会長 宮城 信雄
みだし都道府県医師会長協議会が平成19年6 月19日(火)午後3時から日本医師会館で開催 された。
はじめに、司会を務めた羽生田常任理事より 開会の辞があり、会長挨拶、協議が行われた。
唐澤会長からは、「年金問題をはじめ、医療 の状況も医師不足の偏在、へき地医療、離島医 療、小児救急医療、産科医療と課題を列挙する と枚挙に暇が無い。課題山積の状況の中で一つ 一つ丁寧に取り組んでいきたい」との挨拶があ った。引き続いて、協議に入る前に去る6月4 日ご逝去された大輪次郎前愛知県医師会長の葬 儀について、瀬尾愛知県医師会長から関係各位 より供花、弔電等を賜り無事葬儀が執り行われ たことに対し御礼の言葉が述べられた。
その後、提案された16題について協議が行わ れたので概要について報告する。
協 議
提案要旨(抜粋)
鳥取市で発生した集団食中毒事件後、給食調 理員や食品加工業などの従事者が「ノロウイル ス検査をしてほしい」として医療機関を受診す るケースが増えている。ノロウイルス検査は保 険適用外で混合診療になるのではないかと懸念 も生じる。感染の拡大防止のため、迅速なる診 断、治療、保健指導が求められるところであ り、保険適用すべきと考えますが日医の見解を お聞きしたい。
又、アーレスウイルスについて、感染してひ どくなると生命に危険を及ぼす病気であるが、 入院しない人には保険適用ができないという理 不尽なことになっているので、ガイドラインで 検査して重症化を防ぐことができるようにして もらいたい。
【鈴木常任理事説明】
昨年11月30日に疑義解釈委員会にノロウイ ルス検査の保険適用について申請があり、協議 が行われた。審議の結果、公開の検査キットは 擬似衛生の問題等、その精度が十分とは言えな いという事で見合わせることになった。この検 査キットは他に機器が必要になり、測定が難し く、且つ結果が出るまでに数日を要することに なり、その間にノロウイルスの症状が消えてし まうところがあり、現時点での保険適用は認め られないとの結論になった。しかしながら、ノ ロウイルスの拡大防止の観点からは必要なこと であり、迅速、簡便な検査キットが開発されれ ば保険適用は前向きに考えていきたい。
アーレスウイルスは従来3歳未満となってい たが、平成18年4月から入院患者にも年齢制限 しないで拡大されている。外来患者への保険適 用については、各医会、学会等からの要望を踏 まえ地域診療報酬改定の議論の中で進めていき たい。
提案要旨(抜粋)
法務省は離婚後に妊娠したケースに限り、医 師の「懐胎時期に関する証明書」があれば現夫 の子或いは非嫡出子として出生届けを受理する 通達を5月7日に出したが、証明書について質 問したい。
懐胎時期の算出根拠は3つあり、いずれかを 選択することになっている。
その他(3)で示された事項で、西島議員の 質問に対し、松谷医政局長は「懐胎時期につい て診断できた場合には診断書を交付することに なるし、診断できない場合は正当の事由に当 り、必ずしも診断書交付の義務は課せられな い」と答弁しているので、一まず安堵している。
もしこの懐胎時期に複数の男性と性交渉があ り、その内の一人の嫡出子として出生届けが提 出され、その後DNA検査等で嫡出子を否定さ れた場合、証明書に記載された懐胎時期が違っ ていたとして「虚偽診断書作成罪」や「公正証 書原本等不実記載罪」等に問われたり、裁判所 に召喚されたりすることはないであろうか。
【今村定臣常任理事回答】
1)犯罪に問われる可能性について
刑法第160条の「虚偽診断書作成罪」及び同 法第157 条の「公正証書原本等不実記載罪」、 これは共に故意犯の規程であり、犯罪の成立に はいわゆる故意というものが必要になってく る。犯罪が成立するためには虚偽の診断書作成 であること、又、公正証書への不実の記載をし たことを本人が認識、任用していなければなら ない。
よって、医学的な根拠を持って懐胎時期を推 定する限りにおいては、虚偽ないし、不実の記 載の認識がないのが通常であり、同罪にとわれ ることはない。又、医師が証明するのは母の懐 胎時期であり、特定の父と出生日との親子関係 を証明するものではないので、後にDNA鑑定 等で生物学的に父子関係が確定されたとしても 虚偽の記載あるいは不実の記載をしたことには ならない。
2)裁判所へ召喚されるケースについて
