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診療雑感(しまんちゅの耳垢再考)

真栄田宗慶

アメカル耳鼻科クリニック
真栄田 宗慶

沖縄に戻って約10 年経って開業した。戻っ た当初、本土とのギャップはいろいろあった が、慣れてくると大方は気にならなくなった。

数年前、新聞のコラムに耳垢について書いた ことがある。要約すると沖縄県人(しまんち ゅ)の耳垢は湿性耳垢の割合が人口比で多いと 言われている。これが問題で未だに苦労のひと つである。と言うのも赤ちゃんはただでさえ動 いて処置困難のところに加え、外耳道を傷つけ ないように、粘っこく硬く付着した耳垢を除去 するのが難しい。

前職の中部の病院では、外国人(欧米系)や ハーフのかたの受診も多く、ほぼ100 %湿性耳 垢であった。ただ比較的軟らかくサラッとして おり、粘度はしまんちゅの方が高い印象であっ た。しまんちゅの場合、湿性耳垢と乾性耳垢が 混合してかえって粘度が増しているのかもしれ ない。

日本人の7 〜 8 割は乾性耳垢とのことだが、 沖縄では逆転している。離島に行くとさらに湿 性耳垢の割合が高い印象である。耳垢のことを 親が子供に耳のウンコと話していたが、確かに 湿性耳垢は色が似ているかもしれない。乾性耳 垢ではウンコは想像できないが、耳クソと俗に 言うのでどっちも似たようなものかもしれない。

文献的には湿性耳垢の傾向として、高脂血症 や肥満の割合が高くなるとのことである。最 近、メタボリック症候群や平均寿命のことが話 題になっているが、体質的には湿性耳垢は不利 と言うことになる。

当院は那覇新都心にほど近い場所で、いわゆ る転勤族や移住した本土出身の方も多く受診さ れる。当然、赤ちゃんも中耳炎で受診される が、やはり耳垢は乾性が多い。そして同じ年 齢、月齢で受診したしまんちゅの子供と比較し て、どうも外耳道の大きさが本土出身の子供た ちの方が大きいような印象である。それで耳処 置はこれまでより少し楽な感がある。

年齢、個人差で外耳道ひとつとってもサイズ や微妙な彎曲の違いはあるが、沖縄にきて成人 でも原因のはっきりしない外耳道狭窄症のかた が何人かいた。ちなみに息子も外耳道はやや小 さめである。ただ耳垢は私も含めて沖縄では少 数派の乾性耳垢である。また、親子とも体毛も 薄めで、しまんちゅの男にはまずある手背の毛 が私にはない為、以前に酒宴の席で皆にしまん ちゅなのかといぶかしがられた。

しまんちゅのルーツである港川人は想像図か らすると毛深そうで、おそらく湿性耳垢であっ たかと思われるが、近い将来にはDNA 鑑定か ら湿性耳垢か乾性耳垢か判明する時代が来ると 思われる。

★リレー状況
−平成17 年以前掲載省略−
50.樋口大介先生(独立行政法人国立病院機構 沖縄病院)Vol. 42 No.3
51.古謝淳先生(南山病院)Vol. 42 No.5
52.城間清剛先生(城間クリニック)Vol. 42 No.7
53.野原正史先生(のはら元氣クリニック) Vol. 42 No.10
54.久貝忠男先生(沖縄県立南部医療センター・ こども医療センター)Vol. 42 No.12
55.米田恵寿先生(沖縄県立宮古病院) Vol. 43 No.3
56.仲地広美智先生(宜野湾記念病院) Vol. 43 No.6
57.与座一先生(ハートライフ病院)Vol. 43 No.9
58.勝連英雄先生(かつれん内科クリニック)Vol. 43 No.12