理事 玉井 修
今回は会場をパシフィックホテル万座の間に 変え、平成21 年1 月31 日(土曜日)の午後1 時半から開催されました。今回場所が変わった 事で、参加人数が減るのではないかという不安 がありましたが、実際には400 人を超す参加人 数で会場は満席となり追加の座席を入れて対応 するという盛会でした。今回は特定健診開始初 年度という事で、今回の特定健診を振り返って 見えてきた課題をパネラーの皆さんにお話しい ただき、残念ながら低調となった今回の特定健 診受診率の次年度アップに結びつけていきたい というのが狙いでもありました。沖縄県でメタ ボリック症候群が問題となっている事は論を待 たないところでありますが、これが慢性腎臓病 (CKD)を経て人工透析導入に至っている事 や、全国一の早世率に繋がっている事実は充分 に認知されていません。今回の県民公開講座は 様々な医療情報の提供ももちろんですが、栄養 士会による栄養指導や健康運動指導士会による 運動療法の実演がありました。パネラーの皆さ んの講演とパネルディスカッションの間に健康 運動指導士会の皆さんによる座ったままで出来 るプチ体操のコーナーがありリラクゼーション を兼ねて非常に好評でした。沖縄県の特定健診 は他府県に比較して非常に安価で、内容の充実 した質の高い健診を行っているのが特徴です。 これは沖縄県医師会による集合契約が果たした 役割が非常に大きいと思います。個別健診と集 団健診の健診内容を高いレベルで均一化し、価 格交渉に関しても仲介役として難しい調整を行ってまいりました。実際の運営にあたっても、 現場における様々な問題解決にあたり、更に今 後の課題の集積も地道に行ってきました。沖縄 県医師会の活動はこの他府県に類をみない充実 した特定健診を提供できる礎になっているので す。充実した質の高い特定健診の維持は、現在 はまだ充分な受診率としてはね返ってきてはい ませんが、いずれ県民に理解され浸透していく 為の必要条件であると考えております。そして 私はこの1 年間特定健診に関わり、様々な方面 の様々な方がこの特定健診の円滑な運営に汗を 流していただいている事実に胸が熱くなる思い がしておりました。今後も充実した特定健診を 県民に提供することが、県民の健康を維持増進 させる為に必須であると確信しております。全 国に誇れる素晴らしい特定健診集合契約の枠組 みを崩すことなく、関係各機関と協力し合いな がら今後も県民に質の高い特定健診を提供する ために努力していきたいという熱い思いを新た にした県民公開講座でした。
特定健診は、県民のライフスタイルを 変える切り札となる
〜増え続ける肥満、太りゆく人類への挑戦〜浦添総合病院健診センター長
久田 友一郎
昭和43年 金沢大学医学部医学科卒業
昭和48年 金沢大学医学第3内科助手
昭和52年 同講師
昭和54年 富山県済生会高岡病院内科
昭和57年 浦添総合病院、内科部長浦添市在宅介護支援センター長
糖尿病センター長を経て現在に至る
学会活動 日本内科学会認定医
日本糖尿病学会専門医
1.増加し続け、そして蔓延するメタボリック 症候群
平成18 年度国民健康・栄養調査によれば、 40 〜 74 歳でみると、男性の2 人に1 人、女性 の5 人に1 人が、メタボリック症候群または予 備群に該当するという。過酷な自然と向き合 い、日々、空腹感のなかで、どのようにして食 を得て、そしてどう生き延びていくかのみを考えていた私たちの祖先に、今の「肥満社会の出 現」は想像できない。
米国統治下前の県民の摂取カロリーはおよそ 本土の80 %以下、空腹と想像を絶する戦禍に 耐え、生き延びてきた先人たちの歩みが長寿、 百寿者日本一の最大要因であった。しかし、脂 質の摂取量は欧米並みとなり肥満先進県となっ た。そして「長寿県沖縄の神話」は脆くも崩壊 した。
2.特定健診でわかるメタボリック症候群をど う捉えるか
メタボリック症候群はマクロ的にみれば全身 の動脈硬化が10 年以上速く進行し、早世とな る。すなわちメタボリック症候群は老化を促進 する体内メカニズムの活性化を意味する。老化 は「細胞の老化」だけでなく「生物の個体その もの老化」である。現在、科学的な根拠がある といわれている老化説は「酸化ストレス説」お よび「老化遺伝子抑制と長寿促進遺伝子活性化 説」であるといわれている。私たちがメタボリ ック症候群を克服する意義は、老化に歯止めを かけ、たとえ寿命が延びても、晩年を心筋梗 塞・脳卒中・慢性時不全と向きあって暮らすの ではなく、生きている限りは健康なままの人生を楽しみたい。残された20 〜 60 年間の人生を どう健康に生きるかという一点に集約される。
3.沖縄県の日常生活の風景と特定健診による 変革
「車社会による体を動かさない生活」「脂肪 の過剰摂取をもたらす揚げ物文化」「過剰な蛋 白質と脂質を含むとチャンプルー料理」「居酒 屋・ファーストフード日本一」「超夜型社会で 夕食が夜食化した食生活」「飲み会つきのイベ ントの多さ」「週3〜4回も飲み会があるヒト 達」「残業社会」これらはすべてメタボリック 症候群を発症させ老化を促進させる。この社会 をどう変革するか?
