会長 宮城 信雄
みだし会長協議会が去る1 月22 日(火)午 後2 時20 分から日本医師会館で開催された。
始めに羽生田常任理事より開会の辞があり、 会次第に沿って会長挨拶(竹嶋副会長)、協議 が進められたので概要について報告する。
唐澤会長が入院されているため、定款の定め により竹嶋副会長が会長代行として挨拶され、 唐澤会長の病状等について報告があった。
予めご報告申し上げたとおり、1 月4 日に唐 澤会長が倒れられて小脳内出血ということで手 術をした。3 日後の主治医との話では後遺症は 残らず大丈夫であろうということであった。今 日、10 時30 分に唐澤会長に初めてお会いさせ ていただいた。普通どおりお話をされ、きわめ てゆっくりした語調ではあるが言語障害は全く ない。お部屋の中では奥様のお手を借りて動い ているという状況である。今日、会長協議会が あるということで、「本当に皆様にご迷惑をお 掛けしている。しっかりリハビリをやりますの で、どうぞよろしくお伝え下さい」とのことで あった。私の推測ではあるが、2 月の初めには 退院できるのではないかと思っている。
その上で、本来は会長がご挨拶申し上げると ころであるが、代わってご挨拶を申し上げます。
昨年来、財源も含めていろんな制度、施策が 厳しい状況にある。そういう中から平成20 年度 の予算が8 月に省庁で組んでいるということで、 私たちの方としてもしっかりと必要な財源を求 めるため意見を出している。昨年の末から中医 協の中で診療報酬改定に向けての骨子案が作ら れ、今はその骨子案に基いて診療報酬の中身に ついての議論が始まったという段階である。
診療報酬改定は平均が0.38 %プラス。全体 では残念ながら0.82 %マイナスであったが、 本体部分は医科に関しては0.42 %。会員の先 生方本当に大変苦しい中で、決してこれでいいというものではないが、我々もぎりぎり働きな がら、ここまで頑張らせていただいたというこ とでお許し願いたい。今後は2,200 億円のこの 機械的な削減を、何とかしていかなければいけ ないと思っている。
今、心配しているのは、特に勤務医の医師不 足・労働過重の中で、今、世論は中医協・支払 い側も含めて病院勤務医の先生方に手厚くとい うことで一致している。その代わりに診療所の 方はそれを少しそこに回してという考えがあ る。しかし、地域医療というのはそういう提供 体制のパイがいろんな角度で違うところから出 し合いながらやっており、医療全体が既に疲弊 しているということであり、診療報酬の再診料 のマイナスは絶対認めないということで議論を 進めている。1 月25 日にパブリックコメントが 集まり、その後公聴会が前橋で開催される。そ こで決まらなければ1 月30 日に大体大まかな 線が決まり、それから細かい点数の配分が決ま るという流れになっている。一時も気が許せな いという状況であり、会長が出てこれないの で、その間私どもしっかり何事も起こらないよ う気を引きしめて、これを乗り切りたいと考え ている。今後ともよろしくご指導ご鞭撻をお願 いしたい。
協 議
【今村定臣常任理事回答】
日本医師会としては、今期の学校保健委員会 において会長諮問「生涯保健と学校保健につい て」鋭意検討を重ねており、この答申の中で児 童生徒の予防医学上における健康教育の主な課 題として生活習慣病の予防が挙げられており、 生活習慣病の健診項目の充実について触れる予 定である。
厚生労働省の研究班において、小児のメタボ リック診断基準が纏められてきているが、成長 過程にある子どもの診断をするのに一つの固定 した概要を設定すること自体、医学的に問題があるのではないか、安易に基準が広まればこの ことが子どもの差別やいじめを生じかねないと 批判する声もある。更に小児のメタボリックシ ンドロームは、大人の場合と異なり学会による 疾病の概念或いは診断基準が必ずしも確立して いるわけではないので、直ちに成年と同様に対 応を取ることは難しいと考えられている。
小児については十分なエビデンスの検証等を 行うことが必要だと認識しており、ご質問の腹 囲を含め健診項目の充実については今後とも行 政等に働きかけていきたい。
