理事 玉井 修
平成20 年2 月2 日(土曜日)、沖縄テレビ (OTV)で午後2 時30 分からオンエアされた テレビ番組をご覧になった方も多いと思いま す。年末の都道府県別平均寿命において女性が 1 位を堅持し、男性も25 位とやや順位を上げ ましたが、その中身をよく吟味していくと安穏 としていられない現状は明かです。これまで 様々な場面で訴えてきた肥満の問題など、ここ で手綱を緩めることなく、気を引き締めて健康 長寿の維持増進を呼びかけるために今回30 分番組を制作しオンエアいたしました。テレビ番 組を制作するという事は、楽しくもあり、苦し くもあり、そして何よりも勉強になりました。 そこで、その制作に至るプロセスも含めてご報 告し、今後テレビ制作に関わるかも知れない場 合何かの参考になればと思い記録に残す事と致 しました。実際のオンエアでは、OTV の阿佐 慶涼子アナウンサーの司会で、宮城信雄会長と 日医の中川俊男常任理事がスタジオ出演され、 玉城信光副会長がVTR で要所に出演されまし た。宮城会長が出来るだけ笑顔で応えようと心 がけていらっしゃるのが画面を通して伝わって きます。スタジオでカメラを向けられて笑顔が できる医者なんてほとんどいませんよ!実際の 話。(写真1.2)
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写真2
T.沖縄って健康長寿じゃないんですか?
平成19 年11 月15 日に沖縄県医師会と沖縄 テレビ、日医より制作を依頼された東京の KANOX という会社からプロデューサー、放送 作家、そして今回スポンサーとして(株)ツム ラが一堂に会して番組制作に関する会議を持ち ました。この中で、沖縄県の健康長寿が危機的 状況にあることを説明すると、東京からやって 来た制作会社の方々は一様に驚いた様子で、沖 縄は健康長寿であるというイメージが既に内地 では固定化されており、東京の民放放送局制作 の番組を観る機会の多い沖縄県では、東京から 見た沖縄のイメージで自己評価すると大変なゆ がみが生じる事を再認識しました。沖縄県の現 状と課題は、東京からの情報に委ねるのではな く、自分の力で発信する大切さを認識しました。
U.沖縄県医師会から要望したこと
これまで対外広報で様々なメディアとお付き 合いしてきた経験からいくつかのリクエストを しました。それをいくつか上げてみましょう。 1)長時間の収録をした後でOTV 局で短く編集 すると、出演者にとって大切な事を言っている 部分がカットされ、本意が伝わらないばかりか 誤解を生じかねない編集になる可能性がある。 是非進行表、台本の内容を充実させて、意図が 充分伝わる形で収録をお願いしたい。これに対 してOTV および制作のKANOX 側から充分な 台本の充実を約束して頂きました。2)スタジオ 収録だけでは番組にリズムが生まれない、動き のある取材をして番組の中で紹介して欲しい。 例えば那覇市医師会の健康ウォーキング大会や 浦添市の3kg 減量市民大運動などを取材して欲 しい。これに対しOTV が取材することが即決 されました。3)若年者の脂肪摂取率の高さが大 きな問題である、食に関しては食育の観点から も伝統的な沖縄の食への回帰を促すコーナーを 設定して欲しい。これに対してはKANOX 側 から沖縄の子供とおばぁが一緒にゴーヤーチャ ンプルー等を作って食べる、ほのぼのとしたミ ニドラマ等の制作を逆提案されました。なるほ ど、さすがに番組制作に関してのノウハウが豊 富だと感心しました。しかしミニドラマの制作 には役者の手配やロケ現場の設定などクリアし なくてはならない問題が多く、検討課題となり ました。4)医療情報の正確な伝達と共に、沖縄 県医師会の誠意が伝わる番組にして欲しい。こ れは難しい問題で、制作側からは出演される先 生方の人柄は必ず画面を伝っていきますと言わ れました。ご出演は宮城信雄会長と玉城信光副 会長ということになり、宮城会長は宙を見つ め、玉城先生は苦笑いをされていました。
