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玉城信光沖縄県政策参与へのインタビュー

日時:平成19年11月8日(木)13:30〜
場所:県庁 政策参与室

玉井理事(左)と玉城信光参与(右)

玉井理事(左)と玉城信光参与(右)

沖縄県政策参与 玉城 信光 先生

玉城信光先生
P R O F I L E
昭和48年9月
東京大学医学部卒業
昭和48年12月 東京大学医学部附属病院分院外科勤務
昭和49年12月 熊谷市藤間病院勤務
昭和54年2月 東京大学医学部第3外科勤務
昭和54年11月 沖縄県立那覇病院勤務
平成4年4月 沖縄県医師会理事
平成8年5月
那覇西クリニック開業
平成12年4月 那覇市医師会理事
平成14年4月 那覇市医師会常任理事
平成17年11月 那覇西クリニックまかび開業
平成18年4月 沖縄県医師会副会長
平成19年4月 沖縄県政策参与

○玉井理事 先ず、4月から沖縄県政策参与に ご就任されての率直なご感想をお聞かせいただ けますか。

○玉城参与 大変な仕事です。最近、各方面か ら様々な話を持ってこられる方々が多くなって きました。これまでの調整で一番上手くいった と思うのが助産師養成コースの設置です。日本 助産師会沖縄県支部の皆さんが来られ、助産師 コースをどうしたら良いか、県立浦添看護学校 に設置するのが良いか、県立看護大学が良いの かということを検討し、結局は、県立看護大学 が助産師コースの開設にむけて仕事を進めてい たということが分かりました。産婦人科医会の 先生方も一緒になってやっていきましょうとい うことで、上手くまとまりました。

○玉井理事 実感として、参与の発言力はかな り強いものがあったのではないでしょうか。

○玉城参与 殆どないと思っています。ただ、 非常勤ですから自分で遠慮する部分もあります が、地位としては副知事クラスとのことです。 例えば、いろいろな要請が来ますが、その状況 を確認したい場合、担当部局が必ずレクチャー に来ます。今一番大きいのは、医療法の改正に 伴い医療計画が見直されますが、この時期に県 医師会から県へ出向したということは、その打 ち合わせを進めるにあたり非常に良いと思いま す。行政サイドも医師会との摺り合わせが必要 ですから、私がここに居るということで、結構 スムーズにいっていると思っています。

○玉井理事 行政の内部にいるということは、いろんな折衝事もやり易くなるんですね。

○玉城参与 行政の方も非常に助かっているの は、今まで事務的な話を下から積み上げていく 方法が必要でしたが、県医師会の三役の一角に 居る人間が、ここで話を伺って、医師会の理事 会にそのまま話を通すということで、摺り合わ せが上のレベルで出来るようになりました。そ ういったところが良いかもしれません。

○玉井理事 ややもすると、県医師会側からか ける圧力みたいに玉城先生が扱われてしまうの かという気がしていました。

○玉城参与 時々そういう発言をする時もあり ますね。

○玉井理事 でも、実際には行政としても、先 生がこちらで執務されているというのは、かな りプラスになっているのでしょう。

○玉城参与 それは皆さんに聞いておりません ので、どうでしょうか。ここにいると、皆さん は福祉保健部の話だけをしているような感じが すると思いますが、実は、医療に関する新しい 企画を立てたいという時には企画部から話に来 ますし、その他観光商工部からも沖縄型リゾー トを利用した健康産業を成り立たせたいという ことで、国の予算を持ってきます。健康には、 福祉保健部が絡みますが、行政の縦割りで、彼 らも直接は言えず私を介して話をする様なとこ ろもあり、その辺がある程度調整役として良い のかと思いますが、実際にその事が上手くいっ ているのかは分かりません。

○玉井理事 様々なプロジェクトを始めようと する時に、どこから手を付けて良いのか、どこ に先ず話をしていいのか、どの程度の感触があ るのかというのが分からないと思います。例え ば観光産業などは、先生が内部にいらっしゃる と、先ず玉城参与に話を聞いてみようとかとい う形になってくるかと思います。

