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第1回都道府県医師会特定健診・特定保健指導連絡協議会

常任理事 安里 哲好

去る4月21日(土)午後10時より日本医師会 館において標記連絡協議会が開催された。

研修

(1)「新たな健診・保健指導と生活習慣病対策 標準的な健診・保健指導プログラム(確定版)」

厚生労働省健康局総務課生活習慣病対策室 室長 矢島哲也

・医療制度構造改革のポイント。生活習慣病対 策が一丁目一番地、入り口である。国民皆保 険制度を持続可能なものとするために、将来 の医療費の伸びを抑えることが重要。

ポイントは3つで、1)健診・保健指導にメ タボリック・シンドロームの概念を導入した こと2)糖尿病等の生活習慣病有病率・予備群 25 %の削減目標を設定3)医療保険者に健 診・保険指導を義務化したことである。

病気になったら問題、何にもまして病気に ならないことに勝るものははい。生活習慣病 は予防が可能であり、まず患者を出さないよ うにする。

・生活習慣病対策と老人医療費への影響

加齢とともに疾病のリスク要因が高まり一 人当たりの医療費が高騰する。若いうちに健 康増進を行い、その後発症抑制、重症化抑制 を行うことにより、老人医療費の適正化を図 る。

・メタボリック・シンドロームの概念を導入す る。メカニズムを理解すれば保健指導で予防 が可能になる。内臓脂肪の改善で予防できる 対象を絞り込むことができる。リスクの数に 応じて保健指導に優先順位をつけることができる。腹囲というわかりやすい基準により、 生活習慣の改善による成果を自分で確認・評 価できる。

・メタボリック・シンドロームの疾患概念は、 内科学会等8つの学会のコンセンサスを得た もの。

・糖尿病等の生活習慣病の発症予防・重症化予 防の流れに対応した客観的指導を行う。リス クの高い方から優先的にやっていただく、一 緒に内臓脂肪を減らすことが大事。

・今回保険者に健診・保健指導をやっていただ くことにより、健診データとレセプトデータ を一緒に見ることができる。予防事業の成果 を見ることができる。

・生活習慣病受診者の有所見の状況(所見が出 現する順序)をみることができる。脳・心臓 疾患に至る前に保健指導を行うことが重要。 リスクが重なると危険。リスクが始まるとき 指導する(動機付け)。

・25%削減の目標を達成するために、1)標準 的な健診・保健指導のプログラムを作成し、 2)ポピュレーションアプローチを充実させ、 3)国民にわかりやすい学習教材を開発する。

・標準的な健診・保健指導プログラムの確定版 を策定し、健診・保健指導・データ分析・評 価をそれぞれ標準化する。

・健診検査項目の健診判定値を示す。判定基準 にご留意いただきたい。特定保健指導の階層 化基準は、空腹時血糖が100、HbA1cは5.2 である。糖尿病予備群の基準は、それぞれ 110と5.6、糖尿病有病者の基準もそれぞれ 126と6.1、受診勧奨の基準は、糖尿病有病者 と同じである。

・生活習慣病の程度と階層化による保健指導の レベルはリスク数に比例する。

・生活習慣病予備群だけでなく、不健康な生活 習慣を送っている人、生活習慣病の有病者も ターゲットとする。3つやらないとだめ。

・生活習慣病有病者・予備群25%削減のため の戦略。

個人および集団データを改善⇒集団のリスク改善、リスク重複の減少⇒メタボ該当者・ 予備群の減少⇒糖尿病等の生活習慣病・予備 群の減少⇒医療費の伸びの減少

・HbA1cと治療の有無を調べてみると、治療 中なのに血糖コントロールができていない人 がまだまだいる。HbA1cを指標にした糖尿病 の疾病管理を行う。どうやって重症化を防ぐ かを戦略的に可能となるよう地域の医師会や 糖尿病対策推進会議等連携して取り組んでい ただきたい。

・健診・保健指導の費用対効果の分析方法例 (水嶋研究班)

5年間健診・保健指導をすべて受けた集団 の医療費と健康増進費用を足したものが、5 年間健診・保健指導をまったく受けなった集 団の医療費よりも低くなっていれば効果が評 価できる。10〜20年後の評価も重要。

・保健指導における学習教材集は、国立保健医 療科学院HP上に掲載し、保健指導実施者が 必要に応じてダウンロードでき、自由に改変 して使用できるような仕組みを講ずることと している。そのような教材を使って厚生労働 省副大臣に実践してもらっている。このメタ ボ退治はホームページに公表されているとお りで、行動変容のために具体的に何をどうす ればよいかを選択できるための教材例・健康 づくりのための運動指針<エクササイズガイ ド>等も掲載している。

・健康運動施設認定制度について、温泉利用指 導者・温泉入浴指導員について、新しい「健 康運動指導士」についてなど、資格をいろい ろ見直しを行っている。

・今回の改正は、医療保険者に健診・保健指導 を義務化した。

40〜74歳の被保険者・被扶養者が対象

40歳未満、75歳以上は努力義務。対象者 を明確に把握でき、健診未受診者を把握し、 重症化防止ができる。

・健診・保健指導のデータ管理

レセプトと突合することにより医療費との 関係を分析できる。治療中断者、治療未受診者を把握し、重症化防止ができる。

・特定健康診査等実施計画の策定

・健診受診率・保健指導実施率・メタボリッ ク・シンドローム該当者・予備群の減少率を 明記。後期高齢者医療制度への支援金の加 算・減算に反映

・後期高齢者医療制度支援金の加算・減算

尼崎市に試算していただいた。0〜74歳国 保加入者数見込み数15万人で、支援金基準 額が約54億円、加算だと10%で+5億4千万 円、減算だと10%で−5 億4千万円である。 負担の差は約11億円になるので、相当気合が 入っている。

・医療費適正化計画のサイクルであるが、こ れは第2期からになる。

・健やか生活習慣病国民運動(仮称)をこれ からやっていかなくてはならない。

日本栄養士会は、都道府県と栄養ケア・ス テーションを進めていく。

18年間で4千万歩歩行し、日本地図を完成 させた伊能忠敬の映画(加藤剛主演)は、厚 生労働省推薦として「1に運動、2に食事、し っかり禁煙、最後にクスリ」を実践するもの としてPRしていく。