過度の利便性にこだわり、快楽や食欲という 欲望を満たすことを幸せと位置づけた価値観の もとでは、いったん禁断の木の実の味を覚えた 人間はそれを簡単に打ち捨てることはできな い。食生活行動・身体活動行動を律する意識・ 価値観の転換が必要。すなわち、老化を促進さ せるメタボリック症候群にならない「食」と 「身体活動行動」の選択力を磨くこと、睡眠時 間を削らないで働くことができる職場環境の整 備である。日本食文化の最大の遺産は「腹八分 ないし腹七分」かもしれない。それは 「HARA-HATIBU」として全世界へ発信させ る日がくるのかもしれない。
4.特定健診が始まっている今、わたしたちは 文明の転換期に生きている
地球温暖化現象に象徴されるように大量生 産、大量消費、大量廃棄を前提とする石化エネ ルギー利用の地下資源型文明は終焉の時代に突 入し、ここ数十年で太陽光や自然との共生によ る地上資源型文明へ移行するという。
しかし、地上資源型文明へ移行したとして も、私たちが遭遇している肥満社会が直ちに克 服されるとは考えにくい。この公開講座は予防 医学の最前線で活躍する崎原先生、糖尿病・メ タボリック症候群の臨床や研究の第一人者であ る田仲先生、自治体で住民と向き合い特定健診 を推進している保健師の井上先生、沖縄の食の 現状を見つめ、改善策を提言している県栄養士 会の管理栄養士の田場先生による県民公開講座 である。
感動・驚き・新しい発見・危機意識が「知」 を育て、意識を変え、そして食行動や身体活動 行動を変える。肥満先進県沖縄から、メタボリ ック症候群克服の道筋を探り、全国に発信した い。是非、多くの県民の皆様が参加されること を切望します。
メタボから慢性腎臓病 そして心臓病へ
医療法人秀明会田仲医院院長
田仲 秀明
昭和62年 琉球大学医学部医学科卒業
平成6年 琉球大学附属病院第2 内科助手
平成10年 沖縄県立南部病院内科医長
平成14年 豊見城中央病院糖尿病・生活習慣病センター所長
平成17年 田仲医院院長
肥満者の割合が男女とも断トツで全国一であ るわが県のメタボリックシンドローム(メタ ボ)の頻度を明らかにする目的で調査を行いま した。対象となった集団は、豊見城中央病院の 人間ドックを2003 年5 月から2004 年3 月まで に受診した30 歳から79 歳までの男女合わせて 約7,000 人です。
各メタボ構成要素の陽性率は、いずれも男性 で高く、腹部肥満、高血圧、高中性脂肪、高血 糖の順となりました。メタボの頻度は女性では 加齢に伴って上昇しましたが、男性においては 若年層を含む幅広い年齢層で高頻度でした。メ タボの頻度は全体で、男性3 0 . 2 % 、女性 10.3 %であり、男性で有意に頻度が高いという結果でした。
またこの集団でメタボと慢性腎臓病(CKD) の関連を調べたところ、メタボ構成要素の数が 増えるに従ってCKD になる危険率が上昇しま した(図1)。これはメタボとCKD が共通の基 盤を持つ可能性を示唆します。
さらに同集団を3 年間追跡調査したところ、 メタボの存在は女性で1.8 倍、男性で2.5 倍心 臓病の累積発生率を上昇させました(図2)。
以上の事実から、肥満が大元となりメタボや CKD を招来し、その結果心臓病に至ったと推 察されました。
現在でも沖縄は、健康的な高齢者や百寿者の 多い県として有名です。しかしながら、一方で は若年から中年層に至るまで高脂肪食に代表さ れる欧米型のライフスタイルが浸透しており、 肥満が社会問題になっているのは皆様よくご存 知の通りです。2005 年の都道府県別平均寿命 で、女性は全国一を堅持しましたが、65 歳未 満の死亡率では男性1 位、女性5 位と早世率で も全国一となっています。もはや超高齢者の長寿命で、それより若い世代の凋落傾向を補いき れない事態と言えましょう。