嫡出否認の訴え或いは親子関係不存在の訴え において、召喚される可能性はゼロとはいえな いが、生物学的親子関係の有無はDNA鑑定等 で明確になるので、懐胎時期に関する証明書を 作成した医師が改めて召喚されるケースは殆ど ないと考えている。又、後に嫡出子が否定さ れ、生物学的な父子関係が否定された場合で も、診断書を作成した医師が証明したのは懐胎 時期であり、親子関係ではなく、民法の第772 条の効果であり、これにより損害賠償を請求さ れることはないと考えられる。
明らかに懐胎時期を間違った診断をした場合 は、損害賠償の責任を負うこともあるが、これ は他の診断、治療と同様であり、本件に特有な 問題ではないと思っている。日頃から不必要な トラブルを避けるために証拠を保全しておくこ とを習慣付けることが肝要であると考えている。
提案要旨(抜粋)
公的医療費増加の主財源には保険料の引き上 げや事業主負担金の増額、税金(消費税・たば こ税)等があげられるが、引き上げの是非には 理論構築が必要となり、日医の考え方を明確に しておく必要がある。又、国の特別会計から医 療財源の一部を捻出する方策についても検討の 余地はある。
2025年度の厚労省推計48兆円に対し、日医 のグランドデザインの中では46兆円と厚労省の 推計を下回っているが、現行改正法下での推計 値だけでなく、医療の質と安全が十分に担保さ れ、医療関係者の士気が揚がって医療現場での 諸問題が解消される状況を踏まえた推計値も示 し、そのための医療財源をいかに確保するかに ついても国へ提言していただきたい。
【中川常任理事回答】
国の医療費抑制の結果として医療、特に地域 医療が崩壊の危機に瀕していることはご指摘の とおりである。この危機の緊急的な脱却を目指 して、特に骨太の方針2007に向けてロビー活 動、マスコミとの懇談会、毎週の記者会見を含 め精力的に取り組んできた。日医の主張のポイ ントは6月7日付送付した「あるべき医療の確 保に向けた緊急提言」に示したとおりである。 この提言をもって日本の医療の疲弊した実態、 医療現場を守るためには、まず診療報酬の引き 上げが必要であることを説明し理解を求めてき た。又、この提言の中で医療費の推計も行い、 厚生労働省は制度改革後の2015年の医療費推 計を44兆円としているが、日医による試算のあ るべき医療費は45兆円となっている。この財源 の一つに国の特別会計が2005年度決算で53兆 円剰余金が出ているが、この特別会計の内容が 非常に分かりにくい仕組みになっており、その 透明性を高めていくことにしている。
消費税に関してはご提案のとおりであるが、 日医は、国民負担は最大限に少なくするという 方針であり、医療費財源のことで自ら消費税の 引き上げを求めるということは得策でないと考 えている。保険料の事業主負担金の増額等を全 て検討し、最終的に消費税というのが日医の考 えである。仮に国が消費税を引き上げた時の準 備は併行して進めている。
長野県医師会から追加提案があった。
長野県医師会から、1)医療費の総枠の拡大と 2)医療費の患者窓口負担を増加させないために 「国民が安心できる医療費を確保するための請 願書」を長野県議会に提出することにしてお り、日医が指導制をもって各県でも取り組んで もらうようお願いしたいとの要請があり、羽生 田常任理事より各県への協力を求めるコメント があった。
提案要旨(抜粋)
後期高齢者医療制度については、高齢者への 感謝という観点から、消費税の増税にあたって は、その財源の後期高齢者医療制度への重点的 な投入が国民の理解を得やすいと考えるが、日 医の考え方をお聞かせ願いたい。
【今村聡常任理事回答】
医療の財源に消費税を投入することは当然考 えられることであり、日医の方針は中川常任理 事のコメントのとおりである。いざ消費税が上 がるとなった時に、医療の財源になるための理 論的な構築は当然必要であると思っている。今、 二つの準備をしており、一つは4月から会内の 常任理事6名と日医総研、事務局で検討会を設 置して、これまで4回(ほぼ終了間近)医療財 源の必要性、税率等の数値を当てはめて理論的 な構築を進めている。ただこのことを日本医師 会が公に外に向かって医療の財源として消費税 を考えていることを、声高に言えるかどうかに ついては慎重に取り扱い、会内の検討として進 めている。それから日医の主張だけでいいのか という意見もあり、外部の学識経験者で社会保 障の財源と医療の財源として、如何に消費税が ふさわしいかということについての理論的な論 文も作成している。
【中川常任理事追加回答】