(2)「標準的な健診・保健指導プログラム 保健指導の概要」

厚生労働省健康局総務課保健指導室室長 勝又浜子

・保健指導の基本的考え方

生活習慣改善に繋がる保健指導の特徴、必 要とされる保健指導技術、ポピュレーション アプローチや社会資源の活用。特徴に合わせ て指導する。

・保健事業(保健指導)計画を作成する。医療 費が高騰しているのは何なのか。医療保険者 が中心になって作成する。積極的に対応しな くてはならない現状の分析を行う。

・保健事業(保健指導)の目標設定をする。保 健指導レベル毎の目標設定を行い、保健指導 対象者の優先順位をつける。

・保健指導の評価を行う。何回やったかではな く、結果どうなったかを評価する。

・保健指導の実施者は、動機付け支援、積極的 支援の初回は、医師、保健師、管理栄養士で あること。上記のうち、食生活・運動に関す る対象者の支援計画に基づく実践的指導は、 医師、保健師、管理栄養士のほか、健康運動 指導士や産業栄養指導、産業保健指導担当者 等が行う。

禁煙指導については、他職種との連携を図 ることが望ましい。

医師に関しては、日本医師会認定健康スポ ーツ医と連携することが望ましい。

保健指導を実施するものは、保健指導のため の一定の研修を修了していることが望ましい。

・標準的な保健指導プログラム

糖尿病等の生活習慣病の予備群に対する保 健指導

対象者ごとの保健指導プログラムについて は、情報提供・動機付け支援・積極的支援を 行う。

・望ましい積極的支援の例

面接による支援は、個別支援(30分以上) またはグループ支援(90分以上)。次回の健 診までに確立された行動を維持できるような 支援を行う。

・情報提供する内容は、支援形態(健診結果に 合わせて情報提供用紙を送付あるいはIT等で 個人用情報提供画面を利用)

・動機づけ支援の内容は、面接による個別支 援、グループ支援、電話、e-mailによる。

・行動目標は、指導者が決めるのではなく、初 回面接時に本人が決める。3ヶ月で効果が出 なくても6ヶ月の結果を見て終了する。

・積極的支援における支援形態のポイント数は、 個別支援・グループ支援・電話・e-mailなど 支援形態に合わせたポイント数を計算する。

・対象者の自己の健康行動と、科学的根拠のあ る方法の理解の促進及び教材の選定を行うこ とが重要。

・人員(医師・保健師・栄養士の配置等)・施 設及び設置(受動喫煙防止措置等)・保健指 導の内容・運営等に関する基準を設ける。

・メタボリック・シンドロームに着目した健診・ 保健指導担当者の資質向上推進事業を行う。

(3)「特定健診・保健指導の実施にむけて」

国民健康保険中央会理事 田中一哉

○はじめに−医療保険の概念の変化

もともと医療保険は、病気になったとき心配 しなくていいというものである。今回の制度改 革で、国民が病気にならないようにするのも保 険者の仕事だということになった。

1.保険者事業の意味するもの

事業の財源が違う。一般衛生の財源は税金 であるが、保険者は国民から預かっている保 険料である。使った費用に見合う効果を上げ ないといけない。より経済、より効率的でな ければならない。これが保険者が実施するこ ととの大きな違いである。

2.国民健康保険事業の意味するもの

国民保険と社会保険は違う。最大の違い は、被用者保険は、事業所単位、国保は市町 村単位、市町村長が責任を持つ。市町村で事 業が完結する。

3.保健事業の効果的手法

保険事業に取り組むうえで関係者が十分意 識しておかなければならないこと、承知して おかなければならないこと、単に機会を提供 すればよいということではなく、保健活動が もっとも効果をあげるのは、“相手の顔が見 える”こと。頼りにされ、頼りにする。そう いう関係が効果的。顔の見えない関係では成 り立たない。

市町村医師会にお願いしてやっていただ く。医師抜きには考えられない。地域在住の 医療機関、医師、保健師、これから皆さんと 市町村レベル、保険者レベル、国レベルで医 師にご協力いただく。

4.健診と医療機関

健診にかかる費用はきちっと支払う。健診 はあくまでも情報であり、これをいかに活用して予備郡を調べて保健指導を行うことが医 療費適正化につながる。

5.保健指導と医療機関

保健指導なくして健診はない。料金、これ は我々の最大の課題。市町村の保健師が 2,000人おり、これだけいれば対応できると 思っている。市町村長の判断による。自らの マンパワーによる。医師には保健指導はない のかというとそうではない。メタボリック・ シンドロームをはじめ、医療的知識が必要と なる。知識のある保健師・医師に指導してい ただく。実施計画策定の段階で力をお貸しい ただきたい。

6.データ管理

連合会がデータベースを持ち、健診費用の 支払をする。分析情報を提供する。システム 構築中である。

○おわりに−医師は地域住民の頼りどころ

我々国保関係者、地域住民、先生方の協力 なくしてはやっていけない。ご指導・ご協力 をお願いしたい。

(4)「特定健診・特定保健指導の実施体制に ついて」

厚生労働省大臣官房参事官・保険局総務課
医療費適正化対策推進室室長 深田修

深田修室長より、先ず始めに、今回の特定健 診・特定保健指導は、医療制度改革大綱の基本 的な考え方に基づいて行われるものであると説 明があり、具体的には、メタボリックシンドロ ームの概念を導入し「予防」の重要性に対する 理解の促進を図る国民運動の展開(ポピュレー ションアプローチ)、保険者の役割の明確化と して健診・保健指導の義務付け(ハイリスクア プローチ)、医療費適正化の総合的な推進、と いう3つの考え方に基づいて行われるものであ ることが示された。

医療費適正化方策(中長期的)の基本的な考 え方としては、平成20年度を初年度とした医療 費適正化計画(5カ年計画)が策定され、その 中に、生活習慣病予防の徹底、平均在日数の短縮等の項目が盛り込まれることになっている。 生活習慣病予防の徹底というところで、効果 的・効率的な健診の実施、該当者・予備群の確 実な抽出、保健指導の必要度に応じた対象者の 階層化、保健指導プログラムの標準化等が図ら れることが示されており、その結果として、国 民の健康増進・生活の質の向上並びに中長期的 な医療費の適正化が望めるとされている。

特定健診・特定保健指導の基本的な方向性と しては、各医療保険者に40 歳以上の被保険 者・被扶養者を対象とする、内蔵脂肪型肥満に 着目した健診及び保健指導の事業実施を義務づ けることが法律上規定され、医療保険者毎の健 診の受診率、特定保健指導の実施率、メタボリ ックシンドロームの該当者・予備群の減少率の 達成状況により、平成25年度からの後期高齢 者支援金の加算減算の取り扱いが行われること になっている。後期高齢者支援金の加算減算の 具体的な方法については、実際の実施状況を見 ながら考えるとされており、平成22年頃を目処 に計画が作られていく予定であることが報告さ れた。

