沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 8月号

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平成21 年度第1 回都道府県医師会長協議会

宮城信雄

会長 宮城 信雄

去る6 月16 日(火)、日本医師会館でみだし 会長協議会が開催された。

はじめに、唐澤人日本医師会長から「今日 にでも骨太の方針あるいは基本方針2009 が決 まる。根本的に大きなものが達成されるかどう か分からないが、我々は自らの努めを果たし、 国民医療のため医療崩壊から守るということを 大切にして頑張っていきたい。今後ともご指導 に賜りたい」と挨拶があった。

引き続いて協議に移り、羽生田常任理事の司 会のもと都道府県医師会から提案(抜粋)され た12 題と日本医師会から提案された3 題、計 15 題について協議、説明が行われたので概要 について報告する。

協 議

(1)国の医師確保・救急医療体制のあり方 について(佐賀県)

<提案要旨>

今年度当初予算で国(政府・厚労省)から示 された医師確保・救急医療体制について、補助 事業の特徴として救急医療や産科医療に従事す る勤務医等への「新たな手当の創設」に対する 直接的な補助となっていること、県などの自治 体からの補助がない場合も国からの補助金のみ で実施できることになっていることから、県等 が実施しないことにより医療機関の負担増の問 題や医療機関格差を可能性もある。又、補助事 業がなくなった場合は、就業規則を変更してい る医療機関が100 %負担することにもなりかね ない問題がある。日医は、安易な国の対策を受 け入れるのではなく、OECD 並みの医師数を 確保するための政策や、主要先進国並みの対 GDP 比総医療費を実現するような、抜本的な 政策の実施を求めていくべきである。同補助金 等に関する日医の考えをお聞きしたい。

【内田常任理事回答】

医師の偏在・不足問題の根本的な解決策は、 診療報酬の引き上げによって医療全体の底上げ を図り、医業経営の改善、安定を担保することであると考えている。それにより病院は十分な 数の勤務医を確保でき、且つ労働に対する適正 な評価が可能となり、勤務医の長い労働時間や 過酷な勤務環境の改善を果たすことができる。 日本医師会では、救急勤務医支援事業や産科医 等確保支援事業はあくまでも医療費が十分に引 き上げられるまでの臨時、過渡的な措置である と考えている。この点を政府与党行政に対し強 調している。

この補助制度は、都道府県や市町村が負担し なくても実行可能な利点がある反面、地域の財 政力の差によって新たな格差を生じかねない危 険性もある。そこで日本医師会は、厳しい経営 状況にある医療主が負担することができず補助 制度の実効性が著しく損なわれる恐れがあるこ とから、救急医や産科医の処遇改善を図るとい う事業の趣旨に則り、国庫補助率の引き上げと 補助額の増額を要求している。

また日本医師会では、二つの補助事業と併 せ、21 年度補正予算によって創設される地域 医療再生基金を活用することで、医師会を中心 とした連携と継続の地域医療体制の再構築を図 るべきと考えている。医療費の引き上げによる 恒久的な財源確保とともに、地域医療再生基金 や各種補助事業によって医師の確保、救急医療 対策を実現していきたいと考えているので、都 道府県医師会においても行政に対する折衝を強 力に進めていただきたい。

質疑では補助事業に日医も賛同しているよう な印象を受けるが、補助金で暫定的に給料(手 当て)を上げるということはおかしい。それよ り救急に関する診療費を上げるべきであるとの 意見が出された。それに対しては内田常任理事 から、当然診療報酬を上げることを基本として いる。直接的にはなかなか手当てできてないと いうこともあり補助事業が提案されている。病 院個々あるいは地域特性といったものがあるか と思うが活用できるとお考えのところは是非ご 利用いただきたいとの説明があった。

(2)有床診療所の活用について(山ロ県)

<提案要旨>

平成19 年4 月現在有床診療所の数は12,638 施設と20 年前と比べ半減している。激減の大 きな要因は、有床診療所の診療報酬、特に入院 基本料が低すぎることである。平成22 年度診 療報酬改定では、是非、有床診療所の活用につ いてご高配いただきたい。

【今村常任理事回答】

質問の中で、第五次医療法改正で新規開設が 容易でなくなった感があるとのことだが、これ については特例が設けられている。地域で特に 必要があり、医療計画に記載または記載される ことが見込まれる診療所の一般病床は、病床過 剰地域か否かに関わらず、許可ではなく届け出 により設置できるようになっている。都道府県 における医療審議会で、地域で特に必要な診療 所であることを説明いただければ比較的容易に 開設可能なものと理解している。