平成20 年に入ると、早々からOTV 及び東 京のKANOX から進行台本のたたき台が送ら れてきました。この中では番組全体の親しみや すさを出すためにタレントを起用することになり、管理栄養士の宇栄原千春さんの起用も決定 しました。番組の中で宇栄原さんには実際に料 理を作って頂く事が決定しました。しかし東京 で考えた台本には沖縄の伝統料理を紹介する事 になっており、最近では沖縄の伝統料理などを 家庭で食べることは実際少なく、むしろ塩分や 脂を抑えたチャンプルー等の家庭料理を紹介す る方が実際的であると要望し、台本の書き換え が行われました。食育に関わるミニドラマも実 現は難しく、3 世代家庭の夕食風景を取材する 事で個食の問題を取り上げるに止まり、やや惜 しい気が致しました。また、医療機関などに配 布する番組宣伝用のポスター案も提示され、首 里城などが大きく写った写真よりも、人々が健 やかに写っているポスターが採用されました (ポスター写真)。1 月中旬には70 ページに及ぶ分厚い放送台本が送られてきました。これを 見てまず驚かされるのは、KANOX 側がしっか りとしたデータを集積し、台本の中に盛り込ん でいること。統計データに関しても、医師会任 せにせず、彼ら自身でデータをしっかりまとめ 上げている事です。残念ながら沖縄のメディア でここまで高いレベルで自前のデータを集積できるところは無いでしょう(写真3)。
写真3
本番は平成20 年1 月19 日(土曜日)午後2 時30 分〜 5 時に設定されました。リハーサル を合わせて3 回の収録があったそうで、宮城会長はスタジオ収録、玉城副会長はVTR 出演と 大変お疲れ様でした。収録後、夕食をご一緒し ましたが、両先生ともご満足の様子。出演者が 満足した収録は成功です。O T V 関係者、 KANOX とも意見交換をする機会があり、私と しては得難い経験を積ませて頂きました。医療 番組を作る事は大変難しい作業です。何を伝え るかも大切ですが、誰が伝えるかはもっと大切 なことだと思います。伝える力は誰にでもある ものではないと思います(写真4.5)
写真4
写真5
実際のオンエアは2 月2 日(土曜日)午後2 時30 分からでした。丁度その頃沖縄県医師会 県民公開講座が開催され、宮城会長は開会の挨 拶、玉城副会長は座長、私は司会をしており、 番組の事より目の前の県民公開講座の事で頭が一杯でした。番組は録画で観ましたが、出来は 上々でした。宇栄原さんの料理も随所に工夫が ちりばめられた実際的なもので、那覇市医師会 健康ウォーキング大会の動きある映像も楽しく、浦添市3kg 減量市民大運動も微笑ましいも のでした(写真6.7.8)。今後の課題としては、 スポンサーへの配慮をある程度意識しなくては ならない番組制作では、ややもどかしい表現が どうしても残ること。医療という堅いテーマを 取り上げる場合、女性のもつ柔らかさ、優しさ を上手に利用する方法を今後模索できないか。 など、私の中では新たな課題が頭を巡っていま す。何はともあれ、準備段階からオンエアに至 るまでしっかりと関わらせて頂き大変勉強にな りました。次の機会があればもっと良いものを 作っていきたい、そんな事を思いながら、プロ デューサーにでもなったつもりで日々のテレビ 番組を観ています。「僕ならこんなふうには作 らないな〜」等と独り言をつぶやきながら。
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写真7
写真8 目標を達成した参加者へ記念品贈呈
沖縄県立中部病院
地域がん診療連携拠点病院指定記念
<基調講演>
司会:上田真県立中部病院外科副部長
「地域がん診療連携拠点病院について」
平安山英盛 県立中部病院長
<特別講演>
座長:玉城和光県立中部病院血液内科部長 日本臨床腫瘍学会暫定指導医
「のこされた者としていきる」−在宅医療、グリーフケアからの気付き−
森 清 順天堂大学非常勤講師、本郷診療所所長、日本在宅医学会雑誌編集長
主催:沖縄県立中部病院
後援:中部地区医師会(日本医師会生涯教育講座)
問い合わせTEL : 098-973-4111 地域連携室