副会長 小渡 敬
常任理事 大山 朝賢
理事 今山 裕康
会場風景
挨拶
竹嶋日本医師会副会長より、概ね次のとおり 挨拶があった。
高齢者医療制度については、医療全体にとっ ても、また国民にとっても大きな問題であり、 日医でも喫緊にプロジェクトを立ち上げ対応し ていかなければならないと考えている。本日の 協議内容を持ち帰り日医でも検討させていただ きたい。活発なご議論をお願いしたい。
協議
1.高齢者医療制度について
本件に関しては、運営主体として都道府県単 位で広域連合を設立し、平成20年4月からの実 施に向けた具体的な検討がなされている。
本制度の実施に伴い、後期高齢者は介護保険 料と併せて、新たな保険料負担が年金から天引 きされることとなる。また、今まで保険料徴収の 対象ではなかった健保の被扶養者も対象となり、 押しなべて多大な負担を強要することとなる。
本県においても、保険料の設定について検討 されている段階であるが、県民に対する十分な 説明と意見の集約から検討することも必要であ ろう。地域の特色が色濃く反映されるため、あ まりに高い設定とならないよう県医師会がしっ かり関与し、県行政あるいは広域連合に対し意 見を述べていくことが重要であると考える。
各県のご意見をお伺いしたい。
また、本制度において、介護保険制度に倣い 給付額の上限が定められるようなことがあれ ば、医療の制限、抑制に繋がり必要な医療を受 けることができない状況にもなりかねない。
このことについて、日医の見解、現在の状況 をお伺いしたい。
社会保障審議会の特別部会では「後期高齢者 医療制度」について、外来、入院や在宅医療、 医療と介護の連携、また終末期医療等について 検討されているが、「病院の領域」から「地域 コミニュティー」へ、「治す医療」から「生活 を支える医療」へ等が伝えられている。
「必要かつ適切な医療の確保を前提とし、そ の心身の特性等にふさわしい診療報酬体系の策 定」や「保険料の基準は、その負担が過度にな らないよう十分な配慮」を示した先の通常国会 の「附帯決議」の精神に沿って、「かかりつけ 医の普及」、「在宅療養支援診療所を中心とした 在宅医療の推進や包括化によらない配慮ある診 療報酬体系」などについて、日医は積極的な問 題提言と後顧の憂いのない、心優しい制度構築 に向けた努力を期待し、要望するものである。 日医の見解と各県のご意見をお伺いしたい。
上記の2題については関連している為、一括協 議を行った。
【補足説明】
現在、熊本県では、行政の窓口と郡市医師会 の先生方との情報交換として後期高齢者制度を めぐるプロジェクトチームを立ち上げ、都道府 県の広域連合が保険者になることから行政との 話し合いの場を作って活動中である(熊本県)
後期高齢者制度について大きく分けると制度 の問題と診療報酬の問題に分かれると思う。質 問では付帯決議(4)(5)で記載されている 「患者さんの負担にならない制度」となるように政策を考えていただきたいとして、制度につ いて取り上げた。
診療報酬の問題に関しては、国保中央会から 「かかりつけ医を大切にする」という内容の案 が出されている。日医はかかりつけ医について 「一般の開業医の先生が患者さんを診て、そし てそれを病院に送るというシステムを考えてい る」と記者会見で発表しているが、これは皆保 険制度の「いつでもどこでも誰でも」というよ うなフリーアクセスが削られることになり、大 きな問題ではないかと考える。また、もし診療 所だけが初診可能となると、日本では中小病院 が多いが、この辺のアクセスがどうなるのかと いうことも大きな問題となる。日医はこの件に ついて十分にご検討していただき、最初のアク セスが診療所だけになるのか、中小病院につい てはどうなるのか等、もう少し細かくご説明い ただきたい。
最後に、福岡県では広域連合の規約、また人 員についても決まっておらず、まだこれからと いう段階である(福岡県)
【各県の回答状況】
※高齢者の医療は「病院の領域から地域コミュ ニティへ、治す医療から生活を支える医療 へ」が検討されている。
※附帯決議の精神に沿って、「かかりつけ医」 を普及し、在宅療養支援診療所を中心とした 在宅医療の推進を図る。
※国の施策は在宅医療であり、医療の中心を医 療機関から在宅へ移した医療費削減である。 しかし、地域においては基盤整備がされてな く、療養病床再編の問題の解決、高齢者家族 の経済的、身体的な負担の増大などがあり、 直ぐには国民に受け入れられない。医療機能 も診療報酬引き下げで低下しており、将来的 には介護保険との一本化も懸念される。
※保険料について
保険料は介護保険と同じように年金からの天
引きでは強制的な徴収であり、高齢者の生活
を脅かす。高齢者の保険料負担の増加に対して十分な説明、意見の集約を図り検討する必
要がある。
※給付について
医療の制限、抑制により必要な医療は受けら
れなくなるので、包括によらない診療報酬体
制を。
※医師会は高齢者の側に立ち、高齢者医療制度 に関わり、県行政、広域連合へ意見を述べて いく。都道府県に中医協と同様の機能を持つ 協議会の設置が考えられるので、県医師会は 積極的に働きかけるべき。
【日医・竹嶋副会長】
