会長 宮城 信雄
みだし都道府県医師会長協議会が平成20 年 7 月15 日(火)午後3 時から日本医師会館で開 催された。
はじめに、司会を務めた羽生田常任理事より 開会の辞があり、日医唐澤会長より挨拶が述べ られた後、宮城県医師会長及び岩手県医師会長 より、岩手・宮城内陸地震の被害報告及び都道 府県医師会に対するお礼の言葉が述べられた。
その後、提案された18 題について協議が行 われたので、概要について報告する。
協 議
<提案要旨(抜粋)>
この度の微量採血用穿刺器具の使用状況に関 する調査については、危険性の説明が十分行わ れず、結果だけが公表されることになってい る。国民の間に過大な不安感をあおる恐れが非 常に大きいのではないかと危惧されるところで ある。
調査依頼文書には、日医にも連絡済みとの文 書が添付されていたが、具体的にどのような説 明や検討が行われたのかお伺いしたい。また、 今後このような事案についてどのように対応さ れるかお伺いしたい。
【木下常任理事回答】
厚労省の趣旨は、少なくとも通知の添付文書 に記載してあるように禁止事項になっているも のをあえて使用したということに対して、感染 の可能性はゼロではないということから国民に 不安をかけないためにも公表は避けられないと いう主張である。
厚労省との折衝では、調査については各都道 府県に依頼をしているが提出のみであって、公 表を強いている訳ではないし、求めてもいないとのこと。
具体的に調査報告書をどう取り扱うかについ て、1)我が国で微量採血穿刺器具を使用しての 感染例はない。2)これまで公表に際して不適切 な症例という言葉を使っていたが、針を交換せ ずに複数に使用した場合や針を交換していたら 調査対象器具を複数使用していた場合などの区 分された表現をしてほしい。3)病院等では消毒 をきちんとしていたということをそのまま記載 すること。4)医療界だけではなく国民に関して 公表するとしても感染の恐れはないということ を明確にしてほしいということである。現在、 それらを踏まえて、日本感染症学会に見解を求 めているところである。厚労省もそのコメント を重視したいとのことである。
また、本調査は医療界に対して自主的な回答 を求めたが、ペナルティを課すような条文は行 わないということを約束した。また、再調査は しないこととしている。公表する際には日医が 事例をチェックした上で適切な表現かどうかを 見て公表することとしている。
<徳島県医師会:川島>
当初の予定では6 月23 日に厚労省の調査を 締め切る予定であったのが、何らかの理由で6 月31 日になった。日医から取り扱いに関する文 書をいただいたのは7 月1 日であった。ほぼ同 時期に説明の文書をいただければ我々も多少の 不安感が解消できたのではないか。また、感染 の可能性が一例でも発症した場合、その検査・ 治療が医療機関の負担とするのではなく公的機 関で負担するということが望ましいと考える。
【木下常任理事】
経緯説明の文書については、医師会全体の意 見をまとめるのに遅れた。大変申し訳ない。検 査に関しては、患者から問い合わせがあった場 合は、原則、保健所で対応してよいとのこと。 B 型肝炎はスクリーニング、C 型肝炎、HIV 検 査は精密検査となる。
<提案要旨(抜粋)>
採血用穿刺器具及び真空採血管ホルダーにつ いては、いずれも国内では感染等の事例は報告 されていないにもかかわらず、厚労省は、調査 に誠実に回答した不適切事例のあった医療機関 名を公表する等、他方の真空採血管ホルダーの 取扱いは充分な方針が示されていない。安易な 公表がかえって住民の不安を招いたことは事実 であるが、日医の見解と今後の対応、厚労省へ の働きかけをお伺いしたい。
【木下常任理事回答】
そもそもホルダーに対して単回使用にして欲 しいという通知を添付文書に載せたが、厚労省 が業者に対して指導を促す文書である。あえて そうしたのはそれまでホルダーは、雑品扱いで あった。それ以降は、医療機器にすることにな ったという経緯がある。また、使用方法につい て逆流しなければ安心ということを明確にすれ ばよい。日本感染症学会では、真空採血管を用 いた採血利用に関する安全管理指針を出してい る。この指針では逆流しない使用方法や指針通 りであれば感染は起こらないことを明確にして いることから、これまでどおり消毒の上で採取 をしてよいとの見解をいただいている。
