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数え七十三歳を迎え詠んだ狂歌・戯れ歌
後期高齢直前者の生き様ははこれだ!

金城毅

金城 毅

月日の過ぎ去るのは誠に速いもの、特に年齢 とともにその速さは幾何級数的に倍加する気が してならない。十三年前。還暦を迎え「ああぁ これで俺も赤いチャンチャンコ組の仲間入り か」と、一抹の寂しさと得もいえぬ達成感を覚 えたことがつい昨日のような気がする。それ が、古稀も過ぎ今年で七度目の干支(数え七 十三歳己丑のトゥシビー)になってしまった。 流石この歳になると、気力・体力・記憶力を 始め身体の諸々の機能が衰えた事を認めざるを 得ない。

この世に生を受けたからには、受け入れざる を得ない森羅万象の宿命というものだろう。と はいうものの、時には歳に抗って老躯に鞭打ち 筋トレで体力を鍛えたりする。

ゴルフ場では、努めてカートには頼らず、歩 き廻り足腰の持久力維持に努める。もっとも、 それでなくとも下手くそゴルファーのボールは 左右にぶれるので、ラウンド中は自然良いウォ ーキング運動になる。

時には、庭で放し飼いにしている縄文時代の 遺伝子を持つ琉球犬と遊ぶ。我が家のコンパニ オン犬は、どう猛なツラ構え(小生にはイケメ ンに見える)とは似合わず家人とも違い、何時 如何なる時にも忠実で飼い主の期待を決して裏 切らない。

千切れんばかりに尻尾を振ってはしゃぎ回る 愛犬とジャレ遊んでいると、不思議にも自分も 犬と同じ喜びに巻き込まれ、だんだん嫌なこと や心配事等が解消したような気分になり爽快で ある。

その他、効果があろうが無かろうが、今まで 読む機会が少なかった小説とか月刊誌や社会経 済誌等多分野の書物を雑読したり、これまで思 ってもみなかった下手な戯れ歌に挑戦し、頭の 老化を阻止したつもりの錯覚に陥っている。

ゴルフでは有ること無いこと自慢話を書きま くって、義理や善意で読んでくれそうな知人に 送りつけ、無理矢理読んでもらい、ギリシャ神 話のナーシサスよろしく自己満足に浸ってほく そ笑んでいた。もっとも、最近では自慢できる ゴルフの内容にはほど遠く、おかげで知人の皆 様は下手な自慢話を読まされる苦行から当分解 放され喜んでいる事と思われる。此の趣味は、 これまで自分だけの密かな楽しみであったが、 照屋先生、当銘先生のご依頼を受け、最近の同 世代の生活を客観的に眺めたつもりの狂歌の一 端を、恥をかくのは覚悟でほんの一部発表させ てもらうことにした。

勿論、これまで高尚な俳句や和歌の勉強をし た事も無く、形式は兎も角全くの自己流の戯れ 歌ですので、稚拙さはもとより難解な言い回し や、凡そ格調のある三十一文字にはほど遠い 「こりゃ何じゃ?」と思う箇所もあろうかと思 いますが、老後のお遊びだと七十翁に免じお許 しねがいたい。

後期高齢直前者の生き様を、狂歌のつもりの 歌詞の中から垣間見て下さり、多少なりともご 理解いただけたら、投稿した甲斐があったもの と思います。参考になるかどうか解りません が、枕を付けました。