無床化が進んでいるということについては、 診療報酬上の評価が低いことが主な原因と考え ている。日本医師会の対応として、現在、有床 診療所検討委員会で中医協での診療報酬引き上 げのための理論構築を検討している。また有床 診療所の現地施策も企画し、厚労省の担当者に 現場を視察していただき、地域住民のニーズに 応え地域の医療を支えているということを理解 してもらうよう活動を進めている。また、参議 院厚生労働委員会の中でも有床診療所に関する 質問をしていただき、舛添厚生労働大臣から、 今後活用方法を検討し然るべき支援をしていき たいという答弁をいただいている。また今年は 8 月19 日に都道府県医師会有床診療所担当理事 連絡協議会を初めて開催するので、先生方のご 意見ご要望を踏まえ適切に対処していきたい。

(3)開放型病床の運用について(徳島県)

< 提案要旨>

地域医療を推進するためにも、また、医療機 関相互の連携強化を図るためにも、疾病構造の 変化、患者・家族のニーズの多様化等にも対応した、開放型病床の弾力的な運用が不可欠であ る。日本医師会として国に対し、強くその弾力 的運用について要請していただきたい。

【藤原常任理事回答】

開放型病院共同利用施設について届出を行っ ている病院は、平成20 年度において796 施設 であり、平成18 年度の729 施設から67 施設増 加している。開放型病院の代表格である医師会 病院は15 病院あり病床が16,129 床、その内開 放型病床は12,336 床で約76 %を占めている。 開放型病床は、開業医と勤務医との連携、かか りつけ医と専門医との連携にとって有効な手段 であり、また医師の偏在・不足問題にとっても 病院勤務医の解決策となる。

開放型病院の推進策について、過去の全国医 師会共同利用施設総会等の議論において、共同 指導は、患者のベットサイドやステーションで 開業医と病院勤務医がディスカッションを行う ことが理想であるが、両者の時間が合わないた めに複写式の共同指導伝票に開業医が気になる 点や指導内容を書き勤務医がその回答を書くと いう方式をとるケースや、医師会の中で開放病 床委員会を設置しているというケースの報告を いただいている。また、開業医が円滑な開放型 病院の中で、オーダリングシステムや電子カル テ等に対応できるよう、医療プランの設置推進 等も考えられているところである。ご指摘のよ うに地域における包括的な医療体制の確立が必 要であり、そのためには地域医師会を中心とし た開業医と開放型病院との連携体制作りが重要 と考える。

今年の12 月20 日には全国医師会共同利用施 設の臨時総会を日医会館で、また平成23 年9 月3、4 日には定時総会を山形県で開催する予 定であり、開放型病床に関する積極的な議論が 行われることを期待している。その上で開放型 病院共同指導用の弾力的な運用や開放型病床の あり方について地域医療が円滑に進むよう検討 していきたい。

(4)新卒看護師の免許登録までの身分等に ついて(秋田県)

< 提案要旨>

看護師・准看護師の資格試験に合格した養成 所等の卒業生は、免許の登録が完了するまでに一 定の期間を要する。医療従事者不足の現状から、 本来の看護師・准看護師として速やかに就業でき るべきであり、また可能ではないかと考える。

【羽生田常任理事回答】

医師、看護師に限らず、国家試験を合格した 時に免許が与えられるものではなく、登録して 初めて免許が与えられたことになる。国立病院 等でも、看護師を雇い入れた際は登録をして初 めて看護師としての職に就くことになり、それ までは日雇いの看護補助者ということで勤務さ せている。研修医についても、研修が始まって 直ぐに医師免許がある訳でなく、5 月に入って から免許をいただくということが多く、それま では医療行為はさせずオリエンテーション等を 行っている状況である。国家資格全てにおい て、登録され初めて免許の資格があるというこ とであるため、残念ながら4 月1 日から直ぐに 看護師として働けるという状況ではない。早く 登録するための一番のネックは学校が3 月末で ないと卒業が決定しない。卒業が決定して初め て登録の下地ができるということであり、それ から診断書を作り保健所に出し県を通過して厚 労省に届くということであり、免許を発行する までに非常に時間がかかる。

(5)日本医師会館敷地内禁煙について (愛媛県)

< 提案要旨>

第120 回日本医師会定例代議員会で、「日本 医師会館を敷地内禁煙に!」という熱い要望が あった。敷地内禁煙にするための環境整備につ いて検討する必要があるとの答弁であったが、 その後の経過と方向を伺いたい。

【内田常任理事回答】

一昨日、日本医師会館における2009 年世界 禁煙デー記念講演会が開催された。その際、日本医師会としても受動喫煙の防止という視点か ら敷地内禁煙に対して前向きに検討するという ことをご説明申し上げたところである。