<三重県医師会:中嶋>
ホルダーの添付文書には再使用禁止、禁忌禁 止の欄にはホルダーは患者ごとの使用とし、使 用後は廃棄すること(ホルダーに血液が付着し た場合、交差感染の恐れがあるため)という事 がきちんと記載されている。厚労省のQ&A に あるようにホルダーを一律に単回使用の医療機 器とすることを求めたものではないという説明 があり、社会的に説明責任が果たせるのか懸念 しているところである。日本感染症学会の見解 を出していただくと同時に記載されている文言 が厳しく圧し掛かっているということを認識し ていただき、日医のご努力をお願いしたい。
【木下常任理事】
今後の問題として、現実に則して採血方法と 器具の安全面を含めた添付文書のあり方につい て検討していきたい。
<提案要旨(抜粋)>
福田首相が設置した社会保障国民会議の第4 回サービス保障分科会では、給付範囲の縮小、保 険免責制に向けた議論が必要との認識を示した。
さらに、財務省の財政制度等審議会では、保 険免責制導入や一般病床に入院する患者の食 費・居住費の自己負担化などについて「引き続き 聖域なく検討していく必要がある」としている。
若い人の病気の多くが低額医療であることか ら、保険料の不払いや滞納が増えるなど、結果 として国民皆保険制度の崩壊が危惧される。ま た、早期受診が阻害され、疾病の重症化を招 き、医療費の増額に繋がることが予想される。
保険免責制は社会保障給付費を減らす上で効 果的であるゆえに、今後、国の諸会議で議論に なろうが、断固、導入を阻止するよう日医に要 望する。
【中川常任理事回答】
おっしゃるとおりである。日本医師会では記 者会見を開き、日本の公的医療保険は制度の総 合的な評価の高さに比べ、高い一部負担割合に ついては、世界的に評価が低い。保険免責制と いう言葉を入れること自体、不適切であり削除 すべきであると主張した。しかしながら、6 月 12 日の中間取りまとめでは、保険免責制の導 入や混合診療、民間保険の活用などについて、 議論を深めることが必要であるとされた。財政 制度等審議会では、保険免責制の導入について 取り上げたが、保険免責制は医療費が低いほ ど、患者負担割合は高くなり受診抑制や保険料 支払いの低下にもつながっていく。限度額の引 き上げにより保険給付範囲を狭め、医療におけ る格差を助長する恐れが大きいと反論したとこ ろである。
保険免責制の大きな問題として、1)いったん 導入されるとなし崩し的に限度額が上がる。2) 費用がかかる医療も保険給付されなくなり、広 範囲で受診抑制が起こる。3)医療費の半分を自 己負担ということに成りかねないので、あまり 医療機関にかからない若人の保険料不払い等、 公的保険からはなれていくといったことがあげ られる。
保険免責制導入の主張には、民間医療保険診 療を拡大しようという意図がある。そういう意 味では混合診療解禁、株式会社の参入と同じ理 屈である。しかしそれでは、公的医療保険は崩 壊する。日医はこれまでその問題点をはっきり と示してきた。今後も断固反対していき、厚労 省の文書等に記載自体もされることがないよう 強固に理論武装し行動していくつもりである。
<提案要旨(抜粋)>
全ての地域産業保健センターを対象として、 「所轄税務署への申請が無くとも公益法人等の 収益事業としない」旨の日医からの対応を強く 要望する。
【今村聡常任理事回答】
地域産業保健センター事業推進の要素の一つ として煩雑な事務作業の軽減であることは理解 している。事務作業の軽減については、健康相 談や個別訪問相談、産業保健指導に集中してい ただくためにも大変重要な課題ということで厚 労省にも機会があるごとに働きかけを行ってい るところである。今回提案いただいた税務申告 の手続きについては改めて法令遵守という観点 から税理士等の専門家を交えて検討させていた だいた。その結果、地域産業保健センター事業 については、法人税法上の施行令第5 条第50 号の請負業に該当する。どうしても公益法人の 行う収益事業の範囲に該当する。そのため、所 管税務署への届け出の税務申告が必要となる。 実費弁償による事務処理の受託等の確認申請書 というものを提出すれば収益事業にならないという法人税の基本通達があり、どうしても手続 きが必要になってくる。他の委託事業も同様で あり、日医の女性医師バンクがその一例であ る。全ての地域産業保健センターを対象とし て、所管税務署への申請がなくとも公益法人等 の収益事業としないという対応については、現 状極めて困難であるが、必要な情報提供はさせ ていただきたいのでご理解頂きたい。
