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平成20年度 第6回沖縄県・沖縄県医師会連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る3 月23 日(月)、県庁3 階第2 会議室に おいて標記連絡会議が行われたので以下のとお り報告する。

議 題

1.厚生労働省:小児救急医療電話相談事業 #8000 について(県医師会)

<提案要旨>

先般、厚生労働省から発表された、#8000 の 全国調査では、同事業を実施していない県は沖 縄県と富山県の2 県との報告があった。

子供の急病に対して早期に治療してほしいと 願う親の不安を背景に、必ずしもすぐに受診す る必要のない患者についても救急病院で受診す ることが多く、救急病院の小児科医の負担が増 大している。同事業は親の不安を解消し、患者 の症状に応じた適切なアドバイスを行ない、同 時に夜間軽症例の救急室受診を減少させる事が 期待できる。

こども医療センター救急室2007 年の調査で は、夜間救急室に電話での問い合わせは6,848 件/年で、その内小児は4,927 件(70 %)を しめ、看護師は救急室業務を行なう傍らの電話 対応は業務に支障を来している。また昨年、中 央・南部福祉保健所が行なった保育園でのアン ケート調査によると、651 人の親に‘軽い病気 での救急受診を減らす方法は?’との質問に対 し、‘専門家に電話で相談できる体制がある’ と答えた親が全体の76.4 %あった。

今般、沖縄県公務員医師会より、「同事業に ついては、以前一度見送られた経緯があるが、 沖縄県における、小児救急医療の向上、地域社 会に対する県の医療サービスの一環としてこの 事業を行なう意義は大きいと考える。沖縄県医 師会で再度検討いただきたい。」との依頼があ った。

ついては、同事業の今後の進め方について、 沖縄県福祉保健部のお考えをお伺いしたい。

<福祉保健部の回答>

沖縄県における小児救急電話相談事業につい ては、他県での利用実績や県内の救急病院の整 備状況から導入は予定していないが、小児軽症 患者の来院が病院救急業務に支障をきたしてい ることは承知している。

このため、福祉保健部としては、小児急病時 の適切な医療機関のかかり方について保護者等 に普及啓発を行う“小児救急医療啓発事業”を 平成21 年度に委託実施することで新規に予算 計上をしている。

事業の実施に当たっては、小児科医師や市町 村、医師会等から構成する委員会等を立ちあげ、 効果的な啓発を検討していただく予定である。

なお、先月(2 月)開催した沖縄県救急医療 協議会でも同様の意見があり協議を行ったが、 小児科医の先生方を含めて、21 年度は“啓発 事業”に力を入れていこうとのご意見もいただ いたので、当面そのように取りくんでいきたい。

<主な意見等>

■啓発事業の予算も確保できたので、21 年度 は普及啓発事業に取り組んでいきたい。啓発 事業の成果もみて、今後の対応を検討してい きたい(福祉保健部)。

□生まれてから○○歳まではどこの医療機関 に、○○歳から○○歳まではどこの医療機関にというような形が作れないか。県医師会で も、以前、産婦人科医と小児科医の先生方に 集まっていただき、出産時に産婦人科でそう いう指導ができないか、かかりつけの小児科 医につなげることができないか協議したこと があるが、纏まらなかった(県医師会)。

■どういった手法があるのか、どういった方を ターゲットにすれば効果があがるのか、検討 のうえ、ポスター等の作成について調整して いく(福祉保健部)。

■平成21 年度について、啓発事業の予算が確 保できたので、その効果をみて#8000 事業に 移行するかどうか検討していきたい(福祉保 健部)

□ #8000 については、5 年前沖縄県救急協議会 でも話し合われたが、あの時点では県立病院 が頑張っているのでいらないとのことであっ た。しかし、南部医療センター・こども医療 センターが出来てから状況は変わっている。 現場から要望が出ており、医師の負担を軽く していきたいので、再度検討をお願いしたい (県医師会)。

□九州でも、沖縄県を除いて実施しているとの ことであった。しかし、病院への問い合わせ は7,000 回近い件数がきているとのことであ る。小児啓発事業でポスター等作成されるの であれば早めにお願いをしたい(県医師会)。

■前回立ち消えになった背景は、相談があった 時点では何でもなかったのに、あとで事故に なるようなことがでてきた時の責任はどうす るかということであった(福祉保健部)。

2.新宮古病院整備基本計画(案)に関する 意見公募について(県医師会)

