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九州ブロック日医代議員連絡会議

副会長 玉城 信光

去る3月17日(土)、大分市全日空ホテルオア シスタワーにおいて標記連絡会議が開催され、 九州ブロックから選出されている委員により日 本医師会委員会報告が行われたので報告する。

今年度は、日本医師会地域医療対策委員会に ついて本会大山常任理事から、また、医療関係 者対策委員会について野村秀洋鹿児島県医師会 常任理事からそれぞれ報告がなされた。

大分県医師会半澤常任理事の司会により開会 されたあと、嶋津九州医師会連合会長(大分県 医師会長)から、次のとおり挨拶があった。

「各県医師会の代議員の先生方にはご多忙の なかご来県いただき感謝申しあげます。今回 は、日医の委員会報告として、地域医療対策委 員会と医療関係者対策委員会の2題をお願いし ているのでよろしくお願いします。」

報告

(1)地域医療対策委員会 大山朝賢委員 (沖縄県医師会常任理事)

本会大山常任理事から日医地域医療対策委員 会中間報告として纏めた「医師確保に関する喫 緊の対応」について説明を行った。以下、概要 (詳細は本誌41ページ掲載の中間報告書をご参 照下さい。)

地域医療対策委員会は平成18年8月に発足。 唐澤人日本医師会長よりいただいた「地域医 療提供体制の今後と医師会の役割」の答申を委 員会として検討する過程において、医師確保の 問題については取り分け重要な問題と捉え、平 成18年度中に中間報告を作成することにした。 委員会は、中間報告を纏めるにあたっては、国 民・患者の視点を基本に、医師・医師会として 実行し得る現実的な医師確保対策について検討 した。

報告書は、1)第T章医師需給問題のこれま で、2)第U章日本医師会の対応、3)第V章委員 会の提言の構成となっている。

第T章では、これまでの国の対応を説明。昭 和45年には医科大学の入学定員を1,700名増加 させ約6,000名にすると述べられ、昭和48年か ら一県一医科大学設置が推進された。昭和61 年には昭和70年を目途として医師の新規参入 を10%削減する必要があると見解が示された。 平成10年の「医師の需給に関する検討会報告 書」でも削減の方針が示されている。

将来的には医師数が過剰になることを予測す る医師数全体というマクロ的視点から検討がな されたため、ミクロ的な視点として医師の偏在 問題なども指摘されてはいるものの、具体的な へき地・離島に関する問題や診療科対策への提 言が十分であるとは言い難い。医師確保が社会 問題化してから、厚労省・文部科学省・総務省 の三省合同で「地域医療に関する関係省庁会議」 の設置、「医師需給に関する検討会」の設置、 「医師確保総合対策」の発表などが行われた。

第U章では、これらの国の対応に対して日本 医師会が昨年公表した「日本医師会による医師 確保に関する見解」について説明。現在の医師 偏在・不足の原因は、国による永年にわたる医 療費抑制政策が根底にあると指摘。喫緊の課題 である医師確保問題への対策を、(1)安全で良 質な医療を平等に提供する体制の確保(2)勤 務医の確保(3)かかりつけ医機能の充実(4) 医師会活動の強化をコンセプトにまとめた。日 医が責任を持って取り組む主な対策としては、 3つ「ドクターバンクのネットワーク化」「女性 医師バンクの創設・実施」「地域医療のデータ ベース化」を挙げている。

第V章では、委員会で議論された項目とし て、ア)研修医の地域偏在、イ)各大学の地域 定着の推進、ウ)ドクターバンクの効果的な運 営、エ)診療科の偏在対策、オ)病院のオープ ン化、カ)地域住民・患者との相互理解、キ) 医師不足地域対策について議論が成されたこと が記載されている。

質疑応答

池田委員(鹿児島県)

医師数を増やす、医学部定員を増やす(110 名)とのことだが、エビデンスがあっての人数 なのか。20年たって8,000名ぐらい増えたら対 応できるのかどうか。仕事量・労働時間・女性 医師のことなど、きちんとシミュレーションし たうえで必要な医師数を出してはどうか。日医 総研で精査したうえでもう1回やり直してはど うか。

大山常任理事

池田先生の言われることは最なことだと思 う。10人増やすというのは厚労省から出たも の、これまでの日本の医師会は投げられたボー ルへの対応であったが、逆に玉を投げていく、 提案を出したものである。先生のご意見を委員 会にお伝えしたい。

上野委員(福岡県)

