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感染症危機管理対策協議会

理事 金城 忠雄

去る3月8日(木)、日本医師会館において標 記協議会が開催されたので、その概要について 報告する。

定刻となり、飯沼雅朗日本医師会常任理事よ り開会が宣言され、唐澤人日本医師会長より 次のとおり挨拶があった。

「日本医師会では昨年5月に子ども支援日本 医師会宣言を行い、宣言にある子どもの育ちや すい医療環境の充実の具体的項目として、予防 接種の充実と接種率の向上を挙げている。日本 医師会、日本小児科医会、厚生労働省の主催に より実施している子ども予防接種週間は、健や か親子21においても高く評価されている事業で ある。

また、4月1日より結核予防法が感染症法と 統合されるが、結核対策が後退することのない よう我々といたしましても注視していかなければならない。日本医師会において、感染症危機 管理対策室を設置して10年になる。国民の生 命・健康を守るため、新型インフルエンザの発 生等に備えるため、さらに万全の体制を期す必 要があると考えている。」

報 告

(1)感染症対策をめぐる最近の動向について

飯沼雅朗日本医師会常任理事より、以下のと おり報告があった。

1)子ども予防接種週間について

日本医師会、日本小児科医会、厚生労働省の 主催により3 月1日から7日までの一週間、普 段、予防接種を受けられなかったり、病気等で 延期になった子ども達のために全国で実施して いる。

平成15年度から毎年行っており今年度で4回目の実施となる。昨年度は8万人の接種が行わ れ、健やか親子21においても非常に高く評価さ れている。

また、日本医師会では昨年度より、都道府県 医師会に対し、住民に対する啓発、講習会等の 実施のために30万円の補助をしている。

今年度の実施医療機関は、11,000以上となっ ており、朝日新聞や読売新聞等に掲載して周知 を図ったところである。

2)日本脳炎の予防接種及びDPTの接種間隔に ついて

昨年は、熊本県で小児の日本脳炎患者が発生 し、この問題の重要性については認識している が非常に対策が難しい。

ADEMの頻度が高いことから、ベロ細胞で ウイルスを増殖させ、それをワクチンにすると いう試みが1〜2年前から行われており、うま くいけば今年か来年には間に合うとのことであ ったが、組織培養ワクチンが少し遅れている状 況である。

DPTの接種間隔については、3〜8週間の間隔 を過ぎたものも定期で予防接種を行えるよう厚 生労働省にお願い申し上げているところである。

しかし、法改正を行うことはなかなか難しい ことから、なるべく8週間以内で接種していた だいて、接種できなかった人を救う方法を考え なければならないと考えている。

また、市町村が独自で行うケースがあるが、 この場合は、行政と相談をしていただきたい。

3)感染症法改正について

今年4月より結核予防法が感染症法と統合さ れること等の法改正に伴い、二類感染症に結核 が新たに追加されることや重症急性呼吸器症候 群(SARSコロナウイルスに限る)が一類感染 症から二類感染症に移行するなどの感染症法上 の感染症類型について見直しを行った。

また、「高病原性鳥インフルエンザ」という 名称を「鳥インフルエンザ」で統一することと なった。

4)市民公開講座について

昨年10月に市民公開講座「知って防ごう性 感染症〜現状と対策〜」を開催し、NHK教育テレビで放映したところ反響も高く、45分間に 短縮したDVDを今月の終わりには全国の高等 学校に配布することになっている。

来年度の感染症についての市民公開講座は、 「新型インフルエンザ」をテーマに5月12日に 開催予定。NHK教育テレビでは5月27日(日) 18:00〜19:00に放映する予定である。

5)肝炎対策について

C型肝炎ウイルスの検査が保健所等で検診以 外にも行われているが、受診者が非常に少なく、 都道府県から各医療機関でも行ってほしいとい う依頼がおそらくあるのでご協力を賜りたい。

また、依頼がない場合も都道府県に対して積 極的に働きかけていただきたい。

(2)感染症改正及び新型インフルエンザ対 策について

三宅智厚生労働省健康局結核感染症課長より、 今回の感染症法改正並びに新型インフルエンザ、 肝炎対策について次のとおり報告があった。

まず、感染症法に基づく対応として、感染症 の発生の予防、及びそのまん延の防止を図るこ とを目的とする。その手段には、1)基本指針、 予防計画の策定、2)感染症発生動向の把握、3) 感染症発生時の適切な措置(就業制限、入院 等)、4)適切な医療の提供(感染症指定医療機 関)がある。

