沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 7月号

医療IT 製品の実際

浦崎貴志

浦崎整形外科クリニック 浦崎 貴志

平成16 年に開院して早くも5 年目に入りま した。今回は若手コーナーの場をお借りして当 院で運用している医療IT 製品の実際をご紹介 します。これから開院や導入を考えておられる 先生方の参考になれば幸いです。

他の開業の先生方と同様に当院でもカルテ保 管庫、レントゲンフィルム保管庫の省スペース を考え、開院当初より電子カルテ、レセプトコ ンピュータ、CR ・画像ファイリングシステム を導入しました。電子カルテ・レセコンは開院 前に沖縄県医学会会場でデモンストレーション されていたSRL 社(現在はCMS 社に移管) の電子カルテと日本医師会のORCA レセコン、 CR は富士フイルム社のデジタル画像システム、 画像ファイリングシステムはPSP 社のシステ ムを導入しました。いずれも開院前に実際に運 用されている開業医の先輩方の施設で見学させ ていただきました。

電子カルテはペンタブレットで入力でき、定 型文や約束処方・処置リストを登録しておけば そのままコピーできるのですばやく指示が出せ ます。患者さんに対する処置を入力後、A5 用 紙にプリントアウトし看護師が内容を確認して 私の処置の介助や点滴静注などを実施します。 処置の完了後はA5 用紙を保存します。ORCA レセコンとの連携もスムーズで会計処理もしっ かりしています。ただ、機能が豊富なのはいい のですが実際の診療の流れに合わず使っていな い機能もあります。個々のクリニックにあわせ て機能を選択できればソフト自体も軽くなりト ラブルも起こしにくくなるのではないかと思い ます。開発元に問い合わせたことがありますが、 個別の機能選択はなかなか難しいようです。 ORCA レセコンは導入コストが低く、種々の帳 票も豊富で経理や決算時に助かっています。開 院後2 度大幅な診療報酬改定がありましたが、 電子カルテ・レセコンともに改定前の年度内に CD − ROM やインターネットを経由して新しい 診療報酬の内容に対応できていました。

CR はコンパクトな設計で場所をとりません。 モニターのタッチパネルで患者情報を入力し専 用のカセッテでX 線撮影を行います。撮影後の カセッテを本体に挿入するとデジタルで画像を 読み込み、画像ファイリングシステムのサーバ ーに画像データを送信、診察室の電子カルテで 画像を呼び出し表示する仕組みです。画像を表 示するモニターは少々値は張りますが高解像度 のモニターを選択した方がフィルムと同様な診 断が可能だと思います。整形外科の性質上、当 院では身体各部位の撮影が多くカセッテも各サ イズを使用しますが、今のところCR 本体の大 きなトラブルはありません。他院への紹介や自 賠責の書類作成などでフィルムが必要な場合は 専用のプリンターでB4 のフィルムにプリント アウトします。また豊見城中央病院、那覇市立 病院、県立南部医療センターなどからの紹介患 者さんが持参するCD − R の画像データも当院 の画像ファイリングシステムに取り込むことが できるので便利です。さらに、定期的に自動で DVD − R にサーバーの画像データのバックア ップを行ってくれます。

平素は使い勝手も良く非常に重宝している電 子カルテ、レセコン、画像ファイリングシステ ムですが、コンピュータのハード類はやはり消耗品で、5 年目になるとさまざまなトラブル、 アクシデントが生じてきました。早く生じた例 では3 年目で電子カルテサーバーのトラブル (診療中に「コンピュータが固まる」)やレセコ ンの会計処理・帳票印刷ができず患者さんを待 たせてしまうという事態がありました。こうい う事態の場合、まず遠隔操作で電子カルテメー カーの処理が入ります。これで解決不可能な場 合は県内業者の担当者が来院し直接処理にあた ります。

当院の事例は短時間で解決しなかったため電 子カルテサーバーの代替機を設置してもらい対 応しました。また、トラブルではありませんが 「コンピュータの反応・処理が遅い」という現 象も起こりました。個人で使用するコンピュー タと同様な症状で、扱うデータ(患者情報)が 増えたためアクセスに時間がかかっていたよう です。これは電子カルテサーバーを増設するこ とで対応できましたが、それなりにコストがか かりました。当初より予測できれば開院時にま とめてメーカーと交渉できたと思います。メー カーも最近ははじめからサーバーを増設したり 容量を増やすように勧めているようです。

画像ファイリングシステムでも4 年目にサー バー本体の電源ユニットが故障する事態が起こ りました。こういう事態に備えて元々2 機の電 源ユニットが搭載されており、故障箇所の交換 で解決しました。また、実際の運用面での利便 性として電子カルテ・レセコンで患者さんを受 付し情報を入力した時点でCR のコンピュータ に情報を連携できればX 線撮影時間もさらに短 縮できると思います。この点を導入前に確認で きればよかったと思っています。

医療IT 製品は非常に便利で特に省スペース が図れる点は有用と思いますが、ハード類は消 耗品でトラブルを生じたり、いずれ買い換えの 時期を迎えることを考えながら運用しています。 特にトラブル時は診療がストップし利益の損失 にもつながりかねません。導入時はコストを押 さえることや使い勝手も大事ですが、信頼でき アフターサービスをしっかりと行ってくれるメ ーカー(国内でのシェアの大きいメーカー)を 選択することが最も重要だと実感しています。