保育も開始した。

専門分野の医師に欠員が出ると大きな負担が 周りにかかってくるため、常日頃から病院全体 としては、男性医師も含めたワークライフバラ ンスの推進に心がけている。一つずつ解決して いきたい。

南部徳洲会病院 赤崎満院長

当院では、院内保育所を作った。一昨年新館 を建てた際に女性医師専用の部屋を設けた。ま た、今年初めに当直室も設置した。医局の隣に は研修医専用の部屋も作った。環境は整ってき ているが、女性医師が少なく大きな問題にはな っていない。

ハートライフ病院 奥島憲彦院長

365 日24 時間救急を行っており、常勤医師 15 名中、28 %は女性医師である。研修医が来 るようになり、女性の比率は高くなっている。 2 年前から当直室兼休憩室を2 部屋設けている。

前回この会で院内保育所を作りたいと発言 し、他の施設も見学させて貰ったがまだ実現し ていない状況である。

当直の免除については、他の部署の協力を得 ながらやっている状況である。10 年務めてい るが、出産後、育休を取得した医師はいない。 復職してこないので、辞めてしまっているので はないかと思われる。

小児科は男性1 人であったが、今年4 月から 子育て中の女性医師が2 人入った。2 人で1 人 分の働きであるが、1 人だった男性医師も元気 になり、患者も増えている。それなりの技術が あれば有効に働いて貰えると思う。いろいろ話を伺っていると体制作り遅れていると感じるの で、頑張って体制を整えていきたい。

Q :暫く休んだ医師が職場復帰をする際、 過重なストレスが掛ると思うがそれを緩 和させるために工夫していることは。特 別なメニューはあるか?

浦添総合病院 石川和夫副院長

フルタイムで仕事ができるかどうか悩むよう であるので、個々に相談の上、初めは半日勤 務、当直免除など考慮した形態をとって馴ら し、完全復帰して貰った。

島袋史委員(浦添総合病院)コメント

平成19 年12 月末から産休をもらい、1 月に 出産、その後、育児休業を経て、平成20 年11 月から職場復帰。これまでの産婦人科医2 人体 制から3 人体制となった。勤務形態は当直と外 来でオンコールは無し、当直は最初は週1 回か ら始め、勤務時間も考慮して貰った(日曜日の 晩から月曜日の午前中の外来まで)。子供が10 カ月を過ぎたあたりから、当直の際に、産婦人 科病棟の一角の部屋に子供と祖母の付き添いで 一緒に当直した。

勤務形態に関しては、非常に考慮して貰え た。復帰の際、院内保育所が再開されていたた め入園がスムースであった。(地域の保育所の 場合、年度途中の入園は待機待ちが普通)。ま た、院内保育所の利点は、勤務形態に合わせて 見て貰えるなどの時間的融通が効くことや小人 数制で丁寧に見てもらえたので、安心して預け られた。

豊見城中央病院 比嘉英麿院長

当院では昨年4 月から補助を受け50 名の院 内保育所を設けている。定員オーバーするほど 有効に活用しているが運営は赤字である。

女性医師に限らず、全ての女性スタッフが安 心して出産育児に専念できるように、病院とし ての方向性を持っている。

また、女性医師に関しては、育休後の復帰も 柔軟に対応している。職員全体で共通の認識を 持つことが大事である。子育て中の場合には、 無理な当直はさせず、入院患者もたくさん持た ない等過度な負担はかけないよう心がけている。

病児保育も検討中だがスペースがない。現在 女医が29 人。内、既婚者9 人、子育て中4 人、 育休中1 人である。スタッフが多いので大きな 問題にならずにすんでいる。

松原忍委員(豊見城中央病院)コメント

全ての科の状況を把握している訳ではない が、内科や外科の女医は子供の手のかかる間は 当直免除の措置を受けている。また、産婦人科 でも職場復帰に際して1 コマだけでもやって貰 えたら自分達が楽になるのでありがたいと、上 司に言われ感激していた。

当院は、女性専用の更衣室、当直室等も完備 され、また、相談や要望にも応じて貰えるなど 女性医師に対して考慮して頂いている。

Q :公的病院での取り組み状況は如何か。

県立中部病院 平安山英盛院長

看護師の場合、公務員法で守られているため 産休育休の取得ができるが、女医に関しては産 休は取れても育休は難しい。実際は祖母に見て もらうなどの対応をしているかと思う。