今回の感染症法改正には次の3つの大きなポ イントがある。

○生物テロや事故による感染症の発生・まん延 を防止するための病原体等の管理体制確立

炭疽菌等を使用したバイオテロリズムへの備 えをすることや、SARSなどに関しては、実験 室内感染で発症したという例もあることから、 そういった事故防止を目的とする。また、一種 〜四種病原体等においても病原体等に応じた施 設基準、保管、使用、運搬、滅菌等の基準(厚 生労働省令)の遵守や厚生労働大臣等による報 告徴収、立入検査、厚生労働大臣による改善命 令、改善命令違反等に対する罰則を行う。

また、感染症の発生状況及び動向の把握について、新興感染症やバイオテロリズムが起こっ ている場合には、症候群サーベイランスを立ち 上げ、38℃以上の発熱及び呼吸器症状のある者 や発疹や水疱の皮膚の症状が出ている者を届出 なければならない。

さらに、感染症の発生の状況、動向及び原因 に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療 に必要な情報を新聞、放送、インターネットそ の他適切な方法により積極的に公表しなければ ならない。

○最新の医学知見に基づく感染症の分類の見直し

・1類感染症追加→南米出血熱
・2 類感染症へ移行→ SARS コロナウイルス (感染力があまり高くない)
・2類感染症追加→結核
・3類感染症へ移行→コレラ、細菌性赤痢、腸 チフス、パラチフス
・4類感染症追加→オムスク出血熱など11疾患 が追加

○結核を感染症法に位置付けて総合的な対策を 実施

結核に関する感染症法については、平成19 年4月1日から施行される。感染症法との統合 後も、高齢者の結核や都市部での結核等の大き な課題に取り組まなければならない。

結核患者の入院と公費負担制度については、 現行の結核予防法では、診査協議会を開き、入 所命令を出さないと公費負担ができなかった が、今回の改正感染症法では、72時間以内に入 院勧告を出すことができ、入院してすぐに公費 負担ができるというメリットがある。

また、結核患者等の届出に関しては診断後直 ちに出していただくこととする。

新型インフルエンザ対策については、現在、 フェーズ4以降のガイドラインを策定中であり、 詳細は以下のとおりとなっている。

1)早期対応戦略ガイドライン「国内発生初期に おける対応(予防投与等)」

2)検疫ガイドライン(海外からの水際対策)

3)個人及び一般家庭等におけるガイドライン (個人・一般家庭における対応)

4)医療体制に関するガイドライン(国内発生時の医療体制)

5)ワクチン・抗ウイルス薬ガイドライン(薬剤 の優先投与、供給体制)等

現在、抗インフルエンザウイルス薬の備蓄に ついては、タミフルを中心に、平成19年度まで に治療用を約2,500万人分備蓄することを進め ている。さらに、予防投与用も300万人分備蓄 予定である。

ワクチンの開発、生産については、Clade1の ベトナムの株とClade2のインドネシアの株で プレパンデミックワクチンを1,000万人分事前 備蓄をしている。これは、最低限の社会機能維 持用と医療従事者用である。

また、インフルエンザ(H5N1)については、 指定感染症・検疫感染症として定め、フェーズ 4に入ってもすぐに措置が取れる状態に引き上 げている。

さらに、新型インフルエンザ対応訓練や国際 協力(特にアジア諸国でのインフルエンザ対 策)等を行っている。

課題は、患者が多数発生した場合の医療施設 の病床数である。現状の行動計画の中では、感 染症指定医療機関の病床や結核病床の陰圧病床 を合わせた全国約5,000床で対応するとあるが、 緊急時には、大型施設(体育館等)を利用する などの対応を考えていかなければならない。

タミフルの副作用の問題に関しては、インフ ルエンザでも同じ症状が出る場合がある。一昨 年にインフルエンザ患者の中でタミフルを服用 した患者と服用しなかった患者の比較研究を行 ったが有意差は見られず、精神症状がタミフル の影響とは言えないという結果が出ている。