質疑では、群馬県医師会から県の協力を得 て、11 の小学校を対象として血液検査、腹囲、 ヘモグロビンA1C を実施している事例が報告 され、鳥取県医師会からは学校保健法の改正を 目指して進めて欲しいとの要望があった。
又、学校保健の立場から内田常任理事からコ メントがあり、禁煙がらみのモデル事業で、学 校保健地域医療保健連携推進事業があり、教育 委員会との連携を密にして是非都道府県でも取 り組んでいただきたいとの説明があった。
【内田常任理事回答】
従来は住民健診として市長村が実施主体であ ったものが、特定健診については医療保険者に 義務づけられ、市町村でのデータ収集が困難と なっている。データの活用については、都道府 県及び二次医療圏ごとに設置される地域職域連 携推進協議会において関係の保険者等と連携を 対応していただくということになっている。中 央レベルにおいては、この匿名化されたデータ を蓄積し、そのデータの解析、利活用にあたっ ては日医も関与していくということに厚生労働 省と確認済みである。
尚、現在、日医の公衆衛生委員会では健診シ ステムの一本化ということも含め、又、会外に ガン対策推進委員会を立ち上げてガン健診の在 り方についての検討というものを開始している。ご指摘の点を踏まえて日医としての考えを まとめていきたいと考えている。
【今村聡常任理事回答】
実施主体の違いから、加入している要件によ って受けられる健診が違うことになると住民間 に格差が生じることになり、大変大きな問題で ある。上乗せ健診については国保加入者以外の 地域住民に対しても実施する必要があると思っ ているので、日医としても厚生労働省に対して 市町村が引き続き従来どおり実施するよう働き かけることについて強く要望している。各地域 ごとにいろいろ実情があると思うが、その実情 に応じた実施に向けて検討していただきたい。
ご指摘頂いたこういった制度上の課題がある ということについて、日医では国会議員に対し て勉強会の中で問題点を指摘し、記者会見等で もマスコミに十分な説明をしている。又、3 月 20 日号の日医ニュースに健診制度の変更、健 診の勧奨に関して国民向けのポスターを織り込 むことにしている。
【内田常任理事回答】
4 月実施に向けて恐らく全国の医師会では大 きな課題になっていると思う。1)健診データの 電子化ができない医療機関について、業者は NTT データ或いはオーダーメイド創薬といっ たところにお願いをしている。4 月1 日に向け て日医も準備を進めているところであるが、実 施までの期間が限られていることから未だ作業 が進んでいない。又、厚生労働省の対応も遅れ ていることから、義務化については状況を判断 しながら延期について、先送りすることも検討 するということで働きかけている。
2)フリーソフトについて、厚生労働省が作成 配布するということは、現状ではできないとい うことがはっきりしている。その他、厚生労働 省が配布すると言っていた階IS 及び東大教 授の研究班(OA 研究班)のフリーソフトにつ いて、KIS のソフトはガン健診等の他の健診も 盛り込んだために重装備になって使い勝手が悪 いという問題があり、又、OA 研究班のソフト は特定健診等の単独の実施に対して特化したも のと聞いているが、まだ発表されないので十分 に判断できないという状況である。
ORCA 導入医療機関については日医総研で はORCA 対応ソフトを開発し、2 月末位には提 供できるよう話を進めている。
質疑では、NTT データが独占的に全国展開 することに対し、データのやりとりに疑問を呈 する質問があり、内田常任理事からはNTT か らは期限に間に合うよう処理できると回答いた だいている。又、本社から各地域にソフトを全 て提供する体制を組むということで特に問題は ないとの回答があった。更に事業の実施を延期 することについては、4 月直前まで延期の話は でないと思うが、状況を判断しながら4 月の時 点で租借という結論になるのではないかと思っ ていると回答された。
