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世界保健デー
「気候変動から健康を守る」

宮川桂子

中央保健所 宮川 桂子

4 月7 日は、世界保健デーです。WHO は今 年のテーマを、「気候変動から健康を守る」と しました。日本では、温室効果ガスの排出量を 制限する京都議定書、アル・ゴアの「不都合な 真実」などを通じて気候変動はそれなりに問題 との認識は浸透してきていると思われますが、 果たして個人の生活レベルではどうでしょう。 私自身、環境問題は政府や企業が考えるべき問 題、との認識でした。これを機会に、少し勉強 してみました。

まず、気候変動とその影響はどのようなこと を言うのでしょうか。「気候変動に関する政府間 パネル」(IPCC: Intergovernmental Panel on Climate Change)という専門家集団が昨年出し た第4 次評価報告書(The AR4: the Fourth Assessment Report)に基づいて、国連環境計 画(UNEP)は年報で次のように述べています。

温暖化

地球温暖化は、疑いの無いものである。その 原因とされる、温室効果ガス( G H G : Greenhouse Gas)の主体であるCO2 レベルの 上昇は、1990 年から1999 年のCO2 増加率が 1.1 %であったのに対して、2000 年から2005 年では、3.3 %に上昇した。このため、1906 年 から2005 年の100 年の間に、地表面の気温は 0.74 度上昇した。今後、気温は、10 年当たり 0.3 〜 0.4 の上昇は続くものと考えられている。

降水量のパターンや暴風気候

湿度や降水量の変化も、人間の活動によると 考えられている。アメリカの科学者は、ハリケ ーンの頻度が、1900 年ごろに比べて倍増して いると推論している。また、風速175Km/h 以 上の強いハリケーンも著しく増加している、と している。

海面の上昇

海面も予想以上の速さで上昇している。原因 として、氷河や氷冠(50,000km2 以下の面積を 覆う氷)の解凍と、水温の上昇による膨張によ ると考えられる。過去一世紀にわたる海面の上 昇曲線から、今世紀中に、海面は0.5 〜 1.4m 上昇すると推測されている。

一方、北極海の海氷は、2007 年観測史上も っとも小さくなり、6 月から7 月にかけて高気 圧が上空に居座り、海水表面の露出が進んだ。 そして、今世紀後半には、夏場には、北極海に 海氷がなくなると予想されている。

生物の多様性への影響

過去5 億2 千万年の化石の研究によって、気 候の温暖化は、生物の多様性を減らす方向性に 働くとされている。中でも人類猿は、脆弱な生 態系の指標とされているが、すべての種で絶滅 の危機、あるいは非常な絶滅の危機に瀕してい ると分類されている。また、2007 年、国際保 護連合絶滅リスト史上初めて、珊瑚がそのリス トに乗った。

バイオ燃料の危険と将来性

バイオ燃料は、化石燃料からのGHG を減ら すための方法として広く注目を集めてきた。し かし、2007 年4 月、国連エネルギー(UN Energy)は、バイオ燃料は食料穀物面積を減少させ、値段を上げ、食糧危機を促進するの か;益々生態系や気候変動を悪化させるのでは ないか;製造に多量の水を必要とすることか ら、家族が使用する水を運搬しなければならな い女性や小農家、その地域の生活にどういう影 響を与えるのか、など重要な疑問を呈する報告 書を出した。他にも、栄養を失った土地、化学 肥料や殺虫剤などは、人への健康に影響する可 能性がある、などの疑問が提示された。

このような状況の下で、WHO は、気候の変 動は、以下のような健康への影響があるとしま した。

短期間の気象の激変は以下のような健康への被 害を及ぼす

● 極端な熱波、寒冷は熱中症や低体温による死 亡、あるいは心疾患や呼吸器疾患による死亡 増加をもたらす。

● 都市部におけるよどんだ気候は、熱や大気汚 染物質を封じ込め、スモッグを起こし重大な 健康被害を及ぼす。

● 豪雨や洪水、ハリケーンなども重要である。 1990 年には、約600,000 人が気候に関連し た自然災害で命を失っている。

温暖化の影響

● 気候の状態は、下痢やマラリアなど、水や蚊 などによって媒介される感染症にも影響を与 える。これらの病気にかかる季節を長くした り、公衆衛生のインフラが不十分な地域へ広 がる可能性がある。

● 熱波の頻度の増加。2003 年のヨーロッパを 襲った熱波は、前年の同時期より27,000 人 多い死亡をもたらした。

● 海水面が上昇することによる人口の移動が必 要となる。世界の人口の半数以上は海から 60km 以内のところに住んでいる。特に影響 を受けやすいのは、エジプトのナイルデルタ 地域、バングラデシュのブラマプトラデルタ 地域、モルディブやマーシャル島、ツバルな どの小さな島々である。

● 旱魃による飢饉。特に貧困国での影響が大きい。

大局的に見ると、公衆衛生は、安全な飲み 水、充分な食料、安全な住居、そして良好な社 会的条件によるところが大きい。特記すべきこ とは、これら健康への影響は公平ではなく、温 室効果ガスの80 %近くを排出し、その恩恵を 受けてきた先進国よりも、温室効果ガス排出の 恩恵を受けていないような貧しい国が最もこの ような健康への悪影響を受けやすいのである。

WHO はこれらの気候変動による健康への問 題に対し、次のようなことを、世界保健デーの 目的としています。

気候変動による健康への影響に対するための キャンペーンに人々が参加することを促し、国 連の気候変動問題の中心にすえ、次のような点 について提案する。

● 気候変化と健康、その他の開発部門、例えば 環境、食料、エネルギー、交通などの連携を 確立する。

● 気候変化による健康問題を啓発するためのイ ベントや活動を起こす。

● 気候を安定化させるための努力に、なるべく 多くの人を取り込む。

● 政府や国際社会、市民社会、個人が活動に関 わる可能性を高めるような啓発キャンペーン を起こす。

● 気候変動の影響を受けやすい、貧困で脆弱な 人々、特にアフリカの人々を助ける。

上記の解説の中で、いくつかの具体的例を挙 げています。

● 良く計画された都市部の輸送システムは、温 室効果ガスの放出を減らし、同時に都市部の 大気汚染や身体的な低運動の健康への影響を 改善するだろう。

● 効率的な断熱剤を使った家屋はエネルギー消 費と関連する温室効果ガスを減らすだろうし、寒冷や熱による死亡を減らすだろう。ま た貧困国ではバイオ燃料の燃焼を減らし室内 の空気汚染による影響を減少させる。

● 感染症対応や安全な水・衛生へのサービス、 自然災害への対応のためのプログラム支援

● 緊急時の救援のコーディネーションなどにつ いて、地球規模の連携と対応

以上のようなことを勉強してみて、自分の問 題としては、以下のような点を考えてみました。

● 温室効果ガスの排出減少に寄与するための、 なるべくエネルギー効率の良い方法を考え る。例えば、なるべく公共交通と徒歩、自転 車等を使うことによって、エネルギーだけで なく、自身の健康増進にも寄与する。

● なるべく、食料自給率向上のため、地元産 (あるいは国産)の食料を購入する。(少しで も自分で生産できるのがいいのでしょう が...)

● その他、省エネ・エコ重視になるべく努める。

● 貧困国への援助として何ができるかを考える。

● 感染症等、健康に関するサーベイランスの強化。

● 災害時も含めて、健康危機管理体制の強化。 生活弱者への配慮。

さて、「気候変動から健康を守る」という視 点に関して、少しは皆様の理解のお役に立てた でしょうか。



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