後期高齢者医療制度日医案の公費9割は正に 消費税率を上げて、新たな財源が生まれた時の 受け皿というイメージをもっていた。但し、参 院選挙後消費税の議論は必須と言われている が、実は景気がバブル期を超えると言われてお り、税収が増え、一般会計、特別会計もかなり 財政状況が好転し、剰余金が数十兆円も増えて いて、1〜2年は消費税の引き上げを先の延ば しできるということが財政当局から出されてい る。こういう状況の中で我々が積極的に消費税 というよりも、一般会計、特別会計の剰余金を 財源として投入することを主張して、仮に消費 税が上がるときには対応ができるよう準備も怠 り無く進めていきたい。
提案要旨(抜粋)
今村常任理事は、先の代議員会で、鳥取県、 長野両県議会で「消費税非課税取引の見直しを 求める意見書」を決議したことに、「医療界以 外の分野からの支援は影響力も大きく心強い」 ものとして、両県医師会に感謝の念が述べられ ているが、日医から全国的な盛り上がりに持っ ていく意向は伝わっていない。北海道医師会で は一歩進めて議会請願等も含めて日医の指示に 従って活動を進めて参りたいと考えています。 日医のお考えをお伺いします。
【今村聡常任理事回答】
控除対象外消費税(損税)は、消費税率が上 がるタイミングでないと根本的な解決が難し い。財務省、厚生労働省の保険局、医政局、保 険者、経済団体、マスコミ等には十分理解して いただくよう話し合いを続けている。ご提案の とおり地方の議会が医療の外から控除対象外消 費税の件を提言していただくのは大変心強いこ とである。各県医師会と議会の関係というのは 独自のものであり、日医として各県にお願いし にくいところもあったが、各県で積極的に取り 組んでいただければ有り難いので改めてお願い 申し上げたい。
今回、会員に消費税問題を理解していただく ため簡単な小冊子の作成を準備しているところ である。例年、8月になると税制要望で税調委 員を中心とした国会議員の方々に要望、説明に 回っているが、各県でも地元の国会議員にも理 解していただくよう説明をお願いしたいと思っ ている。その説明用の資料も後日各県に送付し たい。
提案要旨(抜粋
1)内田常任理事は、マグネットホスピタルは地 域の病院から医師や看護師を吸収してしまう ということを述べており、尤もなご意見だと 思っている。マグネットホスピタルという名 称はよくないと思っているので、絶対に使わ ないでもらいたい。又、マグネットというの は吸い寄せるという意味もあり、金を吸い寄 せるというイメージ的な面もある。又、新医 師臨床研修制度が発足してから医師不足の問 題が発生したことは事実であり、この制度の 抜本的見直し、加えて旧医局にあった医師の 派遣機能を重視して新しいシステムを構築す る考えはないか。
2)医療機関の管理者となる条件として「へき地 勤務の義務化」をあげているが、絶対反対で あり、昔の徴兵制度のことを言っていただき たくない。
3)骨太の方針2007に地域医療提供体制の整備 ということが謳われているが、漠然として具 体的なことはないが、日医はどのような姿勢 で話し合うのかお聞かせ願いたい。
【内田常任理事回答】
1)マグネットホスピタルの対応については、地 域医療提供体制を混乱させるものでしかなく、 マグネットホスピタルに指定したところに人 と金を集めるだけの話しであり、非常に危険 なものをはらんでいる。これについては地域 特性が生かせるよう地域医療対策協議会の中 で十分チェック機能を働かせていきたい。
2)新医師臨床研修制度の見直しについては、日 医でもプロジェクト委員会の中で検討をして いるところである。定数の見直しの今のあり方 はいろんな偏在を助長する流れがあり、そこの ところの適正化を主張している。そこは骨太 の方針、政府与党の緊急的な医師不足対策の 中にも盛り込まれているので、その辺の見直し は早急に進むのではないかと思っている。
3)地域医療提供体制については、第6次医療法 改正を睨んで地域医療提供体制のあり方検討 委員会で話しが進められている。その中では 地域医療支援病院、特定機能病院、そしてか かりつけ医と言われている開業医の役割が課 題として上がっている。この課題に関しては、 厚生労働省から先走っていろんな提言が出て いるが、逐一医療現場を守る立場から計画の み直しを行うことで対応させて頂いている。 今年夏ごろに中間答申のとりまとめを行うこ とにしており、会内でも検討を進めている。
提案要旨(抜粋)
「後期高齢者医療制度における一部包括化」 「総合医」「9時から5時まで」「勤務医のへき地 医療研修」などの日本医師会の提案は厚生労働 省に逆手を取られ、とても受入れがたいものと なっている。