その他、特定健診・特定保健指導を実施する 際の膨大な事務量を代行する機関についても説 明があり、代行機関は支払代行や請求等の事務 のために健診機関・保健指導機関及び保険者の 情報を管理する機能を持つ必要があることや、 簡単な事務点検のために契約情報、受診券(利 用券)情報を管理する機能を持つ必要性がある こと等が示された。

今後の予定については、保険者と健診、保健 指導機関の契約準備(単価設定、事業実施地域 の検討等)、保険者における計画策定等の体制 整備、保険者と健診機関、保健指導機関との契 約締結等が行われていく予定であることが説明 された。

(5)「日本看護協会の取組み」

日本看護協会常任理事 漆崎育子

漆崎育子日本看護協会常任理事より、「日本 看護協会では、今までの経験・知見から生活習慣とその変容の困難性に着目し、行動変容を促 す方法を組み入れたプログラム(対話型共同活 動プログラム)を平成18年度に開発した。平成 19年度においては、このプログラムに加えて、 標準的な保健指導との比較検討を行い、その精 度を高め普及を図りたいと考えている。」と説 明があり、今年度に予定されている活動内容に ついて報告があった。

また、本プログラムを実際に実践する保健師 を育成することが最重要課題であると述べら れ、日本看護協会では、保健師の確保と機能強 化に向けて、定年退職した保健師の再就業促進 や、地域包括支援センターへの保健師の就労促 進等を積極的に行っていく考えが示された。

(6)「日本栄養士会の取組み」

神奈川県立保健福祉大学教授
日本栄養士会会長 中村丁次

中村丁次日本栄養士会会長より、日本栄養会 の特定保健指導への取り組みについて報告があ った。

日本栄養士会では、全米心臓病協会前会長の ロバート・H・エッケル氏が実施した心臓病と ライフスタイルとの相関関係を研究した大規模 な調査結果においても、健康な心臓には栄養と 運動が有効であることが示され、また、癌、糖 尿病、心臓病を防ぐ要因の一つとしても栄養の 改善が有効であるとのエビデンスが示されたこ とから、より実践的かつ効果的な保健指導の取 り組みが検討されており、具体的な方法の一つ として、デジタルカメラとe-mailを活用した保 健指導の手法を検討していると報告された。こ の方法は、保健指導対象者が毎日の食事内容を デジタルカメラで写真に撮り、管理栄養士宛に e-mailを利用して報告する内容となっている。 このことでより的確な保健指導を実践すること が可能になるとしている。

また、日本栄養士会では、各都道府県に「栄 養ケア・ステーション」の設立を進めており、 栄養ケア・ステーションに連絡いただければ各 医療機関に対して管理栄養士の派遣や紹介を行えるような体制作りを検討していることが説明 された。

(7)「特定健診・特定保健指導医師会の役割」

日本医師会常任理事 内田健夫

内田健夫日本医師会常任理事より、特定健 診・特定保健指導が施行される背景には、健康 増進計画や健康日本21等の取り組みの見直し や、治療から予防へという考え方、財政支出削 減を意とする医療費適正化の考え方、保険者機 能の強化、新たな市場創出という考え方がある と説明があり、厚労省は、当制度を導入するこ とで、健診受診率の20%アップ、有病者・予 備群の25%削減、結果として2兆円の抑制を試 算しているところであるが、金額については、 現在、様々なところで議論が行われていると報 告された。また、特定健診・特定保健指導の実 施は、健診・保健指導率を上昇させるという点 で言えば医療機関にとっても良い制度であり、 長期的にみると、国民、保険者、医療機関と互 いにメリットがあると述べられた。

特定健診・特定保健指導の実施に向け、今 後、各都道府県では、都道府県健康増進計画の 改定が行われることが予定されており、その中 心的な役割を担うとされる「地域・職域連携推 進協議会」並びに、特定健診・特定保健指導の 実施主体者である各医療保険者間の調整・連携 を担う「保険者協議会」など、特定健診・特定 保健指導の中核をなす各会議への医師会として の参加の重要性が改めて示された。

当制度実施に係る今後の課題についても説明 があり、統一料金設定の検討、精度管理、アウ トソーシングの把握・評価、第3者評価機構の あり方等、まだまだ議論が必要な点が山積して いると意見された。

質疑応答抜粋

<制度全般について>

Q.被扶養者にも受診券、利用券が発行される のか?

A.受診券や利用券が必要でないと混乱が起き ると考えているケースは、集合契約という まとめて実施するパターンの場合で、これ がないとどういうルートで、どういう料金 のどういう契約内容かということが分から ないので、そういうところには前提として お願いしている。それ以外の保険者でも分 かるように出したいということであれば出 しても構わない。

Q.「第3回保険者による健診・保健指導の円滑 な実施方策に関する検討会」にて「市町村 国保における健診体制」および「被用者保 険における健診体制(被扶養者分)」が示 されている。その中で、市町村国保の契約 スキームを利用したい医療保険者(健保組 合や共済等)は、契約を委任した代表医療 保険者から都道府県(市町村)医師会に委 託し、個別医療機関で実施することとなっ ている。この実施方式の場合、自己負担金 および健診項目、保健指導方法等全てにお いて、市町村国保と医師会の契約内容が適 用されるのか?そうではなく、代表保険者 または医療保険者の実施条件で医師会が委 託を受け、各実施医療機関は、QRコード を利用するという話もあるが、各医療保険 者が情報をコード化して受診券にQRコー ドを印刷することができるのか?また、 QRコードを読み取る機器がなければ、医 療機関はどのような方法で受診者が属する 保険者の委託条件(実施条件)を判別すれ ばよいのか?

A.市町村国保の契約スキームを利用した医療 保険者の契約内容については、契約の内容 全てということではなくて、個々の契約内 容に準じる被用者保険の契約というのは実 施項目となる。単価というのはそれぞれ契 約の際に協議ということはあり得ると思 う。QRコードについては、QRコードは利 用券や受診券の表面に書いてあることをコ ード化するというものである。読み取り機のあるところではそのまま利用できる。読 み取り機が無くても券面の情報を入れれば 良いようにしている。

Q.標準的な健診・保健指導プログラム(確定 版)では「保健指導の評価」において、ア ウトカム評価は、肥満度や血液検査などの 変化、糖尿病等の生活習慣病の有病者・予 備群、死亡率、要介護率、医療費の変化な どが評価指標として考えられている。保健 指導の評価は、医療保険者が構成員である 保険者協議会において行われる。医療費抑 制のみを評価指標とされるかもしれない危 惧に対してどのように指導されるのか?