<提案要旨(抜粋)>
9 割が公費負担となると、国のコントロール が極めて容易になる(総枠規制・キャップな ど)。今回の主治医制や日医が進めようとして いる「総合診療医」の認定制度と相まって、人 頭割・定額払いなど、簡単に導入されることに なるがいかがか。
【中川常任理事回答】
これまで日医はグランドデザイン2007 総論 の中で、高齢者医療制度のあり方について述べ てきた。更に、今年5 月に高齢者のための要検 討として再度取りまとめを行った。これについ て与党は、後期高齢者医療制度の見直しに向け て日医案を説明する機会を与える等、日医案が 具体案の一つとして高い関心と評価をいただい ている。我々の主張の柱は4 つで、1)75 歳以 上を手厚くすること、2)75 歳までと同じ医療 を提供すること、3)医療費の9 割を公費として 国が負担すること、4)高齢者保険料と一部負担 を合わせて1 割にすることである。
今後日医が主張していくことは、1)根底にあ る医療費抑制策を転換させること(社会保障費 自然増に対する年2,200 億円削減の反対)、2) 総枠管理の糸口となる国による総合科医の認定 を断固阻止することである。また、日医は高齢 者について公費9 割を主張しているが、この財 源は国庫や政管健保といった一般医療保険に投 入されている公費を充てることにする。その結 果、全体としての公費投入額は増加しない。し たがって、高齢者医療制度の公費を9 割にする こととして新たな形で医療費抑制をするわけで はない。むしろ、止めるべきは根本的な医療費 抑制策であると考えている。
また、高齢者に公費を集中させる大きな理由 として、現在、消費税は国の予算総則で年金、 高齢者医療、介護の国庫負担に充てるとされて いる。一般医療保険に投入されている国庫負担 は消費税の受け皿ではない。社会保障国民会議 では、基礎年金給付を全額税方式という議論を 行った。これは、年金を保険ではなく保障とい う理念の下で運営することにしている。その財 源として消費税という案も浮上している。年金 だけを先行させるのではなく、高齢者医療も同 じ土俵で議論すべきである。そのために医療に おける消費税の受け皿である高齢者医療の国庫 負担を拡大していくということに意味があると 考える。
<提案要旨(抜粋)>
厚労省・文科省・経産省に内閣府が加わって 最先端の再生医療・バイオ医薬品・医療機器の 開発が「先端医療開発」という形で進められて いる。
今回の「スーパー特区」構想には、大学・研 究者・企業などの複合体が中心となって行われ るが、安全性・倫理性がどう担保されるのか見 えてこない。加えて、先端医療の患者負担の軽 減のための高度医療評価制度(混合診療)の適 用拡大を決めている。
今後、全国に混合診療と格差医療・市場原理 の導入などが進められていくが、日医の対応を お尋ねする。
【内田常任理事回答】
「スーパー特区」における具体的な問題点と して、今年4 月に導入された高度医療評価制度 で、保険診療や薬事法等の承認を受けていない 医薬品、医療機器の使用に伴う漸進的な医療技 術を利用することがあげられる。
これは、平成18 年6 月の医療改正の際に参議 院の付帯決議で新たな保険外併用療養費制度において医療における安全性・有効性が十分確保 されるよう対処すると共に保険給付外の範囲で は助成金で無制限に拡大されないよう適切な配 慮をすることとしており、大いに問題がある。
日医の主張は、医療のフリーアクセス、現物 給付、国民皆保険制度を堅持して、安全・安心 な医療提供体制を確保するということである。
高度医療評価制度は、いずれにも障害となる ようなリスクを抱えるものと考えている。その 活用は例外的に行われるべきであり十分に監視 していく必要がある。また、アラブ首長国連邦 の企業ファンドが「スーパー特区」を誘致する 神戸市の病院に投資し、収益を図ると共に医師 を派遣して医療技術を習得するといった報道が なされた。国内外の企業ファンドが特定の会社 等を通じて病院を経営した場合、営利企業によ る病院経営の介入や支配、あるいは不当な利益 獲得につながる恐れがある。本来、患者(国 民)の地位、医学医療の発展に還元される利益 が企業や配当という形で投資家に流れるという 事態は容認できるものではない。
