沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 11月号

平成19年度第2回マスコミとの懇談会
「セカンド・オピニオン」について

玉井修

理事 玉井 修

8月23日(木曜日)那覇市医師会館4階ホー ルに於いて第2回マスコミとの懇談会が開催さ れました。マスコミからの参加は8名、医師会 からは12名と、最近のマスコミとの懇談会はか なり参加人数が多くなっています。この懇談会 がしっかり意見交換の場として、マスコミと医 師会側双方に充分浸透している事を感じさせら れました。

今回は「セカンド・オピニオン」を取り上 げ、国立病院機構沖縄病院の石川清司院長にま ずレクチャーをして頂きました。実際のセカン ド・オピニオンを受ける側からの現状のご報告 と、セカンド・オピニオンの考え方に関して解 説して頂きました。その後マスコミを交えて意 見交換を行いました。まず問題となっているの は、セカンド・オピニオンを求める際に、今現 在かかっている主治医にその事を言い出す時に どうしても躊躇してしまう問題。これに関して は医師会全体がこのセカンド・オピニオンに関 しての理解、徹底を会員に浸透させる事が大切 で、患者側が常にセカンド・オピニオンを求め やすい環境作りも大切かも知れません。次に問 題となったのは、主治医とのインフォームドコ ンセントの問題。インフォームドコンセントが 不十分な状態での主治医を替えたいという趣旨 でのセカンド・オピニオンは正確な医療情報の 受け渡しがされず、最悪の場合は患者側は何も 資料を持たずにセカンド・オピニオン外来に現 れ、主治医への不満を爆発させるという非常に 良くないパターンです。インフォームドコンセ ントを意識した外来対応が我々医師の側には求 められています。今現在、沖縄県のセカンド・ オピニオン外来は自由診療で、2,000 円から 15,000円までかなり金額的に大きな開きがあり ます。これは提供するセカンド・オピニオンが 欧米型の自己決定権を基礎とした厳密な解釈に 基づくものがある一方、もっと広く解釈してよ ろず相談的なものもあり、かなり内容的にも幅 があるためであろうかと思われます。ドクター ショッピングという言葉もありますが、より自 分が受け入れやすい(軽症な)診断をしてくれ る医師を捜して歩くという事のためにセカン ド・オピニオンを利用しようという考えもあろ うかと思われます。しかし本来のセカンド・オ ピニオンとは今現在かかっている主治医との関 係を維持しつつ、更に多くの意見を聞く機会を 患者さん側に保証し、自己決定権を尊重しつ つ、患者さんの意志に沿ったより良い医療を提 供するための一つの方法でなくてはなりませ ん。正しいセカンド・オピニオンとはいったい 何なのか、それを考えたとき、破綻した人間関 係の中に存在するのではなく、医療側と患者側 の真の信頼関係を根幹としてセカンド・オピニ オンが機能したときに最も効果的なものになる のだろうと思いました。石川先生のお話は実際 のセカンド・オピニオンでの事例が多く出て参 ります。そのケースごとに対応は様々で、法則 もなく、マニュアル通りにはうまくいかない事 が多いものと思われます。それはセカンド・オ ピニオンを必要とするのは非常にクリティカル な場合がほとんどであるという事と関連するで しょう。セカンド・オピニオンを求められた場 合に、多くの選択肢を提示して「あとはあなた 自身でお決め下さい」と自己決定に任せるべき なのでしょうか。石川先生はもう少し踏み込ん で、私はこの方法をお勧めしますという一言を 添えられるとのお話でした。セカンド・オピニ オンが機能するためにはどの様なあり方が良い のでしょうか、医師側が考える又は理想とする セカンド・オピニオンの形と、患者側が求める セカンド・オピニオンの形とは微妙に違ってい るのかも知れません。セカンド・オピニオンは いったい何のために存在し、誰のためにあるの か、この辺の発想からセカンド・オピニオンの あり方をもう一度考え直したいと思いました。 一般開業医にとってセカンド・オピニオンは常 に頭の何処かに置いておかなくてはいけないも のだと思います。むしろ積極的に患者側に、も っと大きな病院に意見を聞きに行ってみては如 何ですか?と促す事も必要な時があります。ま た、別の場合には、何処か他の病院で受けてい る治療に関しての不安を打ち明けられたりする こともあります。そんな時は黙って他の病院に 行ったりして、検査、治療をゼロからやり直す 等という最も避けなくてはならない事態へ発展 しないように、セカンド・オピニオンを求めた いと主治医に勇気を持って言ってみたら良いと アドバイスするようにしています。様々なご意 見はあろうかと思いますが、現場において、ケ ースバイケース、その人のパーソナリティも充 分に考えながら悩みながら模索を繰り返してい ます。この記事は、大学の関係者、開業医、総 合病院の勤務医など多くの方が読まれることだ と思います。セカンド・オピニオンというもの は現在の主治医、受け取る側、患者、場合によ ってはその仲介をしている開業医にとっても対 応が難しく、患者の自己決定権に委ねられた正 確な医療情報の提供を一つの理想としつつも、 画一的な対応や解釈だけではその目的が充分達 成できないのではないかとする、ややファジー な部分を一部含んだ形で提供されている現実が あります。詳細は懇談会の記事を読まれてくだ さい。私たち医師一人一人のセカンド・オピニ オンに対する考え方も違うと思います。今回の 懇談会が会員の皆さんがセカンド・オピニオン について考えてみる一つのきっかけになれば良 いと考えています。

懇談内容

開 会

○司会(玉井)

本日はお忙しい中、お集まりいただきまして 誠にありがとうございます。

それでは、まず初めに、沖縄県医師会を代表 いたしまして、当会の宮城信雄会長よりご挨拶 を述べさせていただきます。

宮城先生、よろしくお願いします。

挨 拶

○宮城会長

宮城会長

皆さん、こんばんは。 本日はお忙しい中、当 懇談会にご出席をいた だきまして、どうもあ りがとうございます。 また、日ごろ私どもが 県民に対する健康教育 活動の一環として行っております医療健康情報 の提供等に関しまして、マスコミ各位の絶大な るご協力をいただいていることに対し、衷心よ り御礼を申し上げたいと思います。