A.保健指導の評価というのは当然各保険者が行 う。医療費は健康な方が増えていけば下が っていくという関係になるので結果としては 達成される。基本的には医療費適正化計画 においても医療費の変化について目標とし ている訳ではなく、あくまでも特定健診の 基本趣旨にあるように、実施率や減少率を 見て評価をするということで考えている。

Q.費用対効果が医療費抑制を最大の目標とし ているが、健診後の指導に関して保険者が 支出する直接経費をどのぐらいに見込んで いるか?

A.具体的にまだ健診単価が出そろっていない 段階であるが、これまで行われてきた老人 保健事業等を参考にすると、対象になる方 は健診だけで5,600万人くらい、その内の 実施率が7割くらいと見込み単価を5,000円 くらいと見込むと2千億円くらいになる。

Q.保険者の増加する事務量に対しての新たな 人件費等間接経費はどうなるか?

A.間接経費がどの程度になるかはまだ分らない。

Q.25%削減は何を根拠にしているか?医療費と して仮にわずかに減少しても特定健診・特定 保健指導にはマンパワーを含めて膨大な金額が必要となるのではないか、それを含めると 結局削減ではないと思うがいかがか?

A.特定健診・特定保健指導は、医療制度改革 の大きな流れの一つの柱である。医療制度 改革の大綱の中で、この政策を実施してい くうえでの目標として25%というのが示さ れている。考え方ではあるが、最初の5年 間で実際にそれだけの効果が出るかという と10%くらいの減しか見込めない。直ちに は効果が出ないと思っている。あくまでも この対策は中長期的な観点で見たものとい うことで、なるべく病気にならないように できるだけ健康状態を保てるよう勧めてい るところである。我々のつくる医療費適正 化計画でも、この第1期の中で確実に効果 が出て医療費が下がっていくにはもう少し 時間が必要と考える。

Q.乳幼児期からの生活習慣病対策も必要と考 えるが?

A.生活習慣病対策が40歳からでは遅いという ご指摘。生活習慣病対策全体の取り組みと してハイリスクアプローチとポピュレーシ ョンアプローチの連動が基本だと考える。 まず40歳未満についてポピュレーションア プローチを主体として適正な生活習慣を身 につけていただくというのが一つある。も う一つが健康栄養調査でメタボリックシン ドロームの該当者予備軍の割合を見てみる と40代からかなり増えてきているといこと もある。その辺りで40歳以上からハイリス クアプローチをやっていくのが現時点では 合理性があると考える。

<健診について>

Q.服薬中のものは特定保健指導の対象としな いと示されている。しかし、保健指導対象 者の選定と階層化の方法で、ステップ2追 加リスクのカウント「薬剤治療を受けてい る場合(質問票より)」が含まれている。 追加リスクに含めるのかどうか。

A.今までの老人保健事業と違って、基本的に は治療を受けている方も健診は受けていた だくことが前提。その後判定の中で治療を 受けている方を確認していく。

Q.自院で対応できない検査(例えば眼底検査 とか)がある場合には、その検査のみ他院 に依頼することは可能か。特定健診・保健 指導実施医療機関名簿で区分けが必要か。

A.従来の対応でよい。

Q.後期高齢者に対する健診は、広域連合で健 診項目のうち必須項目のみ実施(努力義務) することとしているが、心電図等の詳細な 検診項目は実施しないと解釈してよいか。

A.40歳未満、75歳以上はあくまでも努力規定。

Q.特定健診事業は一部の健診事業者ばかりで なく、手あげ方式によりどこの医療機関で もできるよう制度化していただきたい。

A.医療保険者との契約になるので、保険者と 話し合いをしていただきたい。

Q.現在の健診の受診率は、18%〜20%弱で ある。これから特定検診・特定保健指導を 始めて受診率60%にあげるということだ が、指導する対象者を集めるのはだれが担 うのか。

A.受診率の向上はとても大事なことである。ア ップはなかなか難しい。医療保険者との契 約の中でやっていただくこともあると思う。

A.医療保険者が、国が求めることをすべてで きるとは思っていない。やらなければなら ないという理解は持っているが、一つは、 健診データ、レセプトデータは確かに我々 が持っているが、データを落とすのは半年 前のものである。さまざまな検証に労力を 要すると思う。壮大な計画であり、労多く してということもあり、考えていかなくて はならない。しかとやらねばならぬことと、 やれることは違う。一般衛生もあるし、割り振りもある。

Q.医師会員所属の医療機関や健診機関が特定 健診・保健指導について取りまとめの上で 保険者と受託契約を取り交わす際、契約単 位は県医師会、あるいは地区医師会、また はそれ以外の方法のいずれが妥当でしょう か?

A.いずれの場合もあり得ると思われる。でき れば県単位で対応していただくというのが 一番良いと思うが、それぞれの市町村によ って、健診の上乗せ部分に関しての問題等 と絡んでくる場合もあるので、それぞれの 地域特性が関係し市区町村での対応が必要 になる場合もあると思う。

Q.契約締結時期について、今後の行政施策等 を踏まえればいつ頃が適当(可能)でしょ うか?

A.20年4月から健診事業がスタートする。今 後の段取りについては各保険者によって少 し違うと思われるが、だいたい秋頃からど ういう契約をしていくかという具体的な契 約内容の協議が始まると考える。最終的に は年度末2月頃に終われば良く、4月に契約 が正式に成立する段取りと考えている。

Q.生活習慣病で受療中の場合は健診不要とな っているが、健診は行い保健指導が不要と 考えでよいか?

A.75 歳以上の後期高齢者の場合に健診は不 要。75歳未満の場合は健診は必要という考 え方。

Q.特定健診の料金は?

Q.特定保健指導料金は(動機づけ、積極的情 報提供の料金は)?

A.料金は契約で決まる。それぞれどういうサ ービスをしていくかで決まっていくと考え ている。今年度後半になると思うが徐々に 健診機関から示されて保険者が選ぶという形になると思う。契約の有効期限について は、契約自体は年度単位で行う。従い契約 は単年度ということになるが、保健指導に ついては年度をまたぐケースも考えられ る。その場合の単価は当然年度をまたがっ ても変わらない。次年度に行う健診・保健 指導の単価は、前年度に契約するときに示 される。

Q.健診価格は、診療報酬に準じて算出される と考えられる。しかし、日本経団連は保健 指導の積極的支援の価格として、21,000〜 85,000 円という価格幅を示している。健 診・保健指導における保険料がいくらにな り、特定健診受診者及び特定保健指導利用 者の窓口での自己負担金も支払う受診者や 利用者にとって、コストパフォーマンスを 視野に入れた金額設定が是非とも必要と考 えるが、医療保険者はいつ頃公表する予定 なのか?

