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第117回日本医師会臨時代議員会

副会長 玉城 信光

去る10月28日(日)、日本医師会館において 標記臨時代議員会が開催されたので、その概要 を報告する。

定刻になり、石川議長から開会、挨拶が述べ られた後、受付された出席代議員の確認が行わ れ、定数350名中欠席2名、出席348名で過半 数以上の出席により、会の成立が確認された 後、石川議長より議事録署名人として、岩城勝 英代議員(富山県)、木下敬介代議員(山口県) が指名され、議事が進行された。

唐澤会長 所信表明

唐澤会長の所信表明で概ね以下のことを述べ られた。

今まさに地域の「医療崩壊」は始まってい る。急激にこうした現象が起こってきたのは、 根本的には、国の医療費抑制政策であることは言うまでもない。医療費の抑制は90年代、すな わち、バブル経済の崩壊以後始まったのである が、顕著になってきたのは、小泉政権からであ る。「聖域なき構造改革」の名の下に、社会保 障分野に大鉈(おおなた)が振るわれたからで ある。

近年のわが国の政治の焦点は、国民の日々の 生活の視点と乖離している。安心・信頼を求め る国民の声を十分傾聴せず、もっぱら経済財政 運営のみに重点を置き、増え続けてきた国債借 入残高に呪縛(じゅばく)され、ひたすら財政 収支のみにとらわれてきた。国家の最高の財産 は、国民である。国家の第一の責任は、国土と 国民の生命・財産を確保し、日々の生活を守 り、充実した人生を全うし得る社会をつくるこ とにある。すなわち、安全で信頼できる地域社 会の確保であり、社会の最小構成単位である家庭と家族にとって、展望を持った充実した生活 基盤の構築を可能にすることにあると考える。 国家の政策の方向は、国民の日常生活感から乖 離することがあってはならない。そして、国富 が国民の福祉に十分、有効に貢献しなければ、 とうてい国家100年の礎など築けるはずもない。

少子高齢化の進展とともに、地域の疲弊と格 差の増大と不安がまん延するようなことは避け なければならず、まさに政治の真価が問われる 時代に立ち至ったのではないだろうか。今こ そ、日本国憲法第25条に規定する、国民の生 存権の保障と国の社会的使命を掲げた条文を再 確認する必要がある。著しい少子化と高齢化の 狭間で現役世代には多大の負担が生じつつあ り、喫緊の課題としての国家の使命を果たさな くてはならない。

国民すべてが、いつでも、どこでも、安全で 良質な医療を受けられることとともに、同時に それが受診者と家族にとって納得できる適切な 負担であることが最も重要であり、医療制度を これ以上後退させてはならない。今こそ、地域 の安全と安心のための地域医療提供体制の存続 が危機的状況にあること、医療制度のベースた る国民皆保険制度の堅持と強化のための政策が 重大な時期にあることを、国民に説明し、理解 を求めなくてはならない。

日医は、「グランドデザイン2007(総論)」に 続き、このたび新たに「グランドデザイン2007」 の『各論』を作成、発表した。日医は、国民医 療を守るために、国民にとって等しく良質で満 足度の高い医療を受けることのできる医療提供 体制を確保し、そのような医療を国民が普遍平 等に受けられる国民皆保険制度を一層強固なも のにすることを目指す。そのために、日医は、 国民の生命と健康を守る立場から、国民と同じ 目線で国に対する積極的な提言をし、同時に、 日医が対応すべき課題には迅速に率先して取り 組んでいきたいと考えている。

会務報告、代表・個人質問

その後、引き続き竹嶋副会長から平成19年4 月から現在までの会務報告が行われた後、唐澤 会長の所信表明、会務報告に対する各ブロック からの代表・個人質問が行われた。

執行部に対する各ブロックからの質問は、代 表8題、個人13題に上り、本会からは宮城会長 が九州ブロックからの個人質問として「日本脳 炎対策について」ワクチンの早期供給につい て、日医の見解を質した。質問・回答の詳細は 以下のとおり。

「日本脳炎対策について」(沖縄県宮城信雄)

厚生労働省が、今日まで日本脳炎ワクチンの 定期接種の積極的勧奨を差し控えたことを受け て、国内ワクチン製造メーカー5社のうち2社 で現行の日本脳炎ワクチンの製造中止に至って いる。また、現在製造を行っている3社につい ても、残り少ない原液でワクチンを製造してお り、生産量・生産力が著しく低下している状況 である。

