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沖縄県医師会勤務医部会会長 城間 寛 先生

城間寛先生
P R O F I L E
昭和29年8月16日生
昭和57年3月 広島大学医学部卒業
昭和57年5月 県立中部病院研修医
昭和58年4月 琉大医学部第二外科入局
昭和59年4月 国立沖縄病院外科
昭和60年4月 琉大医学部第二外科
平成4年4月 豊見城中央病院外科
平成6年4月 豊見城中央病院外科部長
平成14年4月 豊見城中央病院副院長
平成16年4月

豊見城中央病院臨床研修委員会委員長
現在に至る.
専門領域:外科(血管外科)
平成16年4月 南部地区医師会理事
平成18年4月 群星沖縄プロジェクト研修委員長会 議議長
平成20年4月 沖縄県医師会勤務医部会会長

沖縄の医療の向上の ために、皆で知恵と力 を結集しましょう。



Q1.この度は、勤務医部会会長就任おめでと うございます。就任されて半年が過ぎますが、 ご感想と今後の抱負をお聞かせください。

今、日本の医療は崩壊寸前です。この間にも いろんなニュースが報道されました。妊産婦の 脳出血での死亡例、未熟児の受け入れ不能で死 亡した件など、特に医療体制の不備からくる問 題が最近顕著に現れだしてきました。また沖縄 県では県立病院のあり方が変わる方向で議論さ れているようです。そのような中で病院勤務医 は直接影響を受けており、勤務医部会の重要性 を感じています。しかし微力ですのであまり背 伸びしないで、自分が出来るところから尽力し たいと思います。

Q2.一昨年の10 月に本会担当で開催した「平 成19 年度全国勤務医部会連絡協議会」では 実行委員として中心的役割を担い、当日の シンポジウムで座長も務められましたが、 振り返ってみていかがでしたでしょうか。

一昨年、沖縄で開催されましたが、その前 年、埼玉県で開かれました勤務医部会に初めて 参加しました。事務局からの説明では、それま では医師会の単なる年間行事の一つで、あまり 盛り上がることもなかったと聞かされていまし た。しかし実際に参加して見ますと、これまで あまり表に出ていなかった、勤務医の過重労働 問題や、訴訟問題、女性医師の出産後の就労問 題など、切実な現実について勤務医部会で激論 されました。その後を受けて、1 年後に沖縄県 で開催される時に、あの熱い議論を少しでも進 歩した形で沖縄に継ぎたいと考え、研修医や、 離島医療問題をアンケート調査したところ、若 い医師ほど離島や僻地医療にも興味を持ち参加したいと考えていることや、沖縄での臨床研修 に満足していることなど、いろいろ参考になる データも得られました。また当日も全国からた くさんの勤務医が参加し、講演も盛り上がり、 少しでも全国の勤務医の活力になったのであれ ばよかったと思っています。

Q3.本県における初期臨床研修は、RyuMIC、 群星沖縄、県立病院群の3 研修病院群のご尽 力により非常に充実し、先般発表されまし た2008 年のマッチングも東京に次いで2 位 という結果になっております。しかし、今 後多くの若い医師に沖縄に残ってもらい医 療活動に従事していただくには、専門(後 期)研修を更に実りある内容にすることが 重要と考えます。先生は当該研修事業にも 直接関わっておられますが、この問題に今 後どう取り組んで行くべきか、先生のご意 見をお聞かせ下さい。

医師としての仕事の内容が、専門分化する方 向と、総合医(家庭医)あるいはGeneral Practitioner(GP)の方向に行くのだろうと 思います。これまでの日本の医学教育は専門分 化する方向が強く、総合医(家庭医)を教育す る事があまりなかった。今日の医療問題の中 に、総合医(家庭医)を育成する事で解決でき る事が多々あるように思います。例えば僻地・ 離島医療などがそのひとつです。医学教育の中 で総合医(家庭医)教育を専門教育の一環とし て行い、魅力をつくり多くの医師が担えるよう にすれば次第に解決できていくと思います。制 度を変える事は、私には出来ませんが、初期か ら後期研修の中で、地域に出て総合医(家庭 医)の実際を学ぶプログラムを作れば次第にそ の魅力を感じる若い医師も出てくると思います ので、今関わっている群星沖縄のプログラムの 中で積極的に、総合力をつける臨床研修を実行 しています。しかし専門分化を否定しているわ けでは決してありません。私自身は外科医であ り、若い外科医の教育の中にも、総合力をつけ る教育と、さらに専門分化する方向の両方を実 現するために琉大や、その他の専門的施設と連 携を取りながら交流を進めていくことが必要と 考えています。そういう点で沖縄には、琉大を 中心とするRyuMIC と県立病院群、また民間病 院中心の群星沖縄、3 つの研修教育プログラム があるのは非常に大事な要素です。この3 つの プログラムが交流できるようになっていけば、 研修医にとってもお互いに刺激し合い、モチベ ーションの向上にもつながり沖縄での研修全体 がさらに魅力的なものになって行きます。これ は次の項目とも関係しますが、地域全体で協力 して、臨床医教育を進めていき、そこに若い研 修医が増えていくことが、結果的に勤務医の労 働環境の改善につながっていくものと考えてい ます。ですから、私は研修医教育事業と地域医 療(離島・僻地医療を含む)は連動して考えて いくべきであると思っています。そして少しで もそれを実現することが、いま沖縄で研修医教 育事業や地域医療に関係している者の役割と考 えています。