又、国保連合会、支払い基金が国の費用を持 ってシステムを完成していることに対し、各都 道府県でシステム開発した場合に1 億から2 億 円の費用がかかることから、日医から各都道府 県医師会への助成金が支給できないか。或いは 国から日本医師会(ORCA 開発)等に何故助 成金が出ないのか質問があった。
内田常任理事からは、各都道府県医師会でシ ステム開発するには相当な費用がかかることか ら、助成金の拠出はできないとの意向が示さ れ、現在進めているORCA ソフトが将来的に は一般も対応できるように考えているとの説明 があった。
又、国から日医に対する助成金の問題につい て、保険者に出されている助成金は、電子化に よるデータ集積に対する助成金であり、検査結 果、請求事務の電子化ということに関する助成 ではないと考えているとし、これはレセプトの電子化にも絡んでくる話であると思うので、そ の点に関しては新たにお願いするのか今後検討 していきたいとのコメントがあった。
【羽生田常任理事回答】
今は、勤務医或いは開業医という立場を越え て医療界が一丸となって戦っていかなければな らないと考えている。ただ、勤務医枠というの が、社団法人として会員は平等という立場から 法的にそういう枠が代議員会の中で作ることが 認められるか、検討させていただかないとお答 えできない。こういった問題は代議員会でも頂 いており、今年度の定款諸規定検討委員会にお いて代議員会改善について、定年制の問題、勤 務医枠の問題、女性会員の問題並びに代議員の 表彰規程等を検討していただいており、近々報 告書が出ると思う。又、医師の殆どが入ってい るという医師会を目指して「25 万会員プロジ ェクト」を設置して検討を進めている。
又、今回の法律改正による公益社団法人への 移行に向けて定款の改正を行わなければならな いので、その中に勤務医枠を作れるかどうかと いうことも含めて検討させていただきたい。
質疑では、代議員の選出方法として、現在日 医会員500 名に対して代議員1 名となっている が、県単位で日医会員数1,000 名以下(或いは 2,000 名以下)の会員数の場合は、3 名(或い は4 名)とし、それ以上は1,000 名ごとに1 名 加算するとか、その他に勤務医、女性医師、年 齢制限も含めて検討してもらいたいとの提案が あった。又、勤務医の会費についての検討方に ついても要請があった。
【中川常任理事回答】
本件に関しては、判決文も法解釈の問題と差 額徴収制度による弊害への対応や混合診療全体 のあり方等問題とは次元の異なる問題であると されており、日医でもあくまで法的解釈につい ての判決であると認識している。
日医が混合診療の解禁に反対する理由を改め て整備すると次のとおりである。
第一に、保険外診療は事前に有効性、安全性 が認められてないために保険外診療になってい る。これを保険と併用して何らかの問題が発生 した場合、患者にとって不利益になるばかりで なく、公的保険の信頼性が損なわれることにな る。第二に混合診療を実施すると現在は全額自 費となるために、有効性、安全性が確認されて いない。医療技術等の流入拡大の抑止力にもな っている。しかし混合診療解禁によってこの歯 止めが外れると信頼性のない医療の医療費が増 加して保険財政が悪化して患者負担も増えるこ とになる。第三に、財政当局や保険者は公費の 増や保険財政の悪化を回避しようとするので、 混合診療という逃げ場が出来ると新たな医療技 術や新薬を保険に組み入れようとするインセン ティブが働きにくくなる。その結果、公的保険 給付範囲が縮小し、新たな医療や新薬にアクセ スできるのは高所得者層のみということにな る。これは給付の平等を原則とした国民皆保険 を崩壊させる。この一方で、財政審は保険免責 制の導入や市販類似薬を保険から外すことを主 張している。これでは所得の少ない人にますま すしわ寄せが行くことになる。国民皆保険体制 においては、合理的な理由の基に真に必要な医 療は必ず保険適用するということを国民に保障 しなければいけない。