さて、今回はセカンド・オピニオンの正しい 求め方についてということですが、国立病院機 構沖縄病院の石川清司院長にお話をしていただ くことになっております。セカンド・オピニオ ンというのは、患者さんの病気に対する最善の 治療法というのを、患者さんと主治医とで判断 するために主治医以外の医師の意見を聞いてみ るということです。主治医との良好な関係を保 ちながら別の医師の意見を聞くということにな ると思います。患者さんとしては、このセカン ド・オピニオンを求めるということで主治医が 嫌がると、あるいは機嫌を損ねるのではないか という不安があると思いますが、現在ではイン フォームド・コンセント、いわゆる説明と同意 という考え方が医療界では浸透しております。 主治医としても他の医師の意見を聞くというこ とは非常に有益なことであると考えております。

我々医師会としても、患者のためのよりよい 医療の提供に向けて今後とも鋭意努力をしてま いる所存でありますが、その目的を達成するた めには、マスコミ各社の絶大なるご協力が不可 欠であると考えております。皆さま方におかれ ましては、何とぞ当懇談会の趣旨を十分にご理 解をしていただき、県民の保健、医療、福祉の 向上の発展にご尽力をくださいますようお願い申し上げ、甚だ簡単ではありますが、挨拶とさ せていただきます。ありがとうございます。

○司会(玉井) 宮城会長、ありがとうござ いました。

それでは早速、セカンド・オピニオンについ て、国立病院機構沖縄病院院長の石川清司先生 にお話しいただきたいと思います。

先生、よろしくお願いいたします。

懇 談

講演:「セカンド・オピニオン〜正しいセカ ンド・オピニオンの求め方について〜」
国立病院機構沖縄病院院長 石川清司
国立病院機構沖縄病院院長 石川清司

国立病院機構沖縄病 院の石川です。本日は セカンド・オピニオン の正しい求め方につき まして、一般論ではな く、できるだけ私ども の病院での経験をお話 したいと思います。

私どもの病院は比較的個性のある病院です。 大学病院をはじめ、総合病院に取り囲まれてい ますが、常時紹介率7割近くをキープしており ます。診療の特徴としまして「がん」と「難 病」の診療を挙げることができます。肺癌を中 心とします「がん」の診療は半年、1年といっ た短期決戦の病気であります。かたや、ALS等 の神経難病は5年、10年、長い方では20年の人 工呼吸器の生活となります。私どもの病院では 呼吸器疾患と神経難病で、毎日60台の人工呼 吸器が稼働しております。320床規模の病院で 60台の人工呼吸器です。両極端の厳しい病気で すが、いずれも生活の質、QOL、生き甲斐が患 者さんにとっても、職員にとっても大きなテー マになります。

スライド1:外来に張り出されたセカンド・オ ピニオンのポスターです。特徴は、3,000円と いう格安の料金にあります。どうしてそのよう になったかは、後ほどお話いたします。

スライド1

スライド1

スライド2

スライド2

スライド2:当院の地域連携室に依頼して県内 のセカンド・オピニオン外来の料金を調べても らいました。施設によっては、明確なセカン ド・オピニオン外来ではなく、「よろず相談」 として無料で相談室を開設している施設から、 専門医をそろえて1万5千円で設定された料金 まで様々でしたが、平均して5千円から1万円 が相場かと思います。それでも、「病気の相談 に行ったらお金をとられた」という患者さんの 家族からの声が聞こえてきたことがありまし て、セカンド・オピニオンが定着するまでには まだまだ時間がかかるものと思われます。

スライド3:夫婦で筋ジスの患者さんでした。 ある日、このような会話を耳にしました。「わ たしは、自分の病気は治らない病気だというこ とは重々承知している。だから、優秀なという か、名医にみて貰うことは全くない。私たちの 悩みを聞いてくれる医者であればいい」との表 現でした。

スライド3

スライド3

やはり、医療を提供する側としては、最新に して最良の医療を提供する姿勢は大切なことで すが、「がん」「難病」等の厳しい病気であれば あるほど、患者さんがつぶやいたこの心境とい うものを理解してあげないといけないのではな いかと思います。

スライド4

スライド4

スライド4:日本医師会のホームページから調 べましたセカンド・オピニオンの定義ですが、 この定義は欧米のセカンド・オピニオンの定義 だと考えられます。「個人が・・・」という考 え方は、私どもの日常の診療の現場ではほとん ど存在しません。夫婦、兄弟、親子、親族、こ れらとの関わりの中での選択、意志決定が行わ れるのが現実です。

スライド5:セカンド・オピニオンの概念の発 生した背景は、やはりアメリカ社会にあるとさ れています。この疾患の治療には、どれほどの 費用がかかるのか。より安価なほうを選ぶ。こ のコスト抑制の考え方から派生してきたものだ とされております。

それが、時代とともにコストの問題を抜きに して、医学知識の補助手段として用いられるよ うになりました。

スライド5

スライド5

スライド6

スライド6

スライド6:セカンド・オピニオンが、その理 念どおりに実践されるためには診療録の開示が 基本になります。診療録は医者のもの、病院の ものだとする古い考え方は捨てないといけませ ん。やはり、患者さんと共有する姿勢で、正確 な診療録の作成が必用となります。そして、他 の医師の異なるコメントに対しても謙虚に耳を 傾ける姿勢が必要となります。

スライド7:怒り狂ったように、セカンドオ・ ピニオンを求めてくる患者があります。間違い なく、原因は説明不足です。不十分なインフォ ームド・コンセントによるものです。

スライド7

スライド7

スライド8

スライド8

スライド9

スライド9

スライド8:当院のセカンドオピニオン外来の 現状について検討してみました。

スライド9:2005年4月1日から今年の7月まで に174件の相談件数でした。174名としなかっ たのは、やはり一人で相談にこられることは先 ずありません。何名か揃ってのことです。です から、何件という単位にしました。

スライド10

スライド10

スライド10:セカンド・オピニオン外来開設以 前に、私どもには専門外来としての「総合相談 コーナー」があり、数年の歴史がありました。 それを引き継ぐような形で開設しましたので、 当初毎月2ないし3件でしたが、昨年4月、緩和 ケア病棟を開設した頃より、急速に相談件数が 増えました。平均毎月9から10件程度です。男 性が多いのは、肺がん中心とする癌患者の相談 が多いためと考えられます。結果は、66件が情 報提供元へもどっておりますが、約2倍の108 件は引き続き当院で経過観察、または精査、治 療となっております。

