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の思想」―こそ

喜久村徳清

三原内科クリニック 喜久村 徳清

昨年の沖縄県医師会報8 月号、緑陰随筆に、 “「の思想」―を”の原稿を寄稿後、にやた らと敏感になっていた。脱稿直後の6 月、通い なれている真和志中学校区域に突然、「気・をつ けて、声かけ、目をかけ、見守って」(健全育 成会)の立て看板が立ち、沖縄県広報紙、美ら 島沖縄7 月号に「をつけよう、海のキケン生 物」の特集記事が載った。「月刊元気読本」を 目にし、げんき予報便(九大ひさやま研究室) は本人の将来の健康状態を予報するひさやま元 気予報コンピューターソフトを紹介していた。

今年3 月24 日WBC の優勝決定戦、イチロ ー選手の決勝打により世界一となった日本チー ム、サムライジャパンは「力とチームワー ク」が勝利の源(監督の記者会見)―と。沖縄 県医師会館前から眺められる視野の中に元気荘 が建ち、元気不動産も出現した。与儀げんき公 園、元気薬局。女性全国誌特集記事に「気はあ なたをしあわせにする」。「いただ気ます」

☆☆

の情報、文献は人類発祥の時より古今東 西、いたる所にあり、日々連なり増えていき、 集めだしたらそれだけで人生が終わってしまう と作家五木寛之は悟り、然の一部である 自分・・の考えを述べた「元気」を著し出版した。 人間は力、能力、体力の三つのはたらきをも つ生きもの・・・・で、単にスポーツの世界で「気力を ふりしぼって」というにとどまらず「」は宇 宙にみなぎるエネルギー、大自然の力であると 実感する。は4 千年の歴史をもつ深遠な東洋 思想の中枢を成すもので、東洋医学の気血水 論、気功、陰陽五行論、の心理臨床等、書籍 にこと欠かない。気は生命、生存、生活に密接 に関わり、五木は見えない「」の流れの存在 を感じとってほしいと「気の発見」(対話)も 出版した。

☆☆☆

西洋でははスピリット(Spirit)に通じ る。スピリチュアル、スピリチュアリティとい う語が派生して多義的である。グレイス (grace)、およびその関連語、グレイスフル、 グレイスフルネス、グレイシャスという意味あ いも含んでいるという。

スピリチュアル・カウンセリング、スピリチ ュアルヒーリング、スローライフ、スローフー ド、平原綾香の「Jupiter」、「千の風になって」 「大きな物語」なき時代、「スロー・イズ・ビュ ーティフル」、ブログにみるスピリチュアリテ ィ、今週のスピリッツ、スピリッツ全集、スピ リッツ編集部、スピリッツDiary、スピリチュ アル旅行情報、スピリッツエアロ、恋愛スピリ ッツ、侍スピリッツ。

ナラティグ・セラピー、アルコホリクス・ア ノニマス(AA)、ガイアシンフォニー。

米国のカウンターカルチャー、欧米の新しい ニューエイジ、ビートルズと東洋思想、グロー バルなスピリチュアル文化、サブカル、グロー カリゼーション、ビーグッドカフェのネットワ ーク、村上龍はスピリチュアルな世界を「ふる さと」と表現、ロハスブーム、スピリチュア ル・データブック、江原現象、スピリチュア ル・コンベンション、すぴこん。

“I’m not religious, but spiritual”

「心のケアとは異なるスピリチュアルケア」 ―というものがある。

スピリチュアルは流行し、そして去っていく (のか)。医療の分野で特に遅れているという。 ブームのあとに残された次の展開。課題は“医 療・看護・介護の現場にも重なって表れるスピ リチュアルペインへの対応”、“スピリチュアル・リテラシー”―の問題。

☆☆☆☆

昨年11 月3 日、沖縄県医師会主催の囲碁大 会に初心者ながら出場した。S 六段は懇親の場 で「囲碁はづきのゲーム」と自説を展開し、 思いがけずに意投合。さらに学生時代から囲 碁に打ちこんだ身としては、武道にも相通ずる 火花(ひらめき)を散らす真剣勝負の世界があ り、囲碁の団体戦では先峰、次峰、中堅、副 将、大将がおり、まさしく武道であり、武勇伝 もお持ちであった。沖縄の囲碁会は全国的にも レベルが高い―と。私は“「いき」の構造”を 著した哲学者久鬼周三が“江戸っ子に見た垢抜 けした張りのある艶っぽさ”を知った大学時代 を想い出しながら聞いていた。

今はバレーボールチーム「那覇マスターズ」 に入って一年が過ぎ、昨今の懇切丁寧なスポー ツ解説書も読み、全身の筋肉、神経、関節に気 を配りながら、新鮮なさわやかな気・づきに出会 っている。この他人から見て変りばえのしない スポーツを飽きなく続けられるということは大 切なことにちがいない。スピリットとは物をエ ネルギーに変える炎のようなものである―と。

昔は“以心伝心”という言葉があり、言わず とも分っているという雰囲気があったが、現在 の事細かに細分化された複雑な世の時代には、 コミュニケーションの大切さを各方面で聞く。 かつて「(K)空気が(Y)読めない」を意味す る略語「KY」が新語・流行語大賞にノミネー トされた(平成19 年度)。報道によると当時の 安倍首相ご本人がそう言ったとかいわれ流行語 になった。そしてKY は是か非かの全国紙(朝 日新聞)によるアンケート調査も行われ、その 結果はほぼ相半ばした。その中で「あえて空気 を読まない術もあり、ストレスを感じない、我 が道を行くにはその方がいい」等の声も紹介さ れた。大層な時代になったものである。

明治開国150 年になる今、100 年に一度の世 界大不況に落ちいり、政府は景気てこ入れに躍 気になっている。沖縄では自殺者が毎月40 名 超が4 ヵ月も続き、全国的にも自殺者11 年連 続3 万人超のニュースが流れる(平成20 年の 自死者32,249 人)。かのベトナム戦争で、米 軍々属関係の死亡者が3 万人にはるかに及ばぬ という数字を知る時、知らないところで3 万人 超の自死の記録が続いていることは“何という ことであろうか”と思わずにはいられない。

夢をみた。

「ブームになり、今は静かになった、、 spiritual が失われることはない」―と。

正夢、本当であってほしい。

参 考
1)五木寛之:元気 幻冬舎文庫
2)五木寛之:気の発見(対話) 幻冬舎文庫
3)アレキサンダー・ローエン(村本、国永訳):からだのスピリチュアリティ 春秋社
4)黒木賢一:<気>の心理臨床入門 星和書店
5)磯村健太郎:<スピリチュアル>はなぜ流行るのか PHP 新書