しかし、これからも副作用に関しての情報収 集は引き続き行っていく。

また、ワクチンができるまでは半年以上かか ることが想定されるため、それまでの間はタミフ ルが大きな支えとなる。WHOとしてもタミフル を推奨しており、アメリカやヨーロッパなどの諸 外国でもタミフルを備蓄している状況であるこ とから、我々の方針としてもタミフルを備蓄す るという状況は変えずに取り組んでいく。

感染拡大防止策としては、1)家庭・施設内予 防投薬、2)接種者予防投薬、3)地域内予防投 薬、4)薬剤以外の感染拡大防止策等を行うこと としている。

フェーズ4になった場合には、検疫所におい ては国外から到着した飛行機等に検疫官が入り 検査を行い、医療機関においては、発熱外来を 設置し対応する。

肝炎対策については、従来どおり、かかりつ け医が専門医療機関と連携を図るとともに、今 後、都道府県に原則1ヶ所設置される肝疾患診 療連携拠点病院(仮称)が診療支援をするとい う形や、全国肝炎対策懇談会や都道府県肝炎対 策協議会が情報提供等の連携を行っていくこと などを考えている。

平成19年度老人保健法における肝炎ウイル ス検診等の実施の考え方(案)については、老 人保健法に基づく健康診査において、1)平成19 年度に40歳になる者を対象に節目検診として、 また、2)平成19年度基本健康診査において肝 機能異常と判定された者、及び3)過去5年間の 肝炎ウイルス検診の対象者(節目検診対象者及 び節目外検診対象者)であって受診機会を逃し た者を対象に節目外検診として、肝炎ウイルス 検診を行い、対象者等に対する健康教育・健康 相談も実施する。

また、老人保健・政管健保以外での肝炎ウイ ルス検査は、これまで保健所のみで実施されて いたが、医療機関委託での実施が可能になった (一部自己負担あり)。検査費用としても老人保 健事業の節目外検診の基準単価及び費用徴収基 準額に準じた額としている。

(3)ワクチンビジョンについて

関英一厚生労働省医薬食品局血液対策課長 より、次のような報告があった。

新しいワクチンについて、日本はアメリカと 比べて未導入品が多いというような状況であり、海外で使用しているワクチンを日本でも使 えるようにするという観点からするとこういっ た状況でよいのかという問題意識がある。

ワクチンの開発や供給等の政策については、 予防接種法への位置付けや社会的にどういう風 に認知されているかで顕著に状況が変わってく る。また、先の見通しが立ちにくく、市場予測 が難しいというような特徴があるので供給者側 からはリスクが高く、研究開発意欲が湧かない という状況にもなる。

このような状況を打開するため、平成17年に 「ワクチンの研究開発、供給体制等のあり方に 関する検討会」を発足し、ワクチン産業ビジョ ンの要点として次の7つの柱を取りまとめた。

ワクチン産業ビジョンの要点

1.基礎研究から実用化(臨床開発)への橋渡 しの促進

(1)基礎研究では、研究開発における官民連 携/研究機関連携の促進

 (官民共同の政策創薬研究の推進や研究機関協議会の形成)

(2)日本医師会「大規模治験ネットワーク」 の活用推進

 (例)新型インフルエンザワクチンの治験への日本医師会の協力

2.関係企業の戦略的連携による臨床開発力強化

 →国際競争力のあるワクチン生産基盤の確保

(1)国民のニーズに合った新しいワクチンを 旧来からのワクチンメーカーと研究開発企 業とが連携して開発→臨床開発力の強化、 開発の効率化

(2)新ワクチン導入による競争力強化、収益 構造の転換による事業の安定化、ひいて は、国内製造体制の確保

(3)外国企業との協力の促進(シーズの導 入、外国市場への展開)

3.危機管理上必要だが民間の採算ベースに乗 りにくいワクチンに対する国の税制、研究開 発助成等の面での支援

(例)新型インフルエンザに備えるプレパン デミックワクチンについて、オーファン制度の対象として位置づけ、税制上の優遇措置 (H18〜)