スライド11

スライド11

スライド11:相談内容を診療科で分けてみます と、呼吸器内科・外科が98件、緩和医療が66 件、神経内科10件となります。

スライド12:疾患別でみますと、やはり肺がん が70件と最も多く、呼吸器疾患で約5割を占め ます。口腔・舌・咽頭がんや婦人科領域、その他の癌も多いのですが近くに大学病院があるた め、緩和医療の相談が多くなってきております。

スライド12

スライド12

スライド13

スライド13

スライド13:相談の結果9件が手術になってお ります。全例呼吸器外科領域の疾患ですが、内 訳は、肺の1cm以下の小さな病変で診断の得ら れなかった症例をどう扱うべきか、それから淡 いスリガラス様の陰影をどの程度経過をみたら いいのか、そして中学生、高校生の良性肺病変 をどう扱うか、またその治療のタイミングをど うするかといった相談です。多少困る相談は、 手術後の病理で断端陽性、つまり取り残しがあ りそうだ・・・どうにかして欲しいといったケ ースも再手術になっております。

スライド14:紹介元をみますと病床50床以上 の民間の医療機関、あるいは総合病院から88 件と最も多く、県立病院、市立病院から39件、 大学から32件、開業された医院から6件、紹介 状なしが10件です。紹介状なしのケースは、主治医との関係がうまくいっていないケースがほ とんどです。

スライド14

スライド14

スライド15

スライド15

スライド15:診療情報提供料TとUは明確に 区別されます。セカンド・オピニオンについて は、資料を提供するとともに、患者さんと家族 が希望したことを診療録に記載しておくことが 必要です。

スライド16

スライド16

スライド16:当院では主に、私が最初にセカンド・オピニオンを希望する旨の連絡を受けます が、癌に関しては私が対応し、内容によっては 振り分けを行います。予約制ですので、何日か 前にある程度の情報を得ておりますので、提供 する資料の準備は前もってしておきます。

基本的には、疾患、検査ともに学会から示さ れたガイドラインを基本に据えております

私の相談の特徴は、最後にかならず、年齢、 病状、体力からして、この方法を私はおすすめ したいと思いますと自分なりの意見を必ず伝え る、付け加えることにしております。

スライド17

スライド17

スライド17:その理由は、患者の「自己決定 権」の問題は、終末期医療の問題を含めて、日 本ではまだまだ成熟していないし、また必ずし も欧米のような自己決定権の概念は成立しない し、また日本の風土にふさわしくないのではな いかと考えております。やはり、患者さんとそ の取り巻きとの関係で考えて決定していくのが より沖縄的だと思いますが、会場の皆様方いか がお考えでしょうか。

先般、日本緩和医療学会があり特別講演でア メリカで活躍されている先生の講演がありまし た。人工呼吸器を止めることは患者さんの意思 表示が明確であれば、アメリカでは日常的に行 われている。何も問題にはならない。それは、 この「自己決定権」が最優先されるからだとの ことでした。日本では、この半世紀の間全く世 論はもとより、個々の考え方も変わっていない との指摘がありました。私は、日本ではこの 「自己決定権」の問題は、欧米のように割り切 ることはできないと考えております。

スライド18

スライド18

スライド18:相談を求める側は、やはり目的を 明確にしておくことと、聞きたいことを整理 し、メモにしておくことが大切なことだと考え ております。メモに従って話し合いますと、30 分以内で説明が終わります。1時間以上になる こともよくありますので、1日に2件以上は受け ないことにしております。

診療側も今後は、より積極的にセカンド・オ ピニオンをすすめる姿勢で臨み、正確な情報を 提供する姿勢のほうが患者さん、そしてその家 族との信頼関係が築かれるものと考えられます。

スライド19

スライド19

スライド19:最近の事例を紹介いたします。

1)宛名のない紹介状を携えて、外来でとまど っている夫婦がいました。どうしたのですかと声 をかけると、10cmもある巨大な肝臓癌の治療に ついての相談でした。CTをみますと大きな肝癌 で、困った事に切除した際に残すべき肝臓の左 の区域が小さい。私は、出身の岡山大学の肝移植グループに紹介しました。うまくいきました。

2)肺線維症、低肺機能に合併した肺癌で常時 酸素を携帯しております。前医でもう治療の方 法がないと宣告された方でした。退路を断つべ きか、なんらかの方法を見つけてあげるべきか 悩むところでしたが、私は、ガイドラインには ない「気管支動脈内抗癌剤注入療法」を提案し ました。

3)大腸のポリープ癌です。壁進達度に関して、 病理の先生も悩む症例でした。病理の先生が悩ん でいますので、当然臨床の内視鏡医も困惑してい ました。私は、知り合いの国立がんセンタ−の大 腸・肛門グループに判断を依頼しました。

4)げっそりと憔悴しきった50代の主婦でし た。30歳になったばかりの娘が子宮体癌で肺転 移、肝転移とのことでした。できることなら代 わってあげたいほどだとの訴えでした。私はこ のケースは、現役の婦人科の先生よりも年輩の まさに話を聞いてくださる先生がいいのではな いかと考えて紹介しました。

5)左側腹部の痛みを訴えて、ある市内の総合 病院を受診した若い男性でした。主治医の顔を みたことがない。研修医の先生が入れ替わり立 ち替わり検査、結果、胆石の手術をしましょう との説明に激怒。診療録開示を求め、資料を携 えて当院へセカンド・オピニオンを求めてきま した。やはり説明、インフォームド・コンセン トの欠如でした。研修医を預かっている病院は 注意が必要です。

お示ししましたように、セカンド・オピニオン が私のもとで完結するのではなくて、ある程度仲 介役の役割の部分もありますので3,000円です。

スライド20:ガイドラインを基本にして情報を 提供しますが、人はガイドラオンに示された生 存率等の数値でもって必ずしも納得することは ないものと考えております。

この症例は、左肺上葉の扁平上皮癌が大動脈壁 へ浸潤しているのではないかという事で紹介され てきた症例です。家族へは、主治医から後半年の 命ですと告げられていました。気管支動脈内に計 6回抗癌剤を注入しました。手術せずに、約15年 経過しておりますが、再発無く健在です。

