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ゾウガメを飼っています。

宮良長治

宮良眼科医院 宮良 長治

アルダブラ・ゾウガメをご存じだろうか。世 界で現存するゾウガメはダーウィンの進化論で 有名なガラパゴス・ゾウガメとアルダブラ・ゾ ウガメの二種だけだ。ガラパゴス・ゾウガメは 国際的保護動物で一般には飼育できないが(上 野動物園や伊豆アンディランドなどにはいる)、 アルダブラ・ゾウガメは本来の生息地であるセ ーシェル諸島などから少数が日本にも輸入され ており、人工繁殖個体もいて、その気になれば 入手可能である。私は家の庭で、このアルダブ ラ・ゾウガメのメスを二年余り前から飼育して いる。現在12 歳ほどであるが、名前はミミ、 甲長(甲羅を真上から見たときの直線距離)約 60 p、体重は40 s近くある。この二年間で十 数センチ、十数キロ成長し、二回りくらい大き くなった。このカメは、私がネット・オークシ ョンで見つけて一目惚れした。私は子供の頃か らイヌ、ネコはもちろん小鳥、爬虫類、両生 類、魚類にいたるまでいろいろなものを飼って きた。憧れのゾウガメが飼育可能なカメである と知り、早速オークションに入札して運よく競 り落とすことができた。かなり高価だったが、 参考までに10 pくらいの子ガメで30 万円位す る。出品者が手渡しを希望し、土曜日の午後 と、日曜日を利用して大阪まで受け取りに行っ た。熱帯産のカメなので、12 月の寒さの中の 輸送には気をつかったが、幸いにも元オーナー が、大きなプラスチック製のボックスにキャリ アやカイロまで付けてくれ、安心して飛行機を 二回乗り換えて無事に運ぶことができた。空港 でボックスの蓋をあける度に人だかりができた がこれは仕方あるまい。我が家には裏に無農薬 栽培の野菜畑があり、隣接して10 メートル四 方くらいの空き地があり、そこで飼育してい る。そこがよほど気に入ったのか、大した柵や 囲いもないが、畑に入ったり、遠出することは 全く無い。小さな道具小屋があり、そこがミミ の家である。連れてきた最初の日にすぐに小屋 へ入り、予想していた場所をねぐらに定め、そ れ以来その場所以外で寝たことはただの一日も ないので、帰巣本能はかなりあるらしい。そこ に冬の保温用の赤外線ライト二個と太陽光と類 似の光を出すメタルハライド・ライトを設置 し、必要に応じて使用している。本土では冬の 保温は非常に大変らしいが、さすがに沖縄では それ程気をつかわなくていい。冬は隙間を布で 覆ったり、シートを掛けたりして保温するが、 気温15 度くらいでも平気で外に出たりするの で、意外に寒さには強いようだ。体が大きいほ ど体積に対する表面積の割合が小さくなる(つ まり寒さに強い)というベルグマンの法則のお かげだろうか。日光浴はカメの甲羅の成長や体 温上昇のために必要不可欠であるが、夏の直射 日光はさすがに避ける。その代りに水浴びは大 好きで、暑い時期は毎日水浴びをさせてやる が、とても気持ち良さそうである。そのうちに いつでも入れる小さな池を作ってやろうと思っ ている。エサはさすがにかなりの量が必要であ る。いろいろな文献、雑誌、ネットで調べ最も 良いと思われるものを与えている。メインはク ワの葉であるが、野菜よりも大量のカルシウム を含み、甲羅の維持、成長に多量のカルシウム を必要とするリクガメには最適と思われ、非常 に好きでよく食べてくれる。幸いにもクワの葉 はこちらでは年間を通じていつでも容易に手に 入るし、少し手間はかかるがなにしろタダであ る。本土の飼育者はコマツナ、モロヘイヤ、チンゲンサイなどの葉野菜を中心に与えているら しいが、おそらくかなりの出費であろう。(し かし、私もスーパーのおつとめ品コーナーの常 連ではある。少し傷んで5 本で100 円などとい う、好物のバナナを見つけると思わずほくそ笑 んでしまう。)一日に大人の手のひら大のクワ の葉を150 〜 200 枚は食べる。それに加えてリ ンゴ、バナナ、ミカンなどの果物と野菜クズ、 ニンジン、カボチャ、サツマイモのスライスな どを一日一回与えるがほとんど完食する。その 他牧草も食べるし素手では触れないアザミや、 ゴーヤ、ヘチマ、イモ、カボチャの葉、ハイビ スカスの花、ものすごく臭いノニ(ヤエヤマア オキ)の実や、小屋の周囲に落ちているフクギ の実なども種ごと喜んで食する。要するに植物 性のものはあまり選り好みしない。しかし、甘 い果物が一番好きで他のものと混じっていても 選び出して真っ先に食べてしまうが、これは高 カロリーのものを先ず摂取しようとする本能的 なものであろう。好きなものをとっておいて後 でゆっくり食べようなどというセコい考えは一 切ない。あれだけの甲羅を成長させるためには 大量のカルシウムが必要で、牡蠣殻の粉末や自 家製のサンゴの粉末などをかなりの量与えてい る。エサを手で与えるときには噛まれないよう に注意が必要である。カメなので歯はないが、 鋭い嘴とものすごい顎の力で、誤って噛みつか れると出血する。最近捨てガメとして話題にな るワニガメやカミツキガメなどのように凶暴で はなく、非常に穏やかで臆病な平和主義者なの だが。(これだけ食べれば当然出すものも大量 だが、隣の畑の良質の肥料として利用してい る。)飼い主の顔をちゃんと覚えていて、人見 知りもするので可愛いものである。とはいえ、 やはり爬虫類でありイヌ、ネコのようには付き 合えない。しかし、散歩の必要はないし、寂し がったり鳴くこともない。やや距離のある関係 ではあるが、見ているだけで楽しい、いわゆる 『癒し系』である。ゾウガメは巨大になり(オ スの世界記録は400 s以上!!名護市のネオ・パ ークにも200 s超と思われる子供が乗れるオス がいる。)しかも大変に長寿である。この前死ん だ世界最高齢とされるゾウガメは何と177 歳で、 かのダーウィンがガラパゴスから持ち帰ったもの というから驚く他はない。これでは私も孫に遺 言する必要があるかもしれない。若かりし頃か ら老後までをともに過ごせるペットなどめったに いない。今は日々の成長が楽しみである。甲長 1m、体重100 sが当面の目標である。さて、今 日もまたクワの葉を取りに行ってこようか。

一日これくらいを食べる。

一日これくらいを食べる。

小学2 年生の息子と

小学2 年生の息子と

★リレー状況
−平成17 年以前掲載省略−
31.友利正行先生(ともり内科循環器科) Vol. 42 No.2
32.具志一男先生(ぐしこどもクリニック) Vol. 42 No.4
33.神谷鏡子先生(かみや母と子のクリニック) Vol. 42 No.6
34.呉屋良信先生(わんぱくクリニック) Vol. 42 No.9
35.江洲浩明先生(はえばる耳鼻咽喉科) Vol. 42 No.11
36.真栄城徳秀先生(真栄城耳鼻咽喉科) Vol. 43 No.2
37.野原昌亮先生(野原整形外科) Vol. 43 No.4
38.平良章先生(にしはら耳鼻咽喉科) Vol. 43 No.5
39.仲程一博先生(南西耳鼻咽喉医院) Vol. 43 No.7
40.松尾周一先生(まつをレディースクリニック) Vol. 43 No.10
41.藤井弘人先生(ひふ科藤井医院) Vol. 43 No.11