日医のとるべきアクションは次の3 点であ る。まずは現行制度、つまり保険外併用療養費 の評価療養の機動性を高めること。現在、先進 医療専門化会議で保険導入に向けた医療技術の 科学的評価が行われている。しかし必ずしもス ピーディーではなく、また、国民、患者にも分 りやすく示され理解を得られるとは言えない。 日医はこの評価医療について患者の立場も考慮 し、客観的に注視、検証し問題点を指摘していく。2 点目は、国民の啓発として、マスメディ アの活用、又、パンフレットを作成して混合診 療の問題点について解説、説明していきたい。 3 点目は、法的根拠の整備として、法律を整備 して明確に混合診療を禁止するよう国に働きか けていきたい。
【今村聡常任理事回答】
先の会長協議会(H18.6)で島根県から同様 のご提案を頂き、生涯研修に限りモデル事業を 提案した。その結果、福岡県と神奈川県で実施 して頂き報告を頂いている。報告では1)インタ ーネット回線速度の低下による映像送信機の不 具合、2)システムダウン時の資格認定基準など 講演会のメイン規定の整備等問題の指摘があっ た。しかしながら、システム環境が向上すれば 十分活用できる可能性がある旨報告頂いている。
今回、島根県ではシステム環境(映像の鮮明 性やリアルタイムの音声伝達による双方向性の 問題、臨場感の担保)が向上されたシステムを 導入されたとのことであるので、システムの有 効性の現地調査については、是非、日医から伺 いたいと考えている。
また、現地調査の検証結果及びモデル事業の 報告を踏まえて、テレビ会議システムの対象研 修会の拡大、特に基礎研修会への拡大について は、産業保健委員会及び認定産業保健制度運営 委員会において、検討していきたい。基礎研修 については、労働安全規則の規定に基づき労働 大臣の定める研修となっているので、両委員会 の検討結果を踏まえて、厚生労働省には積極的 に働きかけたい。
質疑では、北海道医師会より、産業医の研修 会に限らず、スポーツ医の研修会や種々催され る研修会がテレビ会議で出来るよう日医の取り 組みに期待しているとの意見があった。
【天本常任理事回答】
1)当件は厚生連(特に北海道)から提案で、自 民党中川政調会長から是非認めて欲しいとい う話が発端であり、厚労省は政府提案とする には一県だけではよろしくないので、医療法 人全体でという経緯になったが、労使協の意 見が纏らず白紙撤回となった。一方、医師会 では賛成と反対の双方に会員が分かれた為、 担当理事としては、特別に賛成・不賛成を示 さず静観していた。労使協側がどうしても了 解出来ないということで、結局、国会審議に は至らなかったが、議員立法という手法で、 厚生連のみが出来るということは成立してお り参議院を通過している。
2)全国でどれだけ待機者がいるかは把握出来て いない。しかし、特養の待機者が老健や病院 に入所されているという実態は掴んでいる。 特養の待機者の問題は、参酌標準に基づき各 都道府県で整備されていくが、予算上の問題 で整備が遅れているものと考えている。
3) PR の問題は、議員立法で通過した旨の報告 を行っていないので、このことについて周知 していきたい。
【鈴木常任理事回答】
医療費適正化計画は、当然のことながら生活 習慣病の予防、療養病床の削減、平均在院日数 の短縮に繋がっていく訳であるが、実際のとこ ろは、国会財政に影響され医療制度改革の一環 としての医療費抑制策に他ならない。
特定健診・保健指導については、いろいろな 課題をそれぞれの地域で抱えており数値目標の 提示は難しい。療養病床については、日医とし て基準を設け、医療難民・介護難民の排出を許 すなというところで、各地域の実情や特性を踏 まえて、療養病床の削減に対応して頂きたい。 日医として数値目標を全国均一にすることは出 来かねる。平均在院日数についても、全国の数字を並べ拝見すると、一律に数値目標でお願い する様な問題では無いように感じる。
日医の姿勢については、ご指摘の通り過度な 医療費の抑制が無いように、当面はシーリング のキャップ外しの点に注視して動かなければな らい。また、一方でシーリングのキャップが外 れるのには、国民負担率との兼ね合いがあると の声も聞こえる。日医としては、あくまでも国 民の視線で、安心と安全が担保された医療を提 供するというところで立ち向かわざるを得ない。
