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在宅における終末期患者への対応に関する講演会

副会長 小渡 敬

去る2月28日(水)ラグナガーデンホテルにおいて在宅における終末期患 者への対応に関する講演会を開催した。





講師に、日本医師会前常任理事で野中医院院長の野中博先生をお招き して「在宅における終末期患者への対応〜住み慣れた 地域で安心して暮らすために〜」と題して、ご講演いただいた。

講演の冒頭で、後期高齢者医療については、 後期高齢者の心身の特性等にふさわしい医療が 提供できるよう、現在、検討されている段階で あると述べた。その重点項目としては、1)ター ミナルケアの在り方について国民的な合意の形 成を踏まえた終末期医療の評価、2)在宅におけ る日常的な医学管理から看取りまでの常時一貫 した対応が可能な主治医の普及、3)在宅での看 取りまでの対応を推進するための、医師、看護 師、介護支援専門員、訪問介護員等の連携によ る医療・介護サービスの提供、4)在宅医療の補 完的な役割を担うものとしての、入院による包 括的なホスピスケアの普及、であるとした。

次に、医師並びに医療従事者が取り組む患者 への健康・生活支援に対する役割について説明 し、在宅医療は、「ただ単にハイテクな医療を 行うだけでなく、地域のすべての人々が、人間 としての尊厳が尊重され、住み慣れた地域で最 愛の家族と地域の人々に囲まれながら、いつま でも安心して暮らすことを医療・介護を通じて 支援する必要がある」とした。

在宅療養支援拠点については、在宅療養支援 診療所だけが在宅医療に従事すれば良いという ことでなく、患者にとって一番大事なのは、 「なじみの医師」であることを強調された。

また、「地域を病棟へ」を目的とし、患者が 異常を覚えたときには、1)患者・家族が訪問看 護STや医療機関へ電話連絡。2)訪問看護師が 訪問。3)訪問看護師が状況を把握し、必要であ れば医師に連絡。4)医師が訪問し診察。5)訪問 看護師へ治療内容を指示する。というような在 宅での医療連携を行うべきであるとした。

さらに、疼痛を主訴とする患者が、自宅で日 常生活を送るためには、1)入院中に主治医或い は、専門医から提供されていた除痛法を継続す る。2)がんの進行に伴う痛みの強さや範囲の拡 大に対して鎮痛薬を調節する。3)突然に強い疼 痛が生じた際、再入院医療や専門医との適切な 連携により対処する必要があると述べた。

生活習慣病予防や介護予防については、疾病 の早期発見や疾病の治療、重度化予防といった 二次・三次予防ではなく、健康づくりや疾病予 防、要介護状態になることの予防などの一次予 防から国民の健康を考えていくことが大切なこ とであるとした。

最後に、在宅での看取りを成立させる要件と して、多職種協働で患者を支援し、なじみの地 域でなじみの医師や看護師等の医療従事者が、 より良い医療を提供することが患者へ勇気を与 えることになると述べ、講演を締めくくった。

講演後、参加された医師や看護師から地域包 括支援センターの活用についての質問があり、 野中先生は「かかりつけ医が患者の生活機能が 低下していると判断したときに、総合的な相談 窓口機能である地域包括支援センターへ連絡を するための様式を各地域の医師会が作成する 等、医師が地域包括支援センターを利用しやす い環境をつくるべきである」とした。