反駁

とし 寄れり 五臓五感ごぞうごかん五体ごたい まで ふるかぶ らむ 冷や水ひやみず だとて

独歩

長老ちょうろう に 聞けばよかったこの先は 何しろ 未熟みじゅく いの世渡よわた

不慣

紅葉もみじ より 若葉わかば マークがより似合 にあ う 初心 運行うんこう 余生よせい未知

履歴

馬齢ばれい のみ 我が生涯しょうがい に悔い多し せめて喜寿きじゅ までボケず達者たっしゃ

反逆

待ま て、むか え  るなら いと生き急ぐ 残り 少なき時こそたから

輪廻

親は き 友何人いくたりすで に消え めぐ四季死期 とて われ幾年いくとせ

驕奢

意気高く 年金はある老頭児ろーとる も 気が引けは する悠々自適ゆうゆうじて

懸念

くとても お前が先ではおれ 困る お前残す も不憫ふびん で行けぬ

矛盾

往生おうじょう は早くてもだめ遅くても未練は き ず寝たきりもいや

危惧

もうじき だ 誰があと 車椅子くるまいす 俺はおも いぞお 前どうする

理想

大詰おおづ めは 年金減らず志気しき もあり 国 ちぶ れぬやす らぎが夢

老徴

もういや だ 夏は暑気しょき バテ冬は風邪かぜ 春と秋だ け生きた心地ここち

忘却

何処どこ 置いた 我が家の日課何時いつ の間に 迷いまよい 眼鏡めがねもの家捜しやさがし

迷惑

老婆心ろうばしん じじい にもある親切しんせつ の 下手な押し売り 大きなお世話

老態

適当てきとう も 皮一重かわひとえ なり不適当ふてきとう やす めば鈍りなまり 気張きば れば腰痛ようつう

健忘

忘れてたうっかりしてたは口癖くちぐせ に思いわずら痴呆ちほう の芽生え

失念

アレ・ソレと コレが出しゃばる焦れじれ ったさ 有名人ゆうめいじん も名無しのホラに

備忘

記憶きおく より 忘れる特技とくぎ 勝りまさり 来て 予定よてい の行動手帳が差配さはい

懐古

杵柄きねづか が話題邪魔じゃま して薀蓄うんちく口角こうかく あわ昔話むかしばなし

遊遊

わしゃゴルフ わしの時間はわしのもの わ しが使うにわしを責めせめ るな

過多

惰性から ひとあじ 足りぬゴルフ漬けづけ かす ひま なく はバテ食えぬくえぬ

不安

生き甲斐いきがい を 誘いさそい 誘われ気掛かりきがかり は コース 来ぬ奴怪我こぬやつけが病気やまい

競争

気の置けぬきのおけぬ  勝敗かちまけ 抜きの仲間でも こっそり 抜け駆けぬけがけ レンジ

裏腹

毎日が 祝祭日しゅくさいび では年金と そろって減るへる気力体力きりょくたいりょく

不況

せちがらき 子等こら世過よす ぎは荷が重く 親の 細ズネ囓りかじり 終わらず

血筋

老えおえ ばなお 他人ひと の情けと支え合う 身内みうち 居 てこそ心やす まる

改革

仏壇ぶつだん と 位牌いはい はどうなる子や孫の 住処すみか は遠 く意識いしき雄飛ゆうひ

慣習

冥土めいど には 形式いらぬと思えども 古き習わしならわし そうはさせまじ

難問

伝統でんとう を 受け継ぐうけつぐ ことは気が滅入るめいる ご先祖ごせんぞ の知恵黙殺もくさつ できず

試練

子育ても 親の介護も無事済めど 生きてく 試練尽きる事無し

自立

気がかりは 自分われ の介護は が何処で つい に来たかや七度目の干支えと

稚拙

無免許むめんきょ の 孫の冷笑れいしょう 直す ぐ僻みひがみ 降りて落胆らくたん 駐車のゆが

自業

食い物くいもの が 美味うま くてまずいからだ には つい い 過ぎて痩せやせ るひまなし

粗忽

不器用ぶきよう の 手と目は離れドジ・ヘマの 歳が 邪魔して地団駄を踏む

繰言

およ ばずも 今は昔のつい愚痴ぐち が あれも出来 たしこれも れたと

嗜好

辞書頼り 「てにをは」いじり生きた日の 言の葉紡ぎ狂歌ことのはつむぎうた

稚気

悪い趣味 うす れた記憶絞りしぼり 出し 健忘けんぼう 引き連 れ卑近ひきん風刺ふうし

安堵

横好きよこずき が 膏肓こうこう入り病むいりやむ 如く  めば侘びわび しさ下手へた に落ちつく

平成二十一年(己丑)