A.自己負担が分らない、あるいはいつ頃出る のか、ということについて、医療保険者は 実施計画を作っていく形になる。保険料を 財源として行う。対象者数がどの程度にな るのかという財政シュミレーションを行っ たうえで保険料に反映していく。その場合 に自己負担をいくらぐらいに設定していく のかという段取りになっていくと思われ る。各保険者によって予定が違うとは思う が、今年12月頃になると思われる。

Q.医療保険料の中で、健診保健指導の部分に 払われる部分とあるいは本来の医療費に使 われる部分とがはっきりしなくなり、医療 費が影響を受けるのではないか?

A.基本的には保険料が上がるときには、来年は こういう計算でこういうふうに上がりますと いうのが当然各保険者に知らせられる。そ ういう形で示されていくと思われる。

Q.日医として医師会としての健診価格プランを示してはどうか?

A.日医総研で検討している。本日の国保中央 会の話にもあったが、必要な経費について は出し惜しみすることなく適正な価格で対 応したいということであるため、これまで の老健事業の中の基本健診をベースに検討 していただくというのが良いと考える。地 域の行政と医師会の中でこれまで委託契約 でやられていた話となるのでそこを踏まえ て対応していただければと思う。必要な経 費については、総研の方である程度の試算 はやっており数字が出ているので、それは 個別に連絡させていただければと思う。

Q.値段の違いが受診者の流れを変えると考え るが、統一的な単価にできないか?

A.医療では、診療報酬という制度で何をした らいくらということが単価として示されて いるが、これは保健事業として行われ診療 報酬の制度に乗らない。これまでも健診事 業についてはそれぞれが契約をして決めて いる。契約相手によって中身も違うし単価 も違う。そうならざるを得ない。今後の課 題としては理解している。

Q.被用者保険の中で被扶養者の方の特定健診あ るいは指導に係る費用の面だが、市町村毎で 決めるという話があったが、各企業が受診券 で対応した場合、各自治体の国保に払う費用 は変わってくると解釈して良いか?

A.全国統一の単価ということになっていない。 それぞれの契約単位で単価が違って良いか ということであれば、結果的にはそういう ことは起こりえる。隣の市でも契約をして いる健保組合があった場合、医療機関側は 契約した単価で請求する。

<保健指導について>

Q.指導時間は、一人20〜30分とのことだが、 これだけの時間をとることが果たして可能 かどうか。

A.人の行動を変えるのは非常に難しいと考え ている。一人最低20分は必要。具体的にど うやればよいのかはこれから示す。

A.アセスメント、計画を含めて20分である。計 画は作っていただいて実施していただく。

Q.生活習慣病の患者さんの対応を長い期間や ってきている。会社に働いている人はストレ ス大きく、これ以上取り組めないという方 もある。保健指導で、1に運動、2に食事と いうが、実際には本人の負担が大きい。ま た、心臓病の方が多いので、メディカルチ ェックをきちんとしないと却ってあぶない。

A.本人にきめてもらう、やることを押し付け るのではない。自分自身でできることをや っていただく。チェックシートを参考にし ていただく。治療されている方には、医療 機関の方でしっかり対応していただくこと は必要であると考えている。今回の特定保 健指導は、心臓病の人は対象にならない。

Q.保健指導で成果が出ない場合は?また、中断 する人にあたっては次回の健診の検討は?

A.基本的には、積極支援等の場合は、中間評 価あるいは次年度に成果の出る方法に変更 していただくという形になる。中断者であ るかどうかに関わらず健診は毎年受けてい ただく。

Q.事業者団体における積極的支援の価格につ いて、面談1回と電話やメールでのやりと りだけで¥21,000〜85,000/人は高すぎな いか?

A.価格は実施するところから示されていく。 厚労省が考えていることは、安ければ良い とか高いのは困るということではなくて、 効果が出るにはどうしたら良いかと考え て、その中でもできるだけ安いサービスが 良いと考えているので、そこは保険者がど う選んでいくかだと思っている。

Q.受診者へのインセンティブはないのか?

A.保険者としては、実施率なり受診率あるい は参加率といった保健指導を受ける割合を 高めることはどうしても必要である。その 向上策を当然考えていかれると思う。必要 であれば厚労省としてもいろいろご相談に 乗りたい。

Q.上記価格は指導の中身ではなく事務連絡や 教材費のコストを反映しているだけではな いか?

A.事務費や教材費はコストに含まれる。価格 的にどうなのか効果が出るやり方なのか、 というところが保険者としては選ぶポイン トになると考える。

<保健指導実施者について>

Q.保健指導実施者は一定の研修を修了したも のが望ましいとある。医師に関しては、健 康増進施設の嘱託医など日本医師会認定健 康スポーツ医を活用することが望ましいと のことだが、研修の具体的な内容が示され ていない。地域医師会において、今年度実 務者研修を開催する必要があるので研修内 容を早く示していただきたい。

A.プログラムのCDの中にガイドラインを入 れているので、ご参考にしていただきたい。

Q.県内市町村で事情が違っている。糖尿病指 導療法士が活発にやっているところもある が、今回の健診とのかかわりはどうなのか。

A.糖尿病指導療法士は、糖尿病の治療をして いるのであり、保健指導ではない。特定健 診・保健指導は、治療中のものは含まない ものとしている。健診は保健師が中心に、 治療は看護師が中心に行う。

Q.保健指導は、医師・保健師・管理栄養士が 行うとなっているが、我々の医師会は健診 事業部門を持っていないので、健診は各会 員の医療機関で行い、保健指導を医師会立の訪問看護ステーションの事業を拡大して 実施することは可能か?

A.訪問看護ステーションの事業を拡大し、そ こに委託という形だと思われるが、可能で ある。

Q.特定保健指導のリーダーとは具体的にどう いう意味を指しているのか?医師、保健 師、管理栄養士、という指導に当たる職種 全てが対象か?特別に資格と考えるもので はないと考えてよいか?

A.特定保健指導のアウトソーシング基準に関 係すると思っているが、その中で特定保健 指導の管理者というのは医師、保健師、管 理栄養士の3職種でお願いしたいと示させ ていただいている。保健指導を実際に実施 する方に関する研修としては、一定の研修 を受けていただくことが望ましいとさせて いただいている。その研修の実施主体はそ れぞれの関係団体で行われると考えてい る。研修を行う機関の関係者に対する研修 として、保健医療科学院で来月2回開催す る予定である。関係団体ではその研修に参 加していただいた上で、各団体で実際に実 施する方への研修を行っていただきたいと 考えている。

Q.健康運動指導士育成について、現在、財団 法人健康体力づくり事業団が日本健康スポ ーツ連盟に委託して運動指導士の養成につ いて全国的に行っているが、この事業は信 頼のおけるものと考えてよいか?