日医では、国民誰もが安心して、いつでも・ どこでも安全な医療を受けられる体制を今後と も守っていくために「スーパー特区」も十分に 注視し、必要な場合には然るべき意見を強く申 し入れる立場を堅持したい。
<提案要旨(抜粋)>
と展開を今後の日医の進むべき方向として確固 たるものにすることを提言する。
【竹嶋副会長回答】
現在、国による社会保障に対する明確な理念 が見えていない。医療・介護・福祉は国民の命 を支える基盤であり、雇用・年金は暮らしを支 える基盤である。さらに、社会保障の中の教育 は、国民が生き生きと働いていける能力を培っ ていくものである。したがって、社会保障とは ライフサイクルを通過して国民一人一人分け隔 てなく提供されるべき重要な社会共通の保障で ある。これら視点の下に国は、国民の安全・安 心のために常に社会保障のあるべき姿を提示し て、政策化していく必要がある。
ご存じのように日本国憲法第25 条では、すべ ての国民は健康で文化的な最低限の生活を営む 権利を有するとしている。国は全ての生活部面 について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向 上及び増進に努めなければならないとしている。
憲法にある最低限の生活とは、時代の要請を 経て進化していくものと思われる。医療におい ても医師の不足や偏在、療養病床の削減による 不安、分娩実施施設の閉鎖等、地域間格差が大 きな問題となっている。制度改革の名の下にこ れまで繰り返されてきた医療費も患者負担の増 大など、医療へのアクセスポイントを確実に減 らしている。社会保障が進化するどころか後退 しているのが現実である。
日医は国の政策の方向転換をする提言を行う べきである。提言の中には、国家予算の透明化 があったが、日医総研の研究を基に、特別会計 や独立行政法人の収支の見直しを日医として継 続的にロビー活動を通して訴え続けてきた。
先般、閣議決定された基本方針2008 におい ては、特別会計の見直しをはじめ、国家予算に おける徹底的な無駄の排除が盛り込まれてい る。社会保障における負担のあり方について も、事業主負担も引き上げる。各種公的保険料 も保険料の平準化および調整、見直し等を提案 している。
今後も新しい提言等を含めて主張していきた い。しかしながら、我が国における社会保障論は 給付と負担という財源論に偏っている。規制改 革会議などは、理論を称して常に捉えているが、 我々は消費ではなく投資であるという考えで社会 保障の再生化で国を活性化していく。国家の財産は、国民の健康である。その上にたって、社会 共通資本としての医療・介護・教育のバランス を図りつつ、これに投下する戦略的懸念を行う。 積極的なアクションを起こしていく必要がある。 今後は医療を含めた社会保障全般に亘る我が国 のあり方、目指す方向について提言し、新たな国 づくりに全力で取り組んでいきたい。
<提案要旨(抜粋)>
日医は2003 年に禁煙日医宣言をしたが、7 項目の宣言事項について推進する部局がないた め、動きがない感がある。冊子やアンケート調 査等の対内活動も評価するが、厚労省・政府へ の働きかけやWHO 発の禁煙に関する条約の会 員への周知等、多くの対外活動が必要である。
タバコは毒物、喫煙習慣は病気という立場か ら、タバコ対策を進める部局の設立を望む。
【内田常任理事回答】
日医でも様々な取り組みを行っている。現在 は会内の公衆衛生委員会においてタバコ対策に 関する事項を検討しており、前禁煙委員会の委 員3 名がメンバーとして在籍している。タバコ に害があるということは国民に浸透してきてい る。今後どのような施策をするかということを 公衆衛生委員会で検討しており、特にこどもの タバコ対策を中心に検討している。
<愛媛県医師会:大橋>
禁煙宣言が死文化している。追加や見直しを 望む。
<提案要旨(抜粋)>
社会保険診療報酬支払基金は、平成23 年度 原則完全オンライン化の工程を確固たるものに するため、下記について述べている。
→半ば強制的にIT 化する事に法的な問 題や個人情報などに問題はないか。
→小規模医療機関では、こうした投資が 出来ず、診療所を維持できない所もあるの ではないか。
