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健康ウォーキング大会は継続される

山根邦夫

那覇市医師会理事 山根 邦夫

平成12年、沖縄県の60歳未満男性死亡率が全国比率で4位から26位になったのを、那覇市医師会では長寿県を謳っていた沖縄の緊急事態と受けとめました。以前から兆しはあって心配されていたことではありますが、事実となって現れると心配だけではすみません。医師として、医師会として、このショッキングな事実を受けて解決に向け努力しなければならないと考えたのは当然です。

ちょうどその時期に重なるように日本プライマリーケア学会が開催されることになっていました。学会の市民公開講座を企画準備する段階で、ご意見をいただいていた琉球大学柊山幸志郎名誉教授より、“60歳未満で死亡率が高い理由は血管疾患が多いからで、血管疾患の予防が大切”だから、公開講座は講演でなく医師と多数の市民が参加できる運動実践が良いのではと提案がありました。

その提案を受けて公開講座はウォーキング大会と決定して準備していたのですが、当日はあいにく台風の影響で中止になってしまいました。しかしウォーキング大会は実施して欲しいという意見が強く、那覇市医師会理事会としてもまずはやってみようと考えていましたので、平成12年10月22日(日)奥武山公園で第1回那覇市医師会健康ウォーキング大会を開催しました。約500名の参加を得て無事に終わったのですが、直後から続けてほしいというご意見が多数聞かれたのです。

那覇市医師会理事会でも続けるという方向は決まっていました。しかし準備の都合もあり2回目は平成13年10月14日(日)と1年後にしか開催できませんでした。その後も、市民に医師会と会員を身近に感じてもらうには、また健康長寿の啓発活動としても年1回では少ないのではという批判的ご意見をいただき、ひとまず年2回開催することになり、3回目は平成14年3月21日春分の日に開催しています。

以来、平成15年からは11月23日勤労感謝の日(またはその振替日)と3月の春分の日の年2回、休むことなく継続しています。両日にしたのは、気候がよくまた晴れの日が多い、壮年期・初老期の男性が参加しやすい日をと考えてのことです。また両日以外に変更していないのは、幸い予測通り天気が良かったこともありますが、医師会が年2回ウォーキング大会を開催していることを市民の皆様に記憶していただき年間スケジュールに入れていただきたいと考えたからでもあります。

運動効果は、継続し必要な量をこなしてはじめて現れるものですから、年2回の大会で運動効果を期待することなどできないのは当然です。ウォーキング大会の目的は、1)多数の市民に運動することの大切さを知ってもらう(啓発広報活動)、2)運動実践を働きかける(動機付けのためのイベント)にありました。

具体的には、会員を通じてポスターやリーフレットを市民へ配布する。新聞やラジオを通じて、またTVではOCNの那覇市医師会提供番組『医療ホットライン』に乗せて、那覇市中心に広く市民に呼びかけるなど、広報活動を繰り返し行ってきました。私の知る範囲の市民からは大会のことは多くの方が知っていると評価されています。

最も参加してもらいたい壮年期・初老期男性への働きかけには、企業と那覇市にも協力をお願いしてきました。はじめの頃は沖縄海邦銀行、平成15年からは沖縄銀行に協賛していただいています。毎回、安里昌利頭取はじめ多数の社員が直接参加してくださいます。那覇市役所には健康・介護予防に役立つという考えから、積極的な広報での協力をしてもらっており、また翁長市長はじめ職員の方々が大会に積極的に参加されます。

そのほか共催いただいているのは、那覇市健康づくり推進員協議会、那覇市ウォーキング協会があります。また那覇市教育委員会、沖縄県医師会、南部地区歯科医師会には後援をいただいています。沖縄ヤクルトには第1回からご協力いただいてきました。多くのご協力のおかげで宣伝効果が上がり、本大会を知りまた参加する方が増えました。その結果、運動の必要を理解されとにかく運動しようと考える方が着実に増えてきているのではないかと推測しております。

当初の企画段階で男性の参加が少ないのではないかと心配したのですが、最近は男性の参加が増えてきています。大会継続の効果だといえるでしょう。加えて、メタボリック・シンドロームが言葉としてだけではなく、内容が理解されるようになったからだと考えられます。さらに、昨年からウォーキング大会開催広報の中に「ストップ・ザ・85」を謳っていますが、このように具体的数値目標を掲げることが運動の必要性を考える機会を与えることになり、運動する層を厚くすることにつながっているようにも思います。

大会で好評なのは、血圧測定し医師を配置して健康状態の相談を受けるようにしていることです。医師を身近な存在と認識してもらい、気軽に相談できる契機になればと考えて始めたのですが思ったより好評のようです。また最近は運動だけでなく那覇市健康推進課が「食生活展」として参加者に資料の提供とフードモデルの展示をしています。市民の評判は良く、続けています。

医師会会員にとっても、運動継続を動機付けする場を医師会が設定していることが、日常診療で患者さんを指導する時に話のきっかけとして役に立っているのではないでしょうか。私に関して言えば、患者さんや介護予防で相談がある時には運動を勧めますが、ウォーキング大会やそこで得た知識や情報を利用させてもらっています。さらに個人的には、ウォーキング大会担当理事ですから自らが運動を続けて運動の効果が見えるようにしないと、患者さんへの説得力がない上に予防に関する指導力を疑われるのではないかと考え、ウォーキング大会開催以降毎日1万歩を目標に歩くようになりました。お蔭で現在ウォーキングの習慣が定着しました。効果に関しては、まわりの評価が割れていてもっと頑張らねばならないところです。

ウォーキング大会に今春からまた一つスローガンが増えました。ご存知のように那覇市は平成19年4月に『路上喫煙防止条例』を施行しました。画期的なことですが、市民に周知徹底するにはまだまだ時間を要します。そのお手伝いの一環として健康ウォーキング大会においても「禁煙と条例」を対にしてキャンペーンを続けたいと考えています。

健康と疾病予防およびリハビリテーションのために運動は必要です。ウォーキングは最も取り組みやすい運動のひとつですので運動の象徴のように扱われていますが、大切なことはウォーキングも含めどのような運動でも“体調を良く知って”“体調にあわせ”“適切な運動量で”“継続すること”ではないでしょうか。

これは要するに、運動習慣を定着させるお手伝いは、私たち医師が中心になるように望まれているのだと考えてよいでしょう。中心となるには医師個人に全てを委ねるのではなく、医師会が会員医師をバックアップする体制をもたねばならないと思います。そのため医師会は、運動に関する啓発活動と実践に力をいれるべきです。勿論運動だけではありません。食に関して、禁煙に、節酒に、生活の質に、睡眠に、会員一人一人の専門を越えて啓発家として啓発集団として積極的に関わる必要があるでしょう。

まず始めて(それには運動が最も取り組みやすいと考えたのですが)、情報伝達を積極的に行い、常に反省と評価を繰り返し、継続する。その大切さを、那覇市健康ウォーキング大会を続けることで理解することができたように思います。健康ウォーキング大会が続くことを願っています。



大会を終え安堵の表情で写真に納まっています。

第1回大会より新聞社を表敬しPR活動を行っています。

南部地区歯科医師会の山川会長時代よりご支援をいただいております。












沖縄銀行 安里昌利頭取も先頭になって歩いていただき「長寿日本一復活」を呼びかけております。