平成15 年3 月に「禁煙推進に関する日本医 師会宣言」を代議員会で決議し、その中に医師 会館の全館禁煙を盛り込んでいる。これに伴い 館内完全禁煙を実施し屋外に喫煙所を設け分煙 を徹底した。またその後、屋外の喫煙場所を開 閉扉から離し更なる受動喫煙の防止を図ってき たところである。

タバコの害に関しては、発がん性の問題に留 まらずCOPD 等広く健康に影響を及ぼすことは 医療関係者ならずとも理解が進んできている。 しかしながら会議等で来館される方の中には喫 煙される方がまだまだ少なからずおり、敷地内 禁煙を実施した場合、喫煙される方々が屋外の 別の場所で喫煙されることになり、受動喫煙の 防止という視点からは必ずしも望ましい状況に はならないことも考えられる。このようなこと から、現時点では敷地内禁煙に至っていないと いう現状である。ご指摘は十分に理解しており、 その意義も認識しているので、改めて会内での 検討を踏まえ結論を出したいと考えている。

(6)要介護認定方法の見直しの問題点につ いて(京都府)

< 提案要旨>

今回の要介護認定方法の見直しの大きな問題 は、毎日新聞の報道にもあった、「要介護認定平 成21 年度改正案」と題した資料の中身である。

この資料では、「要介護1」と「要支援2」の 比率に地域差がみられる上、厚生労働省の想定 と異なり、要介護1 と要支援2 の比率が5 対5 となっている現状を問題点として指摘し、その 原因を「要介護認定審査会委員が判断基準を拡 大解釈している」と分析し、対策として「要介 護認定審査員の関与を減らし、地域差をなくす とともに当初想定していた割合に近づける」と している。認定審査会の責任にしながら、この ことの背景にあるのは介護費の抑制策であっ て、非該当とされた一次判定が重度に変更され る割合を10 %減らせば「約87 億円縮減でき る」とも記載されている。

京都府医師会では、京都府下の各市町村の依 頼を受け、医師の認定審査委員の推薦を行って いる。多忙な先生方に無理をお願いして審査委 員を引き受けていただいている。このような改 悪が続くなら、審査委員などお断りという方が 出てきてもおかしくない状況である。

このことに関する日医の考えと、今後の日医 の対応についてお伺いしたい。

【三上常任理事回答】

先ず、新聞等の報道にあった厚労省の内部資 料の問題については、要介護認定の検証検討会 でも議題となっている。厚労省老健局の調査結 果では、老健局内で財源確保等が求められる可 能性があったことから、約1 年前の平成21 年 度予算要求の検討に当たり実現可能性を問わず 局内における議論のための材料として作成した 資料ということであった。

要介護認定の見直しにあたり、今回実施した モデル事業において、新たな要介護認定方法に よる判定で、要支援2 が約45 %、要介護1 が 約55 %という結果が出ており、新認定は介護 給付費の削減を意図したものではないというデ ータが示されたとして厚労省から説明があっ た。ただやはり動機は不純ではないかという疑 念は吹っ切れてはいない。

今年度の介護報酬改定では、介護従事者の処 遇改善等を目的にプラス3 %の改定ではあった が、要介護認定において全体的に軽度に判定さ れるようことが起これば事業者にとっては減収 となり処遇改善が実施できなくなるということ になる。そうなれば、そもそもの介護報酬改定 の目的にまで影響してくる問題であると考えて いる。

一方で、日医として、今回の見直しの方法や その手続きについて当初から疑間を持ってお り、介護給付費分科会の場において、要介護認 定の見直しについての検討の場をもつよう強く 意見をしてきた。その後も厚労省に対し、再三 に際し早期検証を行うよう主張した結果、厚労省は当初9 月頃の検証を予定していたが、それ を4 月に前倒しし、要介護認定の見直しに係る 検証検討会という形で検証を行う場が組織さ れ、議論が開始されたところである。要介護認 定の見直し後の状況について、検証に耐えうる 新しいデータ量を揃え、当検討会で検証を行う とともに、要介護認定制度の整備を行うため、 引き続き議論を行う予定であり、本会としては 検討の場においてこれ以上現場での混乱が起き ないよう意見する所存である。

また、認定結果に不満があれば、申請によっ て元の要介護度に戻して良いという今回の経過 措置については、厚労省としては利用者の安定 的な介護サービスを確保し利用者の不安を解消 するという観点から設けたとしているが、本会 としては、施設側からの観点も考慮するよう、 例えば、重度変更された場合に元に戻すことが ないよう、厚労省に対し強く意見を申し入れ、 施設に不利が被らないようQ&A を示したとこ ろである。

