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テーマ:療養病床の今後について

  • 日 時 平成19年9月26日(水)19:30〜
  • 場 所 沖縄ハーバービューホテル 2F 金鶏の間

出席者

広報担当理事:村田謙二(沖縄県医師会理事)

司    会:玉井 修(沖縄県医師会理事、広報委員)

発 言 者:宮城信雄(沖縄県医師会長)
        小渡 敬(沖縄県医師会副会長)
        平 順寧(沖縄県福祉保健部医務・国保課医療制度改革専門監)
        松岡政紀(沖縄県療養病床協会長)
        又吉智子(沖縄県医療ソーシャルワーカー協会事務局長)
        山田君子(沖縄県老人クラブ連合会副会長)

沖縄県医師会理事 玉井 修

玉井修

平成19 年9 月26 日 水曜日にハーバービュ ーホテルにおいて療養 病床の今後についてと いうテーマで座談会を 行いました。療養病床 の削減に関しては各マスコミも大きく取り上げ ており、社会の耳目を集めております。財政主 導で社会福祉の切り捨てが行われ、特に社会的 に弱い立場の人たちが更に厳しい状況に追い込 まれています。社会福祉を担う様々な組織がそ れぞれに危機感を持って対応を練っております が、今後はその取り組みを如何に調和させ、実効性のあるものにしていくかが大切です。それ ぞれの立場を超えて、相互に理解、協力を推し 進めていくために何ができるのかを考え、今回 の座談会が一石を投じる事になればと思い計画 しました。今回の座談会は、行政、医師会、ソ ーシャルワーカー協会、療養病床協会、老人ク ラブ連合会とそれぞれに微妙な立場の方々に卓 を囲んでいただきました。司会としては、果た してこのメンバーで座談会が成立するのかが気 がかりでした。しかし、県民の福利厚生に共通 の使命感を持ち、今後の見通しに関してはかな り未確定な部分が多いにも関わらず、活発な意 見の交換ができた事は大変有意義であったと思 います。多くの資料もお互いに持ち寄り、それ ぞれに突き合わせて状況の分析、理解を深める 事にもなりました。座談会が終了しても、熱い 意見交換、本音の議論は更に続きました。財政 主導により、朝令暮改を繰り返す介護保険のあ り方に翻弄されているのはお年寄り、医療機 関、医療従事者、更に行政もその対応に苦慮を 強いられているのがよく理解できました。お互 いの立場を超えて、それぞれに出来る事を考 え、知恵を出し合いながらこの難局を乗り越え る議論が出来る事を確認できました。政府の決 めた療養病床6 割削減という方針を、無理に実 行すれば、介護難民が生じ、社会に大きな混乱 と不安を生じるでしょう。特に年金生活をして いる比較的貧しいお年寄りは行き場のない状況 となり、人間関係が希薄になりつつある現代に おいては、悲惨な結果となる可能性もありま す。どのようなソフトランディングが可能なの かを模索する為にもこのような議論の場は大切 だと思います。この様な議論は今後更に注目を 集め、マスコミを含め多くの注目を集めるもの になるでしょう。なお、今回の座談会には出て きませんでしたが、座談会終了後の雑談の中で は在宅医療に関しての議論も白熱致しました。

座談会「療養病床の今後について」

〇司会(玉井) これより沖縄県医師会の座 談会を開催させていただきます。

広報担当の村田理事よりご挨拶をいただきた いと思います。よろしくお願いいたします。

〇村田

村田

ご多忙の中お集まり いただきまして誠にあ りがとうございます。

今回は、療養病床23 万床削減と、医療難 民・介護難民という言 葉が聞かれますけれど も、何とかこの問題をなるべく影響が少なく、 あるいはソフトランディングする方法はないか ということが今日の座談会のメインテーマにな ると思います。

この座談会は、実は我々医師会が毎月、医師 会員に向けて「県医師会報」を発行しておりま すが、そこに時節にあった興味のあるテーマの 座談会をもちまして、それを各先生方に読んで いただくというのが趣旨でございます。

活発なご議論をよろしくお願いいたします。

〇司会(玉井) ありがとうございます。

申し遅れました私、今回の司会を担当させて いただきます沖縄県医師会理事の玉井と申しま す。よろしくお願いいたします。

それでは早速、当会の宮城信雄会長より、今回 の削減とこれまでの経緯についてお願いします。

療養病床削減に至るこれまでの経緯

〇宮城

宮城

資料の「グランドデ ザイン2007」は、日本 医師会が出したものの 抜粋ですが、これの抜 粋で、「病床数のこれま での推移」というのが あります。ベットが増 えると医療費は増えるということで、国として は何とか医療費を削減したいという思いから、 ベット数というのを削減していかないといけな いという方針をずっともっていたわけです。そ のために医療計画をつくったときには、各医療 圏に必要病床数というものの基準を設けたわけ ですね。これ以上はベットはつくれませんとい う法律をつくったものですから、それに間に合 わせるようにということで、各病院が駆け込み でベットを増やしてきました。その結果、最大 ピーク194.6 万床になったということです。こ れだけ増えたベットをいかに減らしていくかと いうことが国の方針になってきたわけです。そ の中で療養病床というものをつくり出してきた わけですね。一般病床から分離して、療養病床 というのをつくりました。療養病床について は、これはマルメということでいきました。マ ルメになると医療費の抑制というのは簡単にで きるわけです。定額制ですから、それを減らす ことによってすぐにでも医療費を削減できると いうことで、療養病床をつくったわけです。

ただ、一般病床から療養病床に移行するため には何らかの利益誘導がなければいけなかった わけですけれども、マルメで非常に高い点数を つけたわけです。一般病床から療養病床への誘 導が行われたということで、1993 年をピーク に徐々に一般病床は減っていくわけです。その 流れが2005 年の段階では38 万床という療養病 床ができたということです。

そういう形で療養病床に誘導していった中 で、昨年の医療制度改革関連法案で、突然、療 養病床の中の介護療養病床というのをなくす と。医療型療養病床は15 万床に削減をすると いうことを決めたわけです。

これは現場にとってみたら、非常に乱暴な政 策です。その乱暴な政策を突然出してきたとい う思いがあるわけでございます。これもみんな 医療費を削減するというところから出てきてい るわけです。現場でどういう医療が必要なのか ということは全く論議を抜きにして、ただ単に 医療費を削減するというところからこういう方 針が出てきたというふうに思っております。