質疑では、福岡県横倉会長より追加で、色々 な計画が各都道府県で策定ということであるの で、それぞれの都道府県でどのような進捗状況 にあるかといことを是非日医は把握して頂き、 各県からの問い合わせ等で、どういう方向に進 めば良いかレクチャーして頂ければありがたい と意見した。鈴木常任理事は、把握に努めると 共に結果が纏まれば連絡したいと回答した。
【内田常任理事回答】
厚労省は依然として総合科を標榜診療科名に 加えると言っている。日医は断固反対の姿勢で 貫く所存である。1)日医が養成・認定計画して いる「総合医」と、厚生労働省の提案する「総 合科」はどのような形でリンクするのか。とい うご質問については、互いにリンクするもので はなくリンクさせてはならないと認識してい る。全く異なる概念である。総合医の名称につ いては、日医が従来行ってきた生涯教育制度を 充実・発展させ、国民に分かり易い養成システ ムとしていくことは必要である。現在、学術推 進会議において、総合医の養成システムの導入 について検討を行っており、種々懸案事項を踏 まえたうえでの答申を年度内に取り纏める予 定。また、生涯教育推進委員会においても、関 連学会と協力して総合医養成カリキュラムを作 成しているところであり、今年度中に纏める予 定である。2) 12 月の診療科名標榜部会で医政 局の意見として、総合科と後期高齢者の主治医 制は医師会の反対する人頭制とは全く別の切り 口からの提案と考えているとのことであるが、 総合科の目的は何なのか。というご質問につい ては、厚労省の言う総合科は、内科や外科等と 並ぶ診療科目の一つであり、且つ厚労大臣の許 可を要する国家統制的な色彩の強いものであ り、これに関しては断固反対していく。厚労省 による総合科の導入は、医療費を抑制するため に患者の初期診療の担い手を総合科標榜医に限 定することに繋がり、医療のアクセスを国の統 制下に置くことに繋がっていくものだと考えて いる。アクセスの良さが医療費を抑制するため に制限されることは、患者の重症化や地域の実 情を無視した医療機能の集約化、更には医療提 供体制の地域格差の拡大を招きかねない。3)総 合認定医が近い将来に普及・定着してきた場 合、登録医制の実現に弾みがつくといった健保 連のような意見も出てきているがどうなのか。 というご質問については、総合科は主治医より も、もっと医療へのアクセスに関して重要な問 題をはらんでいると考えている。日医の考えて いる制度とは全く相容れないものであると認識 している。
質疑では、三重県加藤先生より、研修プログ ラムは、厚労省案の設立趣旨や求められる能力 に関して、日医が考える研修プログラムとほぼ 変わらないと考えている。拙速して直ぐに実行 するということではなく、広く会員に意見を求 めて頂きたい。また、プライマリは全人的に診 なければならいので、是非とも専門の小児科学 会等の意見も聞いて欲しい。小児科医のアイデ ンティティーを無くすような研修プログラムで は困るし、国民にとっても小児保健全般・医療 全般の低下があってはならないと思うと述べ、 内田常任理事から要望として承る旨回答があっ た。また、生涯教育学術担当の飯沼常任理事よ り、生涯教育委員会でカリキュラムを作ってい るが、三学会合同で作っている。それに小児科 医会の先生も参画して頂いている。要するに小児科の先生に如何に紹介できるかという能力を つけるシステムを作っていきたいと考えてい る。あくまでも、会員が今の学問的レベルを少 しでも上げたい。20 年経過した生涯教育制度 を補完していくよう努力していると補足説明が あった。
また、京都府医師会より、世間一般に出た 時、どう違うのかということが国民に全く分か らないと思う。診療所の医師が最低限身につけ ておくべき知識をこれから高めていくのだとい う方向で打ち出して頂ければ分かり易いと意見 があった。
司会の羽生田常任理事より、神奈川県と徳島 県からの質問は、死因究明制度に関する事項と なっているので、2 題続けてご提案頂き、担当 理事から併せて回答するとの説明があった。
