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第15回沖縄県医師会県民公開講座
ゆらぐ健康長寿おきなわ
メタボリックシンドローム
〜なぜ肥る?どうやせる?〜

玉井修

理事 玉井 修

去る6月16日(土)13時30分よりロワジー ルホテル那覇において第15回県民公開講座を 開催しました。

県民全体の意識を高めて健康長寿を取り戻そ うと、平成15年から開催されてきた県民公開講 座も今回で15回目を迎えました。その間沖縄県 の健康長寿を脅かしている様々な問題を取り上 げてきました。自殺や、肥満、癌、喫煙対策、 認知症、脳卒中、そして危機的になりつつある 慢性腎不全と透析の問題など、沖縄県の抱える 健康問題は非常に多彩であることを実感し、繰 り返し訴える大切さを認識して、たゆまない努 力を続けてきました。県民公開講座は多くの県 民に支持され、毎回700 人前後の参加者を集 め、県民はこの公開講座を通して沖縄県医師会 に大きな期待と信頼を寄せています。会場に詰 めかける多くの参加者の真剣な眼差しに感銘を 受け、これを支えるために多くの人が汗をか き、スタッフは県民の福利のために結束し、自 分の仕事の範囲を超えた協力をしてくれまし た。担当理事としてこの県民公開講座を主催す る事は、大きな誇りであります。

県民公開講座が開催された平成15年から、県 民の健康増進の為にこの県民公開講座がどのよ うな影響を及ぼしてきたのか、何がどう変わっ たのか、それを明らかなエビデンスで表すことは できませんが、私はこの県民公開講座に参加し た県民が自分自身とその職場や家族に多くの良 い影響を及ぼした事を信じて疑いません。この5 年間、様々なテーマに対して、智恵を絞って様々な工夫を凝らし、県民に効果的に健康長寿 復活を訴える努力をしてきました。毎回が新企 画であったと言っても差し支えないでしょう。そ してこのように積み上げた多くの経験や人脈が やっとここまでの県民公開講座として成長させ たのです。一朝一夕にできるものではないので す。当公開講座の企画に携わっていただいた多 くの方々並びに、ご理解を賜った会員の皆様に は感謝申し上げます。

さて、今回はメタボリックシンドロームをテ ーマに選びました。カタカナ表記で理解しても らえるだろうかとの危惧もありましたが、メタ ボリックシンドロームは既に言葉として市民権 を得ているので問題ないだろうということでそ のまま使用しました。実際今回の会場も約700 人が詰めかけて大盛況となりました。

私、玉井の司会で開催し、まず宮城会長が公 務出張の為代って本会の真栄田篤彦常任理事よ りご挨拶を頂き、沖縄県福祉保健部長の伊波輝 美様よりご挨拶を頂きました。

講演は、座長を田仲医院院長の田仲秀明先生 にお願いし、まずは田仲先生よりメタボリック シンドロームの解説をしていただきました。沖縄 県に於いていかにメタボリックシンドロームが問 題となっているかという現状を説明していただ きました。健診を受けても、そのまま受けっぱな しで、問題をしっかり把握していないのが沖縄 の現状の様です。メタボリックシンドロームの対 策のためには、メタボリックシンドロームが自分 自身の問題として気付けるかどうかが大きなキ ーポイントであると訴えて頂きました。

次にメタボ対策市町村の取り組みと題して、 南城市市役所保健師の井上優子氏に御講演して 頂きました。沖縄県では40代から50代の比較 的若い世代にメタボリックシンドロームが蔓延 し、将来の健康長寿が危機的状況にあること。 平成20年から導入される特定健診・特定保健 指導に対応し、健診受診率のアップは地方自治 体の健康行政上どうしても達成しなくてはなら ないと強く訴えて頂きました。