A.カリキュラムを定めているので、そのカリキ ュラムを終了した方については健康運動指 導士という資格を認定しているので、信頼 をおいていただいてよいと考える。この資格 を終了した人については特定保健指導の有 資格となる。特定保健指導というのは初回 面接などのコアな部分を医師、保健師、管 理栄養士の3職種が、実践的な運動指導など を運動指導士が担っていくと考えている。

Q.日医、厚労省でこれから別の運動指導士養 成の機会を考えているか?

A.日医としては運動指導に関しては健康スポ ーツ医の関わりが一番重要であると考えて いるので、そのカリキュラムの中に特定保 健指導の内容を盛り込むということで対応 すると考えている。厚労省としては現時点 では新たな養成は考えていない。

<保健指導対象者の判断基準について>

Q.メタボリック・シンドロームは疾患概念で あり、特定保健指導では該当者ではなく、 受診勧奨すべきと考える。

A.有病者予備群、生活習慣の改善として糖尿 病学会のガイドラインにしたがって、3ヶ 月、6ヶ月、生活習慣の改善をやっていた だいて、それでうまくいかないのであれば、 投薬治療を行っていただく。地域の糖尿病 対策推進会議とも連携していただいて地域 全体でやっていただくことが望ましい。

Q.判断の基準となる検査正常値の数値は現在 一般として使われている正常範囲と同じに しないと国民にダブルスタンダードを生じ 混乱しやすい。また、腹囲から尿酸値を推 察できるがごとき発言も困惑する。

A.あくまでも保健指導するための基準という ことで理解していただきたい。

Q.例えば、血液検査でガンマが異常に高いな どの結果が出ても、保健指導の対象にはな らないのか。

A.今回の特定健診・保健指導にはならない。 従来の一般保健指導で行う。

Q.二次健診はほとんど保健指導をやっている のだが、腹囲は指導の範囲内でもガンマが 高い方は対象に入ってこないのか。

A.今回の特定保健指導の対象ではないが、従 来の健診はそのままである。今回の対象 は、ロジックでステップ1・2・3で決まってくる。個々の健診で異常を見つけられた ら、それについての保健指導を従来どおり おこなっていただく。

Q.空腹時血糖が100以上、HbA1cが5.2とい う基準は糖尿病学会の方々は了承されたの かどうか、この基準にすると正常な方がか なり引っかかってくる。保健指導の方が莫 大な数になる。この基準は専門の方々が納 得した数字なのか?また、マンパワーが不 足し保健指導ができない都道府県が出てく ると民間の営利企業が入ってくる。医師会 排除等、彼らの思うつぼになることを危惧 している。保健指導のところに医師、管理 栄養士、保健師ということだが、看護師が 入ってきていないが、ここのところはどう なっているか?

A.血糖検査に関する保健指導判定値の件につ いては糖尿病学会からの意見書に基づいて いる。実際にHbA1cが5.2、血糖値が100 という方が糖尿病を発症する確率というの を統計的に出しており、それを根拠に基準 を出している。もうひとつそれに加えて、 対象者が多くなりすぎるのではないかとい うご指摘は、対象者の選定方法は空腹時血 糖が基準値以上ということだけで対象者に なる訳ではない。ほかのBMIや腹囲との基 準の重なりを見て判断することになってい る。階層基準を使いだいたい全体の25%く らいが対象になってくるのではないかとい う試算を出しているところである。2点目 の看護師の取り扱いについては、保健指導 の実施者については初回の面接等を行う計 画を立てる職種については、医師、保健 師、管理栄養士の3職種に加え、一定の経 験を積んだ看護師を5年に限り認めるとい う状況になっている。

<後期高齢者支援金との関係について>

Q.平成20年度から施行されますが、毎年具体 的な目標を掲げ評価を行っていくのですか?もし目標が達せられなかった場合、減 算になりますか?その時の金額は?どのよ うな方法?

A.健診保健指導の実施率は毎年の目標値を設 定してやっていただく。第1期では、平成 24年時点での達成状況を評価するという形 にしている。25年から始まる後期高齢者支 援金の加減算では24年のデータと比べると いう形になっていくと思われる。どういう やり方で加算減算をやっていくのかは、実 施状況をある程度みてからということが検 討会での結論である。中間見直しの頃とい うことで平成22年頃に検討したいと考えて いる。

Q.保健指導の結果によって、後期高齢者への 支援金の加算減算という可能性になるもの があるわけだが、保険の組合によって構成 員の所得も違うし、大企業の組合には賞、 国保の一部には罰となるのは明らかであ る。ますます格差が広がるのではないか?

A.そのままやるとこういうことになると思う が、本日お示ししたそれぞれの目標値は全 国の目標値であって、実際にやるとなると 各保険者の置かれている状況はかなり違 う。検討会でもいろいろ議論をいただいた ところである。大きく言うと、二つに分か れると思っている。一つは、事業主健診は 本人が受けられる。この方と健診項目とが 一致すればかなりの部分はそちらでカバー できる。罰則付きのため多くの方が受けら れると思う。そういった制度的に担保され ているようなものがあるところと、市町村 国保のようにそういったものがなくてそれ ぞれ呼びかけを行って健診を受けていただ くというところがある。そこには格差はあ ると思う。また事業主健診がある被用者保 険の中のグループであっても中小企業を多 く抱えているところは、事業主健診自体の 実施が少ないところもある、そういったと ころは大企業の場合とは少し違う。あるい はもう一つは、被用者保険の中には被扶養 者の割合が多いところと少ないところとい う差があると考えている。それぞれ毎に見 合った実施の目標は分けている。単一健保 のように大きなところは80%くらいの目標 を立てられないかと考えており、総合健保 や政管健保は70%くらい、市町村健保に至 っては65%くらいできないかと考えてい る。それぞれの保険者ごとにジャンルを分 けて定めている。

<他の健診事業との関係について>

Q.制度を安衛法と類似のものとすると特定健 診の意味が失われる。

A.メタボリック・シンドロームは入り口であ るが、心筋梗塞・脳卒中は同じような心臓 疾患も対象にしているので、健診項目はな るべくあったほうがよい。プラス労働安全 で職場健診など重要な検診が定められてい るのだと認識している。

Q.健保組合の被扶養者が市町村国保を通じて 健診を行う場合、健診項目と健診単価は市 町村国保との契約に基づくが、一部負担金 は保険者毎に違うと理解してよいか?

