アドベンチストメディカルセンター内科
八浪 祐一
さる2 月21 日〜 22 日と日本医師会館にて学 校医講習会、母子健康講習会に参加させていた だきましたので、ご報告させていただきます。
1 日目の学校医講習会では、「学校における 運動器検診をめぐって」と題してパネルディス カッションがもたれました。一つの大きな問題 は皆さんもご存知のように運動不足による運動 能力の低下です。20 年前と比べると身長、体 重は向上しているものの筋力、持久力また柔軟 性すべて低下しており、実際、身体が硬く、し ゃがむとバランスを崩して転んでしまう子ども も多くいるそうです。しかし、その一方ではク ラブ活動等において無理をしすぎるためスポー ツ障害も増えているとの報告もありました。そ れについては、日本高等学校野球連盟(高野 連)の理事である、田名部先生の発表は私にと っては初耳で興味深いものでした。甲子園の舞 台裏では整形外科の医師による投手の診察がお こなわれ、オーバーユースによる怪我が疑われ る場合は実際出場停止を宣告することができる とのことでした。しかしほかに比べ予算のある 高野連でさえ投手のみの診察でほかの野手は範 疇外とのこと。ましてや県大会やまたその他の スポーツ大会でそこまでできるのか、だれがそ の権限を持つのかなど問題があるようです。家 族、学校からのプレッシャーもあり無理をして 怪我をする子どもたちが後を絶たない以上何か しないといけないのではないでしょうか。
2 日目の母子保健講習会では、「今後の予防接 種のあり方」と題してパネルディスカッション がもたれました。麻疹の排除にむけて沖縄県小 児保健協会理事である安次嶺馨先生が沖縄での 過去の麻疹の流行の報告、また当県のはしかゼ ロキャンペーンや全数把握のサーベイランスシ ステムの報告をいたしました。その直後に福井 県よりMR3 期84 %、4 期73 %と全国1 位にな っている報告がありました。(沖縄県は53 %と 41 %)福井県では全市町で予防接種台帳を整 備し正確な摂取率を把握し未接種者にたいして はダイレクトメールなども使い効果をあげてい るとのことでした。ぜひわが沖縄県でも予防接 種台帳を整備していきたいものです。また髄膜 炎にたいするHib ワクチン、子宮頸癌の予防の ためのHPV ワクチンなどの重要性も報告され ました。しかし、どんなによいワクチンが開発 され準備されても子どもたちがそれを接種しな ければ効果はないのであり、なによりも国民全 体に予防接種を受けに行く文化を根付かせるこ とが一番大事であるとの発言が印象的でした。
もう一つ印象に残ったのはNPO 法人「子ど もとメディア」代表理事の清川輝樹氏の講演で した。テレビゲーム、テレビ、ビデオ、パソコ ンなどとの、早い時期から、また長時間の接触 が問題となっており、いまや子供のメディアと の接触の平均は1 日6 時間とのこと。実際、運 動不足だけにとどまらず、視力の低下、また脳 の発達にも悪影響をあたえ、また家族の会話の 減少などにもつながっていることは明らかなの ですが、現代の親はテレビを見て育っており例 えば「テレビに子守りをさせる」ことに抵抗が あまりないのです。「2 歳まではテレビを消して 見ませんか」運動を数年前からはじめて学校に 働きかけているそうです。もっとも清川氏はも ともとはNHK で働いておられた方なのですが、 こういうテーマの特集番組を作成しそれから危 機感をもたれ、いまはこういう仕事をされているそうです。テレビ局は子どもの健康より視聴 率のことしか考えていないとの発言には説得力 がありました。しかし、テレビはともかく、現 代において、パソコンや携帯電話などは全く使 わない訳にはいかないのであって、どうやって 正しく節度をもって接していくかの教育が今後 必要になっていくのであろうと考えさせられま した。いろいろと考えさせられた2 日間であり ここにご報告させていただきます。
印象記
常任理事 真栄田 篤彦
平成20 年度学校医講習会
久しぶりに学校医講習会に参加できた。平成20 年6 月に学校保健法改正で学校保健分野につい ての報告があった。「学校保健安全法」となり併せて「学校給食法」も改正された。その中で、学 校と地域の医療機関との連携を図りつつ、健康相談や保健指導を行うべき旨を規定している。こ れまでは児童生徒の現代的健康課題が多様化・深刻化し、専門的な対応や継続的な支援が求めら れるようになり、地域の医療機関との連携でこれら課題解決に取り組むよう連携に関しての規定 を設けるようになった。私たち学校医の学校保健活動がより学校との連携を強くしていき、学校 健康教育などに参画していく方向性が示されている。次に衛藤隆先生の「学校のアレルギー疾患 に対する取り組み」講演よると、「学校生活管理指導(アレルギー疾患用)」を用いた管理指導の なかで、学校における救急治療薬の預かり」の中で、緊急時にはエピペン(自家注射用エピネフ ィリン)をアナフィラキシー状態に陥った児童に教諭が注射しても医師法違反には当たらない旨 の表記があり今日、学校内でのAED の緊急使用としての備品設置が全国的に浸透していく過程の 一環なのか、注目を集めた。
午後の部では、甲子園で活躍した沖縄県出身(沖縄水産)の大野投手が紹介され、彼が過度の 投球によって肩が壊れてプロで活躍できなくなった反省から、甲子園球場内には専門のスポーツ ドクターや理学療法士を待機させ、X 線撮影検査・治療及び予防的手段を講じているとのこと。 つまり過度の酷使状態になったピッチャーには投球禁止指導しているということで実に興味深い 話であった。今年の春の選抜を見ながら、選手控え室ではあのスポーツドクターが頑張っている のかを思い出していた。今後の学校保健の発展が祈念される。
平成20 年度母子保健講習会
“メディア漬“が「子どもの育ち・親子関係」を蝕むの講演で、すでに数年前に日本小児科医 会がTV を生まれてから早期に見せすぎないよう、また、学童に対してもTV をみる時間の制限な どの警告を発表してから今回の講演で再度警告を発してくれた。テレビゲーム、ビデオ、パソコ ン、ケータイと新しい電子映像メディアに関して、日本の小中学生の半数以上が、平日休日を平 均して1 日6 時間以上という世界に例のない“メディア漬け”状態に陥っているとのこと。せっかく小児科医会で警告を発してきたのにまったく改善していない現状を見ると、将来が末恐ろし くなるように思えた。
午後の予防接種のシンポジウムでは沖縄県から、安次嶺馨先生(南部医療センター・子ども医 療センター元病院長)から麻疹排除に向けて、いわゆる全県レベルで“麻疹0 プロジェクト”の 取り組みを紹介した。また、福井県のMR(麻疹・風疹)予防接種率が全国1 位なのは何故かとの 報告があった。福井県の小児科医会が中心になって、行政と一緒に未接種児童の名簿を基に積極 的な接種勧奨を行っていった結果、接種率が上昇したとのことであった。沖縄県も今後、同じよ うな未接種者の個人情報を基に連絡を確実にして、接種率を上げていく方針を検討せねばいけな いかもと感じた。麻疹0 プロジェクト委員会の再検討を期待しながら聞いてきた。