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平成20 年度第3 回
日本医師会地域医療対策委員会

安里哲好

常任理事 安里 哲好

平成20 年度第3 回日本医師会地域医療対策 委員会が平成21 年1 月28 日、日本医師会館 にて行われた。審議事項は日本医師会会長諮 問に関する討議で、「地域社会の医療ニーズと 医療提供体制の在り方」に関して、1)医師確 保対策、2)次期医療法改正であった。過去に 2 回の委員会での審議を整理し、平成20 ・21 年度の論点・案とした。また、医師確保のた めの実態調査結果の1)都道府県医師会調査と 2)病院調査が報告された。以下、概要を記載 する。

T.医師確保対策

1.将来における医師の需要と供給

(1)医師の需要

  1)医師の養成数 2)医師の適正数 3)患者の動向、受診行動 4)医師数のカウント 5)外国との比較のあり方

(2)地方と都市部の関係

(3)臨床研修制度、医学教育

  1)医師臨床研修制度による医師偏在・不足
    2)新医師臨床研修制度の必要性、あり方
    3)メディカルスクール構想、学士入学制度

(4)地域での取組み

(5)勤務医、女性医師

(6)政策のあり方、方向性

2.現在の医師確保対策(あるいは、検討中 の対策)の検証

  1)医療法等による対策(医療対策協議会、施設基準など)
    2)女性医師バンク、ドクターバンク
    3)勤務医対策
    4)地域連携(病診、開業医と勤務医など)、集約化・重点化
    5)医師関連職種、医療秘書等との連携
    6)住民の啓発
    7)医学部教育、臨床研修、専門医養成
    8)「総合医」、「家庭医」
    9)財源の確保

U.次期医療法改正(資料1 を参照)

医師確保のための実態調査(日医: 2008 年 12 月3 日定例記者会見)の一部を報告する。

1)都道府県別の医師の充足・不足(図1)

病院医師は4 7 のうち4 2 都道府県医師会(89.4 %)が不足(やや不足・不足)と考えて いる。診療所医師は1 8 都道府県医師会 (38.2 %)が不足と考えている。診療所医師に ついては、14 都道府県医師会(29.8 %)が充 足(充足・ほぼ充足)と考えており、都道府県 の間に差がある。

図1

図1

2)二次医療圏別の医師の充足・不足(図2)

病院医師は3 3 5 のうち2 8 1 二次医療圏 (83.9 %)で不足(やや不足・不足)、診療所医 師は129 二次医療圏(38.5 %)で不足している と各都道府県医師会は考えている。診療所医師 については、1 0 9 二次医療圏 (32.6 %)で充足(充足・ほぼ充 足)と各都道府県医師会は考え ており、二次医療圏の間に差が ある。

図2

図2

3)医師の偏在(図3)

4 7 のうち3 6 都道府県 (76.6 %)が医師の偏在があると 考えている。二次医療圏別では、 3 3 5 のうち2 1 9 二次医療圏 (65.4 %)で医師の偏在があると 各都道府県医師会は考えている。

図3

図3

4)診療科目別の医師不足(図4)

特に医師が不足している診療 科目として、都道府県、二次医 療圏ともに、産科・産婦人科、 小児科、救急医療、麻酔科が、都道府県医師会 によって多く挙げられた。これらの診療科目は、37 〜 42 の都道府県、7 割超の二次医療圏 で医師が不足していると各都道府県医師会は考えている。

図4

図4

5)医師確保のための対策の実施状況(図5)

図5

図5

6)医学部定員の過去最大規模への増員につい ての是非(図6)

図6

図6

日医実態調査に対する沖縄県医師会の回答 (平成20 年10 月)を列記するので参照いただ きたい(資料2 を参照)。

資料2
資料2
資料2

今回3 回目の委員会となるが初めての出席で ある。前任の大山朝賢常任理事の後を受け継いで、平成20 年4 月より、日医地域医療対策委 員会の委員になった。今回、欠席なら除名もあ り得るのではと苦慮し、予約さ れていた外来患者さんの全員に 電話をかけ、他の日に移っても らった。通常は早い時期より休 診予定にし、なんらかの理由で 予約された数名は他の医師に依 頼して事なきを得ている。今回 は、数ヶ月先の予定が頭に入っ ていない日々を過ごしているの か、何故かその余裕すらなかっ た。初回の出席なので緊張して 臨んだ。唯一、面識のある出席 者は竹嶋康弘副会長のみであっ たが、その折、沖縄県医師会医 学会総会での特別講演のお礼を 述べた。

色々な議論がなされ、4 点が印象に残ったが、 その4 点は容易に解決が着くものか、どこで検 討すれば良いのか、日医内でコンセンサスは得 られているのか、項目によっては法改正までに も行き着くのではという感じがした。その1 点 目は医師の絶対数を増やすと同時に地域・診療 科、病院・診療所の医師(保険医)の適正配 置。2 点目は2 年間の初期研修を終了した後の 適当な時期に医師不足地域で全人的医療をする ことを義務化する。3 点目は必要な専門医を育 成する(あるいは専門医の数に制限をつける) ための新しい専門医制度の確立。4 点目は臨床 研修制度の見直し: 2 年間の初期研修は法律で 決まっているので簡単には替えられないので、 その内容を変える。

在任期間は残すところ1 年1 ケ月、多くの委 員と意見交換をしながら、可能なら地方の実情 からの提案に加え、中央レベルの見識と情報を 得て、可能なこととそうでないことの見極めが できたらと痛切に感じた。