ガイドラインで推奨されなくても、症例によ っては医者のさじ加減はあるものと考え、極力 患者さんとその家族に希望をつなぐ形でセカン ド・オピニオンには対応しております。

スライド20

スライド20

スライド21

スライド21

スライド21:国立病院機構内では、四国がん センターの地域連携室が最も充実していると言 われており模範とされます。この連携室の特徴 は看護師中心の連携室です。もろもろの苦情や 相談一切は、先ず連携室へ持ち込まれます。看 護師さんが、専門分野の医師から情報を得て患 者さんと家族に看護師が直接対応します。

セカンド・オピニオンの範疇だと判断した際に はセッティングが行われます。加えて、がんセン ターですので、癌の情報が主ですが情報発信の任 務も連携室にあり、看護師が中心的存在だという ことでした。参考にすべきと考えております。

医療をとりまく状況が、めまぐるしく変化していきます。医学の進歩もスピードを増しま す。セカンド・オピニオンはさらに求められる ものと考えられます。しかし、患者の自己決定 権が、欧米のような割り切り方にはならない し、日本の文化になじむか、定着するかはむつ かしい問題ですので、当面、セカンドオ・ピニ オンも、「ユイマールの精神」でいきたいと考 えているのが私のスタンスです。

ご批判をいただけましたら幸いに思います。 ありがとうございました。

総括:セカンド・オピニオンの一般的定義 と理想的な形式については教科書的に記載され ています。しかし、状況は患者の自己決定権が 最優先される社会ではありません。そこで、患 者とその家族のための日本におけるセカンド・ オピニオン、沖縄におけるセカンド・オピニオ ンはどうあるべきかを模索することは一つの重 要なテーマになります。

なんでも相談できる「かかりつけ医」をも ち、病診・病病連携を緊密なものにすることに より、患者の視点からみたセカンド・オピニオ ンが築かれ、定着していくものと考えます。

意見交換

○司会(玉井) 石川先生、どうもありがと うございました。

セカンド・オピニオンの紹介状を書いてくださ いと言われた先生はいらっしゃいますか。

私はいつも思うんですけど、そういうことを 聞かれると、医者はムッとしないですかね、ど うですかね、椎名先生。

○椎名(医師会)

椎名(医師会)

私はむっとはしませ んね。どうぞ、これは 遠慮しないで聞いてく ださいって患者さんに は言っています。確か に紹介状を書いたこと もあります。開業医の 場合ですけれども、その紹介料だと250点なの で、2,500円ですかね。セカンド・オピニオン ですと500点ということですよね。だから、全 然抵抗なく書きます。

○司会(玉井) 他にありませんか?

○大城(医師会)

大城(医師会)

自分の泌尿科の紹介 には、必ず、「どうぞセ カンド・オピニオンが ほしいと思われる方は 言ってください」と、 最初に案内してます。 それで、もし必要なと きはそういう手続きをとっていますけども、や っぱりこちら側からいつでも求めてもいいよと いう姿勢を、普段から示すことが肝要だろうと は思います。

○照屋(医師会)

照屋(医師会)

てるや整形外科の照 屋と申します。整形外 科の領域に限らないの ですが、最も重要な事 は、『病診連携』だと思 います。特に、最近、 本島南部方面はいい病 診連携ができつつあります。病診連携がうまく いくと、手術希望の患者さんを紹介し、手術が 終わったらまた戻してもらえます。また、紹介 した患者さんでなくても、逆紹介という形で送 ってもらえるという、流れの良い病診連携がで きつつあります。ただ、『インフォームド・コ ンセント』もそうですけども、患者さんとドク ターのリレーションシップ(関係)が悪くな り、主治医を替えたいと言うような事になる と、少し複雑な話になります。今後も、さらに 病診連携を進めていくことが患者さんのために もなるということだと思います。また、『自己 決定権』ということも石川先生は話されており ましたが、多くの患者さんは、“先生がわかる さ!”と、自己決定権を放棄するわけではない のですが、どちらかというと先生にお任せで、 “どうか助けてください!”というスタンスで 外来にいらっしゃいます。私達一般開業医とす れば、そこで適切に次の施設を紹介したり、い い意味での交通整理をしないといけません。こ ういう事が診療所の本当の役目だと思っており ます。

○司会(玉井) マスコミ側から何か、どう でしょうか。久田さん、何かありませんか。

○久田(琉球朝日放送)

久田(琉球朝日放送)

QABから参りました 久田と申します。

自分の祖母はよく病 院に行きます。幾つか 病気を抱えていまして、 ちょっと大変な面があ るんですけども、突然、 病院には行きたくないというようなことを何度 か漏らしたことはありますね。まずそういうと きは、おそらく主治医の方との関係があまり良 くなかったのかなとは思うんです。そういうと きに身内に言うよりも先に主治医のほうに、す んなり言い出せれば、有効な医療にベストな選 択ができると思います。人間関係をつくること のほうが、そういう話し合える環境をつくるこ とが大事じゃないのかなと思いますね。

○司会(玉井) インフォームド・コンセン トという言葉が出てまいりましたけれども、何 かありますか。仲宗根さん、何かありますか。

○仲宗根(週刊レキオ社)

仲宗根(週刊レキオ社)

週刊レキオの仲宗根 です。

3つ、ちょっと質問さ せていただきたいんで すけど、セカンド・オ ピニオンのほうからで すね。これはまだ保険 適用ではないですよね。病院によって全部違い ますよね。そして1万5,000円を取るところもあ れば、1,000円とか2,000円ぐらいのものを取る ところもありますし、そのへんのものがまず、 どうなっているのかということと、あと、先ほ どインフォームド・コンセントの欠如というの がありましたけれども、これは多分、大きな病 院というか、中規模クラスのお医者さんになれ ばなるほど難しいと思うんですね。というの は、よくお医者さんから話を聞くのは、忙しい と、1人にだけ構っていられないと、どんどん 処理しないといけないということが、まずあり ます。