昨年末より沖縄タイムスで連載された『目指 せBMI=22 メタボ兄弟の挑戦』で、実際にメタ ボ対策を特集記事として連載した平良秀明記者 と平良吉弥記者の講演は経験を基にした非常に 興味のあるものでした。某テレビ番組事件に代 表される偏ったダイエット報道の弊害、あれも ダメ、これもダメではなく、できるだけ楽しくダ イエットを継続する工夫を凝らしていった努力 と非常に柔軟な考え方に会場からは感嘆の声と、 時々交えるユーモアに笑いがわきおこりました。 ダイエットは誰かと一緒に、声掛け合って、励 まし合って継続するという工夫はとても参考に なります。また、今日は誕生日なので少し食べ 過ぎた、等と自分の言い訳などを書き込める楽 しいグラフ化体重表は非常におもしろそうです。

琉球大学医学部附属病院第2内科の島袋充生 先生には、なぜ悪い?メタボリックシンドロー ムと題して、内臓脂肪と心臓病との深い関わり を解説して頂きました。内臓脂肪が及ぼす脂肪 毒性という考え方は非常に興味を引きました。 海外でも高い評価を得ている島袋先生の脂肪毒 性の研究は、内蔵脂肪そのものが血管障害を引 きおこすという興味ある報告で、最先端の医療 情報でありながら一般県民にもその重要性を理 解しやすいように易しく説明されていました。 体重を2kg、腹囲をわずか2cm縮めるだけでも とても意味がある、できることからコツコツと 継続する重要性をお話して頂きました。

講演のあとはフロアーからの質問を受けて講 演者とのディスカッションです。県民公開講座 の見所のひとつです。直接フロアーとのディスカ ッションが行われますが、何が出てくるかわから ない分、パネラーの先生方の人柄が伝わるコー ナーです。健康食品は本当に有効なのか?ダイ エットを継続するコツは?医者から勧められた 薬は一生飲まないといけないのか?など本音を ぶつけてくる質問を座長の田仲先生がうまくパ ネラーに振り、これに関して少々戸惑いながら も講演者が一生懸命答えます。その様子はまさ に県民との直接対話を見る思いが致します。健 康長寿を訴える沖縄県医師会と、それをしっか り自分自身を含めて県民の問題として受け止め るフロアーとの一体感を感じます。これが5年間 積み上げてきた県民公開講座の姿なのです。

講演の抄録

肥満天国沖縄の現状

田仲秀明

田仲医院院長 田仲 秀明




昭和62年 琉球大学医学部医学科卒業

平成6 年 琉球大学附属病院第2内科助手

平成7 年 英国ウェールズ大学医学部研究員

平成10年 沖縄県立南部病院内科医長

平成14年 豊見城中央病院糖尿病・生活習慣病センター所長

平成17年 田仲医院院長
         現在に至る

学会活動 日本糖尿病学会専門医・指導医
         日本動脈硬化学会会員
         英国糖尿病学会会員

【メタボリックシンドロームとは?】

腹部肥満があり、これに加えて高血圧、高脂 血症、高血糖のうち2つ以上が認められる状態 をいいます。その基準は、

●腹部肥満:腹囲男性85pおよび女性90p以上、

●高血圧:130/85mmHg以上、

●高脂血症:中性脂肪150mg/dl以上 または HDLコレステロール40mg/dl未満、

●高血糖:空腹時110mg/dl以上です。

それぞれの異常は軽度ですが、集まると重大な結果につながるため、健康上の重要課題とし て最近注目を集めています。私は10年ほど前よ りだんご四兄弟(図1)として注意を喚起して 来ました。

図1

【沖縄のメタボリックシンドローム】

高脂肪食と車社会に代表される欧米型生活習 慣を続けた結果、沖縄県は日本一の肥満県とな ってしまいました。これを背景に沖縄のメタボ リックシンドロームは、成人男性の3人に1人、 女性の10人に1人と他府県に比べて著しく頻度 が高いことが分かりました。