4.疾病のまん延に備えた危機管理対応ワクチ ンの生産体制の確保のための国による支援や 買上げ

(例)新型インフルエンザに備えるプレパン デミックワクチンの製造と国家備蓄

5.ワクチンの薬事承認・実用化に向けた制度 基盤の整備

(1)ワクチンの治験・承認審査に有用な試験 実施に係るガイドライン作成

(2)治験相談、審査に係る体制の質・量両面 にわたる一層の充実

6.ワクチンの需要安定化に資する調整機能の 整備

(1)感染症疫学的なデータに基づく需要予測 と需要調整機能の確保

(2)危機管理に強い地域ブロック単位の在庫 管理・配送ネットワーク体制の準備

(3)需給安定化のための必要量を一定程度予 備的に生産確保することについて、受益す る関係者によって幅広く社会的に支えてい くことへの合意形成

7.ワクチンに関する普及啓発

・ワクチンの意義や重要性についての正確で 分かりやすい情報を、幅広く国民に提供す るための普及啓発活動の推進

・ワクチンの有用性を総合的に評価する医療 経済学的な調査分析の推進→その結果を、 関係者の協力を通じて、国民がワクチンの 意義を理解する上で活用できるようにして いく

質疑応答

○三種混合予防接種について

Q:千葉県医師会

三種混合のT期初回においては3〜8週間 の間隔を過ぎたものは定期の予防接種の扱い でないため、患者に不利益を与えており、任 意接種でなく定期で可能とならないのか。

A:三宅課長

現時点では、予防接種法に基づき実施する ことになるが、本件についてはいろいろとご意 見を伺っており、予防接種に関する検討会に おいても有効性・安全性、接種間隔などにつ いてはデータ等を集めて検討を進めている。

○子ども予防接種週間について

Q:千葉県医師会

千葉県内においても多数の医療機関の協力 のもと、予防接種週間に取り組んでいるが、 土曜日、日曜日の両日に予防接種を受ける患 者は少なく、副反応等が起こった場合に、バ ックアップする医療機関がない。接種率の向 上を考えるのであれば、行政による集団接種 への協力体制などを検討すべきである。

A:飯沼常任理事

小児救急医療体制については、ご案内が遅 く申し訳ありませんでしたが、各都道府県衛 生主管部(局)に対し、協力依頼は出されて いるとのことであり、2次、3次救急医療機関 では、その対応がなされていたと理解してい る。土曜日、日曜日に関しては、体制を整え てこれからも同じく実施していきたいと考え ている。

○日本脳炎ワクチンについて

Q:東京都医師会

日本脳炎ワクチン定期接種再開の予定について

Q:和歌山県医師会

今後の日本脳炎ワクチンの出荷本数並びに 培養細胞を用いた日本脳炎ワクチンの許可の 見通しを教えてください。

A:関課長

新しい組織培養ワクチンについては、2社 が承認申請をしているが、データにおいて充 分検証する必要があるため時間を要してお り、1年という期間では見込まれていない。

当面は現行ワクチンの在庫に関して問題な いが、急激な需要があった場合の対応につい てはよく考えていく必要がある。

○新型インフルエンザ対応ガイドラインにつ いて

Q:兵庫県医師会

「発熱外来」を全機関に特設することは困 難であり、むしろ発熱を含めたトリアージの ための「専用外来医療機関」設定して、初診 者はそちらに保健所より誘導すべきである。

搬送は、一般機関が個別患者毎に感染防御 しながら自前で搬送することは困難である。 保健所の指揮する専用車か、担当者同乗によ る当人自家用車等にて、隔離環境で上記「専 用外来医療機関」受診とすべきである。感染 症対応の専用救急車の増配も必要である。

A:岡部感染症危機管理対策委員会委員

「発熱外来」によってスクリーニングを行 うことにより、一般外来に新型インフルエン ザが紛れ込む等の問題点は多少解決できると 思う。発生初期においては少ないステーショ ンでよいが、患者数や医療従事者の確保状況 に応じて数多く設置する必要があると考える。