では、なぜ38 万床ある療養病床を15 万床に 減らすのか。その根拠はどこにあるのかという ことですが、彼らはいろいろ根拠をつくっては いるんです。その根拠、データの取り方です が、医師が療養病床に入院している患者さんに 対して指示変更の度合いというのを見ているわ けですね。指示変更があまりない方から常時 24 時間、医師が監視して見ていかないといけ ないというところまで分類をしてきて、入院し ている患者さんがどういう状態にあるかという アンケートをとっているわけです。そのアンケ ートをとったというのは、あくまでも指示変 更。その指示の変更の度合いというのでアンケ ートをとっておきながら、実際に出てきたデー タとしては医療の必要性があるかどうか。医療 の必要性がない患者が5 割近くいるというデー タを発表してきたわけです。それに基づいて療 養病床には半分以上、医療の必要性のない患者 がいるからそれを半分に減らしても問題がない というところで、それを根拠に数値というのを 出してきているわけですね。こういうことが強 行されていくと、医療の現場、介護の現場とい うのは非常に大きな問題が起こってくるだろう と考えております。

〇司会(玉井) ありがとうございます。

松岡先生、現在、療養病床にはどのような患 者さんがいらっしゃるんでしょうか。

療養病床の現状

〇松岡

松岡

平成18 年の医療法改 正で、療養病床では医 療区分が導入されてい ます。

患者の病態像に従っ て医療区分1,2,3 に 分けられています。

医療区分1 というのは、軽症の患者さんです。 軽症といっても中身はかなり実態とちがってい ます。それから医療区分2 というのは、中等症。 医療区分3 は重症と思ったら、いいです。

先ほど、宮城会長より説明がありましたよう に、療養病床に実地された患者の指示に関する 調査データーを基にして、医療区分は作られま した。医療区分1 は、ほとんど指示が固定され て変更がない状態とし、頻繁に指示が変更され ているのを医療区分2 または3 としております。 指示の変更を医療必要度にすり替えているのは 大きな問題があります。それで医療区分1 は厚 労省の判断では入院患者の50 %ないし60 %を 占めていると主張しており、そして医療区分1 は、医療必要度がないと判断したのです。

しかし実際、現場では、私たちは一日一回患 者さんを回診しているのです。患者さんを診て 病態に対して適当な医療的処置をやっていま す。患者さんが落ち着いていれば、特に指示の 変更はしていません。

それでは、そのような中で、医療区分1 とい うのは、実際どういうのが想定されているかと いうと、重度意識障害であっても、あるいは高 度麻痺があっても、指示変更がなければ、医療 区分1 であります。これは医療区分1 の約20% が該当します。そういう患者さんは医師からみ ても、看護師からみても、スタッフは常に神経 をそこに注いで診ているわけですが、このへん がまったく医療区分で表れていないのですね。

医療区分2 というのは、発熱があるとか、あ るいは痰をとるのが頻繁で8 回以上など、いろ いろ回数も決められています。

慢性閉塞性肺疾患、尿路感染症、神経難病、 体内出血、褥創なども含まれています。

医療区分3 というのはちょうど急性期病院の ICU でやっているような、24 時間目が離せな い状態の患者さんです。ですから、病態からみ ると医療区分1 の診療報酬が764 点はあまりに も低く設定されています。医療区分1 は適正な 診療報酬でないと、充分な医療サービスの提供 は困難で、経営もなりたたないです。病院の経 費はほとんどが人件費ですからね。それで医療 区1 の占める割合が大きくなると、減収となり 病院経営を圧迫してきます。

今度の医療法改定では、介護と医療を明確に 分けた形となりましたね。介護療養病床に入所 している患者さんの介護度は3,4,5 で、ほと んどが寝たきりか、あるいは車椅子移動で、自 分では操作が出来ない、その上医療必要度が高 く、医療区分2 に相当する者だと思います。介 護療養病床が廃止された場合は、このような状 態の患者さんは老人保健施設より、療養病床で 対応すべきだと思います。

療養病床は100 床につき医師3 人、看護師 20 人、老健施設は、医師1 人、看護師20 人 で、医療スタッフにもかなりの差がありますの で、状態の不安定な患者さんは老健では限界が あり、その為療養病床の必要数は是非確保すべ きだと思います。そうしないと、医療難民、介 護難民は発生してきます。

〇司会(玉井) 小渡先生、今現在、沖縄県 の療養病床は軽症の方、重症の方、またはいろい ろな方がいらっしゃるというんですけど、現在は どういうふうな受け入れ方をしているんですか。

〇小渡

小渡

医療区分は区分1 〜 3 まであります。区分に ついては区分の仕方に 問題があるというのは 以前から指摘されてい ました。しかし中医協 で再議論され、結局は 現行通りでいいということになりましたが、それでもまだまだ不満はあるようです。

沖縄県の医療療養病床と介護療養病床にアン ケート調査をした結果、医療療養病床は区分1 が26 %、区分2 が56 %、区分3 が18 %とい う結果でした。そこそこ妥当な線だと思いま す。そこそこ妥当というのは、本土のアンケー ト調査では、医療区分1 は、沖縄県は高い方で はないように思います。軽い人ばかりを見てい るわけではないということです。介護療養病床 では、医療区分1 が57 %、約6 割ぐらいです。 むしろ区分2 が36 %で、中には区分3 という のが約6 %あり、介護型でも区分2 や3 の重症 の方が入院していることが分かりました。

〇司会(玉井) 沖縄県は患者さんの具合と いうのは、軽症の方を見ているのではなく、施 設はかなり頑張って見ていらっしゃるという現 状なんでしょうかね。

実際にソーシャルワーカーで仕事されている 又吉さん。病院から療養病床、いろんな患者さ んがシフトしていくということがあるかと思う んですけれども、実際にかなり重症な方がシフ トされていますか。

〇又吉

又吉

重症というか、急性 期の病院は今の現状で は在院日数と治療を早 めて速やかに帰すよう にという使命がありま すので、常にソーシャ ルワーカーは退院援助 が主になるというのが急性期でもありますし、 療養型のソーシャルワーカーは入院相談から受 けて、その人を自分たちの病院の機能にはこの 患者さんが適しているとか、そういうことをち ゃんと病院でカンファレンス等をして受け入れ ているというのが現状なので、先ほどの数字に なっているかと思います。