【木下常任理事回答】
このような質問を頂くということは担当理事 として十分な情報を出していなかったというこ とで極めて反省している。本来、先生方からご 指摘のあった問題はクリアーできると判断し賛 成した訳である。しかし、それが不十分である との意見もあったことから、自民党でこの問題 を担当している医事紛争処理のあり方委員会に おいて、厚労省の試案を基に、表現を明らかに して提出した。1 月20 日付の日医ニュースで は、当該答申に対する日医の見解を説明し、ま た各都道府県医師会の医事紛争・医療安全・勤 務医担当理事あてには具体的内容を示した「刑 事訴追からの不安を取り除くための取り組み」 について、2 回に分けて通知を行ったので、日 医の取り組みについて御理解頂きたい。
質問にお答えする前に是非もう一度考えて頂 きたいことは、今日の医療界における刑事訴訟 の問題というものは、医師法21 条に始まる。 医師法21 条が残る限り、異常死の届出は24 時 間内に所轄の警察に届けなければならないという法律が厳然とある。しかも、異常死の中に、 「診療関連死」が含まれたのが2000 年である。 最高裁の判決でもあった通り今日では「診療関 連死」は異常死に含まれるため、全て「診療関 連死」は警察に届けなければならない。警察に 届けた以上は、そこから検察にあがり、検察が 起訴するか否かで、刑事処分をしていくとう流 れは変わらない訳である。
このあり方は困るということで、我々は一昨 年、医療事故責任問題検討委員会で3 つの提言 を行った。その提言とは、1)医師法21 条は何 とか改正せねばならない。2)診療関連死は第三 者機関に委ね、医学的に原因を究明する組織を 作らなければならない。3)それに基づき法律化 しない限りは、医師法21 条は厳然と残る。新 たに法律を作ることによって、この流れを変え ようと取り組んできた。
凡そのポイントだけを申しあげると、診療関 連死が起こったらば「医療安全調査委員会」へ 全て届ける。これまでは例外なく警察に届けて あったものを、例外なく「医療安全調査委員 会」に届ける仕組みに変える。その調査委員会 は、臨床医が中心となった原因究明の委員会で ある。
医療安全調査委員会で検討した結果、例外的 なものに限り、警察・検察へ届けて欲しいとい う仕組みにし、大部分のケースは、警察に届け 出ない内容にしてきた。それが今回の自民党案 である。この仕組みそのものが、反対であるな らば「医師法21 条」はこのままずっと残る。
我々が急いだ理由は、一昨年前からこの問題 について検討して参り、医療事故に対する刑事 責任のあり方について答申を行った。その方向 でやっていくということで今日取り組んでいる。
従って、法制化を急がない限りは、1 年延ば し2 年延ばしと、あの福島事件以来、皆が何と かしようという士気がなえてしまったらば、ず っと残ってしまうだろう。今、検察庁は日医が 真剣に取り組む姿勢を大分評価している。我々 は何とかこの流れを止めたいということで取り 組んでいることを是非ご理解頂きたい。建設的なご意見であれば喜んで変える所存であるの で、是非ご意見賜りたい。
・具体的に届けるべき「診療関連死」とは、平 成13 年に外科学会声明が出ており、診療医 療サイドから特定の案件に関し、届けるべき だというものに準じている。また、日本医療 機能評価機構の医療事故情報収集等事業で用 いられる届出範囲に照らし合わせ、具体的に 2 つの基準を出した。
・第一が「誤った医療を行ったことが明らかで あり、その行った医療に起因して、その患者 が死亡したケース」。第二は「誤った医療を 行ったことが明らかではないが、行った医療 に起因して、患者が死亡したケース」。要す るに刑事訴追のための調査ではなく、何故亡 くなったのかを、解剖に基づき調査する視点 で届け出て頂きたいということが基本であ る。大事なことは、この判断について、あく までも診療行為の合併症として、合理的な医 学的説明が出来るものは届ける必要はない。 従って、全ての「診療関連死」を届けるもの ではないし、手術に関連した死亡をすべて届 け出る必要はない。医療行為の合併症として 予期される死亡も含まれない。