仕事の内容については、男女を問わずチーム 医療で行っているため、欠員時のカバーは出来 る体制にある。院内保育所設置に関しては、要 望があったとしても院長個人の裁量では決めら れない。採算性も検討しなければならないた め、地域と連携した対応がベターかと思う。

沖縄赤十字病院 良英一院長

当院は、平成22 年新築移転に向けて建設計 画を進めており、院内保育所は利用者が余りい ないと考え、建設構想にはいっていない。病児 保育については検討中である。15 %の女医が いる。数年前から現在の施設に女性医師の休憩 室(シャワー完備)を設けたが新しい病院でも 専用の休憩室を設ける予定である。

県立宮古病院 安谷屋正明院長

10 月から新しい病院の本格的な設計に入る が、先ずは当直室、休憩室、産科の医師が泊ま る部屋を確保している。病児保育や院内保育は 地元出身のスタッフが多く、利用者はあまりな いと思われるため検討中である。しかし、今回 の地域医療再生計画の中には、病児保育、院内 保育の設置を求めているところである。

女性医師からのメッセージやその他の意見

銘苅桂子委員(琉球大学医学部附属病院)

施設側としても働き続けて欲しいという気持 が伝わった。女医としても働き続けていきたい と思っているのだが、現場が救急であったり、 より専門性が高ければ高いほど、残された人へ の負担も大きく、辞める側としても心苦しく、 また、1 年間育休を取ることについても非常に 言い出しにくいという側面があって、自らフェ ードアウトする人が多い。その場合、1 年間だ け別からスタッフを配置する(短期採用)シス テムが施設として可能なのか伺いたい。

県立北部病院 大城真理子医師

管理職の先生方へお願いしたい。先ず一つ目 は、女性医師が妊娠した時に「おめでとう」の 言葉をかけて欲しい。管理職の方からの「ため 息」で打ちのめされた医師を何人も見てきた。 私が県立で子供を産めたのは、就職の際に院長 から「10 年いたら何人産んでも良い」という 言葉に支えられてここまできた。

二つ目に、女性医師専用の休憩室は本当に必 要であることをご理解頂きたい。子育て中、搾 乳をする時に専用の部屋が必要である。研修医 は車中で搾乳をしていた。

精神的な支えとなる言葉に女性医師はしがみ 付くことがある。人生の岐路にたち、大きな不 安を抱えている際に、不安を増幅させるような 言葉を投げかけられると心が折れてしまう。育 児は女性医師特有の問題ではない。育児にかか わりたいと思う男性医師にも理解をお願いした い。全体の問題として扱って頂きたい。

短時間勤務制度について

県立北部病院 大城真理子医師

私自身、昨年7 月から今年6 月までの1 年間、 短時間勤務制度を利用して半日勤務を行った。 半日勤務で給与は半分、自分の仕事量は減らな い一方。代わりの人がいない限り、ワークシェ アリングとして機能しなかった。制度があるに も関わらず、実際には使えるものではない。

玉城信光委員(沖縄県医師会副会長)

結局2 人の医師が外来100 名診ていて、1 人 がいなくなったとき1 人で100 名診るのと同じ ことである。

こういう場合、外来患者等、仕事量を制限す るエネルギーを管理者が出せるかが求められて いる。また、減らした時に、その仕事が残って いれば、誰を持ってその仕事をカバーするか管 理者の知恵が必要となる。

院内の人に押し付けることがこれまでの制度 であったと思うが、外の施設などに頼むような こともやらない限り皆倒れていく。鳥取医大の 救急医総辞職が同じ例である。女性医師部会 のこういう話合いで変わっていくだろうし、改 善できない病院は社会から取り残されていくと 思う。

海邦病院 洲鎌則子副院長(兼看護部長)

永年、大学で勤務してきたが、こんなに深刻 な問題があるとは感じていなかった。

当院は残念ながら現在のところ女性医師は勤 務していないが、当初から女性医局も別途あり 当直室も完備しており、環境はしっかり整ってい る。また、唯一小児デイケア施設を持っており、 職員も利用でき安心して働ける職場環境がある。

短時間勤務制度についての意見は看護職にも 当てはまる事柄であり、一緒になって解決にむ けて取り組んでいきたい。

Q :女性医師バンクへの要望等について

銘苅桂子委員(琉球大学医学部附属病院)