福岡県からの質問に対して、かかりつけ医に ついては「診療所」ということであったが、日 医では中小病院の先生方についても頭に入って いる。元々「かかりつけ医」については日医で はまだ定義しておらず、学術推進会議の一つの 大きなテーマとして諮問中である。また地域医 療対策委員会においても「かかりつけ医機能」 について検討をしている段階である。
2.在宅医療関係
これからの高齢者中心の医療・介護の在り方 について、医療保険・介護保険の方針で在宅医 療・在宅介護を中心に自立支援が推進されよう としている。
しかし、地域における支援体制は構築されて おらず在宅医療サービス・介護サービスにおけ る医師及び医師会の役割も充分ではない。
今後の地域支援体制の整備が急がれる状態と 思われる。
現在、介護施設等のあり方に関する委員会に おいて老健、特養の役割や機能を全面的に見直 すことを含めて将来像が検討されている。
特にこれら施設入所者に対する医療サービスの適用範囲や、医師・看護師の配置基準の見直 しが重要課題となっている。
従来、これら施設における医療提供について は多くの制約が課せられていた。今後、療養病 床より、医療度の高い入所者を受け入れるには 問題が多い。
これら介護施設入所者にも必要かつ十分な医 療サービスが提供できる仕組みを具体的に日医 より提案する必要があると考える。
各県のご意見並びに日医の見解をお伺いしたい。
2006年7月1日に施行された療養病床慢性期 入院基本料の改定及び2012年に予定されてい る介護療養型医療施設の廃止に伴い、医療区分 1に分類される患者さんを中心に退院を迫られ、 在宅療養を余儀なくされるケースが多数発生す るものと予想される。
厚労省では、これらの方々の受入先として老 健施設、特定施設及び在宅等を予定している が、現状では医療的管理が十分とはいえない状 況である。特に、重介護者の入所を受け入れて いる特定施設などでは夜間の診療や入院受け入 れなど、協力医療機関との連携が十分機能して いるとはいえない。まして、在宅療養者であれ ばなおさらのことである。
さらに、在宅介護の場合は介護者自身に対す る心身両面での健康管理が重要な課題になると 思われる。
各県の現状及び対応についてお伺いしたい。
これからの高齢者問題の大きな課題のひとつ として、「認知症の予防、治療、介護」があげ られる。
しかし、残念ながら当県ではその役割を担 い、かつ一般医療機関を支援できるような中核 医療機関の整備は不十分と思われる。
認知症の早期発見、専門的治療と介護、住民 の啓蒙活動や支えあう組織作り等を積極的に展 開するような体制作りに各県医師会としてどの ような取り組みがなされているのか、現状をお 伺いしたい。
(3)(4)(5)(6)は一括協議
【各県回答】
各県ともに、介護療養病床に入院されている 患者の多くは重度の要介護者となっていること から、現在の老人保健施設や在宅サービスにお ける医療提供体制や人員配置等では受け入れは 難しいと考えるとの意見であった。よって早急 に、かかりつけ医が継続して医療を提供できる 仕組みを作ることが先決であるとされ、その為 には地域医師会が中心となった各種介護サービ ス事業所等との連携システムが必要であること が示された。
また、認知症の予防、治療、介護にかかる課 題については、長崎県、福岡県、鹿児島県、熊 本県の4県において、県の委託を受け「認知症 サポート医養成事業」が実施されていると報告 され、佐賀県では認知症患者の早期発見、早期 治療を目的とした医療機関のネットワークとし て「もの忘れネットワーク」が設置され、認知 症の対応が可能な医療機関のリスト作成等が行 われていると報告された。
【日医コメント】
天本宏日本医師会常任理事より、「今後、当 協議会のように医療と介護が一緒になって話し 合うスタンスが非常に重要となる。」と述べら れた後、療養病床再編に係る老健施設や在宅サ ービスにおける医療提供体制等についてコメン トがあった。
天本常任理事は、「これからは施設という概念 が、病院も含め箱で決まるということから個別 サービスという形で利用者に必要な医療、介護、 生活支援を提供するという方向に動きつつあり、 住宅整備と施設整備がミックスした形で進もうとしている。」と今後の施設の方向性について述 べ、具体的な施設機能については現在検討が行 われているところであるが「これまで老健施設 がもっていた機能は継続していかなければなら ない。これは老健協会並びに行政側も一致した 意見である。しかし、介護療養病床が廃止され ると、療養病床に入院されている患者の8割が 要介護度4、5を占めており、このような重介護 者をサポートする機能を老健施設に新たにもた さなければならない。この2つの機能がこれか らの地域ケア体制整備に必要なものである。」と 施設機能の再構築の必要性が示された。
【追加発言】
鹿児島県より、介護療養型病床は地域の実情 によっては残す必要があるということを我々は 主張すべきであると追加発言があった。
【日医コメント】
天本常任理事より、「地域ケア整備構想は国 ではなく各都道府県で策定されるため、各都道 府県において主張していただきたい。このよう な意見は市町村や都道府県からも出されてい る、ただし制度上の法律は通っているという事 実もある。」と意見された。