総合医の提案も内科以外に、整形外科はもち ろん耳鼻科、眼科などの専門診療科医の事を考 えているのでしょうか。私が許すことができな いのはへき地勤務に関する発言です。地域医療 対策委員会の「へき地勤務の義務化」中間答申 は信じられない答申です。臨床研修を終わった ばかりの医師にへき地勤務を義務化することな ど許されることではありません。
日本医師会がやらなければいけないことは、 現在のへき地における医療提供体制の不備を指 摘し、環境整備をし、後方支援体制を整え、意 欲ある医師が進んでへき地勤務ができる体勢の 構築を政府に要望することではないでしょうか。
日本医師会は国民の健康を第一に考えていく ことが使命ですが、医師会員の協力がなければ なりたちません。このままでは医療崩壊の前に 日本医師会が崩壊してしまうのではないかと危 惧しておりますが如何でしょうか。
【内田常任理事回答】
へき地義務化について、地域医療委員会でこ のような中間答申が出されたというのは事実で あるし、今年度も継続して審議している。再三 申し上げているように地域における深刻な状況 を反映した答申であったということでの認識が ある。今回政府与党案で医師確保対策がだされ たが、そこには義務化は入っておらず医師会と してもこのような提言をしたことはない。各地 域の実情に応じた柔軟な対応というものをやっ ていかないといけないし、実効性のあるものに 関して取り組んでいく議論が必要だと思う。
総合医については、現在学術推進会議、生涯 学習推進会議、プライマリケア学会等の関係の 学会が連携してカリキュラムを調整していると ころであり、様々な診療科で開業され経験も豊 富であり、地域での役割を果たしている先生方 を排除するような制度にはならないと認識して いるし、そういう制度にすべきではないと考え ている。厚生労働省が出した総合科情報といっ た認定制については、これは厚生労働省の方で 事実上撤回している。今後もそういうことが出 てくる可能性があるが、そういうことが絶対に ないようにしっかりと取り組んでいきたい。
後段の会員からのご批判については、謙虚に 受け止め、そういうことがないように対応して いきたいと考えている。又、ご指摘の診療科選 択の制限、自由開業制の制限、保険医定年制、 保険医定数制等が厚生労働省の先取りとなるこ とがないよう、今後ともご指導とご協力をいた だきたい。
提案要旨(抜粋)
昨年来、日医執行部から「かかりつけ医」という言葉が漸く消えたと思っていたところ、最 近は「総合医」「総合科」ないしは「高い総合 診断能力」を持つ医師という言葉が、厚労省を はじめ日医執行部からもきかれるようになって きた。今、言われている「総合医」なるもの と、多くの会員が提供している現在の医療とど う違うのか、現在の開業医は「心を診ていな い」のでしょうか。
日医の提唱する「総合的な診断能力を有する 医師」は、厚労省医道審議会の分科会で論議さ れている「総合医」なるものとどう異なるの か、どのような定義になるものか明らかにすべ きではないでしょうか。
へき地への若手医師や勤務医への義務化の報 道については、多くの勤務医から日医への反発 が噴出しています。今回の「総合医」「総合科」 なるものへの対処を明確にされないと、今度 は、診療所の会員の多くが執行部への反発と不 信感を招くと危惧します。又、「総合医」をゲ ートキーパーとする後期高齢者医療制度の創設 と人頭割制導入の流れが明白であることを多く の会員は認識しております。執行部のご見解を 伺いたいと思います。
【唐澤会長回答】
「総合診療科」または「総合科」という表現 は、厚労省が勝手に言いただしたことであり、 我々は一切関知していない。早急に取り下げて 貰うことを迫っている。
ここで私の思いを述べさせていただくが、歴 代の日医生涯教育委員会では、日医生涯研修で 発行された認定書を価値あるものにしようとい う提言が度々出された。世間に日医生涯研修制 度があることや、それを通じ発行された認定書 の重みを世間に知らしめたい。これが第一の目 標である。また、認定書を持つ医師は多様な研 修を長期にわたり行った医師であり、社会から もっと評価されるべきだと考えている。厚労省 もこの制度について、明確に理解し評価すべき であると考える。そして、このことをしっかり 社会に訴える手助けをするのが厚労省の役割だ と考えている。日医が求める認定はそういうレベルのものである。
唐澤会長コメントのあと、再び森会長から 「3月16日の生涯教育担当理事連絡協議会で出 た日医案はないと理解して良いか。」との質問 があり、唐澤会長から「現在、日医生涯教育に 関する検討会で検討中であり、今のコメントは 私の考えを述べたまでである。」と回答があっ た。森会長は「会長の考えを実現するためのお 話であれば、今懸念している事項は解消される と思っている。このような文言が再びでてくる ことがないように要望したい。」と述べた。