あと2つは、これは日本の医療の根幹にかか わる問題なんですけれども、まず保険制度を日 本は導入しているということ。いわゆる現物給 付ですよね。この2点が、お医者さんにおそら く僕は浸透してないと思うわけです。アメリカ のように自由診療で、この患者さんからお金を もらうという気持ちがあれば、もっと丁寧な説 明というのは出てくると思うんですよ。例えば これまで病院で勤務したお医者さんが開業する と、態度が違うわけですよね。失礼ですけども。 やっぱりちゃんと説明してくれるし、だいぶ変 わると思います。だからインフォームド・コン セントの欠如はこのへんもあると思います。

もう1つは、例えば、インフォームド・コンセ ントの場合に、沖縄の場合ですと、もちろん、診 療によって琉大病院のやり方と中部病院のやり 方は、両方違うと思います。例えば1つの診療科 目、ほとんどの病院に行っているのが琉大病院か らの派遣なんですね。そこの医局から派遣されて いるお医者さんというのは、おそらくほとんど同 じ結論を出してくると思うんですね。ですから、 セカンド・オピニオンの選び方にしても、一番い い方法は、例えば先生の経歴を見られれば一番 いいんですけど、全然大学が違うとか、そういう ものも考える必要があるんじゃないかと思うので すが、そのへんは先生いかがですかね。

○司会(玉井) まず石川先生、いろいろ1 万5,000円から、5,000円から、さまざま値段設 定がこんなに幅があるのはなぜなんでしょうか。

○石川(医師会) 沖縄の場合、特にそうで すが、患者さん本人はみえないわけですね。ほ とんど家族の方がそろって、うちの親父はこう いう状態だけど、どうしましょうかということ ですので、通常の保険診療にはならない。病院の設定した額でいかざるを得ないところがある と思います。提供する側、送るほうはやはり 500点できちっと設定がありますが、受ける側 はそれができないものですから、患者さん本人 が目の前にいないものですから、こういう結果 になると思いますね。

○司会(玉井) 現物給付をやっている今の 現状では、インフォームド・コンセントに対し ての認識が上がらないんじゃないかということ なんですけれども、そのへんは何かご意見があ る方はいらっしゃいませんでしょうか。先生 方、どうですか。

○久場(医師会)

久場(医師会)

私は、公立病院に勤 めているんですけど、 私たち自身が病診連携 をもっとうまく根気よ く啓発してうまくやる ことが大事かもしれま せんね。私たちが認識 しないといけないと感じております。

○司会(玉井) 琉大系列と、琉大系列では ない病院との意見というものが、乖離していた り、または同じような系列同士でセカンド・オ ピニオンを回し合っているようなこともないの ではないでしょうかということですけども、石 川先生。

○石川(医師会) 私は岡山大学の医局にい ましたので、大学の治療方針というのは随分変 わるなという感じがしました。確かに沖縄に戻 ってからもそうですね。それでも最近はいろん な病気で標準的な治療を、お勧めの治療はこれ ですというガイドラインが医者に対して、それ から患者さんに対しても示されていますので、 それほど大きな差はなくなってきたのではない かと思っています。

○司会(玉井) それと、私もよく聞かれる んですけど、セカンド・オピニオンの求め方を 主治医に相談しに来るんです。

だから、例えば自分のよく知っているドクタ ーに、主治医の先生に、どこに行って聞けばいいでしょうか、セカンド・オピニオンの前のオ ピニオンでしょうかね。そういうのを気軽に話 ができるドクターがあると、セカンド・オピニ オンも求めやすいかもしれません。

ほかに何かご意見ないでしょうか。

○喜久村(医師会)

喜久村(医師会)

那覇市医師会の喜久 村といいます。15年ぐ らい前からこういうマ スコミ懇談会をやって いるんですね。久しぶ りに来てすごく活発に 話されていて、いいこ とだと思います。あの頃は本当に懇親会だけだ ったんですけど、真摯に意見の交換をしてい て、久しぶりに緊張していますけど、石川先生 のお話から、すごく言葉の定義があちこち行っ ているという印象ですね。私はセカンド・オピ ニオンというと、本当は今求められているのは 西洋型の、自己決定型のセカンド・オピニオン だと思っているんです。

先生のお話はそういうことではなくて、それ 以前の病診連携とか、医者の紹介状とか、そう いうことの話もこんがらがっていて、話が錯綜 しているんですね。大学系とかそうじゃないと か。やっぱり、そういうところはちょっと整理 されたらいいと思うんですけど、大学のセカン ド・オピニオンのやり方はもうちょっとしっか りしていますね。本人が来ないといけないと か、お金は1万5,000円をもらいますけど、やっ ぱり紹介状ももらうんです。その承諾書がなけ れば、診ない。そういう紛争の種、訴訟とか、 主治医を替えてくれとか、そういうことは診ま せんと、まさに、はっきりホームページに書い てあるんです。

除外規定というのがあって、ちょっとたまた ま、こういうことがあるというのでホームペー ジから持ってきましたけれども、医療の費用と か、給付、そういうことには相談に応じませ ん。それから、主治医への不満、医療過誤訴 訟、そういうことは扱いません。主治医の了解がなければ診ません。あと、資料を持ってこな いと、カルテ、レントゲンとか検査データと か、そういう主治医から許可を得た資料、そう いうことがなければ診ません。予約しないと診 ません。転医を希望する方は診ません。そうい うことまでしっかり書いていて、その実現まで のルートも書いてあるんですね。まず申し込み をして、いついつやりましょうということで、 しっかり書いて、そういうことで実現すること がセカンド・オピニオンだと思うんです。

先生はそういうのは沖縄になじまないという話 でしたけど、それは先生の立場からの、ウチナー ンチュの話であって、やっぱり一般的にはしっか りしたところを目指していると思うのです。中医 協の話がありましたけど、日本全国でそういうこ とが問題になっているんです。自己決定権ができ ないとか、そういうことがちょっと出たんですけ ど、若い人はそうじゃないと思うんです。

最近、事故、いろいろ訴訟とか、そういうの が医療関係者、私たち第一線にいる人たちはす ごく心配しています。医師会関係者でもいろん な勉強会をして、事故を防ぐためにはどうする か、ヒヤリハットとかですね。いろんな努力を してきているのです。そうはいっても、それで もやっぱり相談に行きたいと思う患者さんがい て、そういう人たちはほかの先生の意見を聞き に行く。そういうことで、できたんですよね。 市立病院でもセカンド・オピニオンを受ける人 は限定しているんです。どういう方を診ます か。紛争対象は診ません。

先生が言われているのは、それで随分症例も ありますし、それは安いし、いろんな方が相談 に来ておられていいことだと思うんですけど、 今、話題になっているセカンド・オピニオンと いう言葉を使わないほうが混乱しないんじゃな いかと思う。

先生、最後のほうで国立病院機構のモデルと かで言われた、看護師さんがやっているという のは、それはセカンド・オピニオンの前の段階 でしょ?