【現状は沖縄クライシス(=危機)】

メタボリックシンドロームは加齢に伴って増 えることが知られており、沖縄女性においては その通りでした。しかし、男性では若い世代を 含む幅広い年齢にメタボリックシンドロームが 蔓延していました(図2)。沖縄県では心臓病、 脳卒中、糖尿病等、動脈硬化に関連する病気で 亡くなる方の割合が、若い世代になるほど全国 の上位となっています。沖縄はこれまで長寿地 域として有名でしたが、このままでは今後若い 世代が健康に長生きすることが難しくなると考 えられます。

図2

【気付くか気付かないか、それが問題】

ここに面白いデータがあります。人間ドック でメタボリックシンドロームではないと判断さ れ指導を受けなかったグループから、1年後に 男性13%、女性4%にメタボリックシンドロー ムが発生しました。一方メタボリックシンドロ ームと診断され、指導や治療を受けたグループ では、1年後に男女とも半数近くが改善し、メ タボリックシンドロームから脱しました。しか もその際、非薬物療法と薬物療法の改善率には 大きな差がありませんでした(図3)。

つまりメタボリックシンドロームに気付くか 気付かないか、それが問題なのです。

長寿県沖縄を取り戻すには、メタボリックシ ンドローム撲滅を保健・医療上の運動としてだ けではなく、禁煙運動のように社会運動として 拡げていくことが重要なのです。

図3

メタボ対策−市町村の取り組み−

井上優子

南城市役所保健師 井上 優子




平成元年 県立那覇看護学校卒業

平成5 年 旧玉城村役場保健師

平成18年 南城市役所保健師

沖縄県の健康実態をメタボリックの視点で見 てみると

1.健診

人間ドック6項目異常頻度の県別比較

肥満全国第2位、3人に1人が肥満。

肝機能異常が年々上昇2005年第3位、2人に 1人異常値

糖、高血圧、高中性脂肪はメタボリックシン ドロームの必須項目

政府管掌健康保険実態
メタボリックシンドロームリスク保有者

メタボリック保有者

男性全国 1位 女性全国 2位

リスク項目組み合わせ

(男性) ・血圧+血糖・・・・47位
     ・脂質+血圧・・・・14位
     ・脂質+血糖・・・・2位

(女性) ・血圧+血糖・・・・47位
     ・脂質+血圧・・・・6位
     ・脂質+血糖・・・・1位

2.医療

沖縄県でお金のかかっている疾患は何なの か?

予防は可能なのか?

(ひと月200万円以上の医療費を使った153 件の病名を見ると) 男女差で見ると

男女差で見ると

お金のかかる病気は男性に多く65歳未満が7 割を占める。

基礎疾患と大血管との関係

心臓の血管は、糖尿病と高血圧が重なったと き、脳の血管は、糖尿病と高血圧が重なったと き及び血圧単独でも障害を受けやすい。

疾患別に見ると

心臓の病気が一番お金がかかる。

(国保連合会医療費分析資料より)

3.死亡

生活習慣病に関する都道府県別年齢調整死亡率
(平成12年度)

1)男女とも糖尿病が原因で死亡するのが、全国 第2位

2)男性は、心筋梗塞、脳内出血で亡くなる率が 高い

3)40〜50歳代は、心筋梗塞、脳内出血での死 亡が高い→平均寿命が男性26位になった背 景か・・・

若い人の死亡で順位が全国平均を上回った疾患

健診、医療、死亡の実態を見ると共通性があ る。内臓肥満があり、高血圧、高血糖、脂質異 常が重なると、心臓や脳の血管がダメージを受 けやすく、医療費も高額になり、死亡率も高 い。そこで、健診項目の肥満を解消すれば糖や 血圧や脂質が改善し、心臓や脳の血管にダメー ジを与えなくてすむことが読み取れる。

平成17年4月に日本内科学会等8学会が合同 でメタボリックシンドロームの疾患概念診断基 準を示した。

これは、内臓脂肪型肥満を共通の要因とし て、高血糖、脂質異常、高血圧を呈する病態で あり、それぞれが重複した場合は、虚血性心疾 患、脳血管発症のリスクが高く内臓脂肪を減少 させることで、それらの発症リスクの低減が図 られるという考えを基本にしている。

さて、高血糖、高脂質、高血圧は自覚症状が あるでしょうか?どうしたら自分の血糖や脂質 や血圧の値がわかるのでしょうか?