「へき地勤務の義務化」について、会員から たくさんのブーイングが来ている。日本医師会 から徴兵制を認めるのかという意見まである。 「義務化」に関してかなり抵抗があり、特に若 い会員に強い抵抗がある。会員への説明はどう すればよいのか。

大山常任理事

これについては、委員会でもだいぶもめた。 非常に議論になった。現在開業している人に行 ってということではなく、新医師臨床研修を済 んだ人たちが、まだへき地に行っていないなら ということであるが、委員会にお伝えしたい。

へき地勤務の義務化は、いずれ国が言ってく る。国が先に決めては困るので、医師会の方か ら提案した。

合馬委員(福岡県)

委員の一人としてお答えする。この報告書を よく読んでいただければ「へき地や医師不足地 域での勤務の義務化を考慮する。以上のような 議論が成された。」と書いてある。かつて、厚 労省が医師のへき地勤務を義務化しようとした が、武見先生、西島先生が頑張って取りやめに なった経緯がある。しかし、医師不足という大 きな問題を、現在国が主導でやっているが、日医が何かやらなくてはならない、何らかの形で 後期臨床研修の中に離島勤務を組み込むのは制 度的には難しいことではあるが、いろいろ議論 がなされたことをなんらかの形で報告したい と、あくまでも委員会の議論の結果を纏めたも のであり、あとは日医執行部に対応を考えてい ただく。また、議論の結果、解決策は見出せな かったと書いてある。

(2)医療関係者対策委員会 野村秀洋委員(鹿児島県医師会常任理事)

野村秀洋委員より日本医師会医療関係者対策 委員会の概要について報告があった。

本委員会は各ブロックから選出された委員と 日医執行部から竹嶋副会長、羽生田常任理事、 今村常任理事の3名が加わり計15名で構成され ている。委員長は森下立昭香川県医師会長が務 めている。

4月唐澤会長より「看護職員の不足偏在とその 対策について」の諮問事項を頂き、現在、准看 護師問題等も含め、種々議論が展開されている。

今回報告では、1)日本医師会看護職員需給調 査の結果について、2)EPAと外国人看護師等の 受入れ問題について、3)医師会立養成所におけ る助産師養成定時制コース開設について、4)看 護基礎教育の改正に伴うカリキュラム見直し問 題について、以上4項目について報告があった。

1)日本医師会看護職員需給調査の結果について

平成17年末厚生労働省が発表した第6次看護 職員需給見通しが、現場の実態と大きく乖離し ている点を問題視し、今後の看護職員確保対策 における基礎データを独自に把握すべく、昨年 11月下旬、日医総研協力のもと全国の病院や 看護師等養成所に対し実態調査を行った。

調査では、全国から抽出された3,185病院(有 効回答数2,091 病院、回答率65.7 %)と全国 1,310校の看護師・准看護師学校養成所(有効回 答数1,014校、回答率77.4%)にアンケートを送 付し、昨年10月時点のデータを取り纏めた。

調査の結果から、病院における看護職員の需 給予測については、一般病棟入院基本料の看護 配置基準に「7対1」が導入されたことを背景と して、各地で看護師の争奪戦が激化、本調査で 以下のようなことが明らかになった。

・全国の一般病棟における7対1看護の比率は、 昨年10月末現在、病床数ベースで13.1%と なっている。7対1看護の比率は、規模が大 きい病院ほど高い傾向が見られ、300床以上 では15.1%である。

・当面の看護配置基準の予定として、看護配置 が厚い300床以上の病院では、2009年度に病 床の6割を「7対1入院基本料」にすることが 予定されており、看護基準の引き上げが徐々 に行われるのではなく、2008年度までの短期 間で急激な引き上げが予定されている。数年 間は看護師不足が顕著になると考えている。

・また、目標とする看護配置基準を達成するた めに病床数の削減も予定されており、1年半 で約2万床が看護配置基準のためだけに削減 される見通しである。

・看護学校養成所への求人状況の変化として、 東京以外の地域の看護師課程では、県外や都 市部からの求人が増えている。特に北海道、 東北、中国・四国、九州で顕著であった。

・看護師・准看護師不足の背景として、准看護 課程卒業者数が激減していることも要因とし て挙げられる。准看護師の4割近くは診療所 に勤務しており、病院の看護師・准看護師不 足の問題は、今後診療所にも深刻な影響を与 えるものと懸念している。

本調査結果から得られた課題を次の2項目に 取り纏めた。

調査結果から得られた課題

1.看護配置基準の引き上げは、段階的に行う ように方向修正すべきである(激変緩和)