今後の特定健診の成否が、健康長寿沖縄復活の 鍵を握っているといっても過言ではありません。
特定健診によるメタボ攻略法
那覇市医師会生活習慣病検診センター副所長
崎原 永辰
昭和62年 秋田大学医学部医学科卒業
琉球大学医学部 脳神経外科
平成8年 コペンハーゲン大学留学
平成13年 那覇市医師会 生活習慣病検診センター副所長
・日本脳神経外科学会専門医
・日本医師会認定産業医
・日本人間ドック学会専門医
昨年から全国で開始した特定健診は、メタボ リックシンドロームを制圧するための健康診断 です。これまでの健康診断と大きく違う点は、 問診の項目をはじめ検査項目およびその判定基 準を全国で統一したことです。さらに結果をも とに保健指導をセットで行うことで、“脱メタ ボ”を目指すという明確な目的を持った健康診 断です。
一般には“メタボ”イコール“肥満”と思わ れていますが、正確にはメタボリックシンドロ ームとは肥満が引き起こしやすい高血圧、脂質 異常、血糖値異常などをすでに起こした状態を 指します。それゆえ、メタボリックシンドロー ムの診断は、健康診断から得られる身体計測に 加え、血圧測定と血液検査の結果を総合して初 めて可能ということになります。
特定健診の問診項目は全部で22 項目あり (表)、食習慣・運動習慣・喫煙・飲酒・休養 に関する生活習慣の質問です。特に9 番目の質問は、「20 歳の時の体重から10kg 以上増加 していますか」、13 番目の質問は、「この1 年間で体重の増減が± 3kg 以上ありました か」というものですが、この2 つの質問はと ても重要で、過去から最近の体重の変化を知 ることができます。つまり、毎日の食事で摂 取するエネルギーと、運動などで消費するエ ネルギーの平均的なバランスがわかります。 このバランスがゼロならば体重は変化せず、 プラスなら肥満し、マイナスなら減量してい くということです。このエネルギーバランス (カロリーバランス)の評価は最も重要な事 項です。
メタボリックシンドロームによる検査値異 常を改善するためには、肥満を解消して個人 に合った体重を維持することが欠かせませ ん。しかしながら減量を特別な方法や食材に 頼ったり、歯を食いしばって頑張るというよ うな短期的なやりかたを選択すると失敗して しまうようです。むしろ長期的な観点で、生 活の習慣を少し見直すという考え方が功を奏 することが多くお勧めです。1 日の食事によ る摂取カロリーを仮に2,000kcal とした場 合、その一割分は200kcal ですが、この程度の 熱量でも1 年間蓄積すれば7 3 , 0 0 0 k c a l (200kcal × 365 日)となり、体脂肪1kg は 7,000kcal なので、体重10kg に相当する熱量 になります。つまり理論上は、腹八分ならぬ腹 九分でも十分な効果を得られるわけです。
特定健診によるメタボ攻略法として、「多く の人が特定健診を受診してメタボリックシンド ロームの有無を評価すること」、「健康診断の結 果をもとに目標体重を設定し、現在の食習慣と 運動習慣の改善の計画を立てること」、「無理の ない方法で実行・継続すること」の3 点が挙げ られます。
特定健診が初年度を終えましたが、沖縄県内 の健診受診率はかなり低いことが予想されてい ます。今後この特定健診に県民が今以上に注目 し、受診率を全国一に高めるならば、“長寿の 島”復活も現実のものとなると考えております。
100 キロカロリーの戦略 〜メタボは予防できる〜
沖縄県栄養士会副会長 沖縄市役所市民健康課副主幹
田場 美智子
京都家政短期大学卒業
京都家政短期大学栄養専修課程修了
管理栄養士登録(昭和57 年)
沖縄県栄養士会理事(平成12 年)
《特定保健指導》
