常任理事 真栄田 篤彦
去る年5 月28 日(木)、日本医師会館におい て標記担当理事連絡協議会が開催されたので、 その概要を下記のとおり報告する。
当日は、司会の羽生田常任理事より開会を宣 する挨拶で会が進められ、冒頭、唐澤会長は 「昨年の12 月1 日に公益法人制度が施行され、 既に複数の団体が認定・認可を受けている事は ご高承のとおりである。日本医師会でもできる だけ早い段階で新法人制度に合致した新法人に 移行できるよう鋭意努力しているところであ る。その取り組みの一つとして、会内に定款・ 諸規定等改定検討委員会を設置し、新制度に合 致した定款等の検討をお願いし、今般、その改 正案が取りまとめられた。
本日は、当定款案等の解説及び意見交換を目 的に当連絡協議会を開催した。日本医師会とし ては、この度の、公益法人制度改革に当たり、 円滑に法人格の取得が行えるよう都道府県医師 会並びに郡市区医師会と連携・協力していく所 存であり、そういう意味でも本日の協議会が公 益法人制度改革に向けた対応の一助となれば幸 いである」と挨拶を述べられた。
その後、定款等諸規定案の解説、質疑応答、 新公益法人制度説明会・新公益法人制度の対 応(財務面)に関するモデル研究事業(案)の 報告が行われた。
解 説
昨年の12 月に新公益法人制度が施行され、 移行期間の平成25 年11 月迄に、新法人制度に 基づく一般社団法人又は公益社団法人の認可を 受けなければ解散となる。一般と公益の違い は、雑駁に申しあげると、基礎の部分は同じ で、公益の場合はその上に公益認定が加わると いうことになる。日医は、公益を目指すことを 前提に進めているが、定款案はどちらでも対応 ができるよう準備をしている。本日は公益社団 の定款案を中心に説明する。
従来の定款と今回の定款改正の大きな特徴
○手続きが厳格になっていることと透明性が高 まったこと。
○法律では重要事項は社員総会で決める事にな っているが、日医は、社員総会を代議員会に 置き換えることとし、従来の総会は廃止する。
○代議員会では、理事、監事、会計監査役を選
任し、その後、理事会において理事の中から
会長たる代表理事、副会長、常任理事たる業
務執行理事を決める。
但し、代議員会において会長候補者の選任は
できるよう規定にした。
○代議員会は3 月末に臨時代議員会、6 月末に 定例代議員会を開催し、3 月代議員会では、 予め理事会で決議した事業計画と予算の報告 を行う。6 月に代議員会では、役員の選任と 決算(計算書類)について承認決議する。
質疑応答
予め各都道府県医師会から寄せられた質問に 対し、手塚参与及び羽生田常任理事、今村常任 理事から回答があった。なお、主な質疑応答は 以下のとおり。
質問:定款第3 条(目的)、第4 条ならびに同2 項(事業)、第11 条(報告、発表及び意見具申)
医師会の事業は公益目的事業より共益目的事 業の方が多く、公益目的事業比率50 %をクリ アするのは困難ではないのか。
回答:平成16 年度に新公益法人制度改革の有 識者会議が報告書を出しているが、その中で、 法人が提供するサービスの受益が特定の範囲に 限られた場合であっても、その受益の効果が社 会全体や充分に広い分野に及ぶ場合を意図して 積極的に事業を行い、その事業を媒介にして社 会全体、或いは広い範囲に利益が及ぶ場合は、 不特定多数の利益になると判断するのが適当で あるという考え方が示されている。したがっ て、医師会の事業はその考え方に該当するのが 多いと考える。
質問:定款第5 条(組織)
組織として医師を条件とすることは必要か。
回答:医師会は医師の職能団体であり、医師を 条件とすることが必要。
質問:第28 条(役員等の選任枠の設定)
理事や代議員の選任に際し、開業医枠、勤務 医枠といった人数枠を設けることはできないか。
回答:法律上問題はないが、その枠を設定する 場合、合理的な関連性、必要性を明示する必要 がある。日医でも検討したが枠の括り方が難し いということと、枠を設けない方が平等である として、枠を設けないことにした。
質問:第29 条(会長が欠けた場合の代理)
従来の定款は会長が欠けた場合は副会長が職 務を行うとなっていたが、新法人では代理制度 はできないのか。
回答:内閣府は、理事会の権限を失うとして代 理制度は認めないと説明している。但し、この ような場合は、内規的に順番を決めて対応すれ ばいいのではないか。
質問:定款第33 条(役員等の選任)
会長を選任する方法は規定されているが、副 会長、常任理事の規定がない。