・ここ約1年半の間に、急激な看護配置基準 の引き上げが予定されている。

・看護配置基準達成のため、一般病床2万床 以上の閉鎖も検討されている。

・病棟・病床を閉鎖しても、今後1年半の間 に看護職員約7万人の増員が必要である。 しかし近年の就業者数増加分は、病院以外 も含めたすべてで年約3万人である。

・都市部の病院からの求人が増えている。給 与面で国公立病院に水をあけられている民 間中小病院では、経営が成り立たない。

2.早急に准看護師養成策を見直すべきである

・看護師・准看護師不足の背景のひとつは、 准看護師課程卒業者数が激減していること にもある。

・病院は看護配置基準の引き上げのため、診 療所の准看護師もターゲットにしかねな い。地域の診療所で深刻な准看護師不足が 起きる。

本調査結果を基に、去る1月31日の中医協の 場において12年ぶりとなる厚労大臣あての建議 書の提出を導き出す結果となった。また、昨日 第5回目の医療関係者対策委員会が開かれ、年 末賞与支給後の看護師の移動状況などを把握す ることが重要だとの意見から、再度実態調査に 乗り出す予定であるとの説明があった。

○EPA外国人看護師等の受け入れについて

平成16年11月、フィリピンとの間のEPA (経済連携協定)が大筋で合意され、日本への フィリピン人看護師等の受け入れは早ければ今 夏以降、発効される見通しである。

この問題に関する日医の見解は、協定で決ま った看護師等の候補者受け入れについては、基 本的に反対はしないが、これらの関係職種の養 成は、本来国が責任を持って行うものであり、 今回の決定があっても、我が国の看護師不足は 解決案とはなり得ないと考えている。

また、現在、フィリピン側で協定の議会承認 手続きが遅れており頓挫している。

○助産師養成定時制コース開設について

羽生田常任理事を中心に厚労省との強力な話 合い中、助産師不足解決の一選択肢として、医 師会立看護師・准看護師学校養成所にみだし定 時制コースを併設することが可能となったので その概要をお伝えする。

◆コース開設の為の環境整備◆

設置者が必要書類(計画書、設置・施設設備 事業計画)を提出してから、指定・承認書を受 理するまでに最低1年を必要とする。但し、平 成20年度に助産師養成所を設置する者に限り、 平成19年3月15日までに提出期限を延長する。

◆クリアすべき主な基準◆

保健師助産師看護師学校養成所指定規則第3 条(助産師学校養成所の指定基準)により以下 のとおりである。

1)入学対象者は看護師教育を受けている者
2)修業年限は6月以上
3)授業時間は最低22 単位720 時間、実習8 単位、取扱い分べん10例程度
4)選任教員として助産師3人以上、そのうち1名は教務主任であること
5)生徒数は40人以上であること
6)実習施設と実習指導者の確保

なお、看護師養成所に助産師養成所を併設す る場合、異なる時間帯に授業が設定されている ならば、普通教室、図書館、実習室の共用は可 能である。

◆助産師養成所に係る補助金◆

1)助産師養成所運営費補助

平成18年度の民間助産師養成所運営に係る

運営費補助
・養成所1箇所につき 826万1千円
・生徒1人当たり 7万5,900円
・大規模養成所については
 専任教員分として定員20人増すごとに 220万3千円
 事務職員分として1箇所当たり 53万6千円

従って、通常は1校当たり年間約1千万円の 運営費補助がある。

2)助産師養成所(定時制)開校促進事業(予定)

平成19年度政府原案に助産師養成所(定時 制)開校促進事業 総額1,322万円内容は定時 制コースを立ち上げる際の専任教員の経費(単 年度)として、1 校当たり165 万円(負担割 合:国1/2、県1/2)を予定している。

現在のところ、高崎市医師会、長崎市医師 会、愛知県医師会、東京都助産師会の4ヵ所が 申し出ており、群馬県の高崎市医師会では、平 成20年4月の開校に向けて、定員20名全日制1 年課程の設立を予定している。当初夜間定時制 コースを検討したが、教員の確保が出来ず全日 制に切り替えたとのことである。また、開設準 備に必要な資金が概算で約4千万円。学生納付 金は1人当たり年間180万円だが、仮に運営費 補助金が1千万円あったとしても、借入金返済 金などにより、年間5百万円余の赤字が見込ま れるとのことである。

○看護基礎教育の充実に関する検討会の結果に ついて

看護職員の養成のあり方、看護基礎教員の更 なる充実を図ることを目的に昨年3月29日標記 検討会が設置された。検討会では、看護師教 育、保健師教育、助産師教育について、各ワー キンググループで検討した内容(年数3年:看 護師は7単位、保健師は5単位、助産師は1単位 増加を盛り込んだカリキュラム見直し案)が本 年2月5日に示されている。