また、追加発言として、埼玉県吉原会長より 「各県で行っている日医認定生涯教育講座に重 みを持たせ、実際に会場に来て勉強したという 証明を各県会長が証明し認定とするならば、厚 労省もマスコミも認めると思う。生涯教育の優 良化を真剣に考えて頂きたい」と要請した。
【飯沼常任理事回答】
医師の生涯教育に関するボトムアップのため にどうすべきかという単純な発想であり、厚労 省の話とは全く無関係なかたちでスタートし た。家庭医に関する学会が3つあり、日本プラ イマリケア学会、日本総合診療医学学会、日本 家庭医療学会との共同で、ワーキンググループ に近い形で検討しようという運びになってい る。将来認定機関になれば、合同もしくは日医 単独も有りうる。また、生涯教育の指針をつく るために、聖路加の福井先生を委員長にカリキ ュラムを作っているところである。いろいろな 方策が考えられるので、今後どうしていくかを 検討しており、そのたたき台として、昨年、私 案を出した訳である。委員会でのこれからの進 展をご報告したい。
提案要旨(抜粋)
以下のことを感染症対策として国が実施する よう日医の働きかけを要望するとともに、麻疹 の排除に向けての積極的な介入を要望します。
この間に厚労省を通じて日医から流れてきたが、日医からの明確な指示が何もない。厚労省 からの通知文をそのまま流している。これでは 感染症対策で地域医療対策に従事する意味がな い。是非、ここは日医が総力をあげて国に働き かけを行っていただきたい。
また、ワクチン行政の中で、この数年間小児 科医を中心に、予防接種を行っている人達に不 都合な通知が厚労省から出されていることにつ いても伺いたい。
【飯沼常任理事回答】
厚労省の発信する内容と、日医から発信され る内容が同じということについては、結核感染 課血液対策課との意思疎通が図れており、都道 府県に出す前には必ず日医へ相談に訪れ、最終 の調整まで、しっかり我々と協議を行っている ので、一字も違わないのはそのとおりである。
今日は厚労省と交渉結果で成果をあげた事項 について報告する。一つ目は、DPTジフテリ ア、百日、破傷風のワクチンが3週〜8週の間 に打たければいけないとされていたが、日にち が過ぎていても先生方のご判断で接種できるよ うになった。まず一つの風穴が開いたと思う。 二つ目は、麻疹に関しては、6ヶ月に予防接種 をした子が、1歳になった際に定期接種を行い たいと希望した場合も接種が可能となった。こ れからも続けていきたいと考えている。
また、予防接種インフルエンザのワクチンが 間もなく市場に出回るが、我々はこれを勧奨に よる予防接種にしたいと考えており、そういう ことも少しずつ厚労省にはシグナルを送ってい るので、交渉を粘り強くしたいと思う。
飯沼常任理事回答の後、京都府森会長より、 追加説明があった。
厚労省からの通達に関する真意は、日医から プラスアルフア(接種者の費用負担等を国に要 望等)を期待してのこと。国からの通達は、ど うしても通達通りにならざるをないことは理解 している。日医としては、こういうことを要望 しているということを伝えて欲しい。
DPTについては発熱を呈している等というこ とで勘案されている様だが、実際は京都市がこ の件に関し厚労省に問い合わせたところ、「こ の場合、最終日において予防接種を行うことが 不適当な状態にあったという医師の証言が必要 である」との文言がつくとのことである。この 辺りが通達として出る場合、おかしなことが出 てくる。各自治体も厚労省に問い合わせると、 あまり良い答えが得られず、自らの首を絞める ようなことになりうるので、そのあたりの整理 をして頂きたい。
また、三重県加藤会長代理からも予防接種行 政について追加要請があった。
予防接種行政については、予防できるワクチ ンを全て予防接種で行うというコンセプトが欠 けているため、諸外国に比べ麻疹が発生したり する。
一つには官の組織が弱い。例えばアメリカの システムでは、官の組織と民の組織、専門機関 が対立を軸としてシステムが成り立っている。 我が国は、厚労省の数人の係官で通達を出すシ ステムであり全く異なる。日本は中長期までの 戦略が立てられないシステムになっている。組 織の構築に向け日医の積極的な運動をお願いし たい。
提案要旨(抜粋)
徳島県医師会では、世界禁煙デーに合わせて 「禁煙条例を制定する要望書」を県知事宛に提 出した。各都道府県医師会でも同様な取り組み が出来れば大きな力となる。日医としても是非 法制化できるよう一歩踏み込んで頂きたい。