国は平成20年度から、保険者に特定健診・特 定保健指導を義務づけメタボリックシンドローム の概念を導入した健診を実施する。受診率、保健 指導率、メタボの減少率の目標値に達成しなけれ ば、ペナルティがかることが決まっている。

メタボ兄弟の挑戦
─沖縄の肥満とメディアの役割─

平良秀明

沖縄タイムス記者 平良 秀明




平成3 年 琉球大学法文学部卒

同年 沖縄タイムス社入社

平良吉弥

沖縄タイムス記者 平良 吉弥




平成11年 琉球大学法文学部卒

平成13年 沖縄タイムス社入社

1)26ショックと「あるある大事件」

26ショックから早5年。アンチエイジングや「メタボ」という言葉が浸透し、健康機器や健 康食品もブームになったが、追い風にならず。 「楽してやせたい」という心理をついた単品ダ イエットが問題に。

2)新聞に載った。でも、その後は?

新聞は長寿県転落や肥満率全国1の記事を何 度も書いて県民に訴えたが、効果はあったの か?読んでもらうことはできても、県民が行動 に移し、生活習慣を変えるまでいくことは難し い。肥満問題を書いている記者からして100キ ロを超えていた。

3)メタボ兄弟スタート

2006年末、減量を決意し、連載開始。同僚 や家族にもひた隠しにしていた体重を正月の新 聞紙上でカミングアウト。検診結果、内臓脂肪 の写真まで載せると怖いものなしになった。二 人でやると恥ずかしさ半分、やる気は二倍。

4)久田式ゆるゆる減量法

久田友一郎浦添総合病院健診センター長の指 導を受け、1.日没後の揚げ物禁止、2.エレベ ーターは使わず、階段を2段飛びで上がる、3. 週3時間以上運動する─の指示を守り、「グラフ 化体重表」を毎日つけてきた。数字だけが自分 の体の現実を正確に教えてくれる。

5)肥満は悪か?

健康を取り戻し、ファッションにも幅が出て きた。何より、「やせたねー」と減量が明るい 話題の糸口となり、人と会うことが苦痛でなく なった。超高齢社会で近い将来、生活習慣の乱 れで病気・障害・介護状態になっても、「自己 責任」とばかりに十分なケアが受けられなくな るかもしれない。太っていても健康な人はいる が、体重を落とすことによるメリットは大き い。健康は自分で守るしかない。

なぜ悪い?メタボリックシンドローム
─内臓肥満と心臓病の深い関わり─

島袋充生

琉球大学医学部附属病院第二内科
島袋 充生


1987年 琉球大学医学部医学科卒業、琉球大学医学部第二内科入局

1995〜98年 テキサス大学サウスウェスタンメディカルセンター、博士研究員

1999年〜現在 琉球大学医学部附属病院 講師、

2002年 自治医科大学大学院(非常勤講師)

2005年〜現在 山口大学大学院医学系研究科(非常勤講師)

はじめに

社会資本、医療制度が充実した現代社会にい きる私たちは、歴史上かつてないほどに健康と 長寿を謳歌しています。日本人は平均で男性78 才、女性85才と長い人生を過ごしますが、年を重ねるとともに心臓病や脳卒中をおこす可能性 は高まり、結果的に3分の1は心臓病か脳卒中 でなくなる事になります(残り3分の1はガン)。 心臓病や脳卒中は中高年者の誰もがかかる可能 性のある病気ですが、原因を明らかにし、うま くそれを取り除ければ十分に予防することが可 能です。