特に、九州・沖縄は日本脳炎の汚染地域であ り、県民から予防接種を求められても対応出来 ない状況にある。

今後の日本脳炎対策をどのように実施してい くのか、又、いつまで新製品の開発を待てばよ いのか、日本医師会から厚生労働省へ照会して いただきたい。

回答:飯沼常任理事

日本脳炎のワクチンが枯渇の状況に入ってい るのは事実。今まで生産されていたマウス由来 のワクチンはすでにつくることができない。地 球温暖化の影響で、日脳ウイルスを媒介するコ ガタアカイエ蚊の北限が上がり、日脳発生の機 会は北日本で頻度を上げている。そのような 中、日脳ワクチンが不足する最悪の状況を迎 え、苦慮している。

日脳ワクチンはワクチン接種後の副反応、特 にアデム(急性散在性脳脊髄炎)の発生があ り、改良が進んできた。組織培養ワクチンの研 究が進んでいるが、出来上がったワクチンは効 果は別として副反応はこれまでのものより強 く、直ちに世に出すことは危険である可能性が高いとの結論に達し、現在も改良が進んでいる と聞いている。

最終的に組織培養ワクチンが世に出るにはあ と2年は必要で、それまでは現在ストックして いるマウス由来のワクチンを適宜、放出すると いうことである。総量としては、来年度は80万 本。今年の使用量は40数万本であるため今年 の量は超えているが、皆さんに供給したり、積 極的勧奨をするには足りない。

このため、ブタの抗体保有率の高い地域の 人々、東南アジアなどに出掛ける人々に優先的 に供給するなどの方策を考えないといけない。 コガタアカイエ蚊の発生の素地を除くことも必 要と考える。

日医は厚生労働省に対し、今まで同様、日脳 に関するきめこまかい情報の提供、必要地域へ のワクチンの安定供給を求めていきたい。併せ て新ワクチンの供給が可能になり次第、積極的 勧奨の再開、日脳ワクチン未接種者に予防接種 法に基づく接種が行われるよう強く働き掛けて いく。

その他の主な質問及び回答の概要は以下のと おり。

「日医認定かかりつけ医」制度が、厚労省の 「総合科(医)構想」や後期高齢者医療制度 の「主治医制」に利用されかねないのではな いか。

回答:唐澤会長

医師は専門外であっても、病気の相談を受け たり必要に応じて他の医療機関を紹介すること が必要であり、他科の診療科をよく勉強する医 師の存在を、医療機関を訪れる患者に分かって もらえる状況をつくりあげることが私の念願で あり、「専門医・認定」が国で固定され診療報 酬で評価されることや、行政によって地域医療 の枠組みに組み込まれる事は絶対、実施すべき ではない。

「療養病床再編について」

回答:竹嶋副会長

日医の調査において医療区分1の約20%が医 療難民となる結果出ている。介護療養型医療施 設の受け皿となる施設は未整備で、日医は介護 療養型医療施設廃止後の必要な医療療養病床数 は、厚労省が提示している15万床ではなく26 万床と主張している。都道府県医師会において も、年内を目途に策定される地域ケア整備構想 に積極的に関与していただき、地域特性を充分 反映させるよう働きかけて欲しい。

「有床診療所のあり方」

回答:竹嶋副会長

有床診療所の機能については、都市部では専 門医療の提供、地方ではあらゆる患者を診る機 能、過疎地では病院の代替機能を果たしている のにもかかわらず、入院基本料が安すぎる。中 医協・診療報酬基本問題小委員会で引き上げを 主張する。

「医療のあるべき姿、実現のための戦略を問う」

回答:唐澤会長

日医執行部は昨年4月の発足以来、医療費抑 制策を改めさせるべく日医総研、事務局を活用 しながら、客観的なデータ検証、医療現場の実 態の把握に努め、関係閣僚、与党政策関係者を 中心に精力的に説明と主張を重ねている。

政府与党は、高齢者医療の保険料や一部負担 金について凍結を検討している。これらは、官 僚主導の政策がもたらした「負」の部分をもっ とも端的に表している。国政の場にいる1人1 人の国会議員が「行き過ぎた改革」を見直そう としており、今こそ、従来にも増して「政治」 へのアプローチが重要になっている。

このような状況から、国の政策関係者に対す る理解が最も重要な柱になる。国会議員にとっ て、地元からの声は絶大な影響を持つ。ぜひ地 元選出の国会議員に対して、より強く働きかけ ていただくようお願い申し上げる。

日医が一枚岩の盤石な組織になることへの方 略について、まずは、私どもが会員の絶大な支 援、支持をいただけるよう、成果を出すことに尽きると思っている。そのために、執行部全員 が全力を傾注していく。

