沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 3月号

平成19 年度第3 回マスコミとの懇談会
「食育」について

玉井修

理事 玉井 修

平成19 年11 月8 日、那覇市医師会館におい てマスコミとの懇談会が開催されました。テー マは「食育について」です。小児生活習慣病と いう言葉をよく新聞やテレビでもみるようにな ってきました。小児期の肥満がその食の問題と 大きく関わっていることは容易に想像できま す。小児期の肥満がなぜいけないのかに関して は琉球大学医学部育成医学教授の太田孝男教授 に詳しく解説していただきました。超悪玉コレ ステロールや、超超悪玉コレステロールなど、 マスコミにはあまり聞き慣れない言葉も出て参 りました。更に今回は、実際に小学校で食育の 指導に当たっている具志頭小学校の漢那正先生 をお迎えして子供達の授業の様子を見させてい ただきながら、食育の実際を解説していただき ました。子供達が楽しく栄養に関しての理解を 深められるように工夫された授業の様子、子供 達が自分で食材を栽培し、実際に調理する事を 通じて命を頂く食の大切さを学んでいくのは大 変素晴らしい取り組みです。この様な取り組み を地域との連携を取りながら広げていく事は是 非継続していただきたいと思いました。また、 那覇市医師会生活習慣病検診センター副所長の 崎原永辰先生からは、検診の結果から見えてく る肥満の特徴。特に男性においては20 代の比 較的若い世代に肥満のスタートポイントが見え てくるという報告がありました。特定健診が行 われる以前の若い世代に実際は肥満の源流を辿 ることが出来るようです。子供の食育を継続的 に訴えて、小児生活習慣病を未然に防ぐことも 大切ですが、社会人としてフレッシュマンの時 代に肥満の温床があるというお話は大変興味深 かったです。その原因はファストフードを含め たジャンクフードなのでしょうか?または退社 後居酒屋でビールと夕食を摂る、といった習慣 に原因があるのでしょうか?社会人として活躍 し始めた時代に、何かしら肥満に結びつく悪い 習慣を身につけ、これが中年期にメタボリック 症候群として出てくるのです。懇談会の席上村 田理事の提案が面白かったです。小学校、中学校の同窓会、成人式、模合の席には必ず体重計 と腹囲を計測するメジャーを持って集まり、食 育を受けた子供達がその後どの様に成長してい ったかをフォローしていくというもの。減量に 有効な方法はまず、自分の体重のグラフをつけ させるという単純なものだと太田教授もお話さ れていました。太っている人はまず体重計に乗 るという習慣が無いように思います。まずは体 重計に乗るという何でもない事が、自分自身の 中に動機付けを生じさせます。模合や飲み会の 席上に体重計とメジャーを持って行くというた だそれだけの事でも、何らかの行動変容は生じ るのかも知れません。ちょっと心配なのは、体 重計とメジャーを怖がって同窓会の出席率が悪 くなるのではないかと思ったりしますが...。

懇談内容

開 会

○司会(玉井) それでは、これから第3 回 マスコミとの懇談会を開催いたします。

まず、本会を代表いたしまして宮城信雄会長 よりご挨拶をお願いいたします。よろしくお願 いします。

挨 拶

○沖縄県医師宮城信雄会長

宮城信雄

皆さん、こんばんは。 本日は、非常にお忙 しい中、当懇談会にご 出席をいただきありが とうございます。

さて、今回は食育に ついて実際に取り組ん でいる具志頭小学校から、漢那正先生、また本 県の小児生活習慣病についてご造詣の深い琉球 大学医学部の太田教授、那覇市の小児生活習慣 についての調査にかかわっておられる、那覇市 医師会生活習慣病検診センターの崎原永辰先生 をお招きしてお話をお伺いしたいと思います。

近年、社会環境の変化や、食生活の多様化か ら食に起因する健康問題が起こってきておりま す。食生活の乱れからくる肥満は、今や我が国 において社会問題化しており、その中でも沖縄 県は男女共に肥満率が全国一という大変不名誉 な地位を築いております。

また、農薬、食品添加物、有害金属、環境ホル モン等、身体に悪影響を及ぼす物質が問題化する と共に、食品メーカーの賞味期限改ざんをはじめ とする食の安全が脅かされてきております。

食は、ただ単に身体を大きくするためだけで はなく、望ましい食生活によって豊かな人間性 を育む基礎が築かれます。しかしながら、それ には安全・安心・楽しい食が求められ、その実 現には家庭だけでなく地域社会全体での取り組 みが必要不可欠となります。

本日は、心身両面の健康を増進する健全な食 生活とは何か、皆様と一緒に考えていきたいと 思います。

最後になりますが、マスコミ各社の皆様方に おかれましては、何卒、忌憚のないご意見を賜 り、今後とも実りのある会にしていただきます ようお願い申し上げ、甚だ簡単ではございます が、私の挨拶とさせていただきます。ありがと うございます。

○司会(玉井) 宮城会長ありがとうござい ました。

まず琉球大学医学部の小児科教授の太田孝男 先生に小児の肥満症について、詳しくお話いただ きたいと思います。よろしくお願いいたします。

懇 談

「食育について〜子供達の味覚が危ない〜」

琉球大学医学部育成医学 教授 太田孝男
太田孝男

皆さんこんばんは。 琉球大学小児科の太田 です。

きょうは、子供の肥 満にどういう問題があ るかということを話し てくれということで準 備してきました。ここに書いてありますように 「肥満症」とつけてますけど、肥満は病気とい っていいんじゃないかという状況にあります。