→標準化は医療の規格化であると考える (337 のチェック項目、14,000 の根拠に基 づく算定ルールが組み込まれている)。
→医療、介護、調剤などとの突合、縦覧 が容易で極めて大きな影響が出ると考える。
【藤原常任理事回答】
1)請求方法は、健康保険法の省令で定めら れているので、一応法令に則っている。個 人情報問題については基金法があり、担保 されている。保険者側にも健康保険法や国 民健康保険法等で担保されている。大量の 情報運営にあたり、セキュリティが心配さ れるが、通信ネットワークは銀行のオンラ インバンキングより数段上のセキュリティ なので心配ないと思う。医療機関や医師法 での守秘義務の問題は、医療機関のセキュ リティに対する意識付けをこれまで通り行 う必要がある。レセコンがオンライン化す ることにより外部からの侵入が予測される が、それは高度な犯罪で実際の犯罪量が少 ないと伺っている。情報漏洩の多い原因で ある医療機関がきちんと鍵を掛けておくこ とやノートPC の置き忘れ等に注意するこ とが重要である。
2)日医では平成21 年度概算要求に対して次 の要望を行うこととしている(歯科医師会 と薬剤師会とも連携)。1)オンライン請求 の義務化阻止(手上げでの実施)、2)レセ プト電算の活用、3)少数概況の要件緩和 (年間平均請求件数が1,200 件から3,600件へ。平成23 年4 月1 日から2 年間の範囲 内で別に定める延長。)、4)財源措置(今回 の予算で166 億円の要望)、5)代行請求の 仕組み(診療所は従来通りの請求、手数料 が安くなるようコスト削減策を考慮)。
また、レセプトオンライン請求義務化に 関するアンケート調査結果より、比較的高 齢な医師が地域医療を断念すれば、医師不 足・偏在問題が更に悪化しかねないという 観点から、これらを踏まえて対処していき たい。
3)日医としても掌理については、政府の薬 理作用に基づいた審査の仕組みをすべく努 力している。
4)基金の審査は厳格に行われており、それ を踏まえて行動していきたい。
<宮城県医師会:嘉数>
レセプトオンライン請求義務化に関するアン ケート調査結果では、42,130 件の回答を得た。 その中に36,011 名もの医師がレセプトオンラ イン請求を義務化することによる廃院や保険診 療を止めるといった回答が寄せられた。58 % のアンケート結果から換算すると、6,000 〜 7,000 の医療機関が診療を止めることになる。 これが省令化されて法的に問題がないというの は如何なものか。この時限に間に合わない方、 止める方を含めて、支払の拒否や延期をするこ とは意地悪だ。現に会員が我々のところへ直に 訴えてきている。アンケート調査を行いそうい う結果が表れているので、日医は今後の対応等 について真剣に考えていただきたい。
<提案要旨(抜粋)>
1)特定健診の集合契約は、厚労省がモデル案 (第11 条)を示しているが、あまりにも実 施機関の責任が大きくなっている。保険者 と集合契約の際、11 条の変更を主張した が、国がモデル案を示していることから、 都道府県段階で変更できないと主張してい る。日医が厚労省に対し、モデル案の改善 を強く働きかけてほしい。また、特定保健 指導についても集合契約を締結すべく医療 保険者と協議中であるが、指導中の事故が 大きな問題となってくるので、厚労省との 協議結果を速やかに通知してほしい。
2)日医は事業を円滑に推進するためにも厚労 省をはじめ健保連・支払基金・国保中央会 などと詳細に問題点を詰め、都道府県医師 会に具体的実施方法(方針)を通知してほ しい。
【内田常任理事回答】
1)標準的な契約書の雛形の過程にあたって は、公正取引委員会への確認に加えて、厚 労省のワーキンググループで整理されたも のである。雛形の第11 条「事故及び損害 の責任」とあるが、市町村や保険者の過去 の健診に関する契約書を基に保険者実施機 関のいずれかに負担を抱え合わせることは 適当ではないという公正な取引の観点に基 づき、受託する実施機関や医師会等を取り まとめる団体が独占禁止法に抵触しないよ うに公正取引委員会と相談しながら取りま とめられたものである。故意又は重過失が ない場合は、協議によるケースバイケース で判断するというのが趣旨となっている。