今回の見直しについて、認定調査では、基本 的に観察や聞き取りに基づき、選択肢を選び、 介助の補足等の情報を特記事項に記載すること により一次判定のばらつきを減らし、介護認定 審査会による二次判定で、特記事項等を勘案し 適切に判定を行う方法へと変更したところであ る。本会としては今回の見直しにより、主治医 意見書と介護認定審査会の役割はますます重要 になっていると認識している。確かに経過措置 が設けられたことによって却って現場の混乱を 増幅させ、認定審査会が形骸化されたとして考 えられたこともよく理解しているが、あくまで も利用者への不安解消という趣旨をご理解いた だき、今後も円滑な要介護認定の実施にご協力 いただくようお願いしたい。

(7)介護報酬改定の問題点(京都府)

< 提案要旨>

改定の問題点

T基本報酬は上げず加算中心の改定

1)今回の改定では基本の報酬は上げず40 を超える加算と新設が中心。2)サービス提供 加算3)地域区分の見直し4)加算要件が不明確

U利用者への配慮に欠ける

介護報酬のアップは利用者の一部負担増と なり、支給限度額は変わらないのでサービス 利用の変更を余儀なくされたり、利用ひかえ につながる。

V保険料のアップにつながる。

介護保険は介護提供料が増えれば保険料が 上がる仕組みとなっている。今のままの制度 では、介護報酬のアップは保険料のアップに つながる。

以上、今回の介護報酬改定に伴う問題点の一 部を述べた。これ以外にも多くの問題はある が、もともと介護という人間的な行為に保険制 度がどこまでマッチするのか、どちらにせよ措 置として高齢者を支えるべき公費負担の多くを 保険料で賄おうとする国の姿勢を根本的に見直 す時期に来ているのではないか。

【三上常任理事回答】

一つ目の間題点として、「T 基本報酬を上げ ず加算中心の改定」について、ご指摘のよう に、今回の介護報酬改定では基本報酬がほとん ど上がらず加算で評価を行う仕組みとなってい る。日医としては、介護給付費分科会において 介護従事者の処遇改善を実施するためにも介護 サービス基本報酬の全体的な底上げをすること が必要であると主張してきた。しかしながら、 介護保険財源の配分を考慮した上で厚労省は平 成20 年通常国会で成立した「介護従事者等の 人材確保のための介護従事者の処遇改善に関す る法律」を踏まえ、手厚く人員を配置している 等処遇改善に努力している事業者に対し、介護 報酬上の評価をより充実させ、事業者が処遇改 善を図ることで介護報酬の効果を一定程度得る ことができるよう、一定の要件を必要とする加 算という方式をとっている。本会としては、努 力している事業所を評価することについては理 解しているが、例えばサービス提供体制評価加 算等、介護福祉士以外の従事者の勤続年数や常 勤職員の割合の上で評価するとした仕組みについては問題があり、その指標については疑問が あると申し上げている。これについては、検証 検討会の方で検討することになっている。また 地域区分についても、今回は人件費の高い大都 市や人材確保が難しい過疎地について手厚くし ているが、請求事業所の60 %から70 %を占め るその他の地域については見直しが行われてお らず、その結果サービスや人材の偏在を通じ地 域間の格差がより広がることが懸念される。な お、今回の介護報酬改定における介護従事者処 遇改善について、現在分科会の下部組織、調査 実施委員会において検討が行われているところ である。妥当性のないものについては次回の改 定において改善していくことになっている。本 会としても現場からの問題点について随時厚労 省と協議していくつもりである。

二つ目の問題点として、「U利用者への配慮 に欠ける」というご指摘について、介護サービ スの単位数が上がることにより利用者の一部負 担が多くなることは事実であり、対応に苦慮さ れている利用者、サービス提供者がおられるこ とは大きな問題であると認識している。介護報 酬の改定と支給限度額の問題については、介護 給付費分科会においても問題点として挙げられ ていたが、支給限度額については、プラス改定 に伴って支給限度額を引き上げるべきという意 見がある一方で、支給限度額の引き上げにより 保険で手当てするサービス量が増えることとな り、保険財政にとって負担増になるという意見 があった。厚生労働省より、要介護認定者の介 護サービス利用率の平均は支給限度額の5 割か ら6 割であると説明があったが、これはあくま で平均の利用率であり、中には上限のいっぱい を使っている方もおり、この4 月からこれまで と同様の介護サービスを受けることができなく なる利用者がいることも事実である。支給限度 額は介護サービス利用者にとって受給できる量 を示すものであり、介護報酬の改定毎に変更す ることが制度運営において妥当であるかどうか は制度体系の見直しに繋がる。また、本来介護 サービスは、ケアマネジメントを行い、ケアプ ランを作成し利用者の安心と安全を支えること が重要である。そのために支給限度額を見直さ なければならないということであれば、法律の 見直しが必要であり、限度額の設定方法も再考 すべきであると考える。厚労省としても今回の 介護報酬改定に伴い、既に区分支給限度額の上 限までサービスを利用している方に対するサー ビス提供について課題があるということは認識 しており、そうした課題を踏まえ、次の介護保 険制度の大きな制度改正に当たり慎重に議論し ていく必要があると考えている。