これは生活習慣病による肥満を含めて、結 局、合併症として動脈硬化の進行を非常に早め るということがあります。

赤ちゃんのときにはみんなきれいな血管をし ているんですけれども、それが年をとっていく と動脈硬化が進行していくということです。極 端には家族性の高コレステロール血症という病 気があるんですけれども、そのホモタイプには コレステロールが1,000mg を超えるような人が います。その人たちは10 歳くらいで動脈硬化 は進行してしまいます。遺伝的になる人たちも いますけれども、ほとんどの場合は肥満に伴っ て二次的にこういうのが起こってくるというの が多いということで、いわゆる生活習慣病を治 療というか、なくすにはやはり肥満の解消とい うのが一番問題になります。

今現在、子供の8 人に1 人ぐらいが肥満・肥 満傾向児、肥満児ということになります。

肥満にどういう問題があるかというと、アメ リカのデータなんですが、1920 年代ぐらいに 太っていた子供たちが50 年後にどういった病 気になったかというのを調査されているんです けれども、冠動脈疾患は、大体2.5 倍ぐらい肥 満の子供たちは高くなる。女性は1.4 倍くらい です。糖尿病は意外にそうでもないです。動脈 硬化はもちろん多いです。大腸癌とか、痛風。 特に男性については肥満というのは将来問題が 出てきます。

最近は、肥満と癌の関係というのも、かなり いろいろわかってきています。つまり肥満自体 が免疫系とか、そのあたりにもかなり影響を及 ぼすということがわかってきています。

子供ではどうか、日本ではどうかということ ですが、那覇市の崎原先生がやられている検診 の子供たちも入っていますけれども、特に高脂 血症です。

大体、今、15 %ぐらいの子供たちは要指導と いうか、注意しなければいけないんですけれど も、肥満になるとそれは27 %ぐらいに上がる。

「要治療」というのは大体コレステロールが 220mg / dl 以上、大人の基準でいっても同じ ぐらいです。普通だと3.8 %です。これが肥満 の子供たちでは倍ぐらいの6.9 %まで上がると。 最近はトータルコレステロールで判定するのをやめてLDL コレステロールで判定するように なっていますけれども、やはり同じように1.5 倍くらいに要治療の子供たちが増えます。量的 に増えるだけではなくて、子供たちでもかなり 質的な変化が起こってきているということがわ かりました。

よくお聞きになると思いますけれども、悪玉 コレステロール、これはLDL のことなんです。 更に超悪玉といってLDL が変性し、酸化変性 を受けるんですよね。そうすると急激に動脈硬 化を促進するようになるということで、超悪玉 コレステロールと呼ばれます。最近は超超悪玉 というのもあるみたいですけれども、リポ蛋白 の粒子サイズが非常に小さくなるんですね。こ ういうのが結構、子供たちでも増えてきている ことがわかります。

普通、LDL というのは粒子が流れていても 血管内皮下に入り込まないんですけれども、粒 子サイズが小さくなると血管の内皮下に入って くるんですね。そこでいろんな変性を受けて、 マクロファージ、大食細胞というのがあるんで すが、それがそれをどんどん食べて脂肪を蓄積 してここで死んで、どんどんどんどん動脈硬化 が進行するということがわかりました。こうい った変性LDL が動脈硬化に非常に影響してい るということがわかっています。

ここにスモールデンスLDL と書いてあるん ですが、これがいわゆる超悪玉のLDL なんで すけど、この出現頻度というのが男の子では 4 %、普通の子でもあるんですけれども、肥満 になるとそれが19 %ぐらいまで増えていくと いうことです。女の子では2.2 %ですが、肥満 の場合は12.8 %の6 倍くらい増加していきま す。ということは肥満の子供たち、これはほと んど10 歳の子供たちなんですが、大人と同じ ようにLDL 粒子サイズは小さくなっていると、 非常に酸化LDL が生じやすい状況になる。動 脈硬化は進行するということです。

実際、うちの教室で頚動脈の厚さを子供たち も見ているんですけど、やはり太っているお子 さんたちは、頚動脈の動脈硬化というのは普通 の人に比べればかなり進行しているということ がわかっています。10 歳ぐらいからもう血管 の変化が起こるということです。

最近、日本肥満学会で子供のメタボリックシ ンドロームの診断基準をつくりました。もう、 そろそろ発表されると思いますけど、大人は腹 囲が8 5 c m 、女性で9 0 c m 、中性脂肪が 150mg/dl、HDL コレステロール40mg/dl、こ のあたりが基準になっているんですけど、子供 では腹囲は80cm 以上です。小学生の場合は、 これは75cm でもいいということです。もっと 簡単なのは身長腹囲比が0.5、いわゆる腹囲が 身長の半分以上にあると、もうかなり内蔵肥満 ということがわかっています。中性脂肪も子供 では120mg/dl、HDL コレステロールは同じで す。血圧が125/70、大人よりちょっと低くし ています。空腹時血糖は100。こういった基準 で大人と同じように、腹囲がこういった基準以 上であって、腹囲プラス2 項目で、メタボリッ クシンドロームと診断をしようとしています。

実際、メタボリックシンドロームの子供たち がどのぐらいいるかということなんですけど、 太っている子たちの10 %前後がもうすでにメ タボリックシンドロームの診断基準に合致する ということです。全体で見たら大体3 %〜 4 % ぐらいです。肥満になるとそれが10 %ぐらい がメタボリックシンドロームだということで す。中性脂肪とHDL コレステロール、それに 腹囲、血圧で診断するんですが、それ以外にも 子供の肥満と動脈硬化のリスクファクターとい う相関があるんですね。正常の子供たち、それ と太り気味、肥満という形でみますと、中性脂 肪というのは肥満に近くなってくると、ぽんと 2 倍ぐらいに上がるんですね。でも肥満の定義 の前の太り気味でも、異常値をとることが多く なります。LDL コレステロール(悪玉コレス テロール)、これもやはり体重が増えていくと 上がっていきますけど、一直線には上っていか ないですね。ちょっと太るだけで急激に上がっ てきます。危険性は普通の人に比べると2 倍ぐ らいです。