そういうことだと思う。そうでないと話がこ んがらがってくると思うんですよね。ですか ら、先ほど幾つか意見が出ましたけど、区別し て話をしていったほうがスムーズにいくと思う んです。

○司会(玉井) セカンド・オピニオンとい うのは、理想的な形というのはもちろんあると 思うんですけども、それを受け入れる医療施設 もさまざま試行錯誤しているところがあると思 うんですね。さまざまな意見があって僕は構わ ないと思います。実際にセカンド・オピニオン という形で動いている施設も、さまざまな対応 をしているということで、僕は解釈していいと 思うんですね。

ただし、インフォームド・コンセントが十分 ではなくて、そして、今の主治医に対して若干 の疑問があったり、今の治療方針に対して若干 の疑義があったときに、やはりセカンド・オピ ニオンという言葉が、今、日本は出てくるんで すよ。これに対して、今の施設以外にどこにも 行けないとか、意見を求めるところがないとい うことでは、セカンド・オピニオンというもの が、今からどうやって発達していくのかという ところで、実際的でないと思うんです。

○喜久村(医師会) そう言われるなら、マ スコミの関係者を対象にしていますから、新聞 記事に書かれたら。誤解されないように。今、 言われたのは一般的に言われているセカンド・ オピニオンじゃないんです。今の話はですね。 オピニオンなんです、セカンドじゃないんです。 サードになるかもしれない。そういう区別を 今、提案しているんです。医者同士のオピニオ ンのやりとり、そういうことは従来から、先ほ どの先生方の意見では10年前からしているとい う話ですし、そういうことはもちろんやってき ているんです。それが医局間同士とか、大学の 関係者同士とか、そういうことで問題視された こともあるけど、意見のやりとり、紹介はすで にやっています。

○司会(玉井) やはり今、セカンド・オピ ニオンというものが日本ではなかなか根差さな い。そういうものがあるということさえ十分浸透していかない。もっともっと門戸を広げない と、そして、セカンド・オピニオンというもの があり得るんだというところから、少し広げて いかないと浸透していかないと思います。

○喜久村(医師会) ですから私は、従来の 紹介のことではなくて、日医とかあちこちでは 言われて、一般的な新聞記事になるセカンド・ オピニオンというものの定義をあいまいにした ら、話が全然進まない、そういう区別をしっか りすることを今、提案しているんです。

○石川(医師会) ご指摘ありがとうござい ました。現状は患者さんと家族、それから医療 提供者側と双方ともにセカンド・オピニオンに 対する概念が、成熟したものがないと思います ね。というのは、紹介状の裏が読めるんですね。 ドクターは在院日数短縮のために送ってくるこ とがかなり読めることがあります。ちょっと手 がかかって、末期でやることがないからという こともあります。ですから、本来のセカンド・ オピニオンという概念が成熟したものになるた めには、患者さん、家族、それから医療提供者 側にとってもまだまだ先の事じゃないかと思い ます。よろず相談的になってしまっています。

○司会(玉井) 儀間さん、何か。

○儀間(沖縄タイムス)

儀間(沖縄タイムス)

沖縄タイムスの儀間 です。

今、先生方の議論を ぜひ聞きたかった話で、 大きな概念としては、 玉井先生がおっしゃっ たように、「1 人の先生 だけの言うことしか聞けないの」、ではないと いうのを、我々は発していかないとまずいけな い。その先に、いわゆる言葉としてのセカン ド・オピニオンと定義に基づいた成熟した形と いうのがあるんでしょうが、今かかっているお 医者さんには言えないようなこととか、聞けな いようなことを、ほかのところに行っても聞い ていいんだなというものを、まずはわかっても らうという部分なのかなと、今、思いました。 言葉の定義のことを喜久村先生がおっしゃって いましたが、書く側としてはそれをわかった上 で、ちゃんと伝えていかないといけないのかな というのもすごく感じました。

今、石川先生がおっしゃったように、お聞き したかったのは、セカンド・オピニオン外来を 始めて、率直に何を思ったかというか、こんな に多いのかとか、何が問題でそこに来ているの かとか、実際、外来を始めてみて、石川先生が 感じられたことというんでしょうか、それはウ チナーンチュのあり方であったり、我々の報道 をどうしていったらいいのかというのもかかっ てくるのかなと思って、それをお聞きできれば と思っています。

○石川(医師会) きちっと何が聞きたいの か、目的意識を持って箇条書きにして来られる 方は、ほんの1割程度ですね。悩みをそのままぶ つけてくる患者さんのほうが、9 割というのが今 の現状だと思います。疲れますね。ですから、一 日2件以上は絶対に受けないようにしています。 もっと気楽に、こういうことが可能だよ、第三 者の意見が聞けるんだということを、そういう雰 囲気づくりができればと思っています。

○宮城(医師会) 先ほどからお話があるよ うに、主治医に不満があるから、よろず相談的に 相談に行くというのは、これは本来の意味でのセ カンド・オピニオンではないと思うんです。

しかし、今、沖縄の中でやられているのは、 主治医にも何も言わずに病院に行ってしまっ て、そこの病院から紹介状をよこしてくれとい うことです。主治医も患者も両方了解した上 で、主治医としては一番いい治療法を提供した いわけです、その患者さんに対して。第三者の 意見を聞きたいということだったら、これは主 治医としても喜んで、本当の一番いい先生を紹 介するんです。その道の一番いい先生の意見を 聞いたら、患者さんは納得すると思います。意 見が違ったときにどうするかというのは、また 相談して決めるということになると思うんです が、なかなかそういう意味での本来のやりとり というのが、今の沖縄には非常に少ないと思います。先ほど言った国療の問題でも9割ぐらい は悩み相談というようなことですよね。

