首里眼科院長 宮平 誠司
私は、琉球大学を卒業後、母校の眼科学教室 に入局し、2年間の研修後、多数の病院で勤務 致しましたが、様々な眼の疾患を経験し、患者 さんをとおして数多くの事を学ばせていただき ました。
そして、平成18年4月、首里りうぼう斜め向 かいに首里眼科を開院しました。勤務していた 病院とは違う地域であり、ゼロからのスタート となりました。医師会の先生方にも大変お世話 になりましたが、医師以外の友人もどんなに大 切かと改めて思いました。
まだ患者さんが少ない頃受診してくれたの は、小、中、高校時代の友人及び家族、美ら虎 会(阪神タイガースファンクラブ)のメンバ ー、等など、おおくの友人に助けられました。
実際に開業してみると、珍しい症例、難治症 例に遭遇することはあまりなく、Common Diseaseにきちんと対応することのほうがより大 事だと思うようになりました。不定愁訴、不明 愁訴で受診する患者さんも多く、診察の基本は、 開業医に限らず、患者さんの訴えをよく聴くこ と(聞くではなく)だと考えています。聴く基本 (傾聴のスキル)には、相手を見る、うなずく、 相槌を打つ、相手の気持ちをそのまま受け止め る、共感的な聴き方をする、等がありますが、 研修医の間に身につけておくべきでしょう。
開業医として成功するためには、医療の技術 を磨くことは言うまでもありませんが、地域の 方々に溶け込むことも大事です。私は、地域の カラオケ大会、ソフトボール大会、公民館祭り などの地域行事には極力参加するようにしてい ます。(単に、いろんな方々と酒を飲みながら 語り合うのが好きなだけなんですが…)先日、 高齢の男性がメガネの相談で受診しました。よ くお話を聴いていると、「一週間前から黒い点 が見えるけど」と(本人は気にしていないが)。 もしや、と思って瞳孔を開いて眼底を見ると、 上方に網膜裂孔があり広い範囲で網膜剥離がお こっていました。当院の網膜光凝固装置では対 応できない状態です。撮影したばかりの眼底写 真をモニターで示し、緊急に手術が必要である ことを説明しました。自覚症状に乏しい患者さ んの場合、ご理解いただくのに時間を要するこ ともありますが、この患者さんは、「公民館で 一緒に酒飲んだ仲さー、全部宮平先生の言うと おりにするよ。」すぐ納得しました。受付時刻 は過ぎていたのですが、琉大病院へ連絡して、 その日の受診を受けていただきました。即日、 緊急手術となり、事なきを得ました。その3日 後、琉大で集談会の後お見舞いに行くと、私の 手を握って「ありがとうございます。全部先生 のおかげさー」涙を流さんばかりに喜んでおら れました。当院は、大学病院のような設備は整 っていませんが、しっかりとした診断をつけ て、必要に応じて適切に紹介するのが大事だと 思います。
当院で全ての疾患をカバーすることはできない わけですから、他の先生方(他科も含めて)との 連携を密にしておくことも大切です。琉大眼科の 忘年会や那覇市立病院の新年会など、御招待があ れば、万難を排して参加するようにしています。 又、集談会等の学会には欠かさず参加していま す。新しい知識を身につけるうえでも大事なこと ですが、紹介した患者さんがお世話になった先生には、直接頭を下げてお礼申し上げるようにして います。日頃からネットワークを築いておくと、 緊急時にも受け入れていただきやすい(ご迷惑か もしれませんが)と思います。
又、「医療はサービス業だ」ということを常 に意識しながら、患者さんに満足していただけ る医療を提供していきたいと考えています。当 院では、インテリアを含めたアメニティーの部 分にも配慮し、患者さんが、待ち時間も安らぎ を感じられるような、そんな空間となっていま す。「目の病気は治ったが心は晴れない」とい うのでは真の医療サービスとは言えません。目 の治療をとおして心も癒される、そんな医療サ ービスを心がけています。
研修医の皆さんへの提言を述べさせていただ くと、本を読んでわからないことは、指導医の 先生に聞くことです。知識、技術の中には、本 を読んでもわからない、実際に経験しないとわ からないものもあります。聞くは一時の恥と心 得ましょう。
最後に、自分自身が健康でないといけませ ん。私は、タクシーは極力乗らず、バス停、モ ノレール駅まで(歩くのではなく)走るように しています。そのかいあってか先日、血管年齢 を測ってみると、(12月で46歳になりましたが) 「血管年齢は40歳。血管が平均よりもやや弾力 性に富んでいる」という結果でした。人間的な 幅を広げるためには、趣味を持つのも大切なこ とです。首里眼科開院パーティーの時に琉大グ リークラブ時代の仲間と男声四重唱を披露した ところ、料理をデリバリーしてくださったフラ ンス料理店の社長さんがえらく感動して、その レストランで、父の日コンサート、クリスマス ディナーコンサートを開かせていただきまし た。その後も、仲間のクリニックでの敬老会、 協会のクリスマスパーティ等、歌う機会に恵ま れています。皆忙しい中、診療を終えてからの 練習は深夜まで及ぶこともありますが、昔を思 い出して、充実したひと時を感じています。
研修医の皆さん、肉体的、精神的にも健康に 注意しながら、充実した研修医生活を送ってく ださい。