理事 當銘 正彦
去る、3 月19 日(木)、日本医師会館におい て開催された標記協議会について、その概要を 報告する。
挨 拶
中川俊男常任理事の司会進行のもと、冒頭唐 澤人会長(代読:宝住副会長)より次のとお り挨拶があった。
「本日は、お忙しい中、平成20 年度広報担 当理事連絡協議会にお集まりいただき、誠に有 り難うございました。執行部が誕生して早いも ので3 年が経ちました。私共はその間一貫して 広報活動の充実強化を最重要課題に位置付け取 り組んで参りました。その成果が少しずつでは ありますが現れております。郡医師会の活動や 見解がマスメディアに取り上げられる回数も多 く、また新たな広報戦略として2006 年10 月よ り開始致しましたテレビCM も好評で、国民の 医師会に対する関心度、信頼度は徐々にではあ りますが、高まってきております。3 月より新 たに制作した「勤務医・男性医師編、勤務医・ 女性医師編」のCM 放映を開始しております が、後ほどご覧いただきたいと思います。
本年は、衆議院選挙が必ず行われる年であ り、年末には診療報酬改定率が決定するなど、 我々にとっては大変重要な年であるといえま す。まずは骨太の方針2009 が閣議決定される 前に、2006 年から続けられている社会保障費 2,200 億円の機械的削減の撤廃の実現に向け、 執行部一丸となって精力的な活動を展開してい く所存でおりますが、その実現のためには国民 の理解は必要不可欠なものと考えております。
そういった意味からも、本年は広報活動がま すます重要になっていくものと思います。日本医師会では、今後、定例記者会見、日医ニュ− ス、白クマ通信等を通じて日本医師会の考える 政策や見解を迅速に発信して行く所存でありま す。先生方におかれましても、会員の先生方に 対する広報について、絶大なるご支援・ご協力 をお願い致します。
本日は出来るだけ多くの先生方よりご意見や ご要望をお聞きするため、協議に多くの時間を 用意しております。先生方におかれましては本 会の広報活動の更なる充実のために、忌憚のな いご意見をお聞かせいただければ幸いです。」
本日の協議会では、5 県の先生方がテレビ会 議で参加する旨連絡があり、続いて、野津原崇 広報委員会委員長より、広報委員会審議報告に ついて概ね次のとおり報告があった。
広報委員会はこれまでに4 回開催されており、 日本の医療を崩壊させないために、医師の力を 結集することを最重要課題として考え、組織強 化の観点から、広報のあり方を検討している。
まず、勤務医に何をどう伝えるのか、基本的 な問題から協議を行い、勤務医の声を積極的に 拾い上げてどうしたらよいかについて並行して 検討した。開業医と勤務医の対立の構図は相反 する利益が元になっていると考えられている が、事実に誤認がある。財源的な面でも、勤務 医の勤務環境が改善できる可能性は、医師会を 通じてしか有りあえないということを広報して いかなければならないと考えている。基本的な 考えとして、お互いの共通の理念である日本の 医療を守ることを、共に考え、共に活動して く、共通の意識を持つために広報の役割がある と考える。
具体的な方法・入口論として、会員の入会促 進の為、臨床研修医向けに日医の活動紹介の小 冊子を作成し、地域医療の研修、オリエンテー ションにて医師会活動の紹介、その際に配布を 行う。若いドクター、研修医にターゲットを絞 りアプローチしていくこと、face to face の関 係で取り組むことが重要である。また、IT の 活用について、今後は会員・非会員の壁を乗り 越えるツールとして検討していく必要があり、 例えば病診連携における情報交換のためにメー リングリストを作成し、勤務医に利用していた だく。情報交換しながら、勤務医が意見を述べ られる環境を作っていく。白クマ通信を非会員 にも枠を広げ、日医からの情報を送り易くして いきたい。ホームページに掲載している入会の ススメのさらなる充実が望まれる。以上の報告 の他、医師の象徴として医師会の共通のバッジ の作成や、医師会入会金の無料化、勤務医モニ ター制度をつくり、勤務医の先生方の意見を集 約、将来的には広報マンになっていただく等の 提案がなされた。
広報委員会では、毎回、日医のホームペー ジ、テレビCM、新聞等の意見広告の検討を行 い意見交換を行っているとのことである。