A.そのとおり。

<アウトソーシングについて>

Q.保健指導事業を地区医師会が担うことは可 能か。何を、またどのような機能を持つこ とが条件とされるのか。

A.アウトソーシング基準が条件となる。

Q.各実施医療機関が特定健診・保健指導の結 果を代行機関(支払基金・国保連合会)に 報告して、保険者は代行機関から実施結果 を電子媒体で受け取るように示されてい る。医師会が各医療機関の結果を取りまと めて、代行機関を通じて保険者に結果を報 告することはできないのか?(代行機関に は請求、回収、支払業務を行ってもらう)

A.代行機関について医師会ができるかという ことであるが、これは参加自由ということ にしているので可能である。

Q.医療機関が特定健診と特定保健指導を一体 的に実施し、特定保健指導の「積極的支援 レベル」の対象者にe-mailやFAXを利用し て支援する場合、e-mailやFAXの作成を当 該医療機関以外の事業者(情報提供サービ ス会社)等にアウトソーシングすることは 可能か?

A.医療機関以外の事業者にアウトソーシング するということについては、契約内容に定 めて行われれば可能である。ただ、委託す る際はアウトソーシングの基準でどういう 人が必要かという基準があるので、それは 当然守っていただくということになる。

Q.「特定健診等を実施するための集合契約に ついて」において、医療保険者と地域医師 会との関係が言及されている。平成19年度 まで、市町村は老人保健法に基づいて住民 に対して健診等を提供する義務があり、地 区医師会との契約により、会員医療機関が 健診医療機関として基本健康診査を行って きた。このスキームを踏襲する際、健診・ 保健指導の「代行機関」としての役割を期 待される地域医師会も少なからずあると考 えられる。代行機関は、社会保険支払基金 と国保連合会が挙げられているが、地域医 師会は「代行機関」として事業展開が可能 か?

A.代行機関のご質問だと思うが、参加は自由 である。ルール上可能である。どういうシ ステムを作られるかということにもよる。 コストをよく考えていかないと保険者に選 ばれるかどうかは別の問題である。

<個人情報保護について>

Q.医師会が結果を取りまとめて良いとした場 合、個人情報保護の観点から、実施医療機関が医師会へ情報提供することについて、 実施医療機関が個人毎に書面で同意を得て おく必要があるのか?

A.個人情報保護の観点からのご質問について は、医師会は契約先と考えている。当然契 約書に定めた個人情報保護の取り扱いを順 守していただければ、個人毎に同意を得る 必要はないと考える。

Q.e-mailやFAXの作成を当該医療機関以外の 事業者(情報提供サービス会社)等にアウ トソーシングすることが可能な場合、個人 情報保護法の問題があると考えるかが、実 施機関が個人毎に書面で同意を得ておく必 要があるのか?

A.個人情報の保護については、保険者との委 託契約条件に準じた保護対策をしていただ けるところと契約していただければ可能で ある。

Q.個人情報保護については触れられているが あまり保障がないのではないか。実際にア ウトソーシング先に対するチェックはでき ないと思うが?

A.個人情報保護は当然保険者としてやってい ただかなければならない。アウトソーシン グする場合もそれが守られるところにアウ トソーシングしていただくと考えている。 したがって、各保険者は個人情報が守られ ているところに、守られるという保証をも ってやっていただくことになる。それをど う担保するかというところは今のところで は明確に示していない。具体的には実施し ていく中で個人情報保護の状況について、 アウトソーシング先から報告を受けるとい うことをしていただく必要があるかと考え ている。

<医療事故について>

Q.保健指導中に不幸にして心筋梗塞や脳梗塞 が発症した際の責任の所在はどこか?

A.ケースバイケースだと考える。大前提だが、 運動指導といっても走らせる等のことは想 定していない。日常生活の中での活動が大 前提であることを理解していただきたい。 メディカルチェックの必要性等とどこに責 任があるかということとは別の話となる。 事前のチェックで重大な見落としがあれ ば、運動指導を行った機関に責任が及ぶこ ともあるかと思うが、事前に予測ができな い場合もある。その辺りを担保するような 保証制度ということであれば、実施機関が 個別に契約をすることになると考える。

Q.医療事故の話だが、保険者が委託者なので 当然責任は保険者にある。保険者と契約す るときに、その項目を含めて契約した方が 良いと考えるが?

A.当事者間のケースバイケースに限るわけで はない。原則は保険者と理解してよい。現 在、契約書のひな型を検討しているところ である。いただいた問題点はその中で検討 したいと考える。

<IT報告について>

Q.特定健診を診療所において個別健診で行っ た場合、保険者へのIT報告を行う必要があ るが、このIT報告を地区医師会等で代行し て行うことは可能か?

A.可能である。IT報告ということであるが、 必ずしもオンラインを意味している訳では ない。

Q.結果を保険者が電子媒体で受け取るとなっ ているが、保険者の環境が電子媒体を利用 できるとは限らないと思われるが?

A.保険者は電子媒体で受けるという前提で現 在準備を進めている。

<データ活用について>

Q.国民の健康を守るという立場で参加してい る。先程の説明で、特定健診・保健指導の効果判定は費用がいくら下がったかで判定 するとのことだがどうなのか。また、健診デ ータとレセプトデータを突きあわせるとのこ とだが、どこでどなたが突き合わせるのか。

A.目的は、生活習慣病予備群、糖尿病予備群 を25%下げることが目的である。その結果 として、医療費の伸びが抑えられ、国民皆 保険制度を維持できると考えている。

Q.今後、国保連合会・支払基金ともレセプト 情報・健康情報を取得することで、ますま す管理医療に進んでいくことを危惧してお ります。これら情報管理について法律の問 題・罰則等を含め国民に納得いく形で制度 設計をしていただきたい。

A.各保険者は個人情報保護法に基づくガイド ラインに沿って内部規定を設けて事業を行 っている。その定めに沿った範囲内で情報 の管理活用を行う。ガイドラインの利用目 的として定められているのは疾病分析、医 療費の分析を行うということで、レセプト や健診情報を利用するということになって いくと思われる。

<精度管理について>

Q.精度管理の問題は?

A.プログラムの中でも基準値を決めて、内部 精度管理、外部精度管理をやるということ がアウトソーシングの企画の中に明記させ ていただいている。成績については、情報 公開の時代であるため、おそらく請求すれ ばデータを出してくれるのではないかと思 う。出さない検査機関に関しては、それな りに問題があると考える。

<その他>

Q.行政から保険者への天下りが発生するので はないか?

A.行政に携わった人間が再就職をどのように していくかということは、今国会でも議論 されているところである。そういったものに乗ったやり方で再就職が進んでいくと考 える。

Q.公衆衛生委員会の中間答申の中に特定健 診・特定保健指導に関する事柄が地域の医 師会では健診・保健指導委員会を設置して この交渉に当たるべきであると書いてある が、地域の医師会でこれを設置した方が良 いか?