特定保健指導は生活習慣を振り返る絶好のチャンスです。個々に応じた相談が受けられ、健康 的な新しい自分へ生まれ変わる貴重な時間で す。特定保健指導の案内のあった方はぜひ会場 へ足をお運びください。“改善のポイント”を 支援します。
T.肥満解消でメタボ予防
食べるという本能的な行動が、時に内臓脂肪 の蓄積を招き、様々な検査異常を伴います。 そのリスクの重なった状態を放置し続けると、 脳卒中、糖尿病合併症等につながってしまいま す。しかし、その入口は摂取エネルギー超過 (肥満)にあり、流れを変え、進行を抑制する ことは可能です。
U.肥満と減量のシミュレーション
例えば1 日に100kcal 余分に摂取し続けると 1 年後どうなるでしょう。
およそ5kg の体重増加になります。(体脂 肪1kg は7,000kcal に相当)
あなたの1 年後はどうでしょうか。3 年後、 5 年後はどうでしょう。
V.100kcal の戦略
肥満は毎日の食生活の積み重ねが招いて しまいます。量と頻度が課題です。
気になる身近な食品エネルギー量に視点を おき、戦略を練ってみましょう。
エネルギーを消費する身体活動も重要なカ ギです。
W.エネルギー収支バランスの改善
今回は4 つの項目についての提案です。
続けられそうな、実行できそうな何かをひ とつ見つけましょう。
X.確実に身体が変わる!
今日から行動を起こしてみませんか。確実に 身体に変化が起こります。
2,000 種類も存在する食品にはそれぞれ特徴 があり、エネルギー量や栄養価が異なります。 しかし、よく口にする食品は限られているた め、気になる食品を絞り、気軽に「kcal」をチ ェックしてみましょう。まず継続出来そうなこ とを見つけましょう。
※長期に蓄積された体脂肪を急激に減らすこと は危険であり、リバウンドの可能性も高い。減 量は食や運動の他、ストレスの解消や生活リズ ムを整えることも重要です。
特定健診を受診して慢性腎臓病(CKD)を予防しよう
〜早期発見の場は、特定健診です〜南城市保健師 井上 優子
平成元年 沖縄県立那覇看護学校卒業
平成5年 旧玉城村役場保健師
平成18年 南城市役所保健師
1.特定健診は、受診されましたか?
平成20 年度4 月より、特定健診特定保健指 導という新しい健診システムが導入されまし た。大きく変化したのは、
1)実施主体が医療保険者になったこと(皆さん の持っている保険手帳の主)です。
2)国は、平成24 年度の受診率目標を65 %と掲 げ、それが達成できなければペナルティを課 すこと(若者の負担が増える仕組み)後期高 齢者医療を支える支援金をたくさん払わなけ ればならなくなります。
私の勤める南城市においては、国民健康保 険に加入している40 歳〜 74 歳の住民が対象 になります。平成20 年12 月25 日現在、対 象者8,513 人のうち特定健診を受診した方は 2,100 人で受診率24.7 %です。
残り6,413 人が未受診です。ちなみに南城 市の20 年度の目標は35 %です。
2.何故特定健診を受診するのか?
「どこも痛くないのに、ご飯もお酒もおいし いのに何で受けるの私の勝手でしょ」「痛くな ったら病院に行くよ」という言葉を耳にしま す。痛くなったり症状がでてからでは大変で す。医療費は高額になり、生活制限も厳しくな ります。すでに、腎臓を悪くしたり人工透析に なってしまった人の話を聞いてみますと「風邪 で病院に行くと透析と言われ目の前が真っ暗に なった」「健診を受けてわかるんだったら受け ていればよかった」と必ず後悔の言葉を耳にし ます。私達はそういう人を出してはいけないと 未受診者対策に力を入れています。
早期発見又は予防可能な段階で発見されるの が特定健診です。
特定健診は、メタボリック健診というイメー ジが強いと思います。肥満から起こる病気を予防することですが、もうひとつ大事な項目が入 っています。
3.大事な項目とは?