〇司会(玉井) いわゆる施設に対しての適 材適所を守っていらっしゃる。

〇又吉 ただ懸念しているところは、その中 で、今、介護保険施設にも医療区分2 とか、重 症の方が流れている中で、その方たちはどのよ うになっているかといいますと、やっぱり急性 期病院の入退院を繰り返しているのが現状であ りますね。その統計が出ていると思います。そ の中で、今後、そういう重症の方がますます増 えていくでしょう。療養病床を削減することに よって老健にいくと、またそこで診れない。先 ほど先生がおっしゃった100 床に1 名のナース で対応できるかというと、かなり現場が混乱を してくるので、やっぱり救急病院に戻ってくる というところが出てきますね。

〇司会(玉井) 今後の話をするのはもう少 し後でなんですけど、老健施設に入りながらも 急性期病院に出たり入ったりを繰り返すという ような、あまりよくないようなパターンが起き るかもしれないということですね。

今、介護の現場ではどの様な問題がおきてい るのか

〇又吉 それとあとは、老健施設でも重症の 方は受けてはいるんですけれど、胃瘻に関した りとか、あと気管切開、在宅酸素は大丈夫なん ですけど、人数の制約があって人数制限をされ ているというのが1 つはあります。

〇司会(玉井) 山田さん実際に、老人クラ ブでどんな話が出ますかね。

〇山田

山田

地域にわりあいに元 気老人が老人クラブの 会員には多いことでご ざいますし、いろいろ とお友達だとか家族と 親戚に状況を聞くと、 やはり施設依存型が多 いですね。何かがあれば、老人ホームへ行けば いい。あるいは老健施設に行けば、あっちは心 配ないよと。

現に2、3 年前に、ご婦人方を対象にアンケ ートをとったことが、「あなたは将来病気にな ったとき、どうなさいますか」と、家族に見て もらって、親子の絆とか、やっぱり昔のいい時代の親子の絆というものを復元したいと私は思 うけれど、皆さん、どう思いますかと聞いたら、 「息子たちにこんな苦労をさせたくなかったら、 やはり施設に入りたい、病院に入りたい」、「介 護保険もかけているんだし、健康保険もかけて いるんだから当たり前でしょう。もう、私たち は今まで相当苦労したんだから、病院でちゃん と診てほしい」という要望が強い。

それの背景には核家族で介護力がないという こと。昼間1 人暮らしだとか、夫婦とも働いて いるとか、別居をしているとか、老老家庭と か、核家族の人が多い。元気の間はいろいろと 飛んでまわっていろんなことをやっていますけ れども、いったん病気になるとどうしたらいい か、やっぱり施設にお願いしたいというのがみ んな本音で言っていましたね。

〇司会(玉井) お年寄りの方がお家で見て もらおうというふうには発想しないで、施設に 行こうと考えているんですか。

〇山田 はい。

〇司会(玉井) そう、せざるを得ないとい うことですか。

〇山田 やっぱり今、親子間とか家族間の情 愛、絆が希薄になっていると言われますよね。 それが如実に表れてきていますね。

私、本当に高齢者の口からこういうことを聞 いてがっかりしました。私だったら、いや、家族 に見てほしい。やっぱり大きく育ててきたのに。 ちゃんと家族に見てもらっておさめてほしいし。 絆で温めて、最期にはいい最期をむかえたいと 思うんですけど。施設に預けたほうが子供たち も楽だし、私も気兼ねをしないというようなこと を言うんですから。社会の背景として親子の絆、 あるいは肉親の絆が希薄というのは、私もはっ きりつくづく見せつけられてがっかりしました。

〇司会(玉井) お年寄りの皆様もそういう 志向を持っていらっしゃるんですね。

〇山田 だから、今、医療費抑制のためなの か何なのかは知りませんけれど、いろいろと抑 制が厚生労働省あたりからかかってきますよ ね。そうすると困ったなということが最近やっ と聞かれるようになりました。

〇司会(玉井) なるほど。実際もう困った なという声も聞こえ始めて…。

〇山田 はい、聞こえ始めておりますね。だ からこれは、今現在の社会的な背景として、や はり地域で高齢者を、みんなで地域力とか、地 域の介護力で見ていないといけないよと、老人 クラブの会員を対象にあちらこちら、私、お話 に行っております。要請があれば講演という形 式で、宮古に行ったり、あるいは北部に行った り。昨今は中部で孤独死がありましたよね。あ ってはならないことだから。友愛訪問でみんな のことをサポートしていきましょうという話を してきたんですけれども、それも限度が…。

〇司会(玉井) ゆいまーるの話はあとでお 聞きます、すみません。

〇宮城 家庭の中での介護力の問題、親子の 絆の話があったんですが、グランドデザインを 見ていただきたいんですけれども、これは親子 の絆の問題だけでなくて、施設病床、施設数と いうのは1 つは独居老人が増えてきているわけ ですね。それと75 歳以上で2 人暮らしだとい うのは急に増えてきていますね。そういう意味 で、どうしても施設利用者が増えてくるという のは、これは現実だと思います。それと複数の 家族がいたとしても、沖縄の場合は共働きです よね。昼間は介護する人がいないわけです。確 かに地域で住んだり、あるいは生まれた家で住 むんだというのは、お年寄りは望んではいるか もしれませんが、どうしてもそこで住めない人 が出てきて、そういう方々が施設を利用するよ うになってきている。それが急激に増えてきて いる。そういう意味では、施設の必要性という のはあるんですね。

75 歳以上の人口というのは、急激に増えて いるわけです。全人口というのはこれは逆に減 ってきていますね。75 歳以上の後期高齢者と いうのは病気になりやすい人がたくさんいます から、当然、入院する人も増えてくるわけで す。逆に病院や療養病床を削減してくるという のは、時代の流れに逆行しているんですね。

〇司会(玉井) 平さん、実際に療養病床の アンケートもいただいたということであります けれども、現場からどの様な声が聞こえてくる んでしょうか。

〇平

平

小渡先生の説明と少 しダブる部分がありま すけど、資料をご覧下 さい。県全体のところ を見ますと、医療区分 1、軽症の方が大体3 割 に満たないぐらいいて、 55 %ぐらいが医療区分2 の中等度の方ですね。 あと、17.5 %が医療区分3 の重度の方がおられ るということになっております。昨年の全国の 平均値と比べると、全国は、医療区分1 のほう が大体38 %ぐらいなんですね。大体10 %ぐら い本県より医療区分1 が多いです。沖縄県は医 療区分1 が他県よりは少ない。その代わり医療 区分2 が多い。それから、医療区分3 がやや多 いというような結果が出ております。