さっき言った、質的な変化というのは体重が 増えるにしたがってどんどん上がっていく。そ れと尿酸値というのは、体重が増えていくと一 直線に上がっていきますね。

一番怖いのは、いわゆる糖尿病関係になりま す。血糖値はメタボリックシンドロームの診断 基準に入っていますけど、体重が増えていくと 高インシュリン血症になりやすいということが あります。インシュリン抵抗性というのがある んですけど、肥満というのは、ほとんど糖尿病 予備軍になる確率が普通の人の40 倍を超える ような確率になります。それは肥満になる前の 段階でもかなり普通の子に比べれば上がってい く。だから体重コントロールというのは糖尿病 の予防のためには非常に大事なことだというこ とです。

まとめますと、要するに成人ではメタボリッ クシンドロームは予防医学なんですけれども、 ところが子供ではメタボリックシンドロームと いうのは肥満症、いわゆる重症の肥満症であっ て、すぐ医学的な治療管理というのが必要にな ってくるということを理解していただきたいと 思います。子供では、もうほとんどが異常値な んですよね。治療域にあるというようなところ にあります。だから大人と子供では、名前は一 緒ですけど意味が違うということをご理解いた だきたいと思います。以上です。

○司会(玉井) 太田教授、ありがとうござ いました。

ここでマスコミの皆さん、もしよかったら2、 3、質問をお受けしたいんですけども、超悪玉 コレステロールとか、なかなか聞きなれない名 前とかが出てきましたけれども、これは子供さ んだけにあるわけではないわけですね。

○太田教授(琉球大学) いろんな動物実験 とかでも、粒子サイズが小さいものは非常に動 脈硬化を進行させるということがわかってきた んですね。それで量だけではなくてLDL の質 的な変化というのも大事だということで、今現 在は超悪玉、いわゆる小型のLDL 粒子という のが定量できるようになっているんですね。ま だ保険は通ってないと思いますけど、そういう 状況で、それでそのリスクを判定しようという のが始まっています。

○司会(玉井) マスコミの皆さん、わかり ましたでしょうか。小児メタボリック症候群、 かなり治療しないといけないというレベルらしい ですけれども、何かありますか。はい、どうぞ。

○本橋(沖縄テレビ)

本橋(沖縄テレビ)

沖縄テレビの本橋と 申します。よろしくお 願いします。

子供の8 人に1 人が 肥満児という表があり ましたが、あれは沖縄 の子供ですか。全国で すか。

○太田教授(琉球大学) あれは全国です。 沖縄は13 %ぐらいです。多いところで15、 16 %といったところです。

○本橋(沖縄テレビ) ありがとうございます。

○新垣(琉球新報)

新垣(琉球新報)

琉球新報の新垣です。 今、話を聞いてちょっ とびっくりしています けれども、子供の質的 な変化、その中でLDL が小型化しているとい う話なんですが、これ は一体どういったものが原因でそういったこと が起きているんでしょうか。

○太田教授(琉球大学) 原因というのは、 なぜ太っているお子さんがそういうのを持つか というのは、細かいことを言うといろいろある んですけど、肝臓でのリポ蛋白のでき方とか、 そのあたりが変わるんだというのがあります し、事実がわかっているのは体重を落とすとそ れが正常化してくるということがわかっていま すね。

○新垣(琉球新報) 例えば食事の内容がそ ういったものを起こしやすいとか、そういう原 因はわからないんですか。

○太田教授(琉球大学) 想像的には飽和脂 肪酸が多いような食事を摂る場合、どうしても そういう傾向になるというのはありますけど、 実際、調べたお子さんたちでそこまでは調べて ないので何とも言えないですね。

○司会(玉井) 何かほかにありますでしょ うか。

○米吉(ラジオ沖縄)

米吉(ラジオ沖縄)

ラジオ沖縄の米吉です。 子供の肥満は医学的 に治療が必要だという ふうにおっしゃいまし たけれども、具体的に 治療というのはどんな ふうになさるんですか。

○太田教授(琉球大学) 食事指導ですね。 今、実際、我々でやっているのは、寝る前と朝 起きたときの体重をつけさせるんですよ。それ をつけることで少し自分の体重というものに、 子供たちだけでもなくて家族、保護者の人たち に興味を持っていただけると大体治療がうまく いきます。毎日それを見ていくと大体10 歳ぐ らいだと500 グラムから700 グラムぐらい睡眠 時に減るんですよね。それは、基礎代謝と関係 するというのがわかっていますから。私も、実 際それを使って10kg ぐらい減量をしたんです けどね。食べた内容によって落ち方が変わるん ですよね。そういう意味ではそれに気づいてい ただけると、非常に治療効果があります。た だ、なかなかつけてくれないですね。簡単なこ とみたいだけど、なかなか難しいですね。体重 を意識するだけでもだいぶ違うんです。

○司会(玉井) 次に、実際に子供たちの食 育、食事に対する教育に携わっていらっしゃい ます、食育推進地域として文部科学省と沖縄県 の研究指定を受けた八重瀬町の取り組み、具志 頭小学校から漢那正教諭をお招きしておりま すので、お話を伺いたいと思います。よろしく お願いいたします。

具志頭小学校教諭 漢那正
漢那正

こんばんは。具志頭小 学校の漢那正といいま す。研究主任をやらせて いただいております。

先ほどの大変専門的 な話の後に場違いかな というほど、大変子供 っぽい映像がいっぱい出てきますのでご了承下 さい。

まず、このようにお母さん方にちょっとショ ッキングな話をしました。「ハハキトク、おか あさんやすめ」これは何かというと、食品の頭 文字をとったもので、これはディキランメニュ ー(よくないメニュー)で、これを続けすぎる とよくないメニューだよという話をしていきま した。