日医としては、各教育の単位が増加すること は、今後の学校運営に支障を来たすと懸念して いる。現状の医師会立養成所では対応は不可能 であると主張している。しかし、統合案につい ては、仕方ないが賛成しうるところである。

単位数の増加は、看護師養成を更に難しくさ せ、応募者の減少や在学生のドロップアウトな どの要因を含んでおり、看護師不足にさらなる 拍車をかけるのではないかと懸念している。

以上、4項目について報告の後、唐澤会長の 代理として参加した羽生田俊常任理事を交え意 見交換が行われた。

諸岡委員(長崎県)

助産師養成校を来年4月の開校に向け準備を 進めているが、開校前の準備金として諸経費が 約3千万円程必要になる。準備金としての補助 金制度はないか。日医のお力添えを賜りたい。

羽生田常任理事

助産師については、現状の補助金制度以上の 話しはない。現在、武見議員へ設立に向けた準 備金について、どこからか予算が確保出来ない かあたって貰っている。

また、EPAの外国人看護師受け入れ問題で、 フィリピン人看護師が「准看護師試験」を受け ることが出来るかどうかについては、受けられな いとのことである。しかし、同時に入ってくるフ ィリピン人介護福祉士については、国家試験に 通らなかった場合に、准介護福祉士として仕事 に従事できるという法律がこの程出来ている。

横須賀委員(佐賀県)

カリキュラムの増加は学校運営に支障を来た すため、出来るだけ増やさないで頂きたい。

羽生田常任理事

委員会では、看護師不足や地域偏在がある 中、4年生への移行は状況を更に悪化させる。 また、医師会立の看護学校ではとても養成でき ないと主張している。しかし、当委員会の根底 には4年生へのカリキュラム移行を目論む看護 系関係者が多く存在しており、7単位増をゼロ にすることは寧ろ4年生への期間を早めてしま いかねない雰囲気がある。7単位をいくらか減 らして飲むしかないと考えている。座学や統合 科目等で上手く調整を行い、増えても1単位迄 だと考えている。

出来る限り負担はかけないようにするが、4 年生に結びついては困るというその両面から対 応しているのでご理解頂きたい。

福嶋委員(福岡県)

日医から暖かいお力添えを頂きながら、なる べく早く各県に助産師養成所を作って頂きたい。

印象記

副会長 玉城 信光

最後の大分行きである。大分から沖縄への帰りの全日空便も3月で最後だと聞いている。

今回の代議員連絡会議は、沖縄県より大山先生の日医地域医療委員会の報告と鹿児島の野村先 生の医療関係者対策委員会の報告が行われた。

1.医師確保対策

昭和48年に一県一医科大学設置が推進され、昭和61年から一貫して『医師の需給に関する検討 会報告書』で医師の過剰が述べられている。平成10年まで同様の報告がなされ、いきなり平成15 年にへき地の医師確保が困難であるといわれ始めている。看護師の問題も同様であるが、誰がど のような議論をしてきたのか医師会も含め責任が問われる問題であると感じた。

しかしながらこれからは別紙で述べるように、日医が中心になりながらドクターバンク事業、診 療科の偏在の解消、女性医師の問題など取り組んでいくことが委員会報告で述べられた。

2.看護師養成

7:1看護を進めようとする医療機関が多くなり急速な看護師不足が見込まれる。看護師不足が 民間の准看護師不足に拍車をかける恐れがあり、准看護師養成もしっかりと考えていかなければ ならないであろうといわれた。外国人看護師の受け入れはそれほど大きな問題ではなさそうに思 えた。

助産師養成コースには金がかかりすぎるきらいがあるが、沖縄でも皆で知恵を出していく必要 があるだろう。

報告の後に、武見敬三先生を九州ブロックとしても参議院議員候補とすることが全会一致で決 定され、テレビ電話を通じて武見先生の決意と感謝が述べられた。

連絡会議終了後の懇親会で大分の近藤副会長と鹿児島の鮫島先生と1年前のことを懐かしがっ た。私の副会長としての初仕事は九医連の事務引継ぎを大分県にしたことである。そのときの監 査役として鮫島先生が立ち会ったのである。医師会の仕事を1年しかしていないが、先生方には 大変お世話になった。医者のつながりもやはりフェイストゥフェイスだと思われる。4月からは長 崎シリーズが始まるのである。