【内田常任理事回答】
先ごろのガン対策推進法の基本計画策定にあ たっては禁煙に関する具体的な数値目標の設定 に踏み込むことは出来なかった。政治的な圧力 が強くて具体的な一歩が踏み出せなかった。今 後、基本計画の策定は都道府県の策定に移って いくため各県で是非盛り込んで欲しい。日医では平成15年3月に策定した禁煙推進に関する日 医宣言がある。全国の病院、診療所および医師 会館の全面禁煙を推進する。従来から医師会は 禁煙に関し積極的に多彩な取り組みを進めなけ ればならないというところである。また、平成 19年5月20日号の日医ニュースの折込で健康ぷ らざのやめよう悪い習慣、恐ろしいタバコの害 という記事を作成しているので、是非活用いた だきたい。
今回、徳島県からの要望書については、全面 的に賛同する。日医としても今後の団体推進計 画等の具体化の中で、このような取り組みが積 極的に展開されることを全面的に支援していき たいと考えている。
提案要旨(抜粋)
「開業医を人間並みに扱わないような発言が あった。」こういう時は是非、記者会見や今後 の対応を検討するということではなく、即、担 当理事や会長が厚労省に行き、注意を行えば訴 えそのものが強くなる。
また、新聞広告についても各社競合させてい く必要がある。厚労省に出かける際には、ベテ ランの記者をつける等バーター取り引きをして 頂きたい。日医の記者会見など一般の新聞では 一度も見たことがない。少々手荒な方法でも構 わないので、対応して欲しい。
【中川常任理事回答】
今回の質問の趣旨としては、厚労省の方針が 出される前に、事前に情報を把握し問題がある 部分は予め修正削除させるべきとのご指摘と理 解している。全く同感である。我々執行部も厚 労省が検討を進める以前に情報を把握し、問題 点の認識を執行部全体で共有し迅速な対応を取 るよう今後も努力していく。
更に、現在日医は政府厚労省の政策案につい て、その結果に抗議反論するだけでなく一歩先 んじて、主張していくことに努めている。例を あげるならば、財政制度等審議会は6月6日に 建議を提出したが、日医は建議検討段階の5月 23日に財政審の認識の誤りを正している。これ に続く、骨太の方針2007は6月12日に原案が取 り纏められた。ここでも日医は5月16日、6月6 日に検討の方向性について問題点を指摘し、6 月7日に日医として主張、あるべき医療の緊急 提言を発表した。延べ30名以上の関係国会議 員に対して、精力的にロビー活動を行った。基 本方針2007は本日19日、諮問答申となる予定 だが、日医の主張も取り入れられた内容となる 見込みである。これについては正式に発表され た後に追って報告したい。
2点目は、新聞の意見広告のあり方を含めて のご指摘である。新聞の意見広告については発 行部数、読者層、掲載時点での社会情勢はもと より一定の費用で最大限の効果が得られるよう 努めている。また、都道府県医師会長、代議員 の理解を得ながら、積極的に責めの広報を展開 していきたいと考えている。広告を通じた国民 への啓発と同時に、国会議員に対するロビー活 動や広告掲載元であるメディア各社への対応が 一体的に行われてこそ、医療を取り巻く状況は 正しく認識され、あるべき医療の国民的合意が 生まれるものと考えている。
また、この様な活動は地域の医療現場から発 信されてこそ意義があり、啓発・広報活動、国 会議員への働きかけなど、医療崩壊の機にある 今こそ、都道府県医師会の先生方のこれまで以 上の取り組みをお願いしたい。
中川常任理事回答の後、三重県加藤会長代理 より、追加要請があった。
広報のありかたも関係すると思うが、如何に タイムリーにカウンターパンチを出すかが広報 の基本である。普段から理論武装しておかなけ ればならないという点と、相手に手強いという ことを印象付ける必要がある。マスコミにくど くなると圧力団体のレッテルを貼られてしま う。如何に官庁に対してカウンターパンチを迅 速に出せるか是非お考え頂ければ幸いである。
提案要旨(抜粋)
裁判外紛争処理解決手続きの利用促進に関す る法律(ADR促進法)の施行に伴い、弁護士 会やNPO法人が単独で、もしくは専門団体と 共同で、医療問題の紛争手続きを含めたADR を設置しようという動きが見られる。茨城県医 師会におかれては、「医療問題中立処理委員会」 を設置され一定の成果をあげておられると仄聞 している。医師賠償責任保険制度を運営される 日本医師会としてこのような弁護士会の動きを どのように考えているのか。