今、なぜ食育か?。子供のうちから望ましい食習慣の形成をする。子供のうちに身につけな いと大人になってもなかなか身につかないだろ うということで、子供のうちの指導を大変重要 視しています。

スライド1

スライド1

スライド2

スライド2

スライド3

スライド3

スライド4

スライド4

17 年度から行っているんですが、17、18、 19 年度と今年が3 年目を迎えているわけです が、最初の年度でまず実態調査から子供たちの 気になった点として、まず嫌いな食べ物を残す 子が多いというのが出ました。あと、野菜嫌 い。特にゴーヤーと、ピーマンと、ナス、この 3 つが三大嫌い食品になっております。

あと、「朝食を食べない」「ほとんど食べな い」という、これが8.8 %いたということです。 これが気になる点です。

17 年5 月の「給食に嫌いなものが出たらど うするか」というアンケートでは、「頑張って 食べる」という子は半数もいません。

スライド5

スライド5

スライド6

スライド6

嫌いな食べ物は、先ほど言ったように全国的 に市民権を得ているゴーヤーが嫌いであると。 ピーマン、これは実は具志頭の特産品に指定さ れています。だけどみんな嫌いであると。ナス も嫌いであるという結果が出ました。

朝食はご覧のとおりです。「ほとんど食べな い」が8.8 %。「毎日よく食べる」という子が実は66 %です。

スライド7

スライド7

スライド8

スライド8

おいしいサラダを自分たちで盛り付けをして いって、嫌いな食べ物に親しみをもたせて何と か好きにしようとしました。こういう自分たち で考えた盛りつけの図です。このようにみんな で、ワァーワァー、キャーキャー言いながら楽 しく、最後はこのように盛りつけていきまし た。これで嫌いなトマトも食べることができた という子も何人かいました。

ピーマンやトマトは、苗を植えつける段階か ら子供たちにさせています。自分たちで苗を植 えて栽培して収穫して、お母さん方と一緒に調 理をするという活動で、自分たちでつくった二 十日大根なんですが、買ってきた大根を食べる よりもずっとおいしいという子供の意見がいっ ぱい出ました。

栄養職員が、1 人、加配として配置されてい て、箸の持ち方などを指導しています。

あとは地域との連携ということで、JA の方 を招いて植え付けの指導を仰いでいます。

それから、4 年生の授業ですが、子供たちに ある日の朝ごはんのメニューを書いてもらいま した。しかし、「水とお茶漬け」はまだいいほ うで、「菓子パンと水」という子もいました。 朝ごはんを摂っているんだけれども、その内容 にちょっと問題があるのかなというふうに私た ちも思っております。

1 年生は食品との出会いということをメイン にしていますので、このようにカルタをさせたり、芋掘りをさせたりして、野菜、食べ物との 出会いで興味をもたせるという授業を行ってい ます。

スライド9

スライド9

スライド10

スライド10

栄養職員さんが大根をすってフィルムケース に入れて何かを加えると、このフィルムケース が爆発して上にケースが飛び上がるんですが、 そういう大根のパワーを見せつけるということ をやったわけです。子供たちは大根を食べると お腹が爆発するんだなと誤解してしまって、そ れはそれで問題でした。

3 年生の授業です。これはバイキングという ことをやらせて、子供たちに好きなように食品 を取らしたんですね。図なんですけどね。そし たら、やはり偏りが出てくる内容になるので、 ちゃんと赤、黄、緑がバランスよく摂れるよう にみんなで話し合って、計画してもらいます。 グループで話し合って、「うまくできたね」と、この栄養士さんが褒めているところですね。

スライド11

スライド11

スライド12

スライド12

6 年生は自己管理能力ということで、各自の 家庭からみそ汁を、タッパーに入れて持ってこ させて、このみそ汁に塩分がどれぐらい入って いるかというふうな実験をします。塩分の数値 が出るようになっていて、この塩分の数値を見 て、きょうの塩分はあとどれぐらいしか摂れな い、おやつのポテトチップはもう食べられない とか、そういうことを子供に考えさせるという 授業なんですね。

4 年生はそばづくりですね。ネギを学校の教 材園で栽培をして、そばに入れて食べました。

それから、5 年生はおやつづくりで、沖縄の 特産品をいろいろ使って、ムーチーとか、アン ダギーとか、そういうものをみんなでつくって 食べるという授業をしました。

これは地域のお年寄りとの交流給食会というのを開いていました。9 月の敬老の日にちなん で、地域のお年寄りとお話ししながら一緒に給 食をいただくという活動です。

スライド13

スライド13

スライド14

スライド14

それからもう1 つ、感謝交流給食会というの があって、これは11 月、今月下旬に行います。 勤労感謝の日にちなんだ活動なんですが、日頃、バスの運転をなさっている方とか、そうい う方々に一緒に給食をいただく。照屋先生もい らっしゃいます。

資料研究部はマメとり競争、箸の使い方、器 から器へマメを割箸で「よーいドン」で、どん どん移していくというのを学級対抗でやってき ました。

そのあとで本当に正しい箸の持ち方の指導を します。子供たちは実際、あまり上手ではない んですよね。

それから、5 月には食育朝会を行いました。ピ ーマンについての○×ゲームをやっています。

スライド15

スライド15

スライド16

スライド16

ここでピーマンの歌の募集ということで、ピ ーマンの歌を子供たちに募集したところ、92 名の応募があったんですが、6 名の子供たちの 歌詞をつなぎあわせてこのような歌をつくりま した。

この方は大城友弥さんといって、具志頭在住の全盲の方です。沖縄盲学校の学生さんなんで すが、この方に曲を依頼したんですね。そした ら所属している下地暁さんという宮古に住んで いらっしゃるミュージシャンの方が曲をつくっ てくれました。