<提案要旨>

去る3 月4 日付、沖縄県病院事業局長より 「新宮古病院整備基本計画(案)に関する意見 公募について」通知があった。

当文書によると、前年6 月に宮古病院整備基 本構想が策定され、その内容を踏まえながら、基 本計画について検討を行ってきたとの事である。

これまで県立病院に関する問題は、沖縄県医 療審議会や県立病院のあり方検討委員会等で検 討を行い、沖縄県知事へ報告書、答申を行って いる。しかしながら、今般の「新宮古病院整備 基本計画(案)に関する意見公募について」に 関しては、これまで本会でも審議等に参加して いないことから情報が得られていない。

本件について、病院事業局担当者に問い合わ せたところ、基本構想については、福祉保健部 統括監、県立病院長、宮古島市副市長、宮古福 祉保健所(オブザーバー)により策定され、今回 意見公募のある基本計画(案)については、病 院事業局内で検討され作成したとの事であった。

ついては、下記3 点についてご教示願いたい。

  • 1)基本構想および基本計画(案)に関する審 議経過について
  • 2)地域連携必要性の観点から、宮古地区医師会 を含む医師会の参画が無かったのは何故か
  • 3)今後の展開について

<福祉保健部の回答>

1)基本構想および基本計画(案)に関する審 議経過について

第1 回基本構想検討委員会 (平成19 年5 月31 日:本庁会議室)

・基本構想素案について審議 (改築の必要性、宮古病院の医療機能等)

第2 回基本構想検討委員会 (平成19 年7 月26 日:本庁会議室)

・宮古地区医師会長及び宮古保健所長 (オブザーバー参加)から提出された意 見に関する審議

・基本構想素案について審議 (新病院の施設整備に係る基本的考え方)

第3 回基本構想検討委員会 (平成20 年5 月31 日:本庁会議室)

・基本構想案の取りまとめ

2)地域連携必要性の観点から、宮古地区医師会 を含む医師会の参画が無かったのは何故か 平成19 年7 月26 日に開催した第2 回検討委員会において、中村貢宮古地区医師会長がオ ブザーバーとして参加し意見を提出している。

3)今後の展開について

今後の作業については次のとおり予定。

  • 21 年3 月 基本計画の策定
  • 4 月 基本設計発注のための準備作業(〜 6 月上旬)
    平成22 年度国庫要請に関する内部調整
  • 5 月 内閣府との意見交換
  • 6 月 基本設計の公募(〜 9 月中旬)
  • 8 月 国庫要請
  • 9 月 基本設計発注
  • 12 月 22 年度国庫内示
  • 22 年3 月 基本設計完成
  • 4 月 実施設計発注
  • 11 月 実施設計完成
  • 23 年2 月 改築工事着手(24 年度下半期竣 工、25 年度上半期新病院開院)

<主な意見等>

□現場からの意見を尊重し、金をかけず効率の 良い又は現場が働きやすい環境を考慮して構 築していただきたい(県医師会)。

□公的病院を新築する時は、莫大な金がつぎ込 まれるので、支払がきちんと出来るようにし ていただきたい。現場の使いやすい病院であ ることや1 床当たりの占める面積も考慮し て、いろんな方の意見を取り入れて立派な病 院をつくっていただきたい(県医師会)。

□将来的には電子カルテを導入することになる と思われるので、倉庫をたくさん作るのでは なく、いつでも間切り出来るような構造にし た方が良い(県医師会)。

■庁内のオーソライズがされていないのが気掛 かりである(福祉保健部)。

□行政の考え方を変えて欲しいというのが趣旨 である。県立病院の構築にあたっては民間医 療機関との連携を踏まえて作ってほしい。そ ういう中で、初めから委員として医師会が参 画していなかった事は問題である(県医師会)。

■そもそも老朽化していたものを改築するのが 目的である。検討委員会が一時中断されてい たのはあり方検討部会との整合性を図るため である。八重山や中部、精和病院に関しても 今後同様である(福祉保健部)。

3.肝炎に対するインターフェロン治療費助 成制度について(福祉保健部)

<提案要旨>

・厚生労働省が示す「新しい肝炎総合対策の推 進について」に基づき、本県においても、平成 20 年4 月からウイルス性肝炎のインターフェロ ン治療に対する助成制度を実施している。

・初年度は、予想を上回る件数の助成を行った が、まだこの制度を知らずに利用できていない 方もいると思われるため、会員の先生方への周 知をお願いしたい。

・また、今後は琉球大学医学部附属病院を肝疾 患診療連携拠点病院に選定して、専門医療機関 やかかりつけ医との診療連携を強化していく予 定である。

【制度の概要】

・助成制度は、県が指定する医療機関の診断書 や関連書類を保健所へ申請し、認定されれば 原則として1 年間助成を受けることができ る。この場合、患者さんの自己負担限度額が 所得に応じ月1 万円、3 万円、5 万円と定め られている。