現在、特定健診・特定保健指導の契約状 況について、都道府県医師会・郡市区医師 会に調査をしており、その際に契約書の写 しを添付するようお願いしている。これを 基に日医総研で特定健診・特定保健指導の 実施における標準的委託業務契約の法的問 題点に関する調査・研究を行っている。早 急な回答は難しいが、調査結果を踏まえて 対応したい。
2)初年度ということもあり、多少の混乱を招 いていることは事実である。現在、厚生労 働省、支払基金、国庫中央会等と緊密に連 絡を取り合って対応を進めているところで ある。
<提案要旨(抜粋)>
日医として、地域医師会、地区医師会におけ る女性医師の登用について、その推進に力を尽 くすべきだと思うが如何かお伺いしたい。
【今村定臣常任理事回答】
男女を問わずに人材が登用されることは非常 に重要であると認識している。平成17 年12 月 に閣議決定されている男女共同参画基本計画に おいては、2020 年までに指導的地位に女性の 占める割合を30 %になるよう奨励されている。 今回の役員構成についても例外ではない。今後 積極的に全国から意欲ある女性に加わっていた だくことを望んでいる。日医の今年度の事業計 画では、会内委員会に女性医師の積極的登用を 盛り込んでいる。会内委員会のブロック推薦に は、女性医師の登用推進依頼文書を出したとこ ろである。より具体的方策としては、本年4月、 全地域医師会の女性役員を対象に会内委員会の 女性会員登用のための調査を実施した。調査結 果は、7 月1 日現在、女性医師が在籍する委員 会の割合は、平成18 年度で33.3 %であったの に対し、現在では56.5 %へと半数以上になっ ている。全員数に占める女性医師委員の割合も 6 %から8.2 %へと増加している。少しずつで はあるが着実に取り組みの成果が現れている。 今後も更に実効ある施策を検討していきたい。
<提案要旨(抜粋)>
25 年間も続いた「医療費亡国論」は、当時 から25 年を経た現在の医療状況とは一致しな い点が多い。「医療費亡国論」の呪縛を断ち切 って、これを封印するためにも、ぜひ、日医か らこれと対極する「医療費興国論」のような論 文を発表していただきたい。できることなら、 それを社会保険旬報に掲載したらいかがか。
【中川常任理事回答】
残念ながら閣議決定された基本方針2008 で は、昨年同様、数値の記載はないが社会保障費 の自然増に対する年2,200 億円の削減が撤回さ れなかった。次の課題は、来年度予算のシーリ ングで2,200 億円を削減させないことである。 このため、ロビー活動に加えて、本日、朝日新 聞と日本経済新聞に意見広告を掲載した。内容 は、国民と共に社会保障費の年2,200 億円削減 に反対するというものである。来週24 日には 地域医療崩壊阻止のための総決起大会を開催す る。政府は地域医療崩壊の事実を認識してい る。「医療費亡国論」の呪縛から脱却すること は日医も同感である。当時の大蔵省厚生官僚の 文章や言動がその後の我が国の医療政策に強い 影響を与えた。現在でもその傾向は変わらな い。日医としても短期的アクションに加えて、 中・長期的な戦略をとらなければならない。行 動計画として、1)グランドデザインの進化(あ るべき医療、必要な医療費の提示)、2)国が方 針転換をせざるを得ない状況をつくること(地 域においても強力なロビー活動および地域住民 への働きかけ)をあげている。日医もグランド デザインを国民に語りかけ、患者を決して見過 ごすことが出来ないような世論形成を行ってい きたい。また、マスコミ・メディアの力を利用 する。更に、信頼性の高い専門誌に執筆するな ど、社会保障に関する提言者としての力を持ち 続けて行きたい。一方で、TVCM や新聞の意 見広告などの対外広報活動に効果をあげるため に、先月、広告代理店が実施した一般国民の日 医に対する意識調査では、幸い2 年前に比べ、 日医の国民安全への役立度が11 %から23 %へ と日医の信頼度が住民から急上昇している事が 分かっている。国、特に官僚は医療費抑制の呪 縛に囚われている。これを解き放つにはかなり 時間がかかるが、日医は決してあきらめず、国 民医療に取り組んでいる所存である。
<提案要旨(抜粋)>
日医が認定医制度を創設するかについて、専 門医との関係、日医生涯教育制度の関係を併せ慎重に行うべきと考えるが如何か。
【飯沼常任理事回答】