○玉城参与 それは非常にあります。観光産業 については、沖縄総合事務局と観光商工部は以 前からの付き合いがありますので、私を経由し ながら、沖縄型医療産業をどのようにして根付 かせることが出来るかということを一緒になっていろいろなプロジェクトを組んでいます。ま た、企画部は、アジアゲイトウェイ構想の中 で、沖縄の医療・福祉・健康というものが表に 立てるかということを企画しています。

○玉井理事 療養病床の削減問題など様々な問 題が山積しておりますが、やはり先生の今のお 立場で課せられる課題は多いですね。

○玉城参与 一番難しい問題です。結局は、今 医療法の改正でいろいろな問題が出てきているの ですが、医療というのは予防医学から、在宅医療 まで一連の流れがあるような感じがしていて、そ れをどうするのかが重要です。県庁の中にいて思 うのは、県は企画を立てて文書を書くのは得意で すが、最終的に誰がどうやって、それを実現して いくかというプログラムを書けません。

○玉井理事 いろいろな事のプランを立てても 実行するのは人です。人材育成、又は活躍できる環境づくりが大事だと思います。

○玉城参与 本来は県の仕事だと思いますが、 やはり国の法律に基づいて、いろいろな政策を 県単位でやることで殆ど精一杯です。それを動 かして実現させるところまではなかなかいって いません。ドクターバンクが去年の会議に出 て、今、崎原先生らに委託をしていますが、結 局、委託事業をせざるを得ません。そういう委 託先の中心に沖縄県医師会があってもいいので はないかと私自身は思っています。

○玉井理事 人材育成というのは、非常に大き な問題であります。また、それは継続していか ないといけない問題でもあります。こういうこ とは、本来なら最初できちんとシステム作りを すると良いと思いますが、走りながらやらない といけないところも多いですよね。

○玉城参与 産婦人科医師不足については、県 立病院、大学病院、民間病院の連携が出来ればと 思っています。今あちらこちらの病院で人材を育 成しています。来年は後期研修の3期目となり、 再来年からは人材を外へ出すことができるように なります。県立病院が人手不足と言った時に、こ のような人達を採用したいのか、採用したくない のか、県のスタンスが見えてきません。

○玉井理事 先生は「発想」という言葉をよく 使われますが、これから求められる「発想」とは 何でしょうか。先生のお考えをお聞かせいただ けますか。

○玉城参与 難しいですね。おそらく各々が地 域連携を本気になって考えるかどうか、自分の 側だけに利益を持って行くのか、その利益を外 にも提供して皆のものにしていくのかという考 え方だと思います。研修制度についていうと、 県立中部病院は、ハワイ大学と提携して研修事 業を行ってきたことによって良くなったというこ とがあります。しかし、それをいつまでも県立中 部病院だけにしておくのか、そのシステムを利用 して沖縄県の全ての研修生にメリットがあるシ ステムを作れるのかということを考えます。

○玉井理事 後期研修制度は、今大きく様変わ りを求められていると思いますが、やはり後期 研修が充実していかなければ、医師不足は解消 されないし、魅力ある研修システムが本県に根 付きません。その為にも大事なシステムを作ら なければならないと思いますが、その為にはグ ローバルな発想が必要でしょうか。

○玉城参与 例えば、沖縄県で人材が育成され ても沖縄で働く場がなければ、本土へ医師を派 遣して、その医師達を沖縄県からローテーショ ンさせて、また沖縄県に戻すというシステムがあ っても良いと思います。県立病院が医師不足と 言いますが、本当に県内の人材を活用する気が なければ、沖縄県から県外に出るという更に枠 を一つ超えた発想が今頭の中にあります。民間 病院で産婦人科医師の育成が進んでいますが、 そのような医師を産婦人科が不足している県立 病院が役立てるつもりがあるかどうかです。県 立病院はもう少し大きくものを見ないといけま せん。産婦人科の医師の足りない東北や北海道 へ沖縄から医師を派遣することが出来れば凄い ことです。但し、必ず沖縄に戻して、また次の 世代を派遣していく、そうしていくうちに、あち らこちらにネットワークが広がり、何れは全国に 派遣出来るチャンスが来るかもしれません。沖 縄を人材育成のメッカにするのです。

○玉井理事 先程、観光の話が出ましたが、県 庁にいらっしゃることで、異業種の方々と接す ることが出来ると思いますので、これから別の 分野で医療が活躍するという発想も生まれてく るのでしょうか。