・平成20 年4 月から平成21 年2 月末までに、 当初の予想を上回る215 件の助成を行ってい る。平成21 年4 月からは、症例によっては 助成期間を72 週間に延長することも可能と なる見込みである。

【診療連携について】

・ウイルス性肝炎の医療提供体制を整備するた め、県では琉球大学医学部附属病院を肝疾患 診療連携拠点病院に選定する方向で調整を行 っている。拠点病院に期待される役割とし て、肝疾患の一般的な医療情報の提供、県内 の医療機関等に関する情報の収集や提供、医療従事者や地域住民を対象とした研修会や講 演会の開催、肝疾患に関する専門医療機関と の協議の場の設定等がある。

・今後は、拠点病院を中心に、専門医療機関や かかりつけ医の連携強化のもと、C 型肝炎治 療ガイドラインに基づくインターフェロン治 療を推進している。
(添付資料)

・ウイルス性肝炎患者の診療体制

・肝疾患診療連携拠点病院選定後の沖縄県内 の医療提供体制イメージ

<主な意見等>

□ B 型肝炎も対象になるのか(県医師会)。

■ B 型でもインターフェロンの治療であれば対 象になる(福祉保健部)。

□対象人数はどのくらいいるのか(県医師会)。

■正確な数は把握できていない。70 〜 80 人分 の予算をとっている。キャリアは、県内で 1,500 人前後ではないかと考えている。その うち、診療の対象は520 〜 530 人位ではない か(福祉保健部)。

■市町村の検診数から、これくらいだろうと試 算している(福祉保健部)。

4.医療機能情報の報告状況等について (福祉保健部)

<提案要旨>

医療法に基づく医療機能情報制度の報告状況 については、平成21 年2 月20 日現在におい て、病院(86 施設提出済み/ 94 施設中)、診 療所(560 施設提出済み/ 742 施設中)となっ ている。

県は医療機能報告の情報データの受け皿とな る「沖縄県医療機能検索システム−うちなぁ医 療ネット−」を構築、整備し、住民・患者によ る医療機関の適切な選択の支援を行うことにな っている。また、医療連携体制の構築に資する ため、保健医療計画に掲載する医療体制図・表 の更新にうちなぁ医療ネットを活用することに している。

しかし、診療所については、全報告中の6 割 が調査票(紙)による提出となっていること や、報告内容に記載漏れや誤記があることが課 題となっている。ついては、その対応につい て、沖縄県医師会のご協力をお願いしたい。

また、古謝班長より山形県で実施されている 地区医師会の代行入力について追加説明があ った。

1.課題:紙媒体で報告された情報のネット 掲載(代理入力)

  • 1)件数過多:離島や高齢などネット利用が 難しい場合の想定範囲を超えている。
  • 2)記載漏れや誤記の補正が必要(そのまま 掲載すると患者や県民に誤解が生じる。)

2.課題への対応に当たってのポイント

  • 1)各医療機関から報告された情報は県民に とって重要な情報であり、速やかにイン ターネットを通して情報提供する必要が ある。
  • 2)保健医療計画に定める「医療連携体制 図・表」の更新に当たって必要な情報で ある。
  • 3)紙媒体での提出は今後もあり得るため、 その取り扱いについて対応を決めておく 必要がある。
  • 4)診療所については、手術件数を除き、報 告内容が毎年度大きく変わることは少な いと想定される。

3.対応(案)

  • 1)報告の記載漏れや誤記の補正について⇒県
  • 2)ネットへの代理入力について⇒医師会

<主な意見等>

□本件はこれまで何回かに亘って提案議題にあ がってきた。それを受け、本会としても会員 への入力依頼を周知徹底してきたところであ る。また、代行入力に関しても県の方で入力 いただけるという内々の承諾を得てきたとこ ろである。今回の依頼は医師会への代行入力 であり、他府県でも実施されているようだが、県医師会での代行入力は無理がある。地 区医師会に依頼するにしても検討する必要が ある(県医師会)。

□そもそも紙ベースで依頼をしてきたことに問 題があり、ネットを介すのであれば始めから 紙を送るべきでない(県医師会)。

□必ずネットを介さないといけないという規制 はあるのか。レセプトオンライン請求と同様 にそういう規制がかかるのであれば医師会に とっても非常に大きな問題となってくる。医 療機関が必ずしもインターネットを導入して いるとは限らない(県医師会)。

