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開業顛末記

仲間健

中部病理診断科 仲間 健

われわれ病理医の永年の願いであった病理診 断科の標榜が2008 年4 月に実現することにな りました。これには情報公開を求める社会的な 潮流もありますが、何といっても日本医師会を 初めとする関係各位のご協力や病理学会関係者 のご尽力があったものと感謝しています。

さて、私は2007 年の暮れに勤務先を辞し、 開業の準備に取りかかりました。しかし、病理 診断科の標榜は前例がなく、開業に当たって、 いったいどのような手続きが必要なのか、皆目 見当がつきませんでした。そこで、情報を得る ために、地域の保健所を訪れました。開業して 10 日以内に保健所に開設届けを提出すること、 さらに保険診療を行うには社会保険事務所にも 届けでて、保険医療機関の指定を受けることが 必要であることを教わりました。

2008 年の4 月までは時間に余裕があり、診 療所用として数年前に購入し、私が個人事務所 として使用していた建物の改装や補修を行い、 また、無知に近かった保険診療の仕組みや、診 療報酬の請求方法などについてインターネット 等で情報を得ました。

2008 年4 月1 日、保健所に開設届けを提出 する日が来ました。私は当然受理してもらえる ものと思っていましたが、窓口で言われたこと は期待に反し、「本庁からまだ通達が届いてい ないので受理できない」「通達が何時来るのか 分からない」との言葉でした。私は病理診断科 の開設が法的に認可されていることを厚労省に 電話で確認し、県庁の医務課にもそのように伝 え、受理してもらえるよう手配しました。

保健所に再度足を運び、4 月4 日付けで、開 設届けを受理してもらうことができました。4 月7 日、社会保険事務所を訪ね、今度は保険医 療機関の指定を受けるべく、保健所でもらった 書類を提出しました。ここでは「病理とは何を するところか」といった基本的なことなどを質 問され、さらに紛失した保険医証の再発行の手 続きを行いました。社会保険事務所も病理診断 科の開設は前例がなく、対応に苦慮しているよ うに思われました。数週間後、社会保険事務所 の職員が監査のため来訪し、案内板が設置され ていないことを指摘しました。案内板の設置に は3 週間程時間を要しました。しばらくして社 会保険事務所の職員が再度来訪し、案内板の設 置を確認しました。当初は病理診断科に対する 理解が不足しているように思いましたが、今回 は「病院の病理が外に出た形が病理診断科なの ですね」等と発言され、かなり勉強したことが 窺われました。2008 年6 月1 日付けで、保険 医療機関の指定を受けることができました。

病理診断科の標榜に伴い、2008 年度の診療 報酬医科点数表では、第3 部の検査の項に属し ていた病理学的検査は、新設された第13 部、 病理診断の項へ移動しています。これまで、臨 床検査技師法の規制下にある衛生検査所の仕事 であった病理学的検査は、これからは一般診療 科と同様、医療法や医師法の規制下に入ること になります。病理検査報告書の名称も順次病理 診断書に代わっていくことでしょう。同時にわ れわれ病理医の診断責任もこれまで以上に問わ れることになると思われます。

還暦からの出発で、しかもメタボ気味のわた しが、どこまでできるか分かりませんが、これ からは地域の病理開業医として、地域の病理診 断に関わって参りたいと考えております。