○玉城参与 統合医療については、私が反対し ている様に思われておりますが、決して反対し ているわけではありません。これから統合医療 をどうのようにして実証していくのかが必要だ と思います。沖縄県では、医療という枠を離れ て、いろいろ情報が集まってきて、今いろいろ な面白い事が起こっています。これまでは、そ の殆どを知りませんでした。沖縄型エステ・ス パを作ろうということで、その研究会があり、 沖縄型エステは何が特徴になるかを一生懸命考 えています。本当に沖縄が癒しの島になれるの か、また、県内で大規模な学会が開催されてい るが、沖縄なら学会に奥様方を同伴されて、ご 主人は学会に出席し、その間に奥様方は観光に行ったりエステをしたりして遊べるという空間 が出来れば観光にもプラスになります。瀧下教 授が日本高血圧学会を県内で開催した際に、い ろいろな方にお願いをして、首里城前の首里杜 館で会長招宴を開催することが出来ました。こ れは大きな沖縄コンベンションの突破口の一つ だと思います。当日は、首里城の方から満月が 上がってきて、最高のシチュエーションだった そうです。首里杜館のレストランとして使って いる場所を夜使わせてもらったのですが、いろ いろな人とお付き合いが出来た中でお願いした ところがありました。これから首里城をメイン にしながら、学会の会長招宴のようなことが出 来る様になると、沖縄の観光をアピールするも う一つのイベントとなります。医療の中にいる と分かりませんが、私たちの周りではいろいろ な事が起こっているのです。県庁に来て成功し たのはこの二つですね。

○玉井理事 まだ具体的にはならなくても、い ろいろな方々の動きが始まっているのかもしれ ません。

○玉城参与 実は、ここ県庁に出向し若干疲れ がたまってきました。人はあまり偉くなるものじ ゃないと思いました。私にとっての仕事がないの です。外来などの現場では、患者さんとずっと 話をしますが、ここでは、打ち合わせや面会者 がいないと一日中コンピュータをやったり、新聞 を読んでいる日もありました。

○玉井理事 臨床医というのは、やはり現場で 臨床しているというのが重要ですよね。

○玉城参与 私には、印鑑を押すだけの仕事は 絶対に出来ませんね。

○玉井理事 生涯一医師であるというスタンス が大切だと思いますね。最後の質問になります が、先生の日頃のストレス解消法、又は趣味等 を教えていただけますでしょうか。また、座右 の銘等がございましたらお聞かせ下さい。

○玉城参与 趣味は旅をすることですが殆ど出 来ません。今のストレス解消法は、妻と外で食 事をすることです。それと、お酒は私の味方を してくれます。1 回お酒を飲んでおしゃべりを すると、ストレスが殆どなくなります。あまり 悲しい酒を飲んだことがありませんので助かっ ています。また、飲み過ぎた翌日はお酒が飲め ず、必ず休肝日が入るので、これは親からもら ったいい体だと思っています。

座右の銘は誰の言葉でもありませんが、どん なに困っていても「必ず時間が解決してくれる」 ということです。どんなに焦っていても気が付い たら過ぎ去った過去になっているのです。何か に囚われて悩むことはありません。それと、良い ことと悪いことは必ず交互にやってくるというこ とです。私の場合5年サイクルです。だから、悪 いと思っても焦りません。しばらく待っているう ちに必ず転換点があらわれます。

○玉井理事 私が産業医をやっている会社の社 長が同じ様に、成功している時に既に失敗は始 まっていて、失敗している時に成功は始まって いるとおっしゃっていました。

○玉城参与 上手くいっている時に、次にダメ な日が来るので、その日のためにお金はもちろ ん、心もエネルギーを蓄積しておかないといけ ませんね。困ったときに自分のエネルギーを全 部使い果たすと死んでしまうことしかなくなり ます。死にそうになっても、しばらくすると世 の中が変わり始めるのが分かります。それが確 実に来ます。

○玉井理事 会員の皆さんと共に今後の先生の ご活躍を心よりお祈りしております。

本日はお忙しい中、貴重なお時間を割いて頂 き、ありがとうございました。

インタビューアー:広報委員 玉井 修