完成発表会ということで、父母も招いて全校 生徒の前で披露されました。子供たちにも一緒 に指導して、全員で大合唱をしてやっています。

食育講演会です。照屋先生に講演していただ きました。

スライド17

スライド17

スライド18

スライド18

あと、具志頭中学校の連携です。食育紙芝居 というのをやっていただいています。また、お 弁当の日を年に3 回やっています。家庭で子供 もかかわって、お弁当を一緒にお母さんとつく ってきて、楽しく食べるというそういう日を設 定しています。

以上のような取り組みで3 年間の変化につい てちょっと見ていただきたいんですが、まず「あなたは学校給食は好きですか」というアン ケートでは、上が平成17 年、下が19 年となっ ておりますが、「大好き」「好き」がだんだん増 えているのかなと。理由としては「おいしい」 というのがやっぱり一番多かったです。

嫌いなものに関しては、「嫌いなものはあるか」 ということでは、「ない」が微増ですかね。やはり、あることはありますね。でも、その数字は 年々減ってはいます。「嫌いなものが出てきたら どうするか」ということでは、先ほど17 年度は 12 %の子供が「食べない」といっていたんです が、19 年度になると5.5 %まで減ってきている のかなと。逆に「頑張って全部食べる」という 子が最初は44 %しかいなかったんですが、19 年 度は58 %あたりまで増えています。

スライド19

スライド19

スライド20

スライド20

スライド21

スライド21

スライド22

スライド22

スライド23

スライド23

朝食の件も初めの年は8.8 %が「ほとんど食 べない」という子だったんですが、今年度の5 月には、0.9 %まで減っています。

「だれと食べるか」ということですが、このよ うに「家族揃って」がちょっと増えてきています。

外食は具志頭はそれほど多くはない感じがし ます。

「好きな食べ物」はやはり予想どおり「カレ ー」でした。「嫌いな食べ物」は、そんなに変わってないんですが、「ゴーヤー」が4 位に落 ちました。その代わり不思議なことに「トマ ト」が嫌いという子がいるんですね。

スライド24

スライド24

スライド25

スライド25

スライド26

スライド26

おやつについてもアンケートしてみました。お やつというのは塩分・糖分がふんだんに入って いるので、大人の管理下でやったほうがいいと いう理由でこういうアンケートをとりました。

保護者にもアンケートをとりました。「お子 さんには好き嫌いがあるか」とか。「ある」と いうのが圧倒的に多いんですが、嫌いな食べ物 は頑張って食べさせようとはしている。

献立は栄養バランスを考えているという家庭 が多かったです。

「子供の食事で困っている」ことは、「マナ ー」という点が結構多かったですね。それか ら、「好き嫌い」。

「家庭で『食』についての話をするか」。こ の研究した成果として、食の話題が出るのかな ということが気になったものですから、このア ンケートは今年だけとっていますが、「とても する」、「よくする」が結構いますね。これぐら いいれば、まあまあかなと個人的には思ってい ます。

今後の課題としては、まだ苦手意識がある野 菜をどのようにしていくかということです。あ と、朝食の大切さを家庭にどうやって、もっと 広めていくかということです。

スライド27

スライド27

これは先ほどのクイズのようなものなんです が、何の頭文字かというと、「お」はおからの 「お」とかあって、このメニューは大変栄養的 に優れている、僕は専門的なことはわからない のですが、栄養的に優れていて上等なメニュー らしいです。

このような研究を通じて、まだまだ食育のほ うにも頑張っていきたいと思っております。

以上、ありがとうございました。

○宮城会長 非常に素晴らしい研究というこ とになりますが、食事の大半は家でやりますよ ね。基本的には家庭でこういうことに影響され て、良い食事にならないとあまり意味がないの ではないかと思うんです。あとでお母さん方の アンケートもとったりしているので、良い影響 は期待できると思います。

昔は食べるのがないから、出された料理は全 部食べる。食べなければお腹が空いてやってい けなかったということですが、今は食べてもら うという、それもバランスよく食べてもらおうという時代になっているのかなという気がして おります。いずれにしても非常に苦労した研究 だと思います。

あとは、こういうことをやった子供たちが大 人になって、どういう食生活になるかというこ とまで追求できたら一番いいなと思いますね。

那覇市医師会生活習慣病検診センター
副所長 崎原永辰
崎原永辰

皆さん、こんばんは。

那覇市医師会の検診 センターの崎原と申し ます。よろしくお願い いたします。

最初のデータは、食 事のバランスの重要性 を指摘しているようなデータです。これは、平 成17 年の「沖縄県の児童生徒の食生活に関す る調査」と申しまして、沖縄県の教育庁が全県 の小学校5 年生に対して無作為に抽出してやっ た調査があるんです。その結果と那覇市の肥満 児の子供たちを対象にして同じアンケートをし まして、肥満傾向児が県の平均的な児童とどの ように違うかというところを示したものです。 ちなみに、県の教育庁のデータは1,333 人の小 学校5 年生の無作為抽出です。

アンケートは児童に20 の質問、それから保護 者に12 の食に関する質問からなっております。

右のほうが肥満傾向児、それから左が県の小 学生ですが、下線に示しましたように、すっき りと、朝、目覚めるという子が20.1 %と肥満 児に少なくて、起こされて起きるというのが多い。肥満傾向児は朝が弱い。それから、ゆっく り噛んでごはんを食べるという意識が少ない。 それから、朝食はごはん、みそ汁、おかずとい うこの3 点セット揃っている子供が少なくて、 ごはん、おかずとかという非常にバランスの悪 い・欠けた子供たちが多い。(理由として、半 数以上の親と子どもが、時間がないということ を挙げております)こういった環境が、好き嫌 いを助長して、こういうふうにバランスが悪い 食事になるのではないかなと思います。

