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第49回地区医師会連絡協議会

池村剛

浦添市医師会広報担当理事 池村 剛

去る8月12日に第49回地区医師会連絡協議会 が、浦添市医師会主催でウェルサンピア沖縄に おいて開催されました。毎年1回開催される地 区医師会連絡協議会では、その時期に話題とな った医療と関連した出来事を議題として取り上 げ、各地区医師会の考えや取り組みなどについ てご意見を伺っております。協議内容は、統一 的な結論を得ることの難しい議題が多いのです が、これを基に各医師会の意見を交換し協議す ることで、医師会全体の大まかなコンセンサス を形成する上で役立っているものと思われます。

今回も、事前に協議事項を設定し各地区医師 会の意見を伺う考えでおりましたが、浦添市医 師会が数年来取り組んできた「メディカルイン フォメーション事業」「3kg 減量市民大運動」 を取り上げ、その内容を提示し参加された先生 方のご感想ご意見をお聞きしたいとの提案があ り、今回は協議会の進行を従来と異なる形式で 行うことに致しました。

協議は浦添市医師会の山内会長の司会で行わ れ、仲間清太郎、久田友一郎両副会長のスライ ドによる発表があり、引き続いて儀間光男浦添 市長より「行政からのコメント」と題して、両 事業への行政側からの取り組みや評価など詳し い内容の発表がありました。儀間市長は医療関 係の仕事として、この二つの事業に関心が高 く、ご自身でも3s減量を達成されています。

意見交換では、各地区から両事業を高く評価 していただきました。特に行政との「良好な関 係」の構築は各医師会や県医師会でも参考にし たいとのご意見があり、嬉しく拝聴させていた だきました。

協議終了後に予定されていた懇親会のゴルフ コンペは、残念なことに大雨のため中止になり ましたが、予定していた先生方の半数は敢闘精 神を発揮しプレーされたようです。雨の中ほん とうにお疲れ様でした。

以下、発表内容の概要、行政からのコメント、 質疑応答、県医師会のコメントを報告します。

発表内容の概要

「メディカル・インフォメーション事業」

1)設立  平成14年4月浦添市と浦添市医師会 による協同事業としてメディカルインフォメー ション・センターが設立され、その事務所は浦 添市庁舎内に開設された。「行政との連携」は、 浦添市医師会の基本理念の一つである。

2)目的  「保健・福祉・医療の連携による包 括的な地域ケア体制の構築を目指すとともに、 市民の医療に関する各種相談に応じ、疾病の 予防をはじめ、個人が良質の医療を自己選択 できるよう、その医療ニーズに対応した必要 な情報提供、相談助言及び関係機関との連携 調整等の便宜を供与し、地域医療の発展と市 民福祉の向上を図ること」を目的とした。

3)現況  MIセンターが開設されて5年が経 過した。年間相談件数は平均850件、その中 で60件程度が苦情内容であった。治療・対 応・説明に対する苦情が多くを占めている。

4)運営  運営費用は、浦添市の予算に計上 され(年間860万円)支出されている。浦添 市役所から1 名(保健師)と、医師会派遣 (市内4つの病院から輪番で相談員を派遣)に よる2名の常勤職員で構成される。運営委員会は、行政・消防・学識経験者・歯科医師 会・浦添市医師会などの委員で構成され、年 一回委員会が開催されている。医師会内にも バックアップ委員会が設置され、MIセンタ ーと定期会合を開き、内容報告や意見交換を 行っている。センターで対応できないケース は、可能なかぎりバックアップ委員会を通じ 専門医の先生に回答をお願いしている。

5)今後の課題  活動内容の充実と拡張を目 指す。センターを維持していく上で、実績を 医学的な側面から評価する具体的指標の確立 が必要である。相談件数は評価の一つであり、 重要な要素でもあることから、日頃の広報活 動を通じて浦添市民にMIセンターの存在と活 動内容を知らせていく努力が大切である。

「3kg減量市民大運動」

1)開始  2004年3月18日、浦添市は浦添市 健康づくり10ヵ年戦略の柱のひとつとして 「3s減量市民大運動宣言」を行った。医師会 も独自のプログラムを作成し「3s減量運動」 に取り組むこととなった。

2)背景  浦添市の肥満率が、男女とも沖縄 県の平均を上回っているとの調査結果が報告 された。日本肥満学会などが「肥満症とメタ ボリックシンドローム予防の重要性」を喚起 した。

3)運動内容

  • 病診連携記念講演会を活用し、市民への 啓蒙活動を行う
  • 生活習慣病手帳の無料配布
  • 浦添市内医療機関において、3s市民大 運動ポスターの掲示
  • 医師会の会員による自治会講演会の開催
  • 国保事業として、てだこウォーク・市町 村健康づくり事業を開催
  • 健康推進課事業として、健康チャレンジ 市民月間の創設