議 事

議事については、下記の5議案が提示され、 宝住副会長よりそれぞれ提案理由の説明が行わ れた。

なお、議事進行の都合により第1号議案〜第 4号議案は決算委員会、第5号議案は予算委員 会を設置して当委員会に一括審議を付託するこ とが提案され、賛成多数で承認された後、決算 委員15名、予算委員25名がそれぞれ指名され、 別室にて委員会が行われた。本会からは小職が 決算委員の指名を受け審議に加わった。

その後、決算委員会の薬袋委員長、予算委員 会鈴木委員長から、それぞれの委員会審議結果 報告を受け、表決を行ったところ賛成起立多数 で原案どおり承認された。

○議事

  • 第1号議案 平成18年度日本医師会一般会計決算の件
  • 第2号議案 平成18年度医賠責事業特別会計決算の件
  • 第3号議案 平成18年度治験促進センター事業特別会計決算の件
  • 第4号議案 平成18年度医師再就業支援事業特別会計予算の件
  • 第5号議案 平成19年度がん医療における緩和ケアの意識調査等事業特別会計予算の件

印象記

玉城信光

副会長 玉城 信光

日医の大講堂に全国の代議員が集合した。総勢350名。

唐澤会長の所信表明は1)日医のテレビ放映のあと、日医に関心をしめすポイントが15.6%から 18.9%に上昇した。「期待あり」と回答した人も19.3%から22.9%にあがったが、まだ国民は日医 の活動内容を理解しているとはいえず一層の努力が必要であると述べた。01年から06年までの間 に失われた社会保障費3兆3,000億円の7割が医療・介護費の抑制で占められている。日医は「グ ランドデザイン2007」を基に国民にとって良質で満足度の高い医療を受けることのできるように 頑張っていくことが宣言された。

そのあと平成18年度の会務報告と決算案の提案がなされた。決算に関しては午後の決算委員会 の審議に付託することが決定された。

ブロック代表質問(北海道):療養病床は厚労省提示の15万床ではなく日医は26万床を申し入 れている。都道府県医師会も積極的に地域ケア構想に関与して地域特性の発揮に努めてほしいと 述べた。

東北ブロックの代表質問「有床診療所の安定経営へ財源の確保」:有床診療所は地域のプライ マリケアを担い、医療・介護サービスのできる入院施設であり、また産科や眼科、人工透析など の専門性の高い医療も行っている。このような施設が存続するためには是非とも入院基本料の引き上げが必要である。日医総研を活用して医療費抑制策に対抗すべきであると意見が述べられた。

常任理事の選挙について(茨城県):日医会長選挙でキャビネット制をとると優秀な人材が役 員として入る余地がなくなるのではないかとの質問があったが、公益法人改革の中で「定款・諸 規定検討委員会」を設置して会長選挙も検討していくことになると回答があった。

個人質問では宮城会長から「日本脳炎対策について」質問され、組織培養ワクチンが世に出る にはあと2年は必要でそれまでは現在のワクチンを放出するとのことであるが、必要地域には多く 供給を求めていきたいと回答があった。

私の出席した決算委員会で1)一般会計、2)医賠責特約保険事業特別会計、3)治験促進センタ ー事業特別会計、4)医師再就業支援事業特別会計の決算が検討された。会費収入は146億円余で ある。2)は8億6,500万円、3)は1億6,700万円、4)1億300万円の決算である。2、3、4)は国 からの委託事業である。沖縄県医師会もその100分の1の委託を沖縄県から受けたいものである。

その他に新しい事業が国から委託された。「平成19年度がん医療における緩和ケアの意識調査 等事業特別会計予算の件」が上程され、予算委員会で承認された。162,524,000円である。調査費 に77,900,000円、マニュアル作成費に74,500,000円で委員会費が10,124,000円である。これから 委員会が開かれるがどのような人選が行われるか提案されるであろう。

いつもながら1日がかりの代議員会である。中部地区医師会長:金城先生、宮城県医師会長、小 渡副会長と私の4名が代議員である。昨年の代議員会の際に大荒れの天候のために羽田で1夜を明 かした玉城副会長、今年は前日の午後、福岡で乳がん関係の会議があり福岡に向かった。しかし 今年もである。東京に台風が行ったために、もし東京に行けなければ福岡で宿泊の予約をしなが ら福岡に向かったのである。福岡の会議が終わり福岡空港に行くと、東京へ飛ぶとのこと、また1 便早く乗れるのでそれに変更して乗ったのだが、結局1時間遅れで飛びホテルについたのは午前0 時近くであった。もう1便遅れたら羽田宿泊であったのかもしれない。県医師会の出張はいつも波 瀾に満ちた旅である。これからも先が思いやられる。

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