まとめますと、肥満傾向児は、食事は好きな んだけどもゆっくり食べるということの意識が 低い。朝食の内容はバランスが十分でないと考 えられます。一方、保護者の心配として運動不 足とか、偏食とかマナーの問題があるというこ とで、結局、好き嫌い(偏食)があるというこ とは、結果的に総カロリーが高くなるんだとい うことを説明するようなデータではないかなと いうふうに思っております。これが今回の県の 小学生と那覇市の肥満傾向児の違いを表したも のでございます。

それから、もう1 つのデータは、成人の健康 診断のデータです。平成14 年から平成19 年9 月までの体格のデータを全部調べ上げたものな んですけれども、(表1)と(表2)は、10 歳 刻みでございます。(表3)と(表4)は、男女 を5 歳刻みにした表なんですね。だから上のほ うから(表1)例えば18 歳〜 19 歳ですと母数 が2,997 人いて、肥満者がその中で、肥満者と いうのはBMI が25 以上の方々です。肥満比率 が18.6 %であったという意味です。それから、 隣の20 歳〜 29 歳、10 歳刻みでこういうふう に書いていると。

(表2)は女性のものなんですけれども、(表 3)と(表4)を見てほしいんですけれども、 (表3)と(表4)は、いずれも沖縄の男性・女 性のデータで、5 歳刻みに細かく区切ったデー タなんですね。そうしますと、(表4)は女性の 18 歳、19 歳というのがちょうど10 %ぐらいな んですけれども、それ以降、徐々に増えていくんですね。それで全国のものと比べてみると、 沖縄は、40 歳を過ぎたころから、全国との差 が大きくなってくるということです。来年から 始まる特定保健指導、これが40 歳から始まる ということで、女性の場合はこのへんで手を打 っておけば、肥満は何とかなるんじゃないかな と僕自身思っています。

(表3)は男性なんですけど。男性はこの表 を見てわかりますけれども、20 歳〜 29 歳、30 歳〜 34 歳、この増加率が非常に高いんですね。 一番ピークになるのが55 歳〜 59 歳、この5 歳 刻みの年齢幅が一番その年齢で、肥満比率の高 い年代なんですよ。ここからもう2 次関数的に こういきます。

それで全国と比べてみるとどうなるかという と、この点線のところははっきりとしたデータ を、私、持っておりませんので、ここからしか 書けませんけれども、大体、高校を卒業する頃 までには同じぐらいだと思っていますが、全国 は、5 歳間隔で5 %ずつ上がっていくのに対し て、沖縄は10 %上がっていくんですよ。この 25 歳〜 34 歳までの、たった10 年間で20 %も 上がっているわけです。肥満者が形成されてい く全体の過程の中でみると、この10 年間だけ で全体の62 %を占めていることになります。

私が最も強調したいことは、この若い世代の 肥満の増加を何とかしないといけないというこ となんですけど、40 歳から特定保健指導が始ま っても、この青年期を抑えないと沖縄県の肥満 対策は絶対にうまくいかないと思っておりまし て、社会人になったあたりで大キャンペーンをや っていただきたいと、強く思っております。

質疑応答

○司会(玉井) ありがとうございました。

お三人の方に発表していただきましたけれど も、どの先生でも結構ですので、何かご質問等 がありましたらお願いしたいと思います。何か ございますでしょうか。

○大城(医師会)

大城(医師会)

大変素晴らしい仕事 だと思います。グルー プ参加型の授業、グル ープワークショップ、 あるいは参加型の授業 で児童は行動の変化、 あるいは意識の変化が できたようですが、宮城会長がおっしゃったよ うに、家族に対するアプローチ、それがどうな っているかということと、それからもう1 つは、 隣に中学校があるとおっしゃっていました。中 学校になったらどうなるんだろうと。多分、ま た孤食、だんだん年がいったら1 人で食べてい くのが増えてきますよね。そういうデータが出 ているはずなんですけれども、そういう可能性 はあるんじゃないかなと思って、今、崎浜先生 が二十歳過ぎてからの生活の変化、ああいった ものは僕はひょっとしたら小学校でこんな頑張 っているのに、中学とか高校になったときは、 また変な具合になってくるんじゃないかなと思っているんです。

○漢那(具志頭小学校教諭) 中学校との連 携ということなんですが、うちは先ほど申し遅 れたんですが、八重瀬町の具志頭区のほうは小 中一緒にやっています。要するに地域指定なの で、うちは実践中心校ということでやっている わけです。具志頭中学校のほうもそういう食育 の取り組みを一緒に行っております。ですから うちの学校を卒業した子供たちは、中学校に行 っても同じように食育の、もっと中学校らしい 深みのある、例えば地域と自分との関係とか、 そういうのを勉強していっています。

先ほどおっしゃった家庭との連携なんです が、基本的には、子供にまず意識を変えてもら うということです。子供の意識を変えていくこ とによってしか、僕は家庭を変えるというか、 そういうことはできないと思っております。と いうのは、うちは学校ですので、基本的に子供 を変えていくというスタンスでやっています。 そして、それが家庭に広がっていけばなと。

○司会(玉井) ありがとうございます。

校医でいらっしゃる照屋先生、何かございま すか。

○照屋(医師会)

照屋(医師会)

てるや整形外科の照 屋と申します。少し付 け加えさせて頂きたい のですが、具志頭小学 校が頑張っているのは 今の発表でお分かり頂 いたと思います。実は、 具志頭中学校も既に発表できる素晴らしいデー タができあがっています。問題は、「食育」の モデル事業が今年で終わることになっています ので、その研究の成果を、如何にして続けてい くかという事が一番のポイントなのです。八重 瀬町だけに限らず、南部地域、さらに県全体と いう流れで、ぜひとも広げていかないといけな いというのが重要な課題だと思っています。

ところで、皆さんは既にご周知の事とは思う のですが、5 つの「こしょく」という話があり ます。

まず「孤食」です。孤独な食生活で栄養バラ ンスも崩れ、精神面の弊害も出てくるという事 が問題なのです。具志頭小学校で、朝食を1 人 で食べる子が少しづつ減ってきたという事は、 1 つの大きなポイントなのです。

