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国民医療を守る全国大会

宮城信雄

会長 宮城 信雄

去る5月18日(金)、東京都千代田区の九段 会館において、国民医療推進協議会主催による 標記全国大会が、加盟41団体より1,200人余の 参加の下盛大に開催されたので、その概要を報 告する。

1.開会宣言

萩原正日本柔道整復師会長より、「国民と共 に国民医療を守るため」只今より国民医療を守 る全国大会を開催する旨の開会が宣言された。

2.挨 拶

主催者代表

唐澤人国民医療推進協議会長(日本医師会長)

日本はこれまで世界の先進諸国に比較してけ っして高くない医療費水準で、最も公平、平等 な医療制度を維持してきた。WHOが公表した データを見ても平均寿命、健康寿命とも世界第 一であり、乳幼児死亡率の低さも世界トップク ラスの評価を得ている。

しかし、今後医学医術のさらなる進歩、国民 における医療ニーズの高まり、高齢社会の進展 に対応して行くためには医療費は十分な大きさ に引き上げなければならない。ところが政府は、 財政優先の医療費削減政策を断行し、その結果、 極限状態での医療提供体制が強いられ、地域医 療の崩壊とも言うべき危機的状況を招いている。 さらに、高齢者のための長期入院施設は削減さ れる方向に進められており、日医による調査結 果では医療難民が2万人、介護難民が4万人発生 する試算が出ている。また、全国各地で医師、 看護師不足による病院閉鎖や診療科の縮小など の影響が出ている。このような状況下では日本 が直面する超高齢化社会を乗り切ることは困難 である。日本はここ数年経済成長がプラスで推 移しデフレ不況を脱却したと見られている。

なぜ国民から医療のフリーアクセスを奪うの か、患者の負担を増やす政策が取られるのか、 国民の生命・健康を預かる者として世界に誇る 日本の公的医療保険制度の維持、再構築に向け て最善を尽くす責務があると考える。そのよう な思いから日本の医療を守る国民運動の展開並 びに、本日の全国大会を決意した次第である。

社会保障制度のあり方が論ぜられる今こそ、 国民と共に運動し国民医療を守っていかなけれ ばならない。本日の大会が国の誤った政策に対 し、国民の声を届ける端緒となるようよろしく ご理解とご協力をお願いしたい。

協力団体代表

鈴木聰男東京都医師会長

我々は国民の医療に対する不安を聞くだけで なく、その声をまとめて大きな行動を行う役目 がある。例えば、患者さんはこう話しをしてい る。「医療保険は病気したときの困った時のも のではないか、それを保障してくれないのなら 民間保険に加入しないといけないのではない か」、また、高齢者は「私たちは長い間にわた って日本の経済、社会を支えてきたのに、年を とって病気が多くなってくると負担が増えると いうことは残酷ではないか」、ある妊婦は開業 医で「妊娠しています、おめでとうございま す。しかしここでは出産できないので、出産で きる病院を探しなさい」と言われた。

一方、医療現場では、看護師等医療従事者は 患者さんに十分な時間をかけて接したいがそれ ができない。勤務医は過酷な勤務状態で燃え尽 きている。私どもはこのような国民の声、医療 現場の声をしっかりと受けとめ、国や、国会議 員、厚生労働省等関係機関へ働きかける責務が あり、今その行動を起す時である。

来賓挨拶

自民党社会保障制度会長の鈴木俊一をはじめ 多数の国会議員が挨拶に立たれ、異口同音に 「国民の大きな願いは健康であり、そのための 医療財源の確保に皆さんと共に頑張りたい」旨 の挨拶が述べられた。

趣旨説明

竹嶋康弘日本医師会副会長より、資料に基づ いて本大会の趣旨説明が行われた。

決意表明

国民医療推進協議会加盟団体を代表して、大 久保満男日本歯科医師会長、中西敏夫日本薬 剤師会長、木下毅日本療養病床協会長、杉山友 宏日本ウオーキング協会副会長が決意表明が述 べられ、その中で歯科医師会の大久保会長は概 ね以下のような意見を表明した。

我々医療関係者は昭和36年の国民皆保険施行 以来、当該制度の維持のために努力してきた。 それで世界長寿一を達成することができた。

確かに医療制度は難しい。我々医療機関を受 診される患者さんは同じ病気でも個人個人で状 態が違う。しかし、制度は国民が全て違うとい うことを前提には作れないし、制度を効率的に 運用するために何処かで線引きしなければなら ない。大事なことは、我々医療提供者が制度を 作る国側と制度を受ける国民との間に入って、 その距離を縮めるための努力をすることであ る。しかし近年の医療政策はその距離が益々開 きつつあり、我々医療関係者の声が制度の中に 届きにくくなっている。

今のような医療費抑制策が続けば、地域医療 の崩壊、医療そのものが崩壊の道を歩むのでは ないかと最大の危機を持っている。

現在、日本には80歳で20本の歯を残し健康 であることをささやかな幸せと感じ日々暮らし ているお年寄りが大勢いらっしゃる。そのよう なお年よりを支えるのは家族や地域社会であ り、いざとなったときは我々医療関係者であ る。しかし、何よりも大切なことは国がその高齢者を見守る制度を確立することである。

人間の生きることの根幹は、「食べることと 会話をする」ことであり、生きることの根幹を 支えるが歯科医療である。我々6万5千人の歯 科医師会員は常に「人間の生きる根幹を支え る」という言葉を胸に秘め日々診療活動に励ん でいる。私どもは今後とも皆様と共に歩むこと をお誓い申し上げる。

決 議

羽生田俊日本医師会常任理事より下記決議文 の朗読説明があり、全会一致で原案通り承認さ れた。

頑張ろうコール

最後に川合秀治全国老人保健施設協会長の音 頭で頑張ろう三唱が行われ、大会の幕を閉じた。

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