介護療養病床ですが、医療区分1 のほうがか なり、医療療養病床に比べては多くなっている。 これは当然の結果だなという状況はあります。

年齢については、医療療養病床が前回の調査 で平均年齢が79 歳なんですね。介護療養病床 が89 歳。10 歳ぐらいの違いがあります。

それから、医療機関の転換意向はどうなって いるかというと、72 %の方が「そのまま医療療 養病床で残りたい」。それから、22.4 %が「ま だわからない」。あと、「介護老人保健施設に行 きたい」というのが3.3 %ぐらいですので、ま だ態度を決めかねている部分があるような状況 なんですね。これは多分、来年の4 月に介護報 酬と診療報酬の改定がありますので、この改定 の状況を見ながら経営的にどうなのかというこ とを踏まえて、多分決定していくんだろうと思 います。県としては、来年の春頃に再度、意向 調査をするので、その後具体的に、どういうふ うにやっていくかというふうになろうかと思い ます。

ちょっと前のページに戻っていただいて、実 は皆様の話を聞いていて非常に心苦しいんです けど、県では5 年後を目標とした療養病床数の 目標値を立てるんです。これをどういうふうに 立てるかといいますと、まず医療区分1 、 27.3 %は介護かどこかに転換していただく。

それから医療区分2 の55.2 %のうちの3 割を 介護保険施設か、何かに転換していただこうと。

残るのを医療区分2 の7 割と、医療区分3 の 17.5 %を医療療養病床として残していただく。

介護療養病床についても医療区分1 は別のと ころへ、それから医療区分2 の7 割と医療区分 3 は医療療養病床に残るというような形の計算 をします。ただ、これは強制するわけではあり ませんので、各医療機関からの意向調査を踏ま えながらやっていきます。医療機関が残りた い、あるいは老健施設にいきたい、老健施設に いくのであれば、それはそれとしてその分は認 めていくという形になります。ただ、いろんな 新しい病院が多いですので、やはり建物の借金 があるわけですよね。そういうお金の返済もし ながら老健施設にいくのであれば改築もしない といけない。そのためのお金も必要ということ になりますので、いろんな支援策もやっていか なければいけないというふうには考えておりま す。医療機関としては、まだ態度を決めかねて いるというのが今の状況と思います。

〇司会(玉井) 小渡先生、「医療機能強化 型老健施設」という言葉が出てまいりますね。 あれは医療型の介護療養病床のことですか。

今後どの様な対応があり得るのか

〇小渡 医療機能強化型老健施設は、医療保 険ではなく介護保険で対応する介護保険施設で す。ただ、従来の老健施設とは異なり、一部、 医療区分2 の医療を要する人が入所できる施設 を考えているようです。しかし、人員配置基準 や施設基準あるいは介護報酬等は全く示されて いないため、病床を移行するかどうかアンケー トを行っても、各病院とも移行について判断す ることが出来ず、態度を保留するしかないよう です。また、この施設については、老健施設協 会から老人保健施設という名称を使うと、老健 がダブルスタンダードになるので、好ましくな いと反対といるようです。いずれにしても、こ の辺のところは、決まるまでに、まだまだ紆余 曲折があるように思います。

〇司会(玉井) 態度を決めかねているとい うことは、今まさに制度そのものも動いている という形ですか。

〇小渡 そうです。まだ細かい基準が決まら ないため、各病院では転換するかどうか決める ことが出来ないようです。国が療養病床を削減 しようとする根本的な目的を考える必要がある と思います。その背景には、高齢人口の増加が 急速に起こっていることが挙げられます。先ほ ど会長が話されたように、人口は減るけれど高 齢者は増えていく、いわゆる高齢化率がどんど ん高くなっているわけです。そして、高齢にな ると医療も必要になるし、介護も必要になる、 そのための財源をどのように確保するかが問題 です。本来なら、高福祉高負担か、低福祉低負 担かを国民に問うべきであるが、それもせず、 医療の「効率性」とか「適切性」等を盾にし て、医療費削減や利用者の自己負担を上げ、財 源の帳尻あわせをしようとしているように思い ます。このような考え方は変えなければいけな いと思います。いずれにしても療養病床の再編 は、2011 年度末までに行うことになっており ます。そこで、国は各都道府県に今後30 年を 見越して、10 年単位で地域の高齢者に必要な ベッド数を、この秋までに算定するように指示 しています。これが高齢者ケア整備構想です。 そして、これに基づいて、今後の本県の高齢者 保健福祉計画や医療費適正化計画、医療計画等 を行うことになっており、非常に重要な時期に あるように思います。

また、高齢化が進むと、いずれにしても全て の人を施設や病院で看ることはできないので、 在宅医療や在宅介護が必要になると思います が、現在のような医療体制あるいは支援体制で は、まだ不十分であるように思います。

〇司会(玉井) 又吉さん、今の在宅の話が 出たところで、この問題が非常に頭を痛ませて いる問題だと思うんですが、いかがでしょうか。

〇又吉 その前に1 つだけ言いたいのは、さ っき言った平専門監のほうから、沖縄県の区分 のことをおっしゃっていましたけど、私たちか ら見たら、療養病床だから状態が安定している 区分1 にいるのではないかなというふうに考え ています。

今おっしゃっている在宅推進で、急性期から も、治療が終わったらすぐ在宅に帰すような方 法でやっていますけれど、やっぱりそこに回復 期リハビリとかいう病棟があればそこに入れて 1 カ月ぐらい、ある程度状態が安定、車椅子レ ベルで少し機能がよくなったという状態で帰す ようにやっています。リハビリ訓練をしている 間に介護保険を申請して、約1 カ月半ぐらいか かるので、そして在宅推進をしていく。その中 には、さっき小渡先生がおっしゃった24 時間 ではないですよと。役割分担しましょうという ことで、家族も含めて、チーム医療で家族役 割、医療役割、それから福祉の役割、それから 介護保険での役割分担をして、在宅推進してい るケースもいまして、胃瘻の方もお家に帰った り、脊損の方も帰しているという、日々努力は しています。

ですが、そうじゃない人たちは託老所。急性 期から在宅は無理ですというときには、今、託 老所も現在、沖縄県は増えていると思うんです けれど、そこに紹介をしているということで、 そこで今度は費用の問題で、これは大体9 万円 から12 万円、もっと幅があるんですけれど、 大体それが相場なんですけれど、やっぱり年金 生活で家族の援助が得られない。でも生活保護 は受けられない人たちというのがちょっと行き 詰っているというのが現状ですね。