内臓肥満は、心臓病、脳卒中のおこる最大の原因

心臓病、脳卒中は、高血圧、糖尿病、脂質異 常症といった原因(リスクファクターといいま す)で体内の血管が長年にわたり傷む結果おこ ります。世界中で心筋梗塞をおこしたヒトを調べると、リスクファクターの割合はおどろくほ ど似ています(図1)。コレステロールが高い、 喫煙、糖尿病、高血圧、内臓肥満、心身社会因 子(生活状況)、野菜・果物を摂らない、運動 しない、過度の飲酒、という9つの原因がおよ そ95%を占めるのです。20〜30年前はコレス テロールと血圧が最大の原因でしたが、これら を治療するよいお薬が使えるようになり、最近 では治療の難しい糖尿病(およびその予備軍) と内臓肥満が原因となることが増えています (図2)。特に内臓肥満は糖尿病や高血圧症、脂 質異常症(コレステロール、中性脂肪の異常) の発症と悪化の主な原因になることから心臓 病、脳卒中の最も重要な原因と考えられます。

図1

図1

図2

図2

メタボリックシンドロームは悪性の内臓肥満を 表す

腹囲の増加(男性85p以上、女性90p以上) で示される内臓肥満に加えて、高血圧症、脂質 異常症、高血糖を合併するとき、メタボリック シンドローム(代謝症候群)と診断されます。 沖縄でもメタボリックシンドロームがあるヒト は、ないヒトに比べおよそ2.5〜2.8倍心臓病あ るいは脳卒中がおこりやすいことが明らかにな っています(未発表)。沖縄県男性の青壮年層 の内臓肥満者およびメタボリックシンドローム の頻度は全国一多いことがわかっており、過去 30年以上の脂肪由来の摂取エネルギー比増加が 主な原因のひとつと考えられます。高脂肪食摂 取、運動不足というライフスタイルの欧米化 は、血管を傷めやすい生活を輸入したともい え、このことが、欧米並に心臓病をおこりやす くしたと推定されます。

リスクファクターを減らし、心臓病、脳卒中を 予防するコツ

高脂肪食、高カロリー食、高塩分食を中心と した食習慣の乱れと運動不足の結果、内臓肥満 症となることで、多くの生活習慣病が起こって きます。中でも心臓病、脳卒中の頻度が多くな ります。心臓病、脳卒中を防ぐ確実な方法は (図3)、1.生活習慣を変える(食事療法、運動 療法で内臓脂肪を減らす、塩分を減らす、野菜 摂取)、2.血糖降下療法による血糖コントロー ル、3.卒煙、4.降圧薬、脂血異常症改善薬に よるリスクファクターの是正、5.抗血小板薬 による血栓予防です。それぞれの方法単独で、 心臓病、脳卒中をおよそ20〜30%ずつ減らす ことができます。さらにこれらすべて組み合わ せるとおよそ60〜80%の心臓病、脳卒中を防 ぐことができると考えられます。

図3

図3

おわりに

日本を含めた先進諸国では内臓肥満が増えて おり肥満に基づく病気が爆発的に増加していま す。“内臓脂肪”という原因をうまく取り除き、 リスクファクターを減らすことで、心臓病、脳 卒中になることを予防することができます。是 非、今日からここ沖縄ではじめましょう。

座談会〜県民公開講座を終えて〜

○玉井理事 公開講座を終えて、講師の先生 方とタイムス社の諸見里編集局長、銘苅前社会 部長、平良新社会部長を交えて、少し意見交換 をさせていただきたいと思います。まず座長の 田仲先生、今回いかがでした。