回答:代表理事候補者の中から代表理事を決め るという規定を推し量ると、副会長、常任理事 も同様に決めていけば良いと思う。運用を工夫 すれば良いのではないか。ただ、当該条文は未 だ検討の余地があると思う。
質問:定款変更案について内閣府公益認定委員 会の内諾は得られているのか。
回答:懸念事項等については公益認定委員会の 事務局に確認しながら作成したが、内閣府公益 認定委員会と直接調整したものではない。
質問:新法人と母体保護法第14 条との関係に ついて
1)この度母体保護法が改正され、母体保護法を 指定する要件が「社団法人」から「公益社団 法人」の医師会・・・に改められたが、今後 どうなるのか。
2)新法人制度への移行期間中の指定は従来通り 都道府県医師会で行えるのか。
回答:1)厚生労働省に確認中である。公益であ ろうが一般であろうが支障の無いように厚労省 と詰めていく。
2)移行期間中は、従来どおり都道府県医師会 で指定できることになっている。
質問:公益認定は都道府県毎に設置される公益 等認定委員会で判定されるため、同じような事 業を行っていても異なる結果が出る可能性はな いのか。
回答:各都道府県における判断は、公益法人の 認定法令、ガイドライン等に基づいて審査され るので、基準は統一である。
質問:日医は公益法人と一般法人の二つの定款 案を示しているが、どちらを採用するのか。
回答:日医は、昨年5 月の当連絡協議会におい て、公益認定を目指し、今年の秋の代議員会に 定款変更案を提出すると説明したが、秋の代議 員会への提案は困難状況となっており、昨年の 発言は取り消す。でも、できるだけ早く新法人 に移行出来るよう努力したい。
質問:日医の定款案は代議員会制が採られてい るが、多くの郡市区医師会は総会制であり、そ の定款案も示して頂ければ有り難い。
回答:総会制がベースの定款案については、既 に内閣府が提示しており、本日資料としても配付してあるのでご参考いただきたい。代議員制 よりも総会制の定款の方が作成し易い内容とな っている。
報 告
今村聡常任理事より、新公益法人制度への対 応について以下のとおり報告があった。
(1)新公益法人制度説明会について
希望する都道府県医師会並びに郡市区医師会 の役員、職員を対象に、講師を派遣し標記説明 会を開催するので、是非ご活用いただきたい。
なお、期間は本年8 月迄とするが、相談に応 じる。講師旅費、謝金等は開催都道府県医師 会、郡市区医師会負担とする。
(2)新公益法人制度への対応(財務面)に関 するモデル研究事業(案)について
経理的対応については公益法人、一般法人の いずれに移行する場合でも、新・新会計基準へ の対応を進める必要があるが、その進め方が分 からない医師会も多く、先行事例が待たれてい る。そこで先行事例をつくるべく日本医師会が 日医総研モデル事業として実施することとし た。内容は、新・新会計基準への対応、財務基 準充足の検討、収支計画の作成、経済的メリッ ト・デメリットの検討に主眼を置く。
同事業に賛同して頂ける2 〜 3 のモデル医師 会を指定する。費用は日医が負担する。
最後に、宝住副会長より、「新公益法人制度 への対応については、日医としても引き続き都 道府県医師会に各種の情報を迅速に提供すると 共に、移行に向け円滑な対応ができるようお手 伝いするので、今後とも新法人移行へご尽力を お願いしたい」との閉会の挨拶が述べられ会が 終了した。
印象記
常任理事 真栄田 篤彦
公益法人に関して、そもそもの制度改革の目的は「民による公益の増進」といいます。民間非 営利部門の活動の健全な発達を増進し民による公益の増進を促進することで、これまでの制度 (現行制度)の問題点の解決するための制度改革に当たる訳です。
平成12 年に「行政改革大綱」が閣議決定してから今日までの期間を要して平成20 年12 月1 日 制度の施行となり、平成25 年11 月30 日までに新制度への移行期間の終了になります。
社団法人は今後、一般社団法人か公益社団法人に制度移行しなければならなく、移行期間内に 移行の申請をしていない法人は強制的に解散させられます。
日医は公益社団法人へ移行を検討しており、今回その移行に関連して日医の定款の変更につい ての説明と各都道府県からの質問に対する弁護士等からの回答がありました。
都道府県医師会レベルでは公益社団法人への移行が主流になるかもしれませんが、会員数の少 ない地方・郡市医師会は一般社団法人を選択する可能性もあります。
沖縄県医師会では、公益法人制度に関しての専門家を招聘して勉強会を開催し、各地区医師会 がどちらの法人を選択するかという今後の流れに関して検討できるよう企画しています。