Q4.現在、全国で医師不足問題が生じ、勤務 医の労働環境改善が緊急の課題とされてお ります。勤務医としてのお立場で、この問 題解決のためどのような対策が必要と思わ れますか。

全国で現れている医師不足の問題の原因は、 色々言われています。1)医師の実数が少ないこ と、2)低医療費政策によりこれまでのシステム が維持出来なくなってきた事、3)卒後教育制度 が変わった事(大学医学部が主張)、その中で 1)と2)は勤務医だけでなく、医師会が全国民を 巻き込んで主張、啓蒙する必要があると思いま す。最近ようやくマスコミもその様な論調に変 わってきましたが、医師会はもっと、国民がな るほどと納得できるようなデータを客観的に示 してマスコミ・国民、世論をリードして今の状 況を改善できていくのだと思います。そのため には政治の場でも、1)と2)を具体的に解決する 姿勢を示す政治家を応援するべきだと考えま す。幸い沖縄で医療崩壊と叫ばれるような状況があまりないのはこれまで県立病院が研修医教 育と地域医療を担ってきたこと、そのOB たち がいるおかげで群星沖縄プロジェクトも順調に 立ち上がり一翼を担えるようになってきた事、 また地元に琉球大学がありRyuMIC がある事、 などで人口比では全国トップの研修医がいる事 により、全国的に見られるような悲惨な状況は 見られていないと考えています。今後さらにこ の3 つのプログラムが協力、補完しあうことが 出来れば、沖縄は本当に、医学教育のモデルに 成り得る環境にあると考えられます。勤務医 の、労働環境の改善のためには多くの医師が必 要です。それは理想的な研修医教育の延長線に あるものと考えています。まず理想と描く研修 医教育を実現しながらその次に、勤務医のみな らず医師全体の、仕事の仕方の理想的な青写真 (多くの医師にその議論には参加してもらう) を描いていくことが医師会の役割と思います。

Q5.本会や日本医師会に対するご意見・ご要 望がございましたら、お聞かせください。

昨今の医療崩壊など、これまでに無く医師を 取り巻く環境は悪化しています。勤務医の過重 労働や、医師不足など、外国との比較を行いな がら、しっかりしたビジョンを医師会は示す必 要があると思うのですが(特に日本医師会とし て)、それがなされてなく、官僚や政治家の思 うままに政策が決定されてきている。もっと政 策集団を組織して、理論武装する必要があると 思います。過度に医療界を優遇する必要はない が、労働基準法も遵守出来ないような環境下で 勤務医が仕事しているのを、医師会は改善する 義務があり、それは日医総研などの部門を充実 させ、今後の医療のあり方、将来のビジョンを 分るように示し、それに基づいて広報活動し、 国の政策決定にも資するようになって欲しいと 思います。厚労省から出される資料の疑問点、 間違っている点などすぐに指摘し、国民を啓蒙 する役割も担って欲しいと思います。

Q6.最後に日頃の健康法、ご趣味、座右の銘等 がございましたら、是非お聞かせください。

昨年から、たまたま青春時代にやっていたソ フトテニスなるものを、高校時代の友人達に誘 われ復活させています。と言っても2 ヶ月に1 回程度ですが、1 回行くと、体はクタクタにな りますが、全身に汗を掻き、気持ちは壮快にな ります。せめて月に1 回ぐらい出来るようにな ることを楽しみにしています。好んで口にする 言葉が「日々是好日」です。“晴れの日もあれ ば、雨の日もある、与えられた条件の中で、努 力すれば道は開ける”と考える楽天家です。

この度は、インタビューへご回答いただき、 誠にありがとうございました。

広報委員 照屋勉