A.これからいろいろな問題が出てくると思う ので、できればそういう対応をしていただ ければ一番良いと考える。そこで出てきた 議論を日医に挙げていただければ検討する 課題となる。

Q.栄養ケアセンターは全国的にどういった規 模で設置されるのか?設置した箇所につい て通知をいただければと思う。

A.マンパワーは大変重要な課題と理解してい る。対象者が2,000万人おり、食生活の問 題については管理栄養士が対応しなければ ならないと思う。管理栄養士のライセンス 取得者は13万人いるが、実際に働いている のは5、6万人。資格が全く使われていな い。これがどうマンパワーになっていくか 課題である。先生方と連携する仕組みとし て栄養ケアセンターを考えている。保健師 も同様に有資格者は多くいるが就職先が少 ない状況である。是非雇っていただき活用 いただきたい。段階の世代の再就職も考え たい。掘り起こし作戦をしようということ で昨年第一弾をやった。

Q.電話・e-mailを証拠として残すのはどうや ればよいのか。

A.電話とか、e-mailなどは、チェックシート に書いていただければよい。

Q.次回以降の研修会は少なくとも一ヶ月以上 前にアナウンスが欲しい。できれば月曜日 開催を希望。

A.4月17日に厚労省で都道府県の担当者を集 めて説明会が開催され、それを受けて今回 開催しようということになった。月曜日の 開催については、いろいろなご意見がある と思うので、検討したい。

閉会

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

介護保険の双極としての保健事業(特定健診・特定保健指導)が平成20年4月より実施される。 今こそ、医師が保健活動に積極的に関わるチャンスの到来で、また、そのことが長寿県復活の大 きな第一歩となろう。医師が介護保険領域と同じく特定健診・特定保健指導への関心が希薄にな ると、長寿県復活への道のりも遠くなると同時に、医師の本来の役割が果たせず(医師法第1条: 医師は医療および保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上および増進に寄与し、もって国民 の健康な生活を確保するものとする)、その評価が低下する可能性がある。特定健診のみを実施す るのか、特定保健指導のみを実施するのか、あるいはその両方をやるのかは別として、医師全員 で関わっていきたいものだ。

厚労省は平成12年からの「健康日本21」について、糖尿病有病者・予備軍の増加、肥満の増加 や野菜摂取量の不足、日常生活における歩数の減少等にて敗北を宣言した。国民の健康を願い、 新たな視点で、糖尿病等の生活習慣病の有病者・予備軍の減少という観点から、内臓脂肪症候群 (メタボリックシンドローム)の概念を導入し特定健診・特定保健指導プログラムを構築するに至 っている。従って、生活習慣病・メタボリックシンドローム対策をここ10〜15年の一丁目一番地 の気持ちを強く持っていると述べていた。

特定健診・特定保健指導は平成20年4月より実施され、医療保険者に健診・保健指導が義務化 される。健診の対象者は40〜74歳(被保険者・被扶養者)で、保健指導の対象者は「腹囲」・ 「BMI」と「血糖」、「脂質」、「血圧」で選定と階層化が成され保健指導レベルのグループ分けを し、積極的支援レベル、動機づけ支援レベル、情報提供レベルの3グループに分ける。65〜74歳 までは動機付け支援にとどめ、医療機関に通院し服薬中の者は保健指導の対象外となろう。

特定健診を実施する施設基準等は、1)健診を適切に実施するために必要な医師・看護師等が質 的・量的に確保されている、2)検査値の精度管理、3)医療保険者に対してCD−R等の電磁的 方式で提出する、4)受動喫煙の防止措置・健診機関は敷地内禁煙、5)利用者の利便性を配慮し た健診(土日・祝日・夜間に行なうなど)。特定保健指導の実施者の範囲は、1)特定保健指導実 施者のうち保健指導事業統括者の範囲 1)医師、保健師、管理栄養士:一定の研修の終了者であ ることが望ましい。2)特定保健指導実施者のうち初回面接、対象者の行動目標・支援計画の作 成、保健指導の評価に関する事業を行なうものの範囲 1)医師、保健師、管理栄養士 2)一定の 保健指導実務経験のある看護師(ただし、施行後5年間に限る):一定の研修の終了者であるこ とが望ましい。3)特定保健指導の実施者の範囲 1)医師、保健師、管理栄養士その他の栄養指導 又は運動指導に関する専門的知識及び技術を有する者:例えば、健康運動指導士やTHP指針に基 づく運動指導・産業栄養指導・産業保健指導担当者。

平成20年度において特定健診の対象となる人数(推計)は被保険者4,739万人、被扶養者879 万人、合計5,618万人。特定保健指導者対象者の人数(推計)は動機づけ支援40〜64歳(11.0%)、 65〜74歳(22.7%)、積極的支援は40〜64歳(15.2%)で計1,400万人(内治療中約10%は対象 外)。

医療保険者による保健事業の取組強化と後期高齢者医療支援金の加算・減算については、医療 保険者に糖尿病等の予防に着目した健診・保健指導の実施を義務付けることで、健診受診率の 20%アップ、有病者・予備軍25%削減、医療費2兆円抑制(2015年)を計画し、特定健診の受診 率、特定保健指導の実施率、目標設定時と比べた内臓脂肪症候群の該当者・予備軍の減少率の達 成率をもとに平成25年度より、後期高齢者医療支援金の加算・減算を行なうとのこと。都道府県 医師会と保険者協議会とのかかわりは医師国保として参加(15県)、オブザーバーとしての参加 (37県)、保険者の同意による正式参加・知事の承認のもと(2県)の状況であることを報告して いた。

特定健診・保健指導の財源は医療保険を用いるとの事だが、その総額、特定健診費用や諸保健 指導の費用等は今年の12月頃に提示されるであろうと説明していた。後日、日医の回答によれば、 日医総研の試算によると、健診費用はHbA1c等の検診項目の有無により601点、791点が基準点 と考えられ、保健指導費用については、厚労省は25,000円〜80,000円の範囲内を想定するとして おり、基準となる費用については今後示すとのこと、ただし、具体的な金額については、医療保 険者と健診・保健指導機関との契約によるものとしている。今後の課題は統一料金設定の検討 (予防介護保険制度創設の是非)、健診・保健指導の基盤整備と精度管理、行政・保険者との折 衝・連携や看護協会・栄養士会等との連携であろう。

新しい特定健診・保健指導を単に実施することのみでなく、その改善目標を県民が理解し実践 していくために(その延長上に長寿県復活への道程があろう)、県行政・医療保険者と県医師会が 協力していくことは重要であり、その対策として、当会もワーキンググループを作り積極的に行 動する必要があると同時に、県民にとって真に実りある制度になることを切に希望する。