それから「個食」ですね。同じテーブルなの に、オジィー、オバァーは刺身を食べるけど、 子供達はカレーを食べるとか、コンビニ弁当な どを買ってきて、みんな個人個人の弁当を食べ てしまうとか。やっぱり大皿料理でみんなでわ いわいというのが楽しい食事だと思います。 「この食材は地元で取れたピーマンだよ!」と か、「お箸の持ち方はこうだよ!」とか、わい わい話し合いができるような食事、食卓にして ほしいと思います。

三つ目は「固食」です。ピザばっかりとか、 ラーメンばっかりとか、自分の好きな物を固定 して食べる「ばっかり食べ」というものなので すが、やはり栄養のバランスが悪く、味覚障害 を起こすことがあるとの事です。

四つ目は「粉食」です。やはりラーメンやう どんなどの麺類が多くなりがちです。簡単にチ ンして食べなさいとか、塾帰りに車の後部座席 で一人ラーメンでも食べておきなさいとか、と てもありがちな大問題です。

最後に「小食」。少食(しょうしょく)です ね。数パーセントの超肥満の子もいますけれど も、反対にガリガリの子もいるんですね。無理 なダイエットも、カルシウム不足による骨粗鬆 症の問題だけではなく、拒食症など精神面への 悪影響もありますから、注意が必要と思います。

この5 つの「こしょく」の話を参考にして頂 いて、学校・家庭・地域が三位一体でがっちり まとまり、「食育」の活動をさらに広げて、ず っと続けていく事ができれば、崎原永辰先生が 話された肥満の増加をなんとか抑えることがで きるのではないかと思っています。

○司会(玉井) マスコミ側から何かご意 見、またはご質問はないですか。

○新垣(琉球新報) 琉球新報の新垣です。

関連しますけど、今、モデル校という位置づ けなんですが、県全体の施策として、今後どう いうふうな展開になっていくのか。先ほどから 指摘がある親に対する食育というのも必要じゃ ないかなと思うんですね。そのへんいかがでし ょうか。

○漢那(具志頭小学校教諭) 食育のための栄 養教諭ですか、これをどんどん増やしていこう という動きはありますので、どんどんこれから 学校の中に食育は入っていくと思います。

それから、家庭の広報、先ほど言ったよう に、僕らは学校ですので基本的には子供を変え ていって家庭を変えていくというスタンスでや っています。

それと肥満ですが、先ほどの先生の発表を聞 いて、大変な状況だなというのを感じています。 校長先生のほうも肥満の子は、もしかしたら個 人的に指導する必要があるんじゃないかなとお っしゃっていました。ですから、今後は肥満に対 する個人的な指導、これもプライバシーの問題 とかいろいろあって難しいのをクリアしないとい けないんですが、そういうのにも取り組んでいか なければいけないと思っております。

○司会(玉井) 本橋さん、何かありましたか。

○本橋(沖縄テレビ) 今の質問に関連する んですけれど、栄養職員という方は、各学校に いらっしゃるのでしょうか。それとも各地区、 市町村単位で配置されているのかということ と、あと、今の沖縄県内の学校では、皆様方の ような取り組みと同じようなことが行われてい るのか。それともかなり先進例なのかというの を聞かせてください。

○漢那(具志頭小学校教諭) 僕は先ほど栄 養職員の方がいらっしゃると言ったんですけ ど、栄養職員というのは、実は栄養士さんのこ とです。栄養教諭というのが、今後、どんどん 配置されると聞いています。学校の中で栄養指 導を専門にやる教諭ですね。栄養士さんの資格 を持っている方なんですが、そういう方が配置 されていくというふうに聞いています。もう本 当に少ない人数だそうです。そんな多くはない と聞いています。

うちの学校と同じような取り組みをやってい るというのは、もちろんうちは研究指定校なの で、少なくとも他校よりは進んでいるのかなと は思いますが、例えば今年、宜野座小学校もそ ういう指定を受けました。向こうには栄養教諭 が配置されて進めています。どんどん食育の指 定校が今後増えるのかなと思っています。

○司会(玉井) 学校栄養士という方がいら っしゃいますね。そういう方は何をやっていら っしゃるか、ご説明できる先生はいらっしゃい ますか。

○漢那(具志頭小学校教諭) 栄養教諭は、 学校栄養士とは違いますね。栄養士さんは給食 センターにいらっしゃって、毎月の献立を考え る、栄養バランスを考えて献立を考える方です よね。この方が学校に来ていろいろ生徒に教え るということは普通はしないわけです。うちは 指定校なので、いろいろ協力してやってもらっ ているんですけど。栄養教諭は専門というか、 教えるということを専門にやるという教諭らし いです。

食育に関しては、モデル地域を指定しながらい ろいろトライをしている段階だと思いますけど。 学校栄養士というのも前からあるんですけど、そ れはやはりまたちょっと違うと思いますね。

○喜久村(医師会)

喜久村(医師会)

よろしいですか。那覇 市医師会の喜久村です。

識名小学校の校医を しているんですが、学 校保健委員会というの があって、今年2 月に 講話をしました。朝食 を食べないとなぜ悪いか。夜更かしはどうして 悪いか。そういう食育の話をしてくれというこ とでやりました。朝食をとる、食卓を囲むとい うのは家族の問題であり、映画「幸福な食卓」 にも描かれていましたが観た方も多く、それは 社会問題でもあるんですよね。先ほどの話にも ありました孤食8 %というのは少ないほうではないか、もっと多いところがあるんじゃないか と思います。

識名小学校でそういう食育の係の若い先生が おられたんですけど、インターネットで調べて、 自分はこういうことをしました、これからしてい きたいということを今年の10 月、2 回目の学校 保健委員会で発表されていましたので、やっぱ り広がりはあるんじゃないかと思います。