・これまでは医師法21 条では、主治医が、直 接溺死や他殺であることを見た場合、本人が 届けなければならないとなっている。しかし、 今回の改正案では、仮にそういう事故が起き た場合、病院の責任者が医師の良心と専門的 な知見に基づき「届出不要」と判断すればペ ナルティは科さないという考え方である。
・次に、医療安全調査委員会から具体的に警察 に届けるべきものは、「1)故意や重大な過失 があった事案。2)何度も医療事故を繰り返し ていて、単純に行政処分をするだけでは対処 困難、あるいは不十分な事案。3)医療事故が 起きた後に、カルテを改ざん、あるいは隠ぺ いするなど、社会的に見て非常に悪質、不誠 実という事案。」を列挙している。それ以外 の事案は通知する必要はない。
・主治医と院長との関係は先程申し上げたとお りである。次に、遺族を何故入れたかという と、今日の社会では、透明性の確保をするこ との重要性を指摘している。彼らが入ったが ために議論が複雑になることはない。医学的 な議論に彼らが入る余地は全くない。透明性 を確保する意味でどうしても必要である。
・刑事訴追の関係で増えるのではないかという 指摘については、どの様な調査委員会に報告 しても本当に刑事事件として問題視するの は、先ほど言った「重大な過失」である。決 して増えるものではない。むしろ減らしたい 趣旨で医療安全調査委員会は作っている。
・今国会への法案提出を急ぐ理由については、 何とかして刑事訴追の流れを変えたいという 視点である。100 %我々にとって理想的なも のではないかもしれないが、一歩でも二歩で も進んで行くということが大切である。一部 の医師等がネットを通じ盛んに色々なことを 主張をしているが、その結果、国会議員の一 部では疑念が生じ始めている。その意味で、 先生方のご理解が頂ければ皆で一緒になり、 何とかして今国会で通したい。
・ADR については、医療に対するADR は機 能しないと考えている。何故ならば、賠償金 の問題が生じるため、ADR に入っていない 保険会社は再度検討するスタンスを取ってい る。日医では医事紛争処理委員会の中に保険 会社もしっかり入っておりADR は必要ない と考える。害にならいのであれば、あっても 良いという次元である。
その後、質疑が行われ主な内容は以下のとお りである。
○神奈川県医師会
1)根本的な再発予防策を進めていかなければな らないと思うが、航空鉄道事故調査委員会の 様な権限を医療安全調査委員会にも持たすべ きではなかろうか。
2)再発予防のための勧告等について、委員会と して公表できる権限があるのか。
3)ヒューマンエラーに関する刑事罰は当然であ ると認識しているが、システムエラーに関す る懸念が残る。救急等の場合に限られた条件 の中で、手術中などに起きうるエラーも提訴 するのか。また、医療事故調査委員会が原因 究明や懲罰、調整機能まで持っており、厚労 省の中に設置されている点を懸念している。
○木下常任理事回答
1)航空鉄道事故調査委員会は原因を究明し再発 予防に努め、刑事事件とは無縁である様に見 えるが、事故当初から刑事と共に動いてお り、ケースによっては当事者は罰せられてい る。我々は最も限定した3 つの条件に関して 検討しようしており、海難審判よりはまだ良 いと考えている。
2)調査報告書に関しては、個人情報を伏せた形 で公表する。医学的な原因究明の判断を含め たものとして公表する予定である。
3)システムエラーについては、医学的に説明が つくものに関し届ける必要はない。刑事訴追 とは関係なしに、原因究明を行うべく第三者 の医師に委ねる。医療安全調査委員会は、あ くまでも原因究明であり、その結果を民事で 用いようとADR で用いようと別問題である。 報告書は当事者へ返す。当事者がADR に持 って行くか、民事に持って行くかは全く別問 題である。当委員会の目的は原因究明である ことをご理解頂きたい。
○愛知県医師会、長野県医師会