厚労省が認定を行った場合には、それこそ、 フリーアクセスの制限、人頭割、定額払い、総 枠規制に結びつく可能性が強い。本制度創設の 目的は、国民から見える形での医療の質の担保 であり、これにより、国民が安心して受診でき るということである。こうした国民からの要請 に応えるためにも、日本医師会が学術専門団体 として制度化することが求められていると考え ている。また、日医が関連3 学会と協力し、こ れまでの生涯教育制度のバージョンアップを し、国に先駆けて認定制度を主導的に創設する ことこそが、フリーアクセスの制限、人頭割、 定額払い、総枠規制と結びつかない唯一の方策 であると考えている。認定制度の創設やネーミ ングについては、役員打合せ会を頻回に開催し 鋭意検討中である。これまでにいただいた意見 を踏まえ、都道府県医師会に対し、日医の方針 を示した上で、ネーミングを含め、再度アンケ ート調査を実施することも検討中である。
<提案要旨(抜粋)>
鹿児島県医師会では、行政・大学と緊急医師 確保対策連絡協議会を立ち上げ、医師修学資金 の貸与、ドクターバンクの運営、在宅女性医師 への支援、初期臨床研修病院合同説明会などを 計画、実施しているが、他の都道府県医師会で はどのような緊急医師確保対策が行われている かお伺いしたい。
【内田常任理事回答】
日医においても女性医師バンクの運営、臨床 研修制度の見直し・提言、総合診療医制度ある いは新救命制度や無過失補償制度、診療報酬改 定や国庫補助要望活動といった中で、特に医師 偏在・不足の根本源である国の医療費抑制策の 展開のために社会保障費自然増の2,200 億円の 機械的抑制の廃止を積極的に働きかけるといっ た活動を展開しているところである。
また、今年度早期に都道府県医師会、大学、 学会等を対象に医師偏在・不足の現状と必要 数、地域での様々な取り組み等について調査を 行う予定にしている。この中で、地域の現状を 把握し、将来的な必要性を推計した上で今後の 政策に反映させていきたいと考えている。
内田常任理事回答後、北海道医師会および愛 知県医師会より、緊急臨時的医師派遣事業およ び医師確保に関する取り組みについて説明があ った。
<提案要旨(抜粋)>
北海道医師会では、「北海道方式の集団的個 別指導」を実施し、実効を上げている。
「指導大綱」では、効率的・効果的な指導が 実施できるような文言が盛り込まれるべきであ る。また、本年10 月に社会保険事務局が地方 厚生局に移管されても、各地域の特性・実状を 考慮した指導が実施されるよう日医から厚労省 に強く働きかけていただきたい。
【藤原常任理事回答】
集団的個別指導は都道府県の自主性に委ねる ものとしており、取り扱いは都道府県毎に異な っているのが実状である。本年10 月に社会保 険事務局が地方厚生局に移管されるが、指導の あり方については従来どおりにするよう強く念 押ししているところである。しかし、「指導大 綱」の見直しはきわめて危険な要素を含んでい ると考えている。それは、今回の地方厚生局へ の移管において、社会保険庁解体を口実に指 導・監査体制の強化を図りたいと示しているか らである。まず、地域医師会との関係を薄くさ せたいという声がかなりあるのではないかと思 う。日医としては、見直しを求めれば、それな りに指導・監査体制が強化されると予測される ので注視していきたいが、現場の声が大きく上 がってくるのであれば、これはやぶさかではな いと考えている。
<提案要旨(抜粋)>
診療時間要件の設定は、現場を理解されての こととは言い難いので撤廃していただくよう厚 労省等との折衝を要望する。
【藤原常任理事回答】
5 分という時間要件については、中医協で変 えられたことであり、今後、中医協の中で調 査・検証・修正を行っていくものでもある。も ちろん日医でもレセプト調査で現状を外すべく 調査中である。しかし、4 月以降、会員から5 分要件について厳しい声をいただいている。こ れを受け、日医として厚労省が提出した資料で ある内科診療所の患者1 人あたり平均診療時間 の分布について、診療時間を診察時間と置き換 えるなど、時間の根拠が極めて曖昧な形で導入 されたのではないかと指摘し、これは検証以前 で、見直しを主張したところである。また、5 分要件の根拠として厚労省の示した資料そのも のに疑念があると調査対象となった県医師会か ら指摘を受け、事実関係を中医協で問いただし た。