しかし、実際に「発熱外来」を運営するた めには、行政機関や保健所の人だけではとて も間に合わないので、医師会の先生方のご協 力が必要である。

搬送について、患者発生の初期段階におい ては、保健所へ連絡の上、救急車で行えると のことである。

Q:奈良県医師会

発熱外来を含め、医療従事者に対するPPE 等は行政側が準備をしてしかるべきものと考 えるが如何か。

ワクチン接種ガイドラインについては、フ ェーズ4に入ってからパンデミックワクチン 製造までの期間が半年と聞いていたが、今回 突然発生時期によって1年以上の期間を要す ると変更された。その根拠と、期間の幅(早 い時、遅い時)を示していただきたい。

A:飯沼常任理事

PPE等については、「新型インフルエンザの 流行と拡大に備え、医療機関等で使用される マスクや消毒薬が充分確保されるよう必要な対策を講ずること」と感染症法の附帯決議の 中にある。

しかし、地方交付税の措置ということにな っているので、都道府県に対して申し入れを していただきたいと思う。

A:関課長

ワクチン製造までの期間として、まず6ヶ 月というのは、製造ラインが回る期間であ り、実際に生産に着手するためには、有精卵 が絶え間なく生産ラインに流れ込まなくては ならない。その有精卵を産む親鳥の確保にも 最低6ヶ月はかかる。また、株の調整(特に 弱毒化プロセス)が必要になるため、全体像 として、パンデミックが起こって、そこから 引算して1年という期間は避けることができ ないと考える。

Q:宮崎県医師会

現時点で新型インフルエンザが疑われて も、各医療機関からすぐに抗原同定などの検 査依頼を受けるシステムが構築されてない。

また、検査委託先として、保健所だけでな く、小回りのきく一般の検査委託業者などが 利用できないものか検討願いたい。

A:三宅課長

各地の衛生環境研究所が担当するという体 制になっており、国立感染症研究所が技術的 なバックアップ等を行うことになっている。

総 括

感染症対策を強力に進めていくということは、 日本医師会の大きな仕事のひとつであり、国民 の生命・健康を守るために全力で取り組んでい かなければならない問題であると認識している。

また、感染症対策全般についても問題等が生 ずることがあれば、厚生労働省と協議を行う所 存であり、ご遠慮なく感染症危機管理対策室ま で申し出いただきたいと思っている。

今後とも、都道府県医師会及び郡市医師会に 対し、速やかに情報提供をしていくが、その情 報が地域医師会から医療機関へスムーズに流れ るよう、ご協力いただきたい。

印象記

金城忠雄

理事 金城 忠雄

日本医師会は、感染症危機管理に過剰と思えるほど重大な関心を払っている。私自身の認識の 甘さをつくづく思い知らされ、恥じ入るばかりであり、いい薬になった。

子ども予防接種週間は、新聞や多くのメディアを活用して啓発活動に多大の努力をしている。

子どもの健康状態や何らかの事情によりDPTが法定の定期に接種できない時の対応等諸々の問 題が指摘された。日本脳炎ワクチンも急性散在性脳脊髄炎(ADEM)の副作用のため、厚生労働 省は、平成17年5月に積極的な接種を差し控えるよう勧告を出している。安全な新しいワクチン はいまだに開発されず、特に当地沖縄県は日本脳炎の汚染地域にあるので危惧するところである。

次に、厚生労働省の担当課長の講演では、改正された感染症法に基づく行動指針とその対応等 があった。

特に鳥インフルエンザから派生した新型インフルエンザは、全世界的に爆発的に流行するいわ ゆるパンデミックの発生は必ず起こり、日本では2,500万人発症し、死亡者64万人、オーストラ リアの研究所の試算では、210万人の死者を予想していると。そうなると、患者の集中により、ま ず真っ先に医療関係者が危険に陥るし、あげくは、莫大な数の死者により埋葬もままならなくな るので全国民が対処の方針を充分準備すべきであり、のんびりしてはいけないと。ワクチンの開 発には時間がかかるし、タミフルの備蓄計画や日本国民全体の啓発活動など身の毛もよだつ空恐 ろしい講演であった。

日本医師会あげての最重要課題のこの感染症危機管理対策は、感染症専門医は勿論のこと、小児 科医の参加が絶対に必要である。2002年に出現したSARSが沈静化したように、この新型インフルエ ンザも日本では、静かに通り過ぎるよう祈るばかりである。気が滅入る思いで帰路についた。