三つ目の「3)保険料のアップにつながる」と いう問題点について、介護保険制度は給付費の 半分を40 歳以上の方から保険料で賄っており、 サービスを利用する者と利用しない者との公平 性の観点から、介護保険サービスを受けた場合 には原則として1 割負担することになってい る。今回の介護報酬改定に伴い、利用したサー ビスの費用が増える場合についてもその1 割を 利用者が負担するともに、介護給付費の増加に 伴い保険料が上昇することになる。介護サービ スの質と量の確保のためには、その時の社会経 済の状況を見た上で適切な介護報酬の見直しを 行うことになるが、同時に利用者の負担増に繋 がることにもなる。利用者の自己負担について は、一定の軽減措置や1 割負担が高額とならな いよう世帯全体での上限、あるいは生活が困難 と市町村が認めた低所得者に対しては社福等が 1 割負担を一定程度軽減するという軽減措置が 講じられている。また、被保険者の負担につい ても、第二次補正予算において、今回の介護報 酬改定に伴う保険料の上昇を抑制するための措 置が講じられている。利用料や保険料が増加す ることは被保険者である国民にサービスの需要 供給及びその内容について納得してもらう必要 があり、単純に自己負担の増加で善し悪しをみ るのではなく、国民にとって介護保険のあるべ きすがたを目指すことが重要であると考えてい る。保険財政は税金等で徴収した財源をもっと 投入すべきであるということであれば、そのよ うな方向で制度を改善すべきであると考える。支給限度額や保険料については、介護保険制度 運営に直結する大きな問題であり、介護保険法 の見直しを含めた制度のあり方について検討 し、国民に広く受け入れられる施策を目指すと いうことが必要である。

(8)新型インフル1 ンザ(HlN1)対策につ いて(埼玉県)

< 提案要旨>

今回、水際対策の効果不十分、診療拒否との 批判、医師の補償、診療をする者への防護服等 の提供問題等、様々な問題が露呈したが、幸い にも弱毒性であったため、あまり大きな問題に ならなかったと考える。しかし高病原性鳥イン フルエンザ由来の新型インフルエンザであった 場合を考えると、従来の行動計画、ガイドライ ンでは大問題に発展した可能性もある。これら の問題点について、今後、日本医師会は国にど のような働きかけを行うか。5 月22 日に舛添厚 生労働大臣の会見で示された2 つにテリトリー を分けるという考えなら、災害救助法の適応、 またはこれに準じた法整備をした方が良いと思 うがいかがか。WHO のフェーズ分類と国の行 動計画における段階分類の整合性について調整 するつもりはあるか。

【飯沼常任理事回答】

5 月16 日に神戸で集団発生が報じられたが、 その前日の15 日に、舛添厚生労働大臣と日本 医師会をはじめ三師会との会議があり、その際 に唐津会長から新型インフルエンザに対する6 項目のことについて要望した。1)国民に対する 正確で有用な情報の提供、2)新型インフエンザ ワクチンの対策と充実、3)抗インフルエンザウ イルス薬の備蓄と拡充と分配ルートの確立、4) PPE の十分なサプライ、5)発熱外来等の充実 とそれに対する補助、6)発熱外来等に出務され た際の補償の問題、を申し上げ、最後に鳥型イ ンフルエンザに対する監視も怠らないようお願 いした。

日本医師会では、5 月18 日に厚生労働省か ら担当官を招き、今回の新型インフルエンザは 強毒でないというデータが集まってきたので、 運用について弾力的に行ってほしいという申し 入れをしている。それを受け、5 月22 日に政府 は新型インフルエンザに対して、各地域の実情 に応じて図るようにということを示した。また PPE 等を備えるための予算を付けるというこ と、補償について前向きに考えるという答えを もらっている。