〇司会(玉井) 例えば、今、託老所という 話が出てまいりましたけれども、かなり貧しい 方々、年金生活の方々が託老所の中でもあまり 十分な設備がない、人が十分に配置できていな いようなところに行かれているようなケースもまま見るような気がするんですけど。

〇松岡 一見健康そうに見える患者さんで も、高齢者は基礎疾患を持っていることがあり ますので、託老所が、老人のお世話を引き受け る際は、一人ひとりの状態をよく見て決めてほ しい、無理は禁物と思いますね。

また、近くの診療所や病院との連携も是非密 にしてほしいと思います、

療養病床が大幅に削減されますと、療養病床 で対応可能の患者さんでも、急性増悪を発症し た場合、託老所や特老より急性期病院へ搬送さ れますので、急性期病院のベットを占領する可 能性があり、急性期病院のベットへの影響を考 えると、療養病床の削減は決して療養病床だけ でなく、急性期病院にまで及ぶと思います。

〇司会(玉井) 小渡先生、そのへんはいか がでしょうか。

〇小渡 一番大事なのは、今、先生がおっし ゃったように、結局、託老所に行ける人はいい んです。しかし託老所は10 万円前後費用がか かるので、経済的に託老所にも行けない人がい るので、これが一番困りますね。療養病床の再 編では、ある程度それを見越して計画を作る必 要があると思います。

それからもう1 つ、アンケート調査で医療型 療養病床で区分1 の軽症の方が20 数%いると いうことでしたが、それは、おそらく軽症の方 を最初から診ているのではなく、区分2 や3 で 入院していた方が、治療で良くなり区分1 にな ったものと考えられます。そして、介護施設の 不足等、色々な事情で退院できない人が、結 局、残っているのではないかと思います。これ らの人たちを退院させるには、地域にもっと受 け皿を整備する必要があると思います。

沖縄県の医療型療養病床は、他府県に比べ医 療区分1 が少ないように思うので、おそらく頑 張って退院させていると思います。

〇司会(玉井) 療養病床に入ってくる人た ちは、もともと病院から入ってくると。

〇小渡 そうです、病院から紹介の人も入る し、直接入る人もいますね。だから最初から区 分1 の軽い人が入ってくるわけではないように 思います。

〇司会(玉井) 老健とかは、例えば託老所 もそうですけど、病院から入ってくるわけでは なくて、ご自宅から入ってこられるという方が いらっしゃいますね。

〇松岡 ちょっといいですか。私の資料があ ります。療養病床として重視している機能とし て出したデーターです。

急性期病院で治療を受けた高齢の患者さん が、引き続き治療が必要と見なされた場合に療 養病床で引き受けます。脳梗塞や脳出血で高度 の身体障害や意識障害の患者さんです。

そのような患者さんの急性期病院からの受け 入れが56.6%で最も多いですね、その意味で 我々療養病床の側では、急性期病院との連携が 最も大切だと思っています。

また寝たきりで頻回に痰を吸引している患者 さんや、レスピレータで呼吸管理をしている患 者、難病患者などの長期療養を要する患者が 52.4%、リハビリテーションが50.4%、在宅ケ アとの連携42.9%、終末期ケア22.2%であり、 慢性期医療に必要ないろいろな複合的な医療サ ービスを提供しております。

〇司会(玉井) 最初から軽症の方がいらっ しゃっているわけではなくて、実際に松岡先生 の資料を見ても、療養病床でも医療型療養病床 でもやっていることはあまり変わってないです ね。喀痰吸引にしても。経管栄養にしても。

〇松岡 そうですね。

〇小渡 本来、療養病床の実態を知りたいな ら、先ず入院時の区分を出してもらい、治療し た後の、状態の区分も出せば、療養病床でどの ようにしているのか、よく分かると思います。 そのような調査もせずに、一方的に医療区分1 は社会的入院だと決め付けるのはどうかと思い ます。私の聞いている範囲では、始めから区分 1 の人たちを、どんどん入院させているわけで はないように思います。

〇松岡 今度の医療区分最大のポイントは 「重度意識障害」や「重度麻痺」という病態それ自体が医療区分1 になったところにあります。

医療区分1 について平成18 年度の医療法の 改定で特殊疾患療養病棟が廃止になりました が、急激な制度改正で病院が経済的に行きづま るのを救済するために、重度障害や神経難病用 の病棟である特殊疾患療養病棟に入院されてい る患者さんは、来年3 月31 日まで医療区分2 または3 が適応されています。しかしこの経過 処置も平成20 年4 月以降は適応されず現在の 医療区分に従います。この病棟に入院中の患者 を調べてみますと私の病院では医療区分1 が、 20%ほどの患者が該当する見込みです。現在医 療区分1 は沖縄県では病床全体のおよそ25 % を占めていますが、来年の4 月以降は現在より 増えると思われます。

〇司会(玉井) 療養病床が無理矢理削減さ れたとした場合は、場合によっては老健とか、 託老所とか、在宅とかいうところが、受け皿に なるのかも知れません。宮城会長、いかがでし ょうか

〇宮城 平専門監にお聞きしたいんですけ ど、先ほど言った医療区分1 は全部削る。医療 区分2 の3 割はカットするという話があって、 これは医療療養、介護療養、どちらでも同じ計 算をしていくと、沖縄県は何割ぐらいカットに なるんですか。

〇平 沖縄県は、先ほど宮城会長が言ったよ うに、後期高齢者の人口が増えていきます。去 年の段階で後期高齢者の人口は、75 歳以上で 10 万人なんですよ。5 年後に13 万人になるん ですね。1.3 倍に増える。そうなると、算定式 は、国が示した式ですので、高齢化の状況も踏 まえて計算しないといけないんです。まだきち んとした数字では出していないんですけど、沖 縄県の医療区分の状況、例えば国は38 万床を 15 万床にしようということで6 割カットですよ ね。本県では、単純にA − B + C で計算します と、大体4 割ぐらいになるんだろうと。あと、 高齢者の状況を考慮して、病床は残さざるを得 ないでしょうということになりましたら、多分 3 割カットぐらいになるのかなと。国が目標と している6 割カット、そこには沖縄県はいかな い状況。それは重度の方が入院しておられると いうことが影響しています。