4)医師会3s減量プログラム

  • 日没後の揚げ物料理摂取の禁止
  • 就寝前2時間に夕食を済ませる
  • 「健康長寿のための食生活」を意識した食行動の意識改革
  • 一日一膳方式による「海藻類・野菜・果物摂取」増加
  • 週3時間以上の速歩程度の運動実践
  • 晩酌1時間以内の実践
  • 万歩計の装着

5)課題  3s減量運動は市民に定着しつつあ ると思われるが、その成果を評価する手段が 難しく、今後も結果の集積と分析を積み重ね ていく必要がある。H19年度からは「医師会 3s減量市民大運動の新世紀」と題し、実践 的プログラムの提示などを行い、成果が目に 見える形になるよう活動が展開されている。

行政からのコメント

○浦添市長 儀間光男

浦添市長 儀間光男

メディカル・インフォメ ーション事業については、 市民に周知され定着してき たと認識している。相談件 数は年間約800件と予想以 上の成果だと考えている。 これも、浦添市医師会と浦添市のタイアップが 上手く機能した結果だと高く評価したい。今後 の課題として、浦添市の総合運動施設「まじゅ んランド」の利用者が年間約7万人いることか ら、そこで健診を行い、そのデータをインフォ メーションセンターで管理し利用者の健康増進 に繋ぐことが出来ないかと考えている。また、 同事業については、今後さらに行政と浦添市医 師会とが連携を深め、市民への良質な医療情報 提供と相談体制、関係機関とのネットワーク構 築を図っていきたい。

3s減量市民大運動については、スタート当 時は156人の参加者であったが、医師会が独自 のポスターを作成し、更に病診連携の記念事業 等で3s減量の問題を取り上げるなどして普及 活動を展開したお陰もあって昨年は416人まで 参加者が増えた。30代から50代の参加が7割と 高く、3ヶ月間の減量チャレンジによって食事 面での意識変化や運動週間の定着化が図られて いるようにうかがえる。同運動をきっかけに健 康づくり意識の向上、体重が減少した等といっ た身体面に良い変化が見られた参加者がおお く、市民の健康づくりに関する啓発事業として 大きく寄与していると考えている。

今後の課題としては、3ヶ月と限定して3s 減量に取り組んでいるが、3ヶ月以降も各自が 継続して取り組めるようなシステム作りが必要 ではないかと考える。また、3s減量市民大運動と市民健診を連動させて、健診受診率のアッ プと個人データに基づくきめ細かな保健指導を 提供することによる更なる市民の健康意識の向 上が課題ではないかと考えている。

質疑応答

Q 相談内容は医療機関への苦情が多いとのこ とだが、その内容はある程度体系化できると 考えられる。何らかの対策を行っているか。

A バックアップ委員会を設置し2ヶ月に一回 開催している。苦情内容を検討し、フィード バックできる体制を検討したい。

Q 那覇市で取り組んでいるホットコール(相 談事業)でも半数近くが苦情となっている。 苦情内容を各地区医師会が互いに共有し対応 できるよう検討したい。

A 医師会全体としてどう取り組んでいくか検 討課題である。

Q 3s減量ということだが、それは可能か。

A 3s減量は可能。朝と夜の2回体重を計り、 無作為摂取を控える等、意識の改善だけで肥 満は克服できると考える。また沖縄の定食屋 で出されるチャンプル料理の脂質はとても高 く、沖縄料理のすべてが健康に良い料理であ るという意識を変えさせる必要もある。

Q 行政の担当が変わるとこれまでに築いた関 係が無になることが多い。浦添市ではどのよ うに対応しているのか。女性の肥満が多いと のことだが、その大部分がお子さんをもつ女 性等家庭環境に起因する状況がある。また肥 満がクローズアップされているが痩せの問題 もある。どのように考えているか。

A 担当者が変わるという点については、浦添 市ではトップの指揮系統がしっかりしている ので問題はない。

A 二十歳以前は家庭環境の影響を受け肥満に なり、二十歳以降は社会環境の影響を受け肥 満になると言われている。各環境に応じた対 策が望まれる。食育については大切なことで あり、今後行政と連携し、学校給食の問題な ど、中学、高校の家庭科の時間を活用して食 育の問題に取り組んでいきたいと考えてい る。また、減量の考え方であるが、現在の体 重ですべての疾患のリスクがマイナスであれ ば、現体重でも問題無いという考え方でも良 い。身長から100を引いた数字がBMI23〜25 となり、だいたいそれを目安としていただき たいと指導している。

県医師会のコメント

○沖縄県医師会長 宮城信雄

浦添市医師会が行政と一緒になって取り組ん でいるMI事業についても実態が良く分かった。 今後、県医師会も県とどのような形で取り組ん でいけるか検討したい。また、各地区において も相談窓口を設置しているが、行政と共同し行 政側に相談窓口を設置しているのは浦添市だけ である。今後の各地区の参考としたい。

3s減量市民運動については、3sという数 値を目標としてはっきり示したことが良かった と考える。今後、県民運動へと展開できればと 考える。