今後の働きかけについては、もう少し落ち着 いてから、新型インフルエンザで学んだことも 含めて、厚労省と協議していきたい。災害救 助法等の法律の問題は、補償に関しては厚生 労働大臣が前向きに考えると言っているので、 具体的に相談したいと考えている。WHO のフ ェーズの問題と日本の感染ステージの問題に ついては、感染症法で1 類を残しておかないと 強制入院がさせられないということがあり、法 律が絡んでくるので、弾力的な運用として理 解しても良いと考えるが、今後も検討してい きたい。

質疑では、補償については是非明文化してい ただきたい。又日本の行動計画が良くできてい るので、日本医師会がフェーズ分類に行動計画 を加味したひな型を作成して、WHO に提起し ていただきたいとの要望があった。

(9)日医の「総合医認定制度」創設について (岡山県)

<提案要旨>

1)昨年10 月以降、日医での「総合認定制度」 に関する検討はどのようになっているのか、 検討の内容、経緯、今後の予定等について教 えていただきたい。

2)過去日医は、フリーアクセスの制限、人頭 制、定額払いにつながるとして、この制度創 設に反対してきた。今回は、日医が主導的に 創設することこそがフリーアクセスの制限、 人頭制、定額払いに結びつかない唯一の方策 であると述べているが、このあたりに会員の 多くは矛盾と不安を感じているのではないか と思う。従ってこの問題は、認定制度に絡めず、別途取り組むべき課題ではないかと考え るが日医の考えをお聞きしたい。

【飯沼常任理事回答】

総合認定制度に関する議論は、その後進んで いない。現在は、日医生涯教育制度認定証の価 値を高めるため会内委員会でカリキュラムの問 題等について検討している。カリキュラムにつ いては、日本医師会雑誌、日本医師会ホームペ ージにも掲載したが、地域医療を担う医師の負 担が大きくならないよう既存の講習会形式の学 習方法に加え、新しいカリキュラムを含めたE ラーニングを作成する等、多様な学習方法、単 位取得方法を検討している。制度全般について は、学術推進会議の作業部会を通して会長諮問 の「医師の生涯教育と認定医制、専門医制」へ の答申に向けて検討していくことにしている。 又、生涯教育推進委員会では、平成22 年度以 降の単位取得換算方法や生涯教育認定証の発行 基準について検討している。

総合認定制度については、関連の3 学会で早 急に意見を纏めて執行部で検討した上、都道府 県医師会にお示ししたい。

質疑では、3 学会で検討することについて日 医会内で検討すべき問題として、日本医学会所 属の意見を聞いていただきたいとの意見が出さ れた。

(10)受診時の保険証確認について(徳島県)

< 提案要旨>

徳島県医師会支払基金によると、平成20 年 度において保険証資格関係誤りによる過誤調整 金額は全国で約350 億円、徳島では4 億5 千万 円になっている。またそのうち、保険証資格喪 失後の受診によるものが全国では約175 億4 千 万円、徳島では1 億5 千万円という巨額を呈し ている。

解決策として、究極的にはデジタル化された 社会保険証カードの導入が有効と思われるが、 それまでの暫定処置として、受診時に必ず保険 証の確認を行なう運動を日本医師会として全国 的にしてもらうことを提案する。

【藤原常任理事回答】

保険証の確認については療養担当規則により、 患者から療養の給付(保険診療)が求められた 場合には受給資格を確認しなければならない。

保険証資格確認誤りには保険者側の問題と医 療機関側の問題がある。日本医師会としては、 以前被保険者証の一人一枚のカード化と被保険 者記載内容の自動化、オンラインによる資格確 認システムを厚生労働省に要求してきたが、年 金問題を発端に社会保障カード導入の検討が平 成19 年に閣議決定され、それが淘汰している 現状である。

医療保険の資格確認システムが完成すること で、診療報酬をデジタルで請求する意味が医療 機関側に出てくる。個人カードになるとカード に入力しておく情報が各省庁の思惑で複雑にな るし、プライバシーの問題も発生して中々進展 しないのではないかと心配している。

ご提案の「受診時の保険証確認運動」につい ては、医療機関としては保険請求するためには 当然の義務であると思う。日医としても保険者 の問題やカード化については厚生労働省をとお して保険者を指導するよう要請していきたい。

(11)勤務医の入会しやすい日本医師会にす るために(三重県)

< 提案要旨>

日本医師会の勤務医の環境に関連する委員会 は10 委員会近くに及ぶと考えられるが、その 関連する委員会で、例えば1)日医会費それに含 まれる医賠責保険料と勤務医賠償責任保険の問 題の検討2)日本医学会に所属する107 学会の 内45 学会と未加入の6 学会に認められている 50 の広告可能な専門医名の問題3)全会員一律 に送付されている日医雑誌の内容の検討4)会 員管理コストの算出5)定款の検討等を行なっ て、勤務医が入会しやすい環境を作るという立 場で考える必要があるのではないかと思慮され る。執行部の見解をお伺いしたい。