解剖の種類について(司法解剖なのか行政解 剖なのか、病理解剖なのか)教えて頂きたい。
今国会で通す信念か。
○木下常任理事回答
どういう形の解剖か詰めていないので今後詰 めていきたい。我々にとって良い方向になるよ う進めていきたい。
今回通常国会で通したい。今、通さなければ どんどん延びていくと考えている。検察・警察 側も我々の考えに理解を示しているこの時期が 大事である。全ての県から賛同すると言って頂 ければ非常に心強い。
○埼玉県医師会
1)各県の医事紛争処理委員会の存在意義について。
2)異常死に関して、外科学会などの見解と法医 学会の見解の相違は未だにあるのか。
3)法案と通せば医師法21 条は変えられる可能 性があるのか。
○木下常任理事回答
1)刑事罰と民事罰の違いである。我々医師会が 行っているのが民事訴訟の分野である。基本 的に賠償金が絡んでくるので、今後も機能を 強化し続いていくものと考えている。
2)外科や法医学会の上をいくような法律改正を 行おうと考えている。
3)どのようなガイドラインがあろうとも、医師法 21 条を死文化させようという方向で動いてい るが、21 条そのものを廃止することは出来な い。刑事訴訟法が絡んでくるため医療事故の 分野のみ問題を解決しようとすると当訴訟法 そのものをいじらなければならない。現実的 に難しい。21 条は残ったまま、「診療関連死」 は医療安全調査委員会に報告するならば、こ れまでの様に警察に届ける必要はないという 仕組みを法務省で考えて頂いている。
○沖縄県医師会(宮城会長)
今回法案を出さなければ永遠に医師法21 条 が続くとの説明であるが、医療界が望む様な法 案が出きるまで論議を尽くしても良いと考え る。慎重な態度を取ったからと言って日医が批 判されることは全くないと思う。逆に評価され るのではないだろうか。
○木下常任理事回答
2 年間に亘り検察庁等と詰めてきた。国会議 員も我々の考えにシフトしてきている。迂闊に 先送りすると反対する勢力もいるため、我々だ けの都合で動かすことが出来ないことをご理解 頂きたい。今やらないと国会議員も動かないと 思うし、この様なチャンスは二度とないかもし れない。
○神奈川県医師会
1)国立病院部が発行した「死亡診断書マニュア ル」で医療関連死はすべて警察に届け出ろと いう文言を直して欲しい。
2)調査委員会は原因究明と再発防止に限定し、 ADR の機能は無しにしてもらいたい。そう すれば透明性が図れると思う。
○木下常任理事回答
慎重に対応していきたい。
その他
○鈴木満常任理事より「保険医療指導監査等業 務の見直しについて」連絡があった。
本年10 月社会保険庁が解体されることに伴 い、地方社会保険医療協議会の内容に変更が生 じる。これまで当協議会は社会保険事務局管轄 であったが、今後は各都道府県に、保険医療指 導監査等業務を実施するための組織として、都 府県事務所(仮称)等が設置される。都府県事 務所に仮称の指導監査課を設置し、各厚生支局 に指導部門を設置、都府県事務所との連絡調整 をさせるとのことである。都府県事務所は、都 道府県に地方社会保険医療協議会の部会を置く ことになっている。従来の当協議会よりも人数 が削減され、業務としては施設基準の届出の受 理及び施設基準調査、保険医療機関等の指定申 請の受理及び保険医等の登録申請の受理、保険 医療機関等に対する指導・監査、保険医療機関 等、保険者、被保険者及び審査支払機関等から の疑義照会等の対応を想定して設置される。詳 細な役割分担については現在検討中である。ま た、地方社会保険医療協議会の委員構成につい ては現在検討中とのことである。詳細な内容が 分かり次第連絡したい。
○羽生田常任理事より「野口英世アフリカ賞」 基金への寄付の集まり状況が余り芳しくない。 予定の1/20 しか集まっていない状況である。 当基金の主旨をご理解いただきご協力をお願い したい。
尚、当日は青森県医師会佐々木会長より、昨 年11 月11 日〜 12 日の大雨被害に対して日本 医師会はじめ全国都道府県医師会よりお見舞い の電報並びにお見舞金をいただいたことについ て、被害状況の報告と御礼の言葉あった。