○田仲座長 質問がこんなに沢山でるんだな と思いました。

○玉井理事 だいぶ関心が高いといつも思っ ています。

サプリメントの質問が出てくると思ったので すが意外に少なかったですね。あと、隣のおば さんに「あなた一生この薬を飲むの?」と言わ れて薬を中断する方がいるんですが、ドクター がどんなに時間をかけて説明しても、近所のお ばさんに負けてしまう現実をもう少し、分かっ てほしいところがありますよね。

○田仲座長 薬に一生依存すると思ったら飲 まないですね。止めることはできるかもしれま せんよと言うと、飲んでくれるんですね。そう アピールしていくことも必要かもしれません。

○島袋先生 僕は、これは長生きする薬です と言ってます。

○平良秀明氏 脅かすとダメなんですか。

○田仲座長 ダメですね。僕は糖尿病を専門 で診てますので、重症になってどうしようも無 い人達が来るんです。数字を見ると驚くほどの 値なんですが、あえて冷静を装って「高くなっ てますね」と穏やかに話をしています。そう優 しく接すると患者さんもほっとするんです。

○諸見里編集局長

諸見里編集局長

僕らの感覚ですと、 お医者さんからこれを 飲みなさいと言われた ら、NO とは言わない で何でも飲んで、逆に 飲み過ぎなところもあ る感じがするんですが。

○田仲座長 僕には言わないんですが、看護 師さんにこれだけ薬が余りましたという方もい ます。

○玉井理事 結局来なくなったりすることも ありますね。

もうそろそろ薬がなくなっているはずなの に、結局飲んでなくて余っているという人がい るんですよね。

○田仲座長 薬は高いんですよね。量を減ら してあげることは考えないといけないですね。 糖尿病だと薬だけで5,000円以上かかっている と思います。

○玉井理事 格差社会といいますよね。実際 に血圧の薬を欲しくても給料日まで待って来る 人がいますね。これが現実なんですね。

年金生活者もそうですね。

ですから、そのような人に「薬を飲まないと 死んじゃうよ」と言うと、患者さんは本当に悲 しい思いをしてるんですよね。飲まなきゃいけ ないことは分かってるんですが、お金が無いの で薬をもらいに行けないんですね。

ですから発言も気をつけてますね。

○田仲座長 200万円以下の収入の方が22% ということでしたね。若いうちは平良記者のよ うに努力すればお金を使わずにできるんですよ ね。そこが基本ですよね。

その辺のところをもっとアピールできればい いと思います。

○玉井理事 結局、合併症を作ったり、脳梗 塞を引き起こしてしまうと更にお金が掛かるこ とになりますよね。

○田仲座長 社会資源の損失ですよね。

○島袋先生 ある試算で、境界型の人で月々 大体5,000円掛かるんですが、糖尿病になると 月1万円、心臓病で入院すると60万円、透析が 始まると医療費の桁が全然違ってきます。です けど実際には保険で支払われるので患者さん自 体は実感が無いですよね。ものすごい安い負担 で治療してる訳です。

○田仲座長 それはちゃんと分かるように知 らせるべきですよね。

○諸見里編集局長 市町村単位あるいは県単 位でそのような括りはつくれるんですか。

○田仲座長 今後はそれをやっていかない と、沖縄県からの出費が増えるんですよ。貧乏 な県ほど苦労することになります。

○島袋先生 多額の医療費を県に負担しても らっているということを自覚してもらうこと と、それほど額が大きいのであれば、もう少し 自分でも努力しようとする方向に導かないとい けないですね。

○田仲座長 今後は、報道記事も経済的な事 も含めて報道してもらいたいですね。

本当に経済的にたち行かなくなりますよね。

○平良秀明氏 3割負担になって、残りの7割 は病院が貰っていると思っている人がいますよね。

「田仲先生儲かってるはずね」って言ってい る人がいるんですよね。(笑)

○井上先生 皆保険制度が崩れたら本当に大 変な事になりますよね。

○玉井理事 こういった医療経済の事はなか なか分からないところがあって、診療報酬等が 切り下げされているにも関わらず、例えば本人 負担が2割から3割に引き上げられると病院が儲 かっていると思われるんですね。実際は、病院 がどんどん潰れていっている状態なんですね。