ですから、医者のほうにもやっぱり説明と同 意ということはきちっと説明できてない、ある いは信頼を受けてないという状況があるので、 それで主治医に黙ってよその病院へ行ってしま う。そこの病院から紹介状を求められるという のが、だいぶまだまだあるということでは、現 場の中では、医療者も、そういう意味では反省 が必要だとは思っています。

○司会(玉井) 実際には黙って別の先生の ところに行ってしまうというケースのほうがず っと多いんですよね。そこでゼロからまた検査 が始まるということもあるわけなんですよ。そ れはお金も無駄だし、その人にとっての時間の 無駄ですよね。本来ならば、今までやった検査 とか、これまでの情報というのをしっかり伝え て、そこで医療というのが継続されて、または いろんな人の考え方を合わせて考えられれば、 その方のためには一番いいと思うんですよね。

○久場(医師会) やっぱり気軽に説明し て、それにまた答えると、そういう土壌といい ますか、そういったことが理想というか、一番 だと思うんです。実際、現場では確かに仕事に 追われ、一般的には忙しいわけです。どこの職 場も忙しいかもしれませんが、しかし、そうい う医療の場でゆとり、そういったことがもっと 欲しいと、いつも思っているんですけどね。

○司会(玉井) セカンド・オピニオンとい うのは、実際にはかなり厳しい状況の方がセカ ンド・オピニオンを求めるわけですよね。例え ばちょっとした風邪とか何とかでセカンド・オ ピニオンを求めるわけではないですね。かなり 状況的にはシビアな判断とか、主治医とのいろ んなやりとりというのがあるわけなんです。

何かご意見のある方はいらっしゃいますでし ょうか。

○仲宗根(週刊レキオ社) インフォーム ド・コンセントですけども、私がある病院の内 科で先生と話をしているときに、隣の診察室か ら聞こえるわけです。こちらは確か、年寄りの 夫婦がこのお医者さんと話をしている、やりと りが、大きい声なものですから、聞きたくない けど、聞こえるというような感じで聞こえるわ けです。そうすると、おじいちゃん、おばあち ゃんだったんですけど、「自分はほかの先生に も診てもらいたいです、紹介状を出してくれま せんか」と言うと、その先生が「いや、あなた のものは、私の言うことで間違いないんだと、 そんなに言うんだったら紹介状を書いてもいい けど、結果は同じですよ、なんでそんなことを やるんですか」と、本当に叱るような感じ、本 当にドクターハラスメントですよ、これは。

患者さんがいかにビクビクしているか。こう 言ったときは怒られるんじゃないかとか、今言 ったみたいなものもそうですよ。

ですから、そのへんのものをもう少し先生方が もっと広報していただいて、同じお医者さん同士 で、もっとやってくださいと、こう聞かれたら、 優しく対応してくださいというのはあります。

もう1つは、セカンド・オピニオンの、実際、 石川先生のところに持ってこられて、診断で来 ますよね、こういう診断で来ましたと言ったと きの初期診断の的中率という言葉は悪いです が、何パーセントぐらいですかね。私は何か本 で読んだときは、大体セカンド・オピニオンに 患者さんが持っていっても、大体90%以上の確 率で最初の診断どおりというのを読んだ記憶が あるんですけども。

○司会(玉井) 中村先生。

○中村(医師会)

中村(医師会)

今の話は非常にシン ボリックな話だと思う んですけど、朝青龍の 病名が3回違いました。

最初の診断が当たっ ているか、当たってな いかという意味は、重 症の診断をいっているのか、病名診断をいって いるのかを言わないと、そもそもこの議論、質 問は成立しないわけです。ただ、どうも少し話 が膨らんだり縮んだり、喜久村先生のご指摘どおりだと思うんですが、私は医者を替えるとい うことは一向に構わない。ただ、今までの経歴 を持っていかないと損しますよというのが第一 なんです。それは朝青龍の報道を見ていたら、 わかるわけです。病気が変わっていく、進んで いくわけですから。だから黙って行くのが一番 本人のためにも、社会のためにもならない。そ れはしてほしくないですね。

別に私の患者さんが、私からほかの先生に移 ることは、私に泥を塗るわけでも何でもない。 そもそも最初にどのようにして医者を選んでい るのか。必死に医者を選んでいるのかと思いま すね。自己決定の一番最初がいい加減だから、 セカンド・オピニオンというところもいい加減 になってくるわけです。

正直言って、全部病名も重症度とかも全部情 報提供したほうが医者は楽なんですよ。あなた の腎臓はあと5年しかもたないだろうとか、だ けど、それは言えないわけです。日本の、沖縄 の人たちの思考パターンとしては言えない。患 者さんはどうするかというと、少しきつく状況 を悪く説明すると、いや、そんなはずはない と、もっと甘く言ってくれる先生に替わりたい と、これはありますよね。それはセカンド・オ ピニオンとやっぱり言わないと思うんです。

○喜久村(医師会) 今の仲宗根さんのご意 見ですけど、やっぱりマスコミ関係者の発言だ なという感じがします。それが一般化され報道 されると非常に大きな影響を持つんです。

まさにドクハラというような言い方で、それ は実際にあったかもしれませんけど、例えばも うちょっと考えてみると、患者さんがお年寄り で耳が聞こえなくて、そしてドクターは大きな 声を出さなければならなかったんじゃないかと か、そういうことはあり得るわけでしょう。ド クハラかどうかというのは、県医師会とか那覇 市医師会でも相談窓口がありますから、言って くれれば、それを調査して、悪かったら指導し ますよ。医師会の相談窓口はそういう体制まで できている。だからそういうことを活用してい ただきたい。マスコミのみなさんの一言一言は 非常に大きな影響を持つんですよ。

○司会(玉井) ドクターハラスメントにつ いては、県民との懇談会が7月31日にありまし て、この中で県民との会話がありました。この 中で思ったのは、我々はそんなつもりで言って ないということはあるんですが、しかし、そう は伝わっていない。逆に誤解されていたり、十 分な意図が伝わっていなかったり、それが悪い 意味でとらえられているということは確かにあ るかもしれません。実際に率直なご意見も伺い ました。これももちろん、県医師会報の中に掲 載していきます。(平成19年度第1回医療に関 する県民との懇談 会報10月号掲載)