また、本会を含めて、多くの都道府県医師会 では、会員の負担軽減を主たる目的として、医 事紛争処理機関を設置して活動している。都道 府県医師会の医事紛争処理機関が弁護士会の ADRに参加を求められた場合、どのような対応 が望ましいのか。医師賠償責任保険制度との関 連を含めて、日本医師会の見解を賜りたい。
特に平成20年度に公益法人改革関連三法が 施行されるが、医師会が会員互助を目的として 医事紛争処理機関や医師賠償責任保険制度を運 用することにつき、かかる事業が公益認定をう けることに支障がないか、日本医師会のご見解 をお聞きしたい。
【木下常任理事回答】
ADRとは(Alternative Dispute Resolution) の略である。仲裁、調停、あっせんなどの、裁 判によらない紛争解決方法を広く指すものであ る。例えば、裁判所において行われている民事 調停や家事調停もこれに含まれ、また、行政機 関(例えば建設工事紛争審査会、公害等調整 委員会など)が行う仲裁、調停、あっせんの手 続や、弁護士会、社団法人その他の民間団体が 行うこれらの手続も、すべて裁判外紛争解決手 続に含まれている。
ADRでは、紛争への原因究明と再発予防だ けであれば良いのだが、金銭的な問題を処理し なければならない点で問題が出てくる。ADRは 医師会のみならず、他の全ての紛争に対する処 理機関である。特に医療事故に関する問題は特 殊であり、この運用に合うのかどうか検討が必 要である。ADRを特に勧めようとする傾向が患 者側の弁護士サイドに多く、患者サイドにシフ トした結論・結果が多くなることが懸念され る。また、保険会社との絡みも問題を残す。通 常、裁判で判決が出たものについては、支払い 義務が発生するが、このADRでは、仮に賠償 金額が決まったとしても保険会社は飲むとは限 らない。再審を求められるケースも予想され る。保険会社も今の段階ではあまり乗気で無い 様である。そうなると賠償金は増え、結果、掛 け金が増えてくることも考えられる。
ADRには、保険業界が共に乗るかという問 題、結論・結果が患者サイドにシフトしていく という問題がある。
今、医師会の医賠責保険制度は良いものであ る。各地区の紛争処理委員会で事例を検討し、 その事例が日医へ上がって来る。審査委員会で は、保険会社の役員や日本医師会役員、双方の 弁護士も加わり有責・無責を判別したり、賠償 金額を決めるため、ADRの様な保険会社から の再審というケースはないと考える。
日医の医師賠償制度は非常にうまく機能して いる。その機能している状況の中で、ADR参画 については、慎重に対応しなければならない。 医療問題は特殊である。特に会員の為が大前提 である以上は軽々に乗るべきでないと思う。日 医としてはその必要性はないと考えている。
木下常任理事回答の後、茨城県小松会長代理 より、追加説明があった。
茨城県では、昨年からADRを始めた。事例 としては6件の内、解決が1件、残りは現在継 続中である。私なりには成功したと考えてい る。弁護士会、NPO団体からのADRの推進に はあまり乗るべきではない。茨城県の場合は、 医師会が主導したことが良かった。名称にこだ わったが、中立を全面に出すことで共通認識を 心がけた点は良かった。弁護士は解決に賠償金のことを始めに言ってくるので当初は混乱もあ った。第三者がいることによって、患者の要求 を冷静に考える事が出来た。しっかりと運営さ れれば、良いと思う。
提案要旨(抜粋)
勤務医の加重労働が問題になっているが、そ の原因の一つに作成しなければならない書類の 数が極めて多いことが上げられている。
現在、生命保険の「入院・手術証明書(診断 書)」「死亡診断書」をはじめ、ほとんどの書類 は手書きしなければならないようになっている が、これらの書類を電子化し、医師がパソコン 等を使用して記入できるようにすれば、作業の 大幅な軽減が図られるものと思われる。各種書 類を電子化して医師が利用できるようにする体 制整備を進めていただくことを希望する。
生命保険協会へ照会し、様式の統一化。日医 主導で統一化して頂きたい。
【今村聰常任理事回答】
生命保険の書式の統一と電子化の提案の趣旨 については私も同感である。我々の取み組みに ついて経緯について説明する。
昨年、大手の保険会社に対して、書式の統一 化・電子化について可能か如何かを問い合わせ た時点では、商品が多様にあり、統一は困難で あるとの返事を頂いた。そこで日医総研など で、骨格部分だけでも出来ないものかと検討し たが、多様に増え続ける民間商品の中で、フォ ローアップも行わなければならず、会員の会費 を使ってまで、保険会社のソフトを作ることは 如何なものか考えると、ペンディングとなって いる。