医療崩壊と言う言葉がありますが、それは誰 の得にもなりません。そういう意味でも崩壊さ せないために社会の声を届けないといけないと 思いますね。

先ほど、伊波輝美県福祉保健部長とお話した んですが、難しい事でもやさしく話をしてくれ るチャンネルが無いといけない。難しい話を出 来るだけやさしく、わかりやすく伝える努力を しないといけません。メディアの分野でもそれ をやってもらえると興味も出てくるだろうし、 健診の受診率アップにもつながると思います。

それと、この会場に来て頂いた方達が地元で 今日の内容を広めていただくことも大事ですね。

○田仲座長 今回メディアの方が実際に関わ ったことは大変影響力があると思います。

すべてにアンテナを張っている2人がやった ということは、これはやらないといけないなと 思いますよね。

○玉井理事 最初は危機意識がなかったんだ よという所から始まったのも良かったですね。

○田仲座長 平良記者2人も、あれだけ記事 を書いてて自分で気づかなかったんですから ね。(笑)

○平良吉弥記者 耳学はある程度入ってい て、他人に説明できるんですが、自分はやって ないんですよね。

○玉井理事 誰かダイエット仲間を作りなさ いという話が出てましたが、あれは良かったで すよね。

一人で頑張ろうとしても中々難しいですよ ね。これも誰かが声をかけていくとユイマール 的で良いですよね。健診にも繋がることです。

本当に大事なのは今日来てくれた人たちの回 りの人にどうやって繋げるかということと思い ますので、そういう記事も是非載せて下さい。

○平良記者 僕らもこれだけ他のメディアが あると、新聞の影響力は果たしてどれだけある のかと思っていて、ポピュレーションアプロー チと言っていますが、僕らがどれだけ役に立て るのかということをテーマにして動いていると ころです。書いた記事を読んで読者が実際に行 動を起こせるかという点を考えながら、見せ 方、読ませ方を工夫しているつもりです。

○諸見里編集局長 新聞がもっている信用力 をどう活用していくかですね。当初「メタボ兄 弟」が始まったときに正直いって驚きました。 ある意味堅いイメージのある新聞に新たな試み として両平良記者が豊かな発想で記事を載せて いることで、新聞の枠が広がってきていると思 います。

そういう意味からも情報提供を行って読者が 応えてくれるよう、新聞社としても試されてい ると思います。

○島袋先生 おっしゃる通りです。目的がは っきりしてるので、わりと紙面的にバリエーシ ョンがあってもわかりやすくとても良い企画だ と思います。

○玉井理事 正しい情報を伝えることは大事 ですが、これを誰が、どう伝えるかということも大事なことです。伝わり方が違うことによっ て浸透力が違いますので、そうすると行動様式 が変わってきます。特集記事などで特定健診の 掘り起こしに繋がっていくことがもし起これば 良いことだと思います。

最近は年金問題等で社会不安が増しています が、医師会は国民の味方であるということを訴 えて行かなければいけません。

○銘苅前社会部長

銘苅前社会部長

今回初めて新聞社側 から演者が出たのです が、先生方の有意義な 情報と記者二人の発表 が出たことで、ダイエ ットがより身近になっ たのではないかと思い ます。あまりにもダイエットに関する情報が多 すぎるのですが、やはり、食事療法と生活習慣 の二つが基本であるということは今日の参加者 に伝わったのではないかと思います。それがま た広がってくれればと期待します。

○平良社会部長

平良社会部長

新聞記者の仕事は健 康とはほど遠い世界 で、夜は12時過ぎまで 仕事したり朝は早くか ら出されたり食事も不 規則ですが、その中で 今回、記者の2人がメタボ兄弟として発表しま した。会場の雰囲気も良く、先生方のお話も非 常にわかりやすく、僕も健康に気を遣っていな いタイプで、ウチアタイしていたところです。