女性医師部会では、今年度から女性医師バンク事業を立ち上げるが、施設側からみてニーズ があるのかどうか知りたい。何か要望的なもの があるかも含め意見を伺いたい。

北部地区医師会病院 諸喜田林院長

リクルートに行っても田舎のせいか集まらな い状況であるため、女性医師バンクが利用出来 るのであれば、是非利用したい。

浦添総合病院 石川和夫副院長

女医が育休でしばらく職を離れたことがあ り、代わり医師を探したことがあるがなかなか 見つからず、2 度とやりたくない。バンクがあ れば活用したい。施設に応じた勤務形態がある かと思うので知恵を出し合えば良いと思う。

南部徳洲会病院 赤崎満院長

バンク事業の件について、バンクに登録する 女性医師側も希望する勤務形態をはっきり書い てもらった方が良い。当院では男性医師からの オファーも結構あるが、彼らは自分のライフワ ークを大事にし、しっかり伝えてくる。常勤の 医師でも、当直はできない。入院患者は持てな い等と言ってくる人もいる。病院側もいろいろ な形態を考えているので、勤務形態を明確に書 いていただけたら、施設側もありがたい。

沖縄赤十字病院 良英一院長

勤務に関しては、常勤、非常勤にこだわる必 要はないと思う。女性医師自身が常勤でなけれ ばいけない等、自ら縛っていなければ、病院と してはいろいろな雇用形態が出来る。働きたい 意思があれば、外来週1 回でもよい。他の先生 方が別の仕事ができ好影響である。むしろ女医 が働けないのではと勝手に思いこんでいるだけ だと思う。自身の希望する勤務形態を病院に伝 えて頂ければ良いと思う。

沖縄県女性医師バンク事業について

玉城副会長より説明を行った。

沖縄県医師会では、平成21 年8 月から平成 24 年3 月までの約3 年間、県からの委託を受 け、ふるさと再生雇用特別基金事業を活用し 「沖縄県女性医師バンク事業」を実施すること になった。

女性医師バンクでは、求人・求職などの情 報をホームページで閲覧、検索し、施設側、女 性医師側から要望があればその間をコーディネ ートしていこうと考えている。また、県が行な っている離島支援ゆいまーるプロジェクトや琉 大病院の専門研修センター等との連携を図っ ていく。約3 年間、県の補助で運営するが、そ の後は医師会の事業として運営できればと考え ている。

事業概要については以下のとおりである。

沖縄県女性医師バンク事業 (ふるさと雇用再生特別基金事業)

事業の目的

≫女性医師からの再就業支援、再研修支援、 育児支援等に関する相談業務や関係機関 からの情報の集約、必要な情報の発信等を 行うための女性医師専用の相談窓口を設置 して、女性医師が再就業するための支援 や、ライフステージに応じて働くことので きる柔軟な勤務形態や職場環境の整備等を 図ることを目的とする。

沖縄県女性医師バンク事業の内容

(1)沖縄県女性医師バンクの設置

≫沖縄県医師会に女性医師専用の相談窓口 を設置し、相談員を2 名配置する。

1)再就業支援

 求人情報の提供と人材紹介、就業に 至るまでの支援を行う

2)再研修支援

 復帰のための研修先の情報の収集、提供

3)育児支援

 保育所、ベビーシッター等育児支援に 必要な情報の収集、提供

(2)沖縄県女性医師バンクの管理・運営 求職情報・求人情報の検索・閲覧が可能 となるホームページを開設、マッチング機能 を加えたサイトを構築する。

≫再研修支援に関する情報を医療機関から収 集し、提供する。

≫育児支援に関する情報を医療機関や関係機 関等から収集し、提供する。

≫再就業、再研修及び育児支援情報の提供 等を希望する女性医師の登録を行う。

≫女性医師からの相談内容の集約を図る。

≫女性医師と医療機関等との間の調整等を 行う。

≫メーリングリストを活用し、女性医師へ 様々な情報を発信する。

説明のあと、仁井田委員から各施設長に対し 「今後バンク事業はさまざまなかたちで女性医 師の支援を行っていきたいと考えている。特に 初期研修終了後の先生方が抱えるさまざまな問 題等について、相談が出来ればと考えているの で、是非、施設に勤務する研修医の先生方へ、 沖縄県女性医師バンクへのメール登録を呼びか けて頂きたい」と要請した。(興味のある方は ○○ページでお申し込み下さい。)