報 告
日医のイメージ戦略として2006 年10 月より 作成したCM の第1 段(「高齢者医療編」「学校 保健編」「医師の心ない一言編」)、第2 弾(「小 児救急編」「長期療養病床編」)の上映後、中川 常任理事より、2 年連続ACC ゴールド賞を受 賞した旨報告があり、また、この3 月より放送 している新CM「勤務医編:男性医師編、勤務 医・女性医師編」についても上映があり、東 京・埼玉・大阪の劇場計5 所にて、アカデミー 賞受賞映画「おくりびと」の上映前に広告とし て上映している旨報告があった。
引き続き、2006 年にテレビCM を開始して 以降、意見広告の効果を測定するための意識調 査を行っており、昨年の暮れに行った第5 回目 の結果についてスライドを用いて報告があった。
本調査は、一般生活者の日医に対する意識を 把握する目的で、全国の約1,100 サンプルの成 人男女を対象に、日医の認知状況、活動内容認 知状況、日医への関心度・期待度・信頼度・役 立ち度、広告認知状況等についてインターネッ トで行ったもので、前回行った事前の意識調査と比較し、広告の効果を考察した。概要は以下 のとおりである。
日医をどのようなマスメディアと通じて知っ たかの経路ついては、NHK のテレビ番組、ニ ュースを通じた経路が30 %を超えており、ま た、テレビCM を通じた認知のウェイトが回を 重ねるごとに上昇している。
また、第1 弾・第2 弾のいずれかのCM を見 たことがあるとした回答は、4 9 . 6 % から 57.4 %へやや上昇、テレビCM、新聞広告・意 見広告のいずれかを見たことがあるについて は、56.8 %から61.1 %へ上昇している。小児 救急医療編では、「確かに見たことがある」「見 たことがあるような気がすると」の合計は、第 1 段の高齢者医療編(39.6 %)、学校保健編 (25.2 %)、医師の心ない一言編(24.3 %)と 比べて50.1 %と非常に高い。療養病床編は 36.1 %となっている。
日医への関心度は第4 回では20.3 %まで上 昇したが、第5 回目では16.0 %と減少してい る。しかし期待度、役立度、信頼度について は、前回調査に比べスコアは上昇している。
日本医師会の活動について知っているものに ついて複数回答でいただいたところ、医療事故 の防止、医療政策の提言、生命倫理における諸 問題の解決が上げられたが、広報活動について は認知度が低い。
続いて、昨年の4 月から放送を開始した「鳥 越俊太郎の医療の現場」(BS 朝日)の番組PR を視聴後、当番組についても意識調査の結果報 告が行われた。「見たことがある」は12.7 %、 「知っているが見たことがない」を合わせると 30 %以上の人が当番組を認知していることが わかった。当番組を見た人のうち、日医に対す る期待が肯定的に変化した方が5 割を上回り、 日本医師会が国民、患者の為に役立っていると いう関心は4 割を上回っている。
テレビCM 放送開始後1 年間で日医に対する 関心度、期待度、信頼度および役立ち度は着実 に上昇し、前回のテレビCM 改訂によって更に 上昇したと認識している。日本医師会の認知経 路でテレビCM の比率が上昇し続け、テレビ CM の認知率も同じく上昇しており、広告に関 しては、テレビCM の累積効果が現れている。
意見交換・感想
テレビCM について
◇今回のテレビCM については、前回のCM と 比べほとんど目に触れる機会が少ないように感 じるが、放映する番組が視聴率を取れない番組 だと国民の目に触れないのではないか。どのよ うな基準で番組を選定しているのか、予算の問 題なのか、もし予算の影響があるなら、次年度 は予算の調整ができないか。
◆放映頻度、放映する番組の視聴率については 前回同様変化はなく、予算は少し多めに取って いる。今回のCM は内輪受けを狙っている。日 医が勤務医に対して真剣に取り組んでいるとい うのを理解していただきたい。
◇テレビCM の調査について年代別の詳しい結 果がないが、当CM については年代別にどのよ うな結果が出ているのか。また、トーンが静 か、文字が出てきてわかりづらいとの感想を患 者から聞くが、いかがか。