■他府県でもネットのみでの入力は行われてい ない。紙媒体でも行っている(福祉保健部)。

■報告することは医療法で義務化されている。 報告方法は県知事が指定する方法で報告して いただく。沖縄県の場合は基本的にはインタ ーネットで報告していただくと県民にも迅速 に還元され、医療連携体制図表にも迅速に更 新が行える。代理入力については、ネットを 使用していない方が多くないと予想していた が意外と多かったので対応に苦慮している (福祉保健部)。

□本来、県で行うべきところを県医師会あるい は地区医師会に依頼するということであれ ば、費用補償を含めた議論をする必要がある (県医師会)

以上の意見を踏まえて、代理入力については 見合すことになった。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

平成21 年3 月23 日、県庁3 階第2 会議室にて平成20 年度最後の連絡会議が行われた。議題は 4 題(県から2 題、本会から2 題)であった。

「厚生労働省:小児救急医療電話相談事業# 8000 について」は県医師会・公務員医師会より 提案があった。福祉保健部の考え方は本文を参照いただきたい。導入に至っていない背景の一つ には、県立病院の小児救急医療の充実にあるように思われる。九州医師会連合会でも、# 8000 を 施行してないのは当県だけであった。日本医師会が平成20 年10 月に施行した「医師確保のため の実態調査」によると、小児救急電話相談事業(# 8000)についての効果は、47 都道府県中、 「かなりあった」が26.2 %、「ややあった」が38.1 %、「今後期待できる」が14.3 %との報告で、 他県では活用されそして評価されている現状が提示されている。福祉保健部は21 年度に‘小児救 急医療啓発活動事業‘を積極的に行いたいと述べていた。更に、他県では、小児救急の初期医療 において、近隣の医療機関と連携を取りながら行っているのが実状である。特に、千葉県は人口 10 万人あたりの小児科医の数が全国一少ない中でも、診療所医師が中核病院の小児救急外来(初 期医療)を担っていて、スムーズに行っているとのこと(電子カルテの対応・医療クラークの配 備やトラブルの担保等課題はあるが)。

「新宮古病院整備基本計画(案)に関する意見公募について」は本文にもあるように3 点につ いて提案した。基本構想検討委員会は2 年間(19 年度、20 年度)で3 回行なわれ、2 回目にオブ ザーバーとして参加した宮古地区医師会長および宮古保健所長から出された意見に対して審議したと述べている。最終結論は、平成21 年12 月の22 年度公庫内示にて決まるようである。診療現 場からの意見を尊重し、金をかけず効率の良いそして現場の働きやすい環境を考慮して構築して 欲しいとの意見もあり、また償還計画の範囲内で、かつ通常妥当な初期投資(民間病院レベル) を要望した。県立病院の構築にあたっては民間医療機関との連携を踏まえて造って欲しいし、初 めから委員として医師会の参画を要望した。

「肝炎に対するインターフェロン治療費助成制度について」は平成20 年4 月からウイルス性肝 炎のインターフェロン治療に対する助成制度を実施しており、会員への周知を依頼された。琉大 病院を肝疾患診療連携拠点病院に選定して、専門医療機関やかかりつけ医との連携を強化してい きたいと述べていた。キャリアは1,500 人前後で、診療の対象者は520 〜 530 名位ではないかと 推定し、また、平成20 年度は215 件の助成を行ったと報告している。

「医療機能情報の報告状況等について」は、現状報告と県医師会・地区医師会への協力依頼が あった。診療所や病院はその医療機能の情報を県に届ける義務があるが、調査票(紙)による提 出と「うちなぁ医療ネット」に入力することで提出したと認める二通りの方法を行っている。診 療所については、75.5 %(560 施設提出済み/ 742 施設中)の6 割が調査票による提出となって いることや、報告内容に記載漏れや誤記があることが課題とのこと。報告の記載漏れや誤記の補 正については県が行い、「うちなぁ医療ネット」への入力は医師会の協力を得たいと提案された が、医師会での入力は現状では厳しいと回答したが、引き続き検討することになった。

3 月で退職される伊波輝美福祉保健部長はドクターヘリと県立病院の諸課題について対策する のに、日々精一杯で、明日の事を考える余裕はなかったと話され、2 年間の在任中の医師会の協 力に対して感謝の意を述べていた。伊波部長はその小さな体にも関わらず、積極的に行動し、県 民の保健・医療・介護・福祉のためにご尽力いただき、あらためて、心より感謝の意を表したい と思う。