今後も経済的、社会的な部分から記事を掲載 していきたいと考えています。

○諸見里編集局長 今年の年末には平均寿命 順位が発表されますが、新たなショックを受け ることになると思います。それに向けての新た な取材体制を整えていきたいと考えています。

話は少し変わりますが、受診制度の中で加 算・減算の制度ができるとの話がありました が、健康の領域まで出来高払いを導入して、し かも目標に達しない場合は罰を与えるというこ とに疑問を感じますね。

ですが、健診率を上げることはお互いの健康 のためになることですから、メディア側としても 出来るだけ協力していきたいと考えています。

○玉井理事 いろいろな制度が激動している 時代ですので、社会的な不安が渦巻いています。 現場にいるとつくづく感じます。お年寄り、特 に年金生活者は戦々恐々としているのが現状じ ゃないかと思います。是非そのような人たちのた めに、お力をお貸し頂きたいと思います

本日はありがとうございました。

当日お越しいただいた方々の中から、数名の方にインタビューさせていただきましたので、その中 から下記のとおり3名の方のご意見・ご感想を掲載致します。

また、医師会への要望が多数ありましたので、主なものを併せて掲載致します。

本会の広報活動にご協力いただきまして、誠にありがとうございました。

インタビュー1):

本日の講演会に参加されての感想をお聞かせ下さい。また、今後の日常生活でどのようなこ とに気をつけようと思いますか。

インタビュー2):

医師会への要望をお聞かせ下さい。

(41歳・男性・会社員)

1)沖縄県のメタボリックシンドロームの現状、問題点は十分伝わりましたが、それを受けて実効 性のある具体的な取組みの提案が必要だと思いました。一般の方が出来る手軽な方法(食事の 改善、どのような運動がいいか等)が良いと思います。

2)メタボリックシンドロームに対する危機感は県民に広がりつつあると思いますが、今後、県、関 係団体の連携を図って県民運動を行うべきではないかと思います。

(68歳・女性・無職)

1)3回位ダイエットをした経験がありますが継続できずに中途半端で終わってしまい、リバウンド しがちです。今日の平良兄弟の挑戦の話を聞いて、相棒がいると心強い、グラフ(朝、夕の体 重測定)の活用、夜の揚げ物を控える、そして今ダイエットをしているという意識を持つこと が大切だと思いました。

今日の講演の内容を持ち帰り、実行に移したいと思います。グラフ作成から始めます。あり がとうございました。

2)地域への出前講座をお願いします。地域だと、友人、隣近所の人達を誘って気軽に行って話が 聞けます。

(43歳・男性・会社員)

1)直ぐに実行しようと思いました。また、具体的(体重管理)な取り組みが出来る企画も良かっ たと思います。データ等で現状を把握する事は重要ですが、県民の肥満度は分かっている事な ので、具体的に始められる方法をより多く情報提供したら、自分に合わせた方法で始められる と思います。私は、先ずは体重表をつける事から始めます。

2)県民・市民が参加出来る運動の企画を考えてみてはいかがでしょうか。この様な講演会の企画 とリンクすると効果が上がると思います。

また、講演会の受講表を作ってみてはいかがでしょうか。参加するとスタンプを押してもら えれば、何回も参加する人が増え、集客が容易です。

(その他医師会への要望)

○保健師・栄養士等に対する勉強会(講演会)の機会を作って欲しいです。

○今後、沖縄県民は男女ともワースト10内に入るのではと・・・、大きな問題として県民を揚げ て取り組みを強化して欲しいと思います。

○地域ごとにこの様な講演を広めて欲しいと思います。

○専門的な話も大事ですが、本日の講演の様に体験者の話は、身近に感じられて良かったです。

今後、タバコや酒の問題に関する体験者の話を交えた講座も聞きたいです。