○儀間(沖縄タイムス)

儀間(沖縄タイムス)

沖縄タイムスの儀間 です。

家庭のお話の続きな んですが、子供たちの アンケートで変わった というのがちょっと面 白いなと思って見てい たんですが。子供たちが変わったことでの、親 御さんの反応みたいなもの、親御さん自身が学 校で取り組むことで家庭にどれだけつながった のかなという感触みたいなものがあればお聞か せください。

それと2 年生の指導計画、年間25 時間とい うことでしたが、これは6 学年全員がそれだけ やったのかということと、やってみて案外多か ったか、もしくは足りないぐらいだったのかと いう、授業の中での工夫なり何かがあれば教え てください。

○漢那(具志頭小学校教諭) まず親御さん 自身の変化ということなんですけれども、親子 集会とか、学校ではいろいろあるんですが、昔 だったら親子レクリエーションをしたりとか、そ ういうものが調理実習をやりたいと、そういうふ うなことで食に関係した親子集会を各学年とも やり始めるようになったなというような手ごたえ というか、そういうことがよくありました。

それから、本校は学校全体としては各学年と も約20 時間ほど食育に割り当ててやっていま す。さっき言ったように生活科が一番多いんで すが、高学年は総合学習です。そのあたりをさ いてやっています。それが多いのか、少ないの かということなんですが、先生方の声を聞いて いると、やはり20 時間程度でいいという感じ のところもあれば、たくさん総合学習でいっぱ いとりたいという学年もあって、ちょっと学年 で違うのかなという感じがします。一概には言 えないですね。

○司会(玉井) 太田教授、この食育の取り 組み、実際にお聞きになってどのようなご感想 ですか。

○太田教授(琉球大学) 素晴らしいと思い ます。栄養士さんと話したことがあるんですけ ど、栄養士さんたちは年間に数時間しか教壇に 立てないというような、何か縛りがあるんです か。僕はそう思っていたのに20 時間もとれる というのは、ちょっとびっくりしたんですけど。 それは学校のやり方でそういう時間は融通でき るというふうに考えていいんでしょうか。

○漢那(具志頭小学校教諭) 食育という教 科があるわけではなくて、例えば道徳で感謝の 心を教えるのに食育に関連して感謝の心を教え るとか、理科であればジャガイモの観察とか、 そのあたりに関連づけてジャガイモを栽培して いくとか。関連づけてやっていって、それを合 わせると約20 時間程度。

○太田教授(琉球大学) 先生たちも指導で きるだけのそれなりの教育をされているわけで すね。普通、教える先生たちというのは1 人の 先生がやられているわけではないですよね。各 担任の先生がやられているのでしょうか。

○漢那(具志頭小学校教諭) はい。担任の 先生がやっています。

○太田教授(琉球大学) そういう意識が高 いということですよね。

○漢那(具志頭小学校教諭) 校内研修でい っぱい、いやというぐらいやっています。

それから、先ほどの時間の話なんですが、確 かに食育に割く時間は20 時間程度なんですけ ど、毎日の給食指導があります。これが大きく 関係していて、これが年間190 時間ほどありま す。これを1 つの食育ととらえると大変な時間 になるわけですね。

それから、先ほど僕はあやふやな数字しか答えられなかった栄養教諭さんの人数であると か、そのあたりの情報は沖縄県の教育委員会の 保健体育課に問い合わせるとはっきりした数値 が出てくると思います。

○村田(医師会)

村田(医師会)

漢那先生、大変立派 な仕事をされて感銘し ました。お願いがある んですが、その小学 校・中学校にこれだけ 一生懸命食育をした結 果、何年後にどうなっ たかという結果をぜひ出してほしいです。沖縄 の場合には、一番便利なのは成人式。成人式は 中学校の同窓会の雰囲気を呈しますから、あそ こに体重計とメジャーを持ち込んで、この中学 校で食育教育を受けたこども達が、成人式にど うなったかと、沖縄の平均と比べればすぐ一発 でわかりますよね。できることなら、5 年後に 同級生会を開くことを働きかけて、そのときに どうなっているかということをやると、見事に 崎原先生がいった5 年経比が出てくると思うん ですよ。一生懸命やったら、これだけ沖縄でも よくなったんだという成功例を花火のように打 ち上げるといかがでしょうか。

○漢那(具志頭小学校教諭) 成人式と同窓 会には常にメジャーと体重計を持参させて、や っていきたいと思います。追跡調査は大変大事 だと思います。

○宮城会長 先ほど太田先生が言ったよう に、子供のときに太っているというのは沖縄の ほうは13 %と言いましたよね。全国的には 8 %ですか。ということは全国より少し肥満率 は高いということですけれども、崎原先生のデ ータによると、二十歳過ぎから、いわゆる社会 に出てから急速に肥満者が増えるということで すね。これはおそらく食生活だけじゃなくて、 沖縄のおかれている生活環境の問題だと思いま す。そこを変えない限りは沖縄の肥満率はおそ らくよくならないだろう。沖縄の肥満率が改善 しなければ、平均寿命も伸びていかないという ことになると思います。

世の中に出ていくということまで含めた形 で、ぜひ、特にマスコミのほうに訴えたいの は、キャンペーンをずーっと張っていっていた だきたいと思います。どんなことでもいいです から。村田先生が言ったように、成功例を出し ながら、あるいはタイムスがやっていたメタボ 兄弟、競争しながらアピールをしていくという ようなことですね。

それともう1 つ、いつも言っているのですが、 戦後、生活改善運動というのがあったんですけ れども、沖縄の場合はもう一度「新生活改善運 動」というのを県民運動にしていかなければい けないだろうと思います。

閉 会

○司会(玉井) これにて懇談会を閉じさせ ていただきます。ありがとうございました。