大手の生命保険会社の一社が制作したソフト を、生命保険協会として活用しているようで、 既に民間の病院でも取り入れた機関があるとの ことであった。しかしこれは、保険金の不払い 問題に対し、環境整備を図る目的から制作され たソフトとなっており、有料とのことであっ た。我々は医政局に対し、こういったソフトに ついては、生命保険会社の責任のもと無料で利 用出来るようしっかり指導頂きたいと申し入れ てある。また、本当に勤務医の過重労働を減ら せるかと言うことを実証して欲しいということ で、生命保険協会に申し入れるところである。
提案要旨(抜粋)
医療費抑制策は20年前から厚労省が医療提 供体制を兼ねて如何に日本の医療費を抑制する かを長年考えてきた案である。この政策を変え させなければならない。日医を中心として医師 会全体が一致団結をしなければ軽々に政策転換 はできない。その為には、しっかりとした日医 のリーダーシップをお願いし、我々もまたそれ を支えていくことが大切である。
先程来、北海道や長野県からも運動の試みに ついて教えて頂いた。日医が良いことを率先し て、全国の医師会を引っ張って頂きたい。
本日も、日医の方針について、様々な疑義が 行われたが、十分論議をし一旦決まれば、それ に向け力を合わさなければならない。今後、日 医が都道府県医師会をどうリードし、どう会員 に示して行くかについて日医の決意を伺いたい。
【中川常任理事】
色々な報道にあきれる。勤務医が疲れている のは開業医が楽をしているからだというとんで もない発想で、開業医から税源を取って勤務医 に充てるという考えである。
そういう中で我々はロビー活動や会見を通 じ、診療所の医師は診療時間を終えてから、第 2の仕事が始まることを説明。例えば、急患セ ンターへ出動や、学校医・産業医・警察医・予 防接種・検診・介護保険認定審査会など、あり とあらゆることをやっていることを各方面に強 調してきた。この多忙さについて一定の理解を 示す議員もあり、もっとPRすべきだと激励も された。
こういう背景の中で、我々は今後やるべきことは、3月に策定したグランドデザインを起点 に3つある。日医がやることと、都道府県医師 会がやるべきことは全く同じである。
先ず1番目は、ロビー活動である。各県選出 の国会議員に対しロビー活動を自動的にやって いただくこと。単なる陳情にならない様データ を持ちお示し頂きたい。先日、都道府県医師会 長あてお送りした「あるべき医療に対する緊急 提言」を是非参考にやって頂きたい。
2番目に、マスコミに対する持続的なコミュ ニケーションをとって頂きたい。その中で、厚 労省の検討中の課題や財政時の建議に対する内 容というものも、日医も問題点を指摘するが、 全国各地でも地方紙に対して問題点を指摘して 頂きたい。
3番目は、日本医師会は国民に、都道府県医 師会は県民に対して、断続的な情報提供と啓発 活動を行って頂きたい。
特に3点目に関しては、日医からデータとツー ルを定期的に提供することで支援していきたい。
今年度は医療費適正化計画、地域ケア整備計 画も策定されるが、地方行政の中には、厚労省 の方針をそのまま書き写す県も少なくないと予 想される。先生方に於いては、地域の現場の現 状を正確に、実態を遠慮なく把握頂き、地域実 情に合わせた計画をお願いしたい。我々も支援 していくので、行政と共になって厚労省に対し 強い主張を行って頂きたい。
羽生田常任理事より標記託児所の設置につい て依頼があった。
日本医師会では、平成19年度より日本医師 会が行う研修会等では託児室を併設するように しており、事業計画にも明記している。
このことから、都道府県医師会及び郡市医師 会が行う研修会等についても、同様の措置をお 願いしたい。また、共催・後援して頂ける薬品 メーカにもその旨お願いしているので、是非、 ご協力頂きたい。
来る11月17日、18日の両日に、ブロック会 議が3つ重なっており、それぞれに担当理事を 派遣することが物理的に不可能に事態となって いる。
これから日程を変えるには無理だと思うの で、今後の対応として、ブロック間で事前に日 程確認をして頂くか、若しくは早めに日医へ照 会をして欲しい。出来る限り重ならない様、ま た、担当理事が全ての要請に応えられるよう務 めたいので、その点のご配慮をお願いしたい。
その他
来る6月23日の土曜日、標記自殺予防研修会 を日本医師会で開催する。学校保健や産業医等 でも関係する内容であるので、多くの先生方に 出席を頂きたいとの説明があった。
閉会