◆第一弾「学校保健編」では子持ちの主婦の評 価は高い。「高齢者医療編」はもちろん高齢者 からの評価がよい。種類によって評価が異な る。また、文字をとってナレーションだけにし てしまう等については、いろいろ演出効果があ るので、すべての年代の方に合ったCM を作る のは難しい。
◇全体的にトーンが暗いので、好まない方はず っと好まない傾向になる。トーンを変えてみて はいかがか。文字もコンパクトに印象付けては いかがか。また、劇場放映については、費用は どうしているのか。
◆代理店より、「おくりびと」が連日超満員な ので、映画上映前にCM を流すと日医のイメー ジアップにつながるのではとの提案を受けた。 2 週間の期間で、90 秒編の放映に日本医師会の予算より330 万円拠出した。東京都医師会、京 都府医師会、福岡県医師会についてはそれぞれ の医師会の予算で数十万円出されて放映された とのことである。
◇小児救急医療について認知度が飛びぬけて高 かたったように、今後のテーマは、一般の方々 が興味ある内容を取り入れたほうが良いので は。例えば、救急、病院がなくなっていく、医 師が辞めていく等、もう少しドラマティックに マスコミが言っているようなことを取り入れる と一般の方の認知も高くなるのではないかと思 うがいかがか。
◆今回のCM については、勤務医委員会に見て いただき、大変好評だった。
◇訴えている問題が暗いので、トーンも暗くて 良い、トーンを変える必要はないと思う。その 暗さが医師会だと、それも一つの認知になる。
◇テレビCM はサブリミナル効果があり、繰り 返すことで認知度が高くなるので、認知度の上 昇が止まったときに、スタンスを変えてみる検 討をしてはいかがか。また、テレビ視聴者の層 と、インターネット調査の層を同じとみなして いいか検証をされてから報告していただきたい。
◆インターネット調査の層は20 歳から69 歳ま で、そんなに差はないのではないかと考える が、バランスが悪いかもしれない。
◇市民、県民向けのフォーラム、講演会の開始 前に放映しようと思う。そうでもしないとなか なか国民の目に触れない。強制的に一般市民に 見せる方法を取るべきだと思う。テレビだけの 中で見てもらうは難しいと思う。
また、今回のCM で「医師不足」とあるが、 なぜ「勤務医不足」と表現しなかったのか。医 師不足の言葉を世の中に知らしめると医者が少 ないというイメージがつくので、勤務医が少な いとの認識を持たせた方がよいのでは。
◇低医療費政策がもたらした現場環境の悪化が 勤務医不足を助長しているとわかるような言葉 を入れたほうが良かったのではないか。
◇地域によっては勤務医も開業医も不足してい るところもあり、どちらに統一するかはもう少 し検討する必要があるのではないか。
◆一般向けの講習会等にCM を使用していただ ければテレビCM 以上の効果があるのではない かと期待している。よろしくお願いしたい。
また、医師不足ではなく、勤務医不足ではな いかとの意見については、十分承知している が、国民的な認識として勤務医不足も含め医師 不足という表現で合意されているので、今回は 「医師不足」という言葉を使った。
◇夢のある言葉があればよいのでは。
◇アクティブ、前向きな提案・提言があればよ いのでは。
◆ CM の性質は、説明しすぎないことが大事だ と認識して、その流れで作成している。
◇先の医療政策シンポジウムで慶応義塾大学の 田中先生が、日医の失敗は国民に対して社会医 療政策を提示できてないこととおっしゃってい たが、社会保障について国民意識は高いので、 マクロ経済として医療費の問題を国民にきちん と知らせていく等その部分の広報活動に力を入 れてもいいのではないかと感じる。医療・福祉 が経済復興に非常に大きな貢献を果たす役割を 担うとの考え方もでてきているので、そういっ た部分の広報を医師会が中心になって国民にア ピールする努力・戦略も必要ではないかと思う。
◇この短いCM で、内容を理解している人は少 ないと思う。「医師不足を日医が解決します」 といったきちっとしたメッセージがあれば良か ったと思う。
◇ CM については、予算の関係上、放映回数が 限られるので、日医の努力だけではなく、地域 医師会もCM を活用していただくことが重要で ある。本日お配りしたDVD を活用して末端の 医師会等で開催される市民講演会等で流していただければと思う。