【三上常任理事回答】

勤務医問題が初めて取り上げられたのは昭和58 年4 月の代議員会で、その翌月には勤務医 委員会が設置されている。委員会に対する初期 の会長諮問は「勤務医の日医入会促進の方策」 で、その後、「勤務医の生涯教育制度」、「医師 会組織強化への勤務医からの提言」、「勤務医と 医師会活動」、「医師不足偏在を図るための方 策」「過重労働」等で、ご提案された件につい ては様々な見地から検討され施策が講じられて きている。

例えば、勤務医の医師賠償責任保険について は、A2 会員(B)で対応し、更には研修医向 けにA2 会員(C)が設けられている。この中 でA2 会員(B)については、全体的に会費を 値上げしなければならない状況の中で55,000 円に据え置き、A1 会員のみ55,000 円から 70,000 円の引き上げを行なった経緯があり、 A2 会員(C)についても55,000 円から34,000 円の引き下げを平成19 年度から行なっている。

入会手続きの簡素化については、前期の定款 諸規定検討委員会で議論され、最終的には現在 の入会方法以上の簡素化は望めないという結論 が出されている。また、勤務医の生涯教育につ いては、申告率向上に向けて制度の改定やカリ キュラムの改定が行なわれ学会の認定医専門医 制度との関連等が論じられてきた。

日医雑誌については、勤務医、開業医等多様 な医師の集団であり、全ての医師が知っておく べき、あるいは持っておくべき医学医療の内容 であるということを方針として作成されたもの であることをご理解いただきたい。また加重労 働に関する喫緊の課題については、昨年設置し たプロジェクト委員会で検討され、11 月に島 根県で開催される全国都道府県医師会勤務医部 会連絡協議会で報告されるものと思っている。

昨今、国の審議会においては開業医と勤務医 を対立軸として捉える傾向が強く見られてい る。背景には診療報酬の総枠抑制、医療関係団 体の分断、医師会組織率の弱体化という意図が 明白であり、医師として共通の使命の下、大同 団結しなければならない。それに対して、昨年 医師の大同団結を目指す委員会が立ち上げられ 具体的な答申が取りまとめられている。今後、 具体的な方策が示されることを期待していると ころである。

勤務医入会促進は、単なる組織の拡大に終わ るのではなく、組織力の強化に繋がる必要があ る。様々な活動の中で、医師会活動の重要性を 知ってもらうこと、そして医政にも関心を持っ てもらうことが非常に重要であると考えてい る。それぞれの地域の実情に合わせてより一層 の取組を進めていただくようお願いしたい。

(12)後発医薬品使用促進事業について (福岡県)

< 提案要旨>

本件においても、後発医薬品促進事業の一環 として、モデル事業の実施が検討されており、 後発医薬品に変えた場合の自己負担額の軽減額 が大きい方を対象に、後発医薬品に切り替えた 場合の自己負担額の差額を通知し、患者に直 接、後発医薬品使用を促す取り組みを行なう内 容である。このような露骨な手法は容認できる ものではない。日医のこの種の事業に対する考 えをお伺いしたい。

【藤原常任理事回答】

後発医薬品については国を挙げて実施されて いるところであり、社会保障の国庫負担分 2,200 億円の手当てとして、昨年度220 億円、 今年度は230 億円計上されている。予算上様々 な対策が講じられている。ご指摘のモデル事業 もその一環である。

後発医薬品に対する厚生労働省の見解は、品 質、有効性、安全性は先発品と同等としてい る。また副作用が生じた場合も先発品と同様に 副作用被害救済基金が適用されることになって いる。患者さんが自己負担額の軽減のために後 発医薬品を希望された場合、医師として不満が あれば、患者さんにしっかり説明する必要があ り、またそのやりとりが患者さんとの信頼関係 の構築にも繋がっていくものと思う。

中医協検証部会における平成20 年度の後発 医薬品使用状況調査では、薬局も医師も未だ後発医薬品に対する不信感があり、それを解消す る必要があると評価している。

後発医薬品を使うより先発医薬品の特許期限 がきたら単価を下げるべきとの意見について は、当然そうあるべきで、合わせて検討してい くことになっている。

療養担当規則では投薬を行なうに当たって後 発医薬品の使用を考慮する努力義務が規定され ている。5 月20 日に開催された中医協では後発 医薬品の使用促進を本当に進めたいなら国立病 院から取り組むべきで、個人の診療所にプレッ シャーをかけることは意味がないし、そのよう な対応はしないように話している。そのような 通知がだされるよう現在厚生労働省と調整中で ある。