やはりマスコミの皆さんの発言の力というの は非常に大きいです。ですから、それについて は僕らもぜひいろいろお力をお借りして、お互 いに県民の福利のために協調してやっていきた いというスタンスは持っています。これについ ては全然ぶれておりませんので、ぜひそのへん についてはお互いに理解して、やっていければ なと思っています。

ただ、最初にエントランスですよね。ひとつ だけ言えるのは、信頼できるドクターというの を持っていただければ、そういうのがひとつの 突破口になるんじゃないかな思っています。や はり大事なのは人間と人間とのかかわり合いで すので、この人に相談してじっくりと聞いて、 しっかりと納得した上で判断していきたいとい う人をつかんでいただければなと私は思ってお りますけれども。

○久場(医師会) 実際、入り口で選んでい ますかと言われても、それは無理ですよ。です から、大事なことは、僕らは言われたことを謙 虚に反省して、そのへんもご理解いただいて、 お互い、すぐその場でなじるんじゃなくて、僕 は素直にお聞きして、そういった場で僕らもや っているということをお示ししたいと、そうい うことは大事だと思いますね。おっしゃったよ うに、まずは気軽に話せるドクターを選んだほ うがいいかもしれませんね。

○喜久村(医師会) 今の話は個別にはお互いがわかっても、集団になるとなかなか意志の 疎通がいかなかった、齟齬があった、そういう ことだとも思うので、こちらもやっぱり努力し ないといけない面があります。各社も上の方に なかなか言いにくいことがあるかもしれません けど、医師会のそういう改革が進んでいるとい うことは伝えてほしい。

かなり深刻なことに対処されていますよ、医 者の中には。この前のマスコミ懇談会で自殺の 話題が出て、私も県医師会報で見ましたが、非 常に深刻な話が出たでしょ? そういうことも 抱えているんですよ、医者は。

そういうぎりぎりのところで医師をしてい て、それでもまだ、尊厳死とか臓器移植とか、 そういうことも問題になっていますし、沖縄で もやっていますでしょ。そういうときに、セカ ンド・オピニオンということがあり得るし、今 日は固有名詞としてのセカンド・オピニオン、 そういうところを話されるかなとも思ったんで すけど、でも、今の話もまた、それぞれの紹介 についてそれなりに必要だったかもしれません し、有意義だったと思います。

○照屋(医師会) キーワードは『かかりつ け医』という言葉だと思います。やはり、より 良い『かかりつけ医』を持ってもらうことが重 要です。『かかりつけ医』というキーワードを ぜひ、マスコミの方々にはびしびし書いてほし いと思っています。

○司会(玉井) もう時間になってまいりま したので、宮城信雄会長に、この難しい懇談会 を締めていただきたいと思いますけど、どうぞ お願いします。

○宮城(医師会) ありがとうございます。 照屋先生が言ったように、やはりかかりつけ医 を持っているのが大事だと思います。どんなこ とでも相談できる。かかりつけ医もかつては、 専門の先生なんですね。あるひとつについては 専門の先生。ただ、開業したらいろんなことを やっています。あらゆる疾患について対応して きたというのが開業している先生です。その中 で、些細なことでも相談できる、ましてや重要 なことも相談できる、そのときに信頼関係がで きていたら、本当に自分にとってどういう治療 が必要かということを、もう1人の先生を紹介 してほしいと言ったら、これは喜んで、その道 の専門の先生を紹介します。黙って病院を移る ということになると、どこにどういう先生がい るかわからないんですけれども、かかりつけ医 はどこに、どういう専門の先生がいるというの は知っていますから、その人にとって一番いい 先生を紹介します。紹介をして、意見を聞いて いただく、治療方針を決めてもらうということ になると思うんです。ですから、それをぜひ理 解をしていただきたいと思います。

それから、大学が一緒だから、紹介したか ら、同じ意見になるんじゃないかということが あったんですけど、先ほど言ったように、かか りつけ医がいたら、そのかかりつけ医が自分の 信頼できる一番の専門家に紹介しますので、そ ういう意味では同じ意見ということにはならな いと思います。もう少し気軽に相談できる、こ れは我々も相談できるような雰囲気なり、そう いうシステムなり、医師がそういう感覚を持っ て、日常の診療に取り組むという努力はやって はいきたいと思いますが、先ほど言ったような 例外はどこの世界にもあります。そういうこと がないように、医師会というのは広報活動を通 したり、それから医師会の講演会を通したり、 研修会を通したりして、いい医療がこの沖縄で 定着するようにという努力をしておりますの で、ぜひマスコミの方々もその現場をきちっと 知った上で評価をしていっていただきたいと思 います。

それと、私はいつも言うんですが、マスコミ の役割というのは非常に大きいんですよ。マス コミの書き方によって、この医療が変わってく るということで、そういう意味では、マスコミ の方もぜひ自覚をしていっていただきたいと思 います。今、日本の中で医療崩壊とかいろいろ あるんですが、その医療崩壊の片棒を担いでい るのがマスコミなんですね。

例えば、ある不幸な出来事が起こったときに、これを医療過誤とか、あるいは医療ミスと いう形で大々的に報道していってしまう。しか し、結果的にはそうではなかったということが わかったとしても、なかなか訂正はしない。例 えば奈良の産婦人科の問題でも、その記事を書 いた人が、新聞社から表彰されているんです ね。表彰されたけれども、あれはいろんな問題 を含んでいるということで、じゃ、奈良でどう いうことが起こったかといったら、産婦人科は 全部引き上げていっている。その地域ではお産 はできなくなっているということなんです。

ですから、自分たちが書く記事が、その地域 の医療にどういう影響を与えるかということは 自覚をして、責任を持った記事をぜひ書いてい っていただきたいと思います。このセカンド・ オピニオンについても、我々医療側も反省する ことはきちっと反省した上で努力はしていると いうことですので、ぜひよろしくお願いいたし ます。

○司会(玉井) ありがとうございます。 皆さん、大変お疲れさまでございました。