広報全体について
◇生命を見つめるフォトコンテストについて、 マンネリ化しているように思える。日医の提言 がみえない気がする。選者を変えてみてはいか がか。
◆応募された写真の中から選ぶので限界があ る。選者の問題だけではないと認識している。 「心に残る医療」体験記作文コンクールは、す ばらしい内容が多く、現場の医師にとって力づ けられる内容となっている。今後も強力に取り 組んでいきたい。
最後に宝住副会長より、本日いただいた貴重 なご意見をふまえて今後の対応を考えていきた いとの報告があり、中川常任理事より参加への お礼が述べられ会が閉じられた。
印象記
理事 當銘 正彦
平成20 年度都道府県医師会広報担当理事連絡協議会が3 月19 日に日本医師会館で開催された。 全国からの広報担当者に加え、日医の広報委員会の十数人が参加しての会議である。沖縄からは、 小生と広報担当事務の津嘉山女史が参加した。会議のプログラムは以下の通りである。
- 1)唐澤人会長の挨拶
- 2)野津原崇広報委員会委員長の報告
- 3)中川俊男常任理事の報告
- 4)質疑応答
会議内容の詳細は津嘉山女史の報告を参照して頂くとして、私が今回、最も気に掛かったのは、 この全国から担当者を集合して設定された会議の予定された時間が僅か90 分という短時間であ り、折角のface to face の会議にしては物足りないとの印象を拭えなかったことである。
それでも質疑応答については、如何にも場馴れした中川常任理事の軽妙な司会で、多種・多様 な意見が出され、それなりに討論の盛り上がりがみられたのは収穫であった。
会議を振り返って印象に残ったことは、次の3 点である。
1)唐澤会長の挨拶や中川常任理事の報告より、日医は広報活動を極めて重要な課題として位置付 け、この間を取り組んで来たとのことである。その顕著な現れがテレビCM への進出であり、2006 年より都合7 本のテレビCM を制作している。しかも昨年、一昨年と2 年連続で全日本CM 放送連 盟フェスティバルのゴールド賞を獲得する程の力の入れようである。白犬のお父さんが登場する ソフトバンク・モバイルのコマーシャルが300 億円をかけてグランプリを取得しているとのこと であるが、3 億円弱の予算でゴールド賞を2 年連続受賞している日医の取り組みの効率とセンスの 良さを、素直に評価したいものである。
ところが質疑応答では、日医のCM のトーンが一貫して暗いイメージを与えていることに会場 からクレームが上がり、もっと明るいイメージのCM にすべきだとの意見が数多く出された。し かし一方では、しみじみと訴える現在のパターンを踏襲して流すことにこそ、CM としての効果が大きいとの反論もみられ、次作がどの様なものになるのか興味津々である。
2)テレビCM、新聞広告等の日医の広報活動に対する反応をみる意識調査の結果が公表された。 一般の方々の、この様な日医の広報活動への認知度は概ね50 %前後であり、また関心を持って広 報活動をみているのは20 %前後とのことであるが、成果としては何とか、及第点を与えても良い かと思った。
3)野津原崇広報委員会委員長の報告では、「医療崩壊」と言われる現状を打破するには、医師の 結集以外に突破口は無いという認識を強調された。このところの政府・厚労省の戦略は、限られ たパイの再分配による開業医と勤務医の対立を煽る方策が見え隠れするが、今こそ「日本の医療 を守る」という共通の理念で、全ての医師が日医のもとに大同団結をすることの重要性である。
その為には、如何にして勤務医を日医に加入して貰うかの方途が問われており、研修医への紹 介冊子の作成、非会員への白クマ通信の開放、医師会共通のバッジ作成、医師会入会金の無料化、 勤務医モニター制度等々の提案が為されているとのことである。
今年度作成されたテレビCM についても、「勤務医・男性医師編、勤務医・女性医師編」となっ ており、医療崩壊の実態が、勤務医の不足による病院医療の危機である状況を取り上げている。
この様に日医は今、真剣に勤務医へ大同団結を呼びかける姿勢を打ち出しているが、全国医師 連盟を結成した黒川衛氏や日医への反旗と挑発を繰り返す小松秀樹氏らの言動をみると、肝心の 勤務医側の反応が今ひとつバラバラな現状が気になり、気に病むところである。