その内容は、厚労省の実施した時間外診療 に関する実態調査のデータが有用されたのでは ないかというものである。つまり、医療機関へ の文書が厚労省のものと調査を実施したみずほ 総研の2 種類があり、厚労省の文書では、今後 の診療報酬改定の検討資料とすることを目的と しているのに対し、みずほ総研の文書では今後 の時間外の診療体制のあり方を検討するための 基礎資料とすることを目的とすると記載されて いるなど、かなり目的が異なる。中医協での5 分要件の早期見直しについては議論が進んでい ない。日医としては引き続き中医協に対し、早 期改定を求めていく。
<提案要旨(抜粋)>
1)厚労省から日医に詳細が報告されたのが6 月20 日である。7 月上旬までにブロックの 医師代表委員を選出せよとのことである が、関東信越厚生局管内には10 都県が存 在する。物理的に無理があると思うが日医 の見解を伺いたい。
2)千葉県医師会では、20 年以上前より「保 険医講習会」という名称で「集団的個別指 導」を行ってきたところである。今後もこ のような良いシステムを変えたくないが日 医の見解を伺いたい。
3)全都道府県が関与できるシステムに何故固 執しなかったのか。当日の日医の回答で は、日医にはそれだけの力が無いと回答さ れたが、その回答には不満が残る。日医の 正式見解を再度伺いたい。
【藤原常任理事回答】
7 月上旬までの代表委員の選出は、物理的に 不可能であると認識している。非常識この上な いと抗議したところである。しかし、都道府県 医師会や各ブロックでの調整が必要であること から、各都道府県の保険担当理事に集まってい ただき厚労省から説明をさせた。
日医としては厚労省の相談の中で、ブロック 単位であることで委員のいない都道府県の意向 がしっかり反映されないことから、臨時議員の 参加および議決権を実現させた経緯がある。
今回のスケジュールは承諾できるものではな いが、厚労省より1 ヵ月後の7 月20 日締め切 りという提案があった。今回、厚労省の言及に 注意しつつも各ブロックで窓口となる医師会を 日医に連絡する締め切りを7 月20 日とさせて いただきたい。できるだけ早い対応をお願いす るしかない。
羽生田常任理事より、来る7 月24 日(木) 午後3 時より、笹川記念会館国際ホールにおい て行われる「地域医療崩壊阻止のための国民運 動」への参加呼びかけがあった。
羽生田常任理事より、標記の件について説明があった。
5 月に担当理事連絡会を行った際に当時の審 議官の講演の最後に、一般社団法人から公益社 団法人に移るという2 段階方式があるという説 明があった。日医としては公益社団法人として 準備を進めているのは事実であるが、5 年とい う年月や高いハードルを如何にクリアするかと いう問題を対応していく場合を考慮すると、2 段階方式も踏まえて検討を行っていくことも考 えられる。
【奈良県医師会:大澤】
公益にするメリットの明確化および日医の事 業で事業比率50 %がクリアできるという試算 はされているのか。
【羽生田常任理事】
医賠責は50 %の公益比率には絶対届かない。 その点をクリアする方法を練っているところ で、公益事業と認められるための努力は引き続 き行う。また、年金についても模索していると ころであるが、公益法人の申請までに決定しな ければならないので、別立てで模索していると ころである。現在ある全ての事業が必ずしも公 益事業比率を50 %クリアしていない。認めら れる努力と認められないときの対応を検討して いる。更には、医師会立の病院や検査センター が多いので、これは内閣府の委員会が実際現場 を見に行き、どの程度の公益事業をしているの かを視察している。公益事業として認められる 公算は高いと考えられる。
【福岡県医師会:横倉】
一般社団法人になった場合の現行の課税も試 算してほしい。
【今村聡常任理事】
少なくとも医師会病院や検査センター、訪問 看護ステーション、その他の地区医師会が行っ ている源流については、昨年度の税制改正要綱 において、今非課税になっているものはそのま ま一定の要件を満たせば非課税になるというこ とを謳っている。詳細の条件については、全て の医師会がクリアできるような要件ということ で財務省と厚生労働省の間で話し合われている。
羽生田常任理事より閉会の辞があり、会は閉 じた。