なんと、慢性腎臓病かどうかがわかるんです。
平成19 年2 月24 日、第14 回県民公開講座 ゆらぐ健康長寿おきなわ「慢性腎臓病」〜なぜ 多い沖縄の腎不全〜のテーマで講演していたの を覚えていらっしゃいますか?
沖縄は、透析が多く健診受診率が低い、早期 発見が大事と話していました。
今回の特定健診では慢性腎臓病が判定でき、 どの段階かが分かるように1 〜 5 段階のステー ジで分類されとてもわかりやすい指標となって います。ステージ分類は、血液検査の項目の血 清クレアチニンと性別、年齢で計算されe- GFR(糸球体濾過量)であらわします。腎臓 の能力がどれくらいか?また、将来予測もでき るようになっています。
さて、あなたのステージはどの段階でしょ う?健診を受診しなければわかりません。
○玉井理事 座長の久田先生。今日の公開講 座を終えてのご感想をお願いいたします。
○久田座長 今回の公開講座の主旨は、特定 健診をたくさんの方に認知していただいて、受 診していただくというものでした。
沖縄では受診数が少ないことと、特定健診が 一般の方々に周知徹底されていないためによる ものでした。パネリストの先生方の説明はとて もよかったんですが、講演会を聴きに来られる 方はある程度意識の高い方なので、来ない人を どうするかが問題ですね。
新聞等で周知しないといけないと思うんです が・・・。
○田仲先生 僕は今日はあまり特定健診には 触れないで、なぜメタボ対策が必要か説明し、 間接的に健診の受診率が上がってもらえればと 思って話をしました。会場からの質問の中に今 実際に受診している方が特定健診を受診したほ うが良いのかという微妙な質問があったんです が、本当は主旨から言ったら若い人や病院に掛 かってないような人に是非行ってもらいたいで すよね。
○崎原先生 今日は、メタボ攻略法について 話をしました。沖縄県のメタボリックシンドロ ームをどうするかということについて、先ず第 一番目に受診率を上げることがその攻略になる というお話をしました。受診者のモチベーショ ンをどう上げるかという点については、それに は確かに啓発が必要ですが、医療機関側の受診 環境を整えることも重要だと考えました。また、若い人達がどうしたらメタボリックシンド ロームにならないようにするかという点につい ては、小学校の頃から生活習慣病は始まるので “食育”を行うとともに、社会人を目前にした 高校生に対しても啓発活動が重要だと感じてお ります。
○田場先生 今日は、100キロカロリーの戦略 というかたちでの報告をさせていただきました。
栄養士会の立場で現場レベルの話をさせてい ただいたんですが、今回の特定健診・特定保健 指導は市町村が中心となってやっているので、 その立場で話しをすれば、自分自身も納得でき たかなと思いました。
○井上先生 今日の講演で受診率向上に向け て成功したかなと思います。市町村で困ってい ることは、治療中の方が結構いることです。国 は治療中の人が来たらきちんと受診させなさい といっていて、私たちはきちんとそれを守って いかなくてはいけませんので、治療中の方にも 呼びかけを行っていますが、まだ今は医師主導 型なので、先生から「なんで同じ項目なのに受 けるの?」と言われたから受けないという方も いたんですが、崎原先生が先ほどおっしゃって いただいたように、医療機関に説明に回ろうと 思っております。
○田仲先生 受診率が上がらない場合のペナ ルティの事があるので僕も応援しますけど、本 当は一度もやったことが無い人を採血したいで すよね。そこにお金を使って欲しい。
○井上先生 そうなんです。それが大事ですね。
○玉井理事 特定健診に関しては、例えば普 通の診療と一緒に行って、タダで受けられると 触れ込みで受けたにも関わらず、診療報酬が発 生したり、しなかったりするわけです。
いま言ったことは、現場で混乱する可能性が あります。窓口で「タダだといったじゃない か」ということになることも考えられます。こ の辺をきちんと切り分けないといけませんね。
今、色々話しを伺ったんですが、会場のフロ アから色々質問が出ておりましたが、それにつ いてはいかがでしたでしょうか。
○久田座長 CKD や特定健診、食事、運動 療法といってもなかなか難しく、個人的に30 分 話をしても理解をすることは難しいと思います。
最小の項目で最大の効果が得られるようなも のがあれば良いのですが、ただ、一番の問題は 肥満であり、肥満が全ての生活習慣病の入り口 になっているので、肥満にならないためにどう すればよいか考えなければいけません。