質疑では、提案した福岡県から後発医薬品使 用に反対するものではない。あくまでもモデル 事業の通知内容が、患者さんと医療機関との間 に不信感を招く恐れがあり、このモデル事業の 通知内容はやりすぎである。1)この通知文書が 患者さんに送られるということ2)会員は指導を 受けることについては不安があり、後発医薬品 を使用しないという事だけで、軽々指導対象に しないよう監視してもらいたいとの要望があっ た。又、ジェネリックカードが協会健保、国保 でも配布されようとしている事例について紹介 があり、慎重に進めるようお願いしたいという こと。日本でも米国と同様に先発医薬品の全成 分を公開できるよう努力してもらいたいたいと の意見等とが出された。

(13)レセプトオンライン請求について(日医)

竹嶋副会長から、去る5 月29 日付で送付し た「レセプトオンライン請求完全義務化への対 応指針について」説明があった。

平成21 年3 月31 日に「規制改革推進のため の3 ケ年計画」再改定が閣議決定され、例外な く完全な義務化であった規定が「完全」ではな くなり、各種の例外を認める方針となった。閣 議決定を改正させたことは非常に大きなこと で、地元選出国会議員の働きかけなど、会員の 先生方のご支援の賜である。引き続き厚生労働 省令に規定されている義務化スケジュールの実 施に当っての例外措置並びに代行請求について 鋭意折衝を続けている。

(14)“「医療安全調査委員会設置法案(仮称)」 に関するアンケート調査”結果報告につ いて(日医)

木下常任理事から、先に各都道府県医師会に 実施したみだしアンケート調査結果について報 告があった。

アンケート調査の結果は、賛成が27 都道府 県(57.4 %)、どちらかと言えば賛成が11 都道 府県(23.4 %)、併せて80.9 %。反対を示され た県が8 県(17.0 %)。どちらでもないが1 県 (2.1 %)となっている。

主な賛成意見は100 %我々医療界にとって思 うようなものではないものの一歩進めて現実的 な対応をするということではないかと思う。主 な反対意見は、委員会が捜査する事例の具体的 な点がみえないということが第一点。遺族が告 訴した場合にその場合どうするかということが 第二点、また以前も出た問題だが、5 月21 日か ら改正検察審査会法ができ、これは2 回の審査 を持って一般の国民が起訴する権利を保障した ということであるが、そのことについてどのよ うに行うのかということが第三点となっている。

日医で医療事故に対する責任問題検討委員会 を立ち上げているが、そこでは具体的に通知す る内容の検討、重大な過失の内容、行政処分で の対応等を具体的に検討している。特に大事な ことは、このような仕組みは医療界だけで決し て決まるものではない。従って、患者の代表、 マスメディア、患者の弁護士等を含め議論し、 合意点を見つけて決めていくというものであ る。8 割の先生方に賛成をいただいているので これを押し進めたいと思っている。又、問題点 はクリアしていきたいと思う。

(15)地域医療再生基金について(日医)

内田常任理事から、今年度補正予算で地域医療再生基金の創設が承認された。各都道府県医 師会において、早急に、地域医療対策協議会等 より、「地域医療再生計画」の策定作業に取り 掛かっていただくことが、必要として下記「地 域医療再生基金」について説明があった。

※域医療再生基金

都道府県が地域の医療課題の解決に向けて 策定する「地域医療再生計画」に基いて行な う、医療圏単位での医療機能の強化、医師等 の確保等の取り組みを支援。

「地域医療再生基金」事業のあらまし

○趣旨

  • ・地域医療の課題を解決するため、都道府県 が策定する「地域医療再生計画」に基づ き、事業を実施する。

○地域医療再生計画の策定

  • ・都道府県が、2 次医療圏(複数医療圏可)を対象に策定
  • ・平成21 年度中の策定を基本
  • ・計画期間:5 年間程度
  • ・総額3,100 億円/年。10 医療圏:100 億円、70 医療圏:30 億円

○基金の設置

  • 1.国が地域医療再生計画を認定し、費用を都道府県に交付
  • 2.都道府県が、地域医療再生基金を設置

○補助対象事業

  • ・救急、周産期医療などについて医療機能連 携による診療機能の強化や、持続的な医師 確保の仕組みづくりのための事業
  • ・地域の実情に応じて実施するため、あらか じめメニューを限定しない。
  • ・対象経費は、ハード(施設・設備整備)、 ソフト(事業運営)の費用双方
  • ・既存の国庫補助事業との併用可

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