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地域医療崩壊阻止のための総決起大会

宮城信雄

会長 宮城 信雄

去る7 月24 日(木)、東京都港区の笹川記念 会館において、社会保障費年2,200 億円削減撤 廃を求め、国民医療推進協議会(会長:唐澤 人日本医師会長)主催による標記総決起大会が 開催された。当日は全国から当医療推進協議会 各関係団体から約1,200 人の他、自民・公明両 党の国会議員35 人が参加した。

総決起大会の概要は以下のとおり。

1.開会宣言

萩原正日本柔道整復師会長より、「厳しい暑 さの中全国から多くの医療関係者の参加を得 て、ここに地域医療崩壊阻止のための総決起大 会を開催する」との開会が宣言された。

2.挨 拶

唐澤人国民医療推進協議会長(日本医師会長)

長年にわたる政府の医療費抑制策は、地域医 療を崩壊させると共に、平等であるべき医療に 地域格差をもたらしている。これまで医療関係 者の献身的な努力によって地域医療の現場は保 たれてきたが、それも限界といっても過言では ないと認識している。こうした事態を招いた原 因は、国民の生命と健康、生活を守る根幹的な 理念が、国に欠如しているからと言わざるを得 ない。

政府は、これまでの5 年間、これからの5 年 間で自然増12.1 兆円を抑制することになる。 これにより医療費の国庫負担が約8 兆円、国民 医療費ベースでは約30 兆円の削減となり、日 本の医療は10 年間で1 年分の遅れを取ること になる。国民が享受すべき福祉を奪う政策は、社会的な契約に対する国家の重大な背信であり 断じて許すわけにはいかない。社会補償制度の 在り方が国民の最大の関心事となっている今こ そ、社会保障費の行きすぎた削減という政府の 誤った政策を阻止し、国民が真に安心して暮ら せる社会の実現に向け、国民と共に国人の医療 を守らなければならない。

本日のこの大会が、政府に対し、我々国民の 声を届ける端緒なるようご理解・ご協力をお願 いして挨拶とする。

協力団体代表 鈴木聰男東京都医師会長

今、国民全体が医療に対して不安を持ってい る。政府、福田総理はその多くの国民の声に耳 を傾けて欲しい。

政府は「安心と希望のビジョン」を掲げてい るが、それには夢をもてない。医師不足、医療 関係者不足、特に介護士不足は深刻である。ま た、救急医療、小児科医療も多くの点で破綻を 来し、勤務医の過重労働、病床削減の問題が起 こっている。どうしてこうなったのか、いずれ も毎年2,200 億円ずつ削減するからである。

病気になったとき、体調が悪くなったとき、 安心して医療を受け、生活ができると言うこと が国民のささやかな気持ちである。日本人は、 自分のことよりも周りの人が困っているのを見 ることが一番辛い。もう終わりにしましょう 2,200 億円削減することは。

3.来賓挨拶

尾辻秀久自民党参議院議員会長をはじめ多数 の自民・公明の国会議員が挨拶に立たれ、異口 同音に「医療崩壊を阻止すべく社会保障費 2,200 億円撤廃」を訴える挨拶が述べられた。

なお、主な来賓の発言は次のとおり。

尾辻秀久自民党参議院議員会長

このままでは日本の医療が崩壊するというの はみんな分かっている。みんなが2,200 億円削 減は無理だと言っているにもかかわらず、抵抗 勢力がいる。向こうは我々を抵抗勢力と言うだ ろうが、我々から言うと向こうが抵抗勢力だ。 向こうは2,200 億円の削減を止めたら日本売りがはじまると訳の分からないことを言ってい る。

収支のバランスが崩れていることは事実であ る。しかし、支出を抑制することで帳尻を合わ せるのはもう無理がある。入りを考えなければ ならない。本音は消費税を上げるしかないと思 っているが、この問題は議論が必要なので、せ めてたばこ税を上げさせて欲しい。

津島雄二自民党税制調査会会長

日本の高齢社会の構造は、毎年約2 兆円の歳 出が必要となる。高齢化という素晴らしい成果 に、それだけの金額がかかるならば、みんなが 納得して分かち合うことが必要である。それを 毎年2,200 億円ずつ、ちまちまやってどう解決 できるのか私には分からない。年末の税制改正 や予算編成に向け、国民が安心できる医療制度 をつくるための改革が必要である。

鈴木俊一自民党社会保障制度調査会長

昨日(23 日)の自民党厚生労働部会、社会 保障制度調査部会、雇用・生活調査会の合同会 議で、2009 年度概算要求基準(シーリング) に関する決議をした。実現に向け、与党一体と なって腰を据えて取り組んで行かなければなら ない。

福島豊公明党社会保障制度調査会長 (公明党大田代表の代理)

シーリングまでのここ数日間が大事である。 我々もこの問題に直視し、関係者の声を政府に しっかり伝え、最後まで努力する。

4.趣旨説明

竹嶋康弘日本医師会副会長より、以下の通り 本大会の趣旨説明が行われた。

医学医術の進歩、国民の医療ニーズの増大、 そして急速な高齢化の進行等の社会構造の変化 を勘案し、しかるべき.医療サービス水準を維 持していくことを前提とすれば、わが国の社会 保障費が一定の規模で増大していくことは明ら かである。

しかるに、経済財政諮問会議がこのほどまと めた「基本方針2008」を見ると、平成21 年度予算について「・・・これまで行ってきた歳出 改革の努力を決して緩めることなく、国、地方 を通じ、引き続き「基本方針2006」、「基本方 針2007」に則り、最大限の削減を行う」とし ている。これは、5 年間で1.1 兆円の社会保障 費を削減するという政策を、平成21 年度も引 き続き実施するということにほかならない。

長年にわたる社会保障費の伸びの抑制が、医 療崩壊を顕在化させたことは明らかである。こ の機械的抑制が続く限り、救急医療体制の弱体 化、産科・小児科を中心とする医師不足、介護 分野における恒常的人材不足等の問題は決して 改善されない。

国民が社会保障に対して不安を持っている今 こそ、政府に間違った方針の反省を促し、社会 保障費の機械的抑制の撤回という明確な方針転 換を図るよう、国民とともに強く要望していく ことが必要である。

そのため、国民医療推進協議会では、本日こ のように「地域医療崩壊阻止のための総決起大 会」を開催することにしたので、ご協力の程お 願い申しあげる。

5.決意表明

国民医療推進協議会加盟団体を代表して、大 久保満男日本歯科医師会長、児玉孝日本薬剤 師会長から概ね以下のとおり決意表明が述べら れた。

大久保満男日本歯科医師会長

日本の医療はもう後戻りができない一線を越 えてしまったのではないかという恐怖のような 思いがする。もしかしたら部分的には越えてし まったところにあるかもしれない。現状に辛う じて踏みとどまっているのは、現場の医療従事 者の努力に他ならない。しかし、もう限界であ り、日本の医療を守るために2,200 億円削減撤 廃に向け国民と共に頑張りたい。

児玉孝日本薬剤師会長

第二次世界大戦後、GHQ の憲法草案には、 社会保障の規範となる25 条の条文は無かった。 25 条は日本人の手によって加えられたもので ある。今一度「人間らしい生活を送る」という 理念を考え直す時期であり、財政優先の政策は 断じて許せない。

6.決 議

西澤寛俊全日本病院協会会長より決議文の朗 読説明があり、全会一致で原案通り承認された。

7.頑張ろうコール

最後に羽生田俊日本医師会常任理事の音頭で 頑張ろう三唱が行われ、大会の幕を閉じた。

頑張ろう三唱

頑張ろう三唱