〇小渡 平さんは、立場上これをはっきり言 いにくいと思いますが、県医師会で厚労省のい うやり方で試算をすると、沖縄県の場合、現 在、医療型療養病床が2,876 床ありますが、こ れが1,513 床になります。そうなると約1,000 床くらい減ることになります。このように単純 にやると、それこそ医療難民どころではなくな ります。こんな乱暴な試算はないと思います。

〇宮城 私がお聞きしたのは、国が考えてい るように6 割カットの数字でやるのかというの が1 つ。それではないというお話でした。それ は非常に大事なことですね。

日本医師会の調査では、現状は医療療養病床 25.4 万床、介護療養病床が13 万床。中に入っ ている人たちの医療区分とか、医療の必要度を 調べていくと、療養病床として残していくべき ベットは22 万床、新たに介護施設が必要、こ れは老健とか老人ホームとか、有料老人ホーム とか、在宅系に移行しているというところが、 在宅へのシフトということです。介護保険適用 の施設というのが12 万床。在宅の可能性があ るのが3.8 万床ということで、試算をしている んですよ。それと同じように、沖縄県は、今、 実態調査をしていますよね。それに合わせて必 要な施設整備をしていくことであると思います ね。一律に国が出してきたから、その基準に基 づいて全部カットするということはやってはい けないということ。これは去年の法律が通った ときにも、附帯決議できちんとうたわれている わけですよ。きちっと調査をして、問題が起こ らないように整備をするようにということです よね。

それともう1 つは、療養病床が介護施設に移 行するときには、緩和基準というのがあるわけ です。今の基準に合わせて全部やれということ ではなくて、かなり緩和されているんですね。 そのへんのところも通達が出てきているはずで すので、これをきちっと読み込んだ上で沖縄については問題が起こらないようにしていただき たいということです。

本当は療養病床とか介護施設、それから介護 療養、医療療養病床としても、施設のベット数 が決まっていたら、医療費はもうこれ以上上が らないんですよ。なぜかというと、マルメです から。削減していくというのは、別に増えてい く医療費を抑えるために、この分野から削ると いうことですよね。

みんな在宅でということを言っているけれど も、さっき又吉さんが言ったように、24 時間 介護の必要な在宅で介護保険を使うと一体どれ ぐらいかかるのかということになると、施設基 準より高くなる可能性もあるんですよ。重症の 方が施設から追い出されて在宅に行ったとき に、24 時間訪問介護とか、訪問リハとかいろ んなサービスを利用すると、ほとんど施設基準 と変わらなくなってくる。

療養病床の医療区分1 というものの保険設定 というのは、デイケアより安く設定されてい る。介護療養病床は法律でなくすというのは決 まっているわけですけれども、医療療養病床を 強制的になくす方法というのはないんです。た だ、経営的に成り立たないようにしていくとい うことです。医療区分1 の患者さんを抱えてい たら、その施設は成り立たなくなるというの で、医療区分1 の人を外へ出さないといけな い。それで軽症の方を病院側は施設からどんど ん出していくということになりまして、病院が 悪者になっているわけです。

〇司会(玉井) 数学的にどこがカットとい うことではなくて、何らかの可能性を模索して いるということだと思いますけど、松岡先生、 何かございますか。今のご指摘。

〇松岡 療養病床の削減はこれまで申し上 げてきたように、単に療養病床だけの問題じゃ ないですよね。療養病床の前方連携病院の急性 期病院が頑張って、入院日数を短縮すればする ほど療養病床のベット数が必要になってきます。

〇小渡 後方病院としてですね。

〇松岡 そうです。後方支援病院としてです。

療養病床が生き残っていくためには、私はお もいますが、これからはより急性期病院と連携 し、医療必要度の高い医療区分2 と3 に特化し て療養病床へ入ってくることができるように、 療養病床の体制を整える必要があります。

実際現場では、18 年の医療法改正後、療養 病床に変化が見られます。平成18 年4 月以降 医療区分2,3 が増えるに従って仕事量がかな り増えてきていますので、各種の医療スタッフ 職員の疲労が現れています。医療事故発生も懸 念されています。それを防ぐために、何らかの 対策が必要になっています。

〇司会(玉井) 医療というものに対しても う少しシフトするというか、もっともっとシフ トしていくような。

〇松岡 そうです。シフトして行かざるを得 ないんじゃないかなと。というのは医療区分1 は療養病床では診てはいけませんという国の方 針ですから。医療区分1 の患者さんを全体の 30%以上かかえていますと、病院経営が成り立 たないですからね。

〇司会(玉井) 例えばマルメにされたり、 そんな診療報酬によって医療介護施設は大変な ことになると思うんですが、いかがでしょうか。

〇平 沖縄県の医療費の特徴、ちょっと参考 資料を見ていただきたいんですけど、1 人当た り医療費の全国の比較というところですね。一 番上の沖縄県、真ん中が全国平均、下が医療費 が少ないといわれている長野県。70 歳未満の方 というのは、入院は沖縄県では大体1 人当たり 年間5 万8,000 円、外来で7 万6,000 円。全国 平均や長野とそんなに変わらない。ところが70 歳以上になると、かなり入院のほうにお金をか けている。他県は入院と外来で半分・半分なん ですよね。高齢者の医療が入院にシフトしてい ることが課題です。

それはなぜなのかという問題がありまして、 療養病床の平均在院日数の全国比較なんですけ ど、一番右が沖縄県なんですけど、全国第2 位 で、1 人当たり大体8 カ月ぐらい入院していま す。一番長いのが富山県でありまして、沖縄県が2 番目と。これが高齢者医療で入院にお金を かけている要因の1 つにもなっていると考えて います。一般病床の平均在院日数は全部平均並 なんです。19 日とか、非常に短い期間でかなり 頑張っています。では療養病床数と平均在院日 数の関係を考えますと、前のページに人口10 万対療養病床数というのがあります。これを見 ますと大体全国平均並みという状況で、病床数 と、平均在院日数の関係はあまり見えない。次 に療養病床の医療区分で結構、重度、中等度の 方が多く75 歳以上で入院する方が多い状況に あります。沖縄県は入院中心になっているんで すね。このへんがなぜなのかというので、糖尿 病を例に見ますと外来受療率は、沖縄県が一番 低いんですよ。この数字を見ると、沖縄県は糖 尿病は本当に少ないのかという疑問があります。