また、涌波副部会長は施設管理者の立場から 「メール登録を行なうと他所へ行くという不安 もあるかと思うが、部会では、その病院で出来 る限り継続することを支援していきたいと考え ている。病院側とのコミュニケーション不足や すれ違いが切っ掛けで辞めるケースも多い。そ の部分を私たちが繋いであげられたらと考えて いる」と意見した。

高良副部会長からは「病児保育設置を望む声 が多い。市町村で3 〜 4 ヶ所、国から補助を受 けて実施しているところもあるので、地域と連 携し対応していくのも一つの手である。」と説 明があった。

最後に玉城副会長から、各施設もいろいろ努 力し、今に至っていることが分かった。双方が さらに歩み寄り、より良い勤務環境づくりに繋 がることを願っている。本日はたくさんの方々 に参加いただき感謝申し上げる。来年も同様の 会議を催すと思うので、先生方のご協力をお願 いしたい。

また、女性医師部会では、来る10 月3 日 (土)沖縄県医師会館にて、18 時30 分より、 女性医師フォーラムを開催するので是非ご参加 いただきたいと呼び掛け終了した。

印象記

銘苅桂子

沖縄県医師会女性医師部会
銘苅 桂子

今回の病院長等との懇談会の目的は、(1)県内病院における女性医師勤務状況を把握すること で、女性医師が就労継続を困難としている原因を探ること、(2)その問題点を病院長らと把握、 共有したうえで、より機能的な沖縄県女性医師バンク(※ 1)を設立すること、であった。

女性医師が就労継続を困難としている原因について、施設側の問題点と女性医師側の問題点に ついて討論が行われた。施設側の問題点として、事前に県内病院に行ったアンケート調査(県内 94 施設、回答率63 %)について報告され、60 %以上の施設が時間外・当直・オンコール免除は 可能とし、93 %が急な休みへの対応は可能、または応相談と回答している。当日の各病院長の発 言も、女性医師の働き方には柔軟に対応するとする内容が多かったが、それでも働いてくれる女 性医師がいない、とのことであった。

しかし、現場において時間外免除や急な休みを申し出るのは勇気が必要だ。その結果、同僚医 師へ負担がかかることを憂慮し辞職を選択したり、復帰をためらっている女性医師は多いと思う。 同僚医師へ負担がかからないように、医師の補充がなされなければこの問題は解決できないし、 専門性が高いほど補充は容易ではなく、医師不足が深刻な現在の状況で解決は困難であることが 予想された。女性側の問題点が語られることは少なかったが、施設側が女性医師の就労環境につ いてこれだけ取り組む姿勢を見せている以上、女性側の意識改革も必要であると感じた。育児は 子供が成長すればいずれ卒業するものだが、医師に卒業はない。女性医師は女性であると同時に 医師であるということを忘れず、一旦休んだことを恐れずに、復帰して欲しいと思う。

今回の病院長等との懇談会で感じたことは、女性医師は求められているが、そのメッセージは、 まだまだ女性医師に伝わっていないということだ。もし、一時休業したことで自信をなくし、周 りに迷惑をかけるかもしれないと復帰を諦めている人がいれば、琉大病院専門研修センターで行 っている、再研修プログラム(※ 2)も参考にしてもらいたい。ブランクが長くなってしまった 場合の復帰の恐怖は大変なものであり、いままで個々で対応してきた復帰のリハビリをシステム 化して提供している。

女性医師部会は、施設長側のニーズと、女性医師の意識を橋渡ししていくことから始める必要 があると感じた。その手始めが、女性医師バンクになることと思う。女性医師のニーズ、病院側 のニーズをうまくマッチングし、少しずつでも復帰し始める女性医師が増えてくれば、施設側も それに合わせて変化してくるだろう。今回の病院長等との懇談会は、そう遠くはない「半数が女 性医師」という時代になったとき、「男女ともに働きやすい環境」が実現するための一歩であった と思う。

※ 1 お問い合わせ先:
沖縄県医師会女性医師部会(担当:崎原、山城)
TEL:098-888-0087 FAX:098-888-0089
E-mail:oma-joibukai@okinawa.med.or.jp

※ 2 お問い合わせ先:
琉球大学医学部附属病院専門研修センター(担当:玉寄)
TEL:098-895-1372,1373 FAX:098-895-1500
E-mail: rsenmon@jim.u-ryukyu.ac.jp