“特定健診の受診率を全国ナンバーワンにし よう”をキャッチフレーズにすることも非常に 良いことだと思います。それを盾にしてみんな が特定健診を受けてもらえば自分の内臓脂肪に ついてもより理解を深めると思います。とにか く受診率をあげて先ず実態を知ってもらうこと から始めて、肥満に入っていったほうがアプロ ーチしやすいと思います。”全国ナンバーワン にしよう”といったらなんとなくその気になら ないかなという感じもします。
本日の会場の質問は色々ありましたが、まだ まだ、特定健診について周知徹底が必要だと感 じています。
○玉井理事 そうですね。僕も質問は見まし たが、会場からのリクエストの中にはもっと受 けやすい健診であってほしいといった要望がい くつかありました。「社会保険の人はどうなっ ているのか」とか、「受けにいったけど受け付 けてくれなかった」とか「通院しているから受 けなくて良い」と言われたといった話がありま す。このあたりは医師会または医療側の周知徹 底も必要かと感じています。
○久田座長 特定健診において社会保険の本 人や、扶養、非扶養のかたはどうするのかとい うことは全く徹底されていないですね。政管健 保や企業内で入っている方はいいんですが、企 業の場合でも特定健診で補助を出すところもあ れば、出来ないところもあってその場合は国保 に行って下さいと言われて、受診者がどこにい っていいかわからなくなることがあります。
医療機関でも中々十分に理解はしていないと 思います。
○高江洲統括監
健診が混乱している ことが分かっているの で、県と県医師会との 連絡会において話し合 い、県がポスターを作 ることになりました。 それを各診療所に貼っ ていただきたいと思います。また、それぞれの 医療機関ができる項目を表示するポスターも作 成するのでそれを表に貼って頂きたいと思いま す。2 月中に各診療所にいきますので、それを ご利用いただければ理解も深まるのではないか と思いますので、よろしくお願いします。
我々も健診率をアップするためにどうすれば よいか検討を行っておりますが、今は実際に健 診を行っている先生方も混乱している状況であ りますので、解りやすい健診の仕組みを示した パンフがありますので、それを受付において指 導して頂きたいと思います。
これで分かりづらいということであればご指 摘いただきたいんです。
○崎原先生 社保に関する職場健診というの は、労働安全衛生法で事業主が労働者の健康管理 をすることは決められているので、ある程度受診 率は予測がつくんですが、問題は自営業ですね。 自営業者は自分の仕事を休んでいかなければい けませんので、なるべく短時間で、しかも自治 会などを利用して、国保関連の受診率を上げる ようにするときっかけづくりができるのではな いでしょうか。
実際、今後のモデルケースになるかと思いま すが、我々は真和志地区の自治会から直接頼ま れて、健診を受診して帰るまでの所用時間を 30 分でやることが出来ました。那覇市から50 人をそれぞれ30 分で終わって欲しいとの要望 があったのでやってみたのですが、実際に出来 ました。これからは、土曜の健診、南城市がや っている夜の健診や、日曜日の健診など、本当 にそこまで需要があるのかわかりませんが、も しあるのであれば、受診者の利便性を考えて実 施していかなくてはならないと考えています。
○井上先生 南城市も短時間で受けられる仕 組みになっています。
○玉井理事 短時間で特定健診を受けるとい う効率を高めることは大事なことだと思います。
ただ、実際に受診をされている方の中には、 理解力にかなりの差があります。
問診に関しても、ひとつひとつ聴いていかな いと、これを理解できない方も非常に多い。こ の方達を拾い上げていくこと、例えば地域の診 療所等がそのチャンネルにならないといけない のではないかと思います。
そういう意味でも医師会が音頭をとって各地 域の診療所をサポートしていくことが今後求め られていくと思います。
○宮城会長
医師会が全面的に協 力するということで各 医療機関は手を挙げる ようにと広報しており ました。また、健診を 受けやすいように全国 一安い委託料になって います。これはいずれ料金をあげなければいけ ませんが、個人負担を増やしたからといって受 診率が下がることは無いと思います。市町村か らは自己負担が増えると健診率が落ちるからで きるだけ安く設定してくれとの要望があったこ とから、医師会も健診率を上げるために協力し てきましたが、問題は、健診率をあげるには自 治体の熱意が必要です。ですから自治体によっ て差がありますよね。