住民健診の糖尿病の要医療、あなたは糖尿病 に関して何らかの生活習慣を変える必要があり ますよという指導を受けた数ですけど、全国平 均より高いんですね。県民栄養調査でも、「あ なたは糖尿病で治療が必要ですよ」と言われて いる方の40 歳代で36.4 %、50 歳代で53.2 % しか治療していない。そのことが体力の落ちた 高齢期に入院せざるを得ない状況につながって いるんだろうと思います。重度な状況になっ て、それが長期に入院をせざるを得ない状況も 生んでいるのかなと。

そうなりますと、単に療養病床の再編という 問題は、沖縄県の若いときから医療に対する県 民の意識をどう変えていくかという大変な課題 にも行き着くところになるんですね。

別の要因として、長野県との比較で、なぜ病 院からまた家に帰れる状況がないのかなという ことを持ち家比率で見ると、沖縄県は46 位で 下から2 番目なんですね。長野県は12 位でま あまあ持ち家があります。長野県はかなり大家 族世帯が多いと言われていますね。持ち家比率 も高い。沖縄は借家が多いんですよ。その借家 に住んでいることがどういう高齢者の問題があ るかといいますと、まず、バリアフリー化がで きないですね。借家ですから勝手に改造ができ ない。

それから、65 歳、高齢者の1 人暮らしも多 いことも要因ですが、高齢者の就労割合、これ が沖縄は一番低いんですよ。長野県は1 位なん ですね。65 歳になっても何らかの仕事をやっ ている。これは生き甲斐の問題なんですよね。 沖縄は、多分、面積も小さいし、畑仕事をやる にしてもやる場所がないとか、いろいろあると 思いますが、長野県は結構農作業をやっている 方が多いんですね。

また、核家族化率は沖縄県は結構高いんです。 核家族化というのは、親と子供が住んでいるよ うな状況なんですけれども、やっぱり介護の必 要な老人が家に帰ってきたら子供だけでは難し いですね。孫も、いろんな人たちが加わって介護 していくという形でないとなかなか厳しい。面積 は小さい。借家なのでバリアフリーも簡単にで きない。それから、家に帰ってもやることがあま りないので、生き甲斐もちょっと見出せないと。 いろんな問題が絡んで、療養病床の結果とか、 そういうのに表れているのかなという感じもしま す。ただ、この全体を変えるとなると、長い時 間がかかると思うんです。県としても予防対策 から始まって、いろんな計画をつくりますけど、 健康増進計画や地域ケア体制整備構想等。全体 的かつ中長期的な計画の中で議論していかない といけないと考えております。

〇司会(玉井) 沖縄県は離婚率一番で、 共働き世帯割合が下から3 番めですね。

地域の果たす役割とは…ゆいまーる精神の真 価が問われる

〇平 共働き世帯割合が45 位で少ないみたい に見えますよね。本県は、離婚率1 位ですよね。 この数字夫婦共働きですので、離婚したら夫婦 じゃないんですよ。その人たちは分母から除外 されると考えます。ですから、そのことをふまえ ないと、総務省のこの数字は使えないです。

〇司会(玉井) これで云々ということでは なくて。

〇平 だから僕は離婚率と共働きをそばに出しているんです。離婚率が高いとなると、やっ ぱり見る人が減りますよね。

〇司会(玉井) 一般世帯としてカウントさ れないんです?

〇平 一般世帯、夫婦共働きの「共働き」に 入らないと思います。1 人しかいないですから。

〇小渡 高齢者ケア整備構想を考える上で、 療養病床の在院日数が長いのは、これはやはり 問題があると思います。それで何が原因かとい うと、1 つは全国平均よりも入院者の年齢が高 い、85 歳以上の人たちが療養病床にいるという のも1 つの理由だと思います。85 歳以上にもな ると、なかなか在宅に帰せないように思います。 それと、退院できないもう1 つの理由は、認知 症の方が多いということがあげられます。

一方では、療養病床の人口当たりの数が多い から、そのまま回転しないで、とどまっているん じゃないかという考えも出ます。

それで見てみると、例えば人口10 万人当たり の療養病床の病床数、これは沖縄は全国のレベル で12 位ぐらいです。10 万人当たりにすると、療 養病床の数は決して多くないんです。一番多いの は高知県で、断トツに10 万人当たりの療養病床 の数が多いです。でも平均在院日数を見ると、少 ないんです。だから療養病床の10 万人当たりの 数と在院日数とは関係ないんです。入院している 人の状態、それと関係があると思います。

それからもう1 つは、在宅に受け皿があるか どうかです。これが問題になると思います。在院 日数が長いとか、病床数が多いんじゃないかと 誤解する人がいますが、決してそうではないで す。それを付け足しておきます。

〇宮城 それと1 人当たり医療費というの は、お年寄りが1 人どれだけかかったかという のは別なんですよね。老齢人口が多いところは 平均すると医療費は高く出るんですね。75 歳 以上の方、あるいは高齢者が病院へ行ったら、 若い人より医療費は高くかかっているかという と、かかってないんですね。そういう意味での 1 人当たりの医療費ではないんです。

お年寄りというのは病気になりやすいですか ら、ですから老人1 人当たりの医療費の出し方 というのは、老人がどれだけいるかどうか。そ の老人の人口を出してもらわないといけないで すね。沖縄はどうなんですか。

〇平 沖縄は老人の人口は先ほど言いました ように、75 歳以上が10 万人ぐらいですので、 割合としては全国の中で少ないほうなんです ね。ただ、沖縄の特徴は85 歳以上の人口が多 いんです。だから超高齢者というのは、それだ け医療にかかる比率はもっと高くなりますの で、先ほど言いましたように、介護療養で89 歳が平均年齢ということですので、結構長生き されている状況があるんですね。ですから、老 人医療費を考える時は、70 歳以上の人口割合 がどうなっているのかをふまえないといけない と思います。

〇宮城 それ出してもらわないといかんです ね、階層別にね。70 〜 75、75 〜 80 と。

〇小渡 沖縄の療養病床は本土と違って特殊 性があると思います。だからそういう理由で在 院日数がどうしても長くなるとか、そういうの はあると思います。それも加味して必要病床数 や、療養病床数も計算していかないと、溢れる 人が出てくると思います。

〇宮城 沖縄の場合、療養病床が不足して も、患者さんを見ていると、毎日増えてきてお りますね。結局、内地の場合そういう後方施設 というのは、沖縄に比べてどうですかね、やっ ぱり多いですか。あるいは同じか、少ないと か。ただ、特養の整備率は一番高いです。老健 も5 番目、結局詰まっていて、結局どっちも動 かない状態なんですね。これ自体結構待ってい ますからね。