○玉井理事 僕も各自治体を見てきてつくづ く思うのは、受診者側の発想で考えているかど うかだと思います。受診者がこの受診券を見て 特定健診を理解できるのかという発想をもっ て、パンフ作りや広報を行っているのか、やは り自治体によって差があると思います。全てそ うですが、新しいことをするためには周知徹底 させることに対してどういう視点でモノを作る かが重要だと思います。
○高江洲統括監 私は以前南部福祉保健所 にいました。糸満市は一番医療費が高くて、一 番健診の受診率が悪いです。それである作戦を たてました。福祉保健所がいけば、市もきちん と受け応えてくれるだろうということで、部課 長会議の後30 分程時間をとって、特定健診の 話や糸満市の医療費の話などをしました。
ねらいは、部課長が内容を解れば担当者が予 算要求しやすいのではないかということからで した。
○玉井理事 タイムスの平良さん。今日は 400 名ほど来られてた思いますが。実際会場に いらしてどのようなご感想をお持ちでしょうか。
○平良沖縄タイムス社社会部長
最初は入りがあまり 良くなくて、心配して たんですが、途中から 沢山はいってきてイス を追加したほどでした。 参加者も非常に熱心で、 テーマからするとかな り難しいと思うんですが、これまで医師会や行 政が取り組んできた成果が出ているのではない かと感じております。昨年はタイムスの記者が メタボ兄弟としてダイエットの連載記事を掲載 しておりましたが、一人は見事にリバウンドし ておりました。
私も目の前で見てて、非常に大変だと感じて おりますが、やはり特効薬は無く、地道な努力 が必要だと思いました。
これまで色々報道してきたつもりであります が、まだまだ個人的に認知度の差があるかと思 いますので今後も協力していきたいと思ってお ります。
○玉井理事 特定健診については、一回や二 回で健診実数が良くなるわけでは無いと思いま すし、これからも様々なチャンネルを使って理 解を求めると共に、周知徹底をして受診率アッ プに結びつけていきたいと思っております。
○宮城会長 長寿復活が最大の課題です。本 日の講演で早世率が全国一ということを聴いて びっくりしておりますが、この辺りを徹底して いくべきだと思います。健康長寿を取り戻すこ とが目的ですのでそのために色んな人たちがが んばっていける仕組みづくりが大事じゃないか と思います。そのために医師会としてもできる だけのことはやっていきたいと思います。
このような企画はもって進めていくべきだと 思います。
本日はありがとうございました。
当日お越しいただいた方々の中から、数名の方にインタビューをさせていただきましたので、その 中から下記のとおり4 名の方のご意見・ご感想を掲載致します。
本会の広報活動にご協力いただきまして、誠に有難うございました。
インタビュー1):
本日の講演会に参加されての感想をお聞かせ下さい。
また、今後の日常生活でどのような事に気をつけようと思いますか。
インタビュー2):
医師会への要望をお聞かせ下さい。
(33 歳・女性・管理栄養士)
1)多職種の方々から講演を聴くことができて良かったです。メタボと疾患の要因のグラフ等がわかりやす く学習できました。日頃から有酸素運動を心がけています。
2)講演会についてのお知らせをラジオでも案内して欲しい。講座の年間予定(スケジュール等)があれば ホームページで公開して欲しい。
(30 代・女性・病院内事務)
1)夫婦で参加しました。夫が肥満なのですが全く減量する努力が見られないので、専門の先生方の講演を 聞いて少しでもライフスタイルが良い方向へ向かってくれたらと期待しています。
2)今後も、今のように土・日に定期的に公開講座を開催していただくとありがたいです。
(66 歳・女性)
1)初めて講演会に参加しました。普段から健康には気をつけているつもりでしたが、今以上に関心を持って 頑張らなければいけないと思いました。今後はウォーキングを続けて足腰を強くしなければと思います。
2)離島にもいらして、いろいろアドバイスして下さい。
(69 歳・男性)
1)運動、食事に、今以上に気をつけたい。
2)若者のメタボ(予備軍)が多いとのことなので、職場での健康診断で注意するシステムに力を入れたら 良いと思う。医師会のアピールに期待する。
プチ体操
栄養指導コーナー
会場風景
運動指導コーナー