〇又吉 特養で5、6年ですか。

〇小渡 1 つには後期高齢者が多いという ことです。これがやっぱり影響していると思 います。

〇山田 重複して申請している人も多いみた いです。1 人で、掛け持ちで。どこか空いたら すっと行こうということで。家族は奔走してい ますよ。

〇又吉 とにかく申し込んでおいて、中部で も南部でもご家族は車で通ってもいいからとい うことで、6 カ所から7 カ所。那覇市に住んで いて中部まで申し込んだりしています。

〇司会(玉井) 要するに、もう、最初に入 れるところ。

〇又吉 入れるところところだったらどこでも いいということだと思います。

〇平 以前都市と郡部のある地区の認知症の 実態調査の違いとして、郡部の地区ではある程 度の認知症があっても、1 人暮らししている人 が結構いるんですね。洗濯したりとか、普通に 生活している人もいます。ところが、都会でそ ういう状態になると、もういろんな問題が出て きたりとか、かなりの差がありますね。今は、 都会的な形の生活環境が広がっていっているん じゃないかと思いますけども。

〇又吉 でも、那覇市は努力しているほうだ と思います。包括を中心に地域相談センターが 動いて、地域マップをつくって、見守り支援と か、標準プランの方たちすべてが、1 人が3 人 の年寄りを支えようということで、在宅のほう も頑張ってはいるんですけど、まだまだ。

〇平 非常に厳しいですね。都会というのは 隣にだれが住んでいるかわからない。田舎に行 くとやっぱり徘徊していても、みんな知っちょ ーるー(知り合い同士)ですから。そこらへん の違いも若干あったんだろうと思いますけどね。

〇司会(玉井) 山田さん、先ほどゆいまー るとか、地域で支えるとかという話があったん ですけれども、那覇の方が中部で入院したと か、家族が奔走して、何とかしてくれという感 じ、すごく焦っているような状況が現在あるん ですか。

〇山田 ありますね。家族がね。やはり施設 に入って、そうしないと共働きで稼ぐことができ ないみたいです。とにかく見る人がいらっしゃら ないから、すぐにも入れてほしいということで奔 走していらっしゃいますね

〇司会(玉井) ということは、地域で支え るというのはいろいろ、あちらこちらで聞く言 葉ですけれども、それに行き着く前にもっとも っと知恵を出さないといけない段階なんでしょ うかね。

〇山田 そうですね。

〇司会(玉井) まだ整備されていない部分 も多いですからね。

〇山田 やはり地域で支えるということ、老 人クラブ単独だけではだめですので、地域ぐる みということで。特に行政と結びつけてやって いかないと、老人クラブの独走では、とても実 は結びません。地域を支えるといっても軽い 人、地域で生活がある程度できる人しか老人ク ラブはみられませんから、さっき先生方がおっ しゃったように、2 とか3 とかいう中等症、重 症が在宅でもいいと在宅に帰ってこられたとき には、やっぱりチームをつくってネットをはっ て、老人クラブがいけないところ、同僚として お世話してあげる、近所の人をお世話してあげ るということは可能ですけれどもね。やっぱり 老人クラブ単独ではできませんので。老人クラ ブも、今、社会福祉協議会を中心に、やっぱり 地域の保健師さん、師長さん、民生委員、ネッ トをはってやっていこうという構想で、今、一 生懸命まわっているんですけれども、なかなか こういうような社協を動かすにしても何にして も、もう1 つ高齢者のほうが切羽詰った意識が ないですね。

だって私たち高齢者になると、福祉の恩恵を 受けるのは私たちだから、私たちが動かないで もいいじゃないかとか、民生委員さんの業務の 項目に私たちの見守り活動もあるんですよ。民 生委員の仕事までとっている老人クラブに何が できるかという、そのとおりですよと、説得し ても。だから、これを行政につなげて、行政も 官民一体となって見守り活動、軽症の人たちを 地域で見守っていって、そして地域の先生も含 めてネットはっていって、「先生、おかしくな ったら担ぎ込みますから見てくださいよ、せめ て昼間だけでも」というふうに、ちゃんとネッ トはらないと安心して見れませんね。高齢者は いつ、どうなるかわかりませんからね。

軽い人は、見ようとする、全国的な流れで す。見守り活動。孤独死をなくす。病弱な人、 痴呆の人を見守っていきましょうという、もの すごく国も県も痴呆症まで見てくださる。孤独 死をなくしなさいというようなおふれはどんど ん出ております。だけどそこにいろいろ理論は わかっていても、どういうふうにネットをはっ ていくのか。アクションを起こすのに、今、手 間取っています。

〇司会(玉井) 沖縄県は沖縄県の特殊性が ありますし、それが今いろいろなお話の中で明 らかになった部分があると。そして、沖縄県の 特殊性を踏まえた解決というのが必要になって くるのかなという感じがいたします。

時間も押し迫ってまいりましたけど、宮城会 長、最後に何か。

〇宮城 こういう状況というのは、沖縄の社 会状況を反映していると思うんですね。沖縄の 人というのは、他府県に比べると年齢的には 10 歳若いと思っているんですよ。体格的にも。 本当にそれぐらい歳をとってくると差があるん ですね。元気なお年寄りが多いはずです。先ほ どのデータで65 歳以上は働いていない。その へんのところがやっぱり若いけど、働く場がな い。65 歳以上になると働ける力があっても、 もう働く職場がなくなってくるという問題があ ると思います。

それと同時に、全国的にも沖縄も老齢人口と いうのは、どんどん増えてきます。それから、 核家族化が増えていきます。共働きも増えてき ます。老後、問題が起こったときに、その人が 一番ふさわしい処遇というんですかね、サービ スが受けられるような体制というのは、沖縄県 独自でつくっておかないといけないということ です。それは病院、医療、療養病床があり、老 健があり、老人ホームがあり、在宅系のいろん な施設があるということがあって、これはもう すべてバランスをとりながら計画をしていくと いう。20 年、30 年先にはかなりの数のお年寄 りが増えてきますから、今から準備はしておく ということですね。

国はいろんな指示を出してはくるんでしょう けれども、沖縄は沖縄独自で考えてやっていか ざるを得ないということで、行政のほうでもぜ ひ踏ん張って、そのへんの実態をつかんだ上で 計画を立てていただきたいと思います。

〇司会(玉井) ありがとうございます。

これで「療養病床の今後について」という座 談会を終了させていただきます。

どうも長時間にわたりまして、ありがとうご ざいました。