3.地域ケア関連
療養病床の再編は、介護保険事業計画のほか に、都道府県の医療計画、医療費適正化計画と も摺り合わせて行う必要があることから、国は 07年3月に地域ケア構想指針を策定し、各都道 府県が07年の夏から秋にかけて、地域ケア構想 を策定し、中長期的な地域ケア体制と、療養病 床の転換計画を年度別・圏域別に定めることに なっている。
本県では、現在、県が療養病床のアンケート 調査を実施中(ほぼ9割以上回収済)であり、 来月には検討準備会、その後、検討委員会を立 ち上げていく予定である。
本整備構想は、療養病床の再編のいわば要に なるものであり、慎重かつ、入念な検討が望ま れる。
ついては、各県における検討委員会の構成メ ンバーや、策定の進捗状況と日本医師会の考え を伺いたい。
医療施設における病床数とその体制は非常に重 要なことであるが、今回の療養病床の再編には現 実とかなりかけ離れた計画のように思われる。
我々の医師会はこれからの高齢者医療の中で の病床のあり方について正確なことを把握して いく必要があると思われる。
療養病床再編に見られるように、施設から在 宅への流れが作られ、患者分類でも医療区分1 の対象者は居宅での療養を迫られている。地域 が居宅と位置付けられ、地域の在宅療養者の大 幅な増加が予想されるが、現状は受け皿の整備 は考慮されてなく多くの医療難民、介護難民が 生まれる。
在宅では肺炎等の急性期の対応、終末期の看 取りにも対応できる環境は整備されていない事 から、地域での療養を継続する為には、これを 支援する病床が必要となっている。それには地 域療養支援診療所の病床や、既存の療養病床を 活用し、地域医療を支援する機能を持つ「地域 療養支援病床」の新設を要望したい。
各県のご意見、日医の見解をお伺いしたい。
厚生労働省は、療養病床38万床(医療療養 25万床、介護療養13万床)を、平成23年度末 までに15万床まで削減する方針である。
佐賀県における、平成18年4月1日から10月末日までの療養病床の動向は【表1】のとおり となっており、病床転換後の内訳は【表2】と なっている。
各県における、療養病床の動向についてお伺 いしたい。
(7)(8)(9)(10)は一括協議
【各県回答】
地域ケア整備構想を策定する委員会について は、長崎県、熊本県、鹿児島県、宮崎県、沖縄 県の5県においては、ある程度具体的に委員構 成が定まっており、今後会がもたれる予定であ ることが報告された。(本県では、既設の「高 齢者福祉計画策定委員会」を活用することが予 定されている。)
また、各都道府県では「地域ケア整備構想」 を踏まえ、「介護保険事業支援計画」、「医療計 画」、「医療費適正化計画」が策定されることに なっていることから、各県ともに地域ケア整備 構想の策定に対し医師会として積極的に意見し ていくべきとの考えが示された。
大分県より提案された「地域療養支援病床の 新設」については、各県ともに概ね在宅医療を 継続する為に利用者を一時的に入院させる病床 として“地域療養支援病床”の創設は検討する 必要があるとの見解であったが、福岡県より、 「療養病床再編後の15万床で本当に医療提供が 必要な患者をカバーできるのか療養病床のあり 方を見直すことが先決ではないか」との認識が 示された。
療養病床再編にかかる療養病床の動向につい ては、県によってデータ不足があり8県中6県 の共通データで概算が行われた結果、一般病床 は2.8%増加し、療養病床は6.4%減少している ことが分かった。特に医療療養病床の減少が顕 著であり、かなりの部分が一般病床へ転換して いることが推測された。
【追加発言】
現在、熊本県と北九州市が“地域ケア整備構想モデル団体”として先進的な取り組みを行っ ていることから、熊本県、福岡県よりそれぞれ 報告があった。
熊本県
熊本県では、行政、県医師会、地域医師会等 とで構成する熊本県地域ケア整備構想モデルプ ラン検討会議が発足されている。オブザーバー として厚生労働省地域ケア整備に関する研究 班、厚生労働省老健局地域ケア・療養病床転換 推進室より参加していただいている。
地域ケア整備構想の策定については、各県と 同様に療養病床アンケート調査を実施した。2 月後半に全国のモデル事業の調査結果を公表す ることになっている。平成19年12月頃までに 熊本県の地域ケア整備構想(仮称)を出すよう になっている。
アンケート調査結果から、療養病床に入院さ れている患者について、医療区分1が半数を占 めており、ADL区分の2が40%近くを占めてい る。また介護療養病床の74%を要介護4、5が 占めているということが分かった。
療養病床再編後の転換先については、医療療 養病床の86%が医療療養病床に留まる、1%が ケアハウスに転換する、12%が未定と答えてお り、介護療養病床については、8.7%が介護療 養病床として留まる、12.6%が老健に転換す る、14%が医療用病床に転換する、残り半数が 未定と答えていた。
今後、このような調査結果を踏まえてモデル プランを策定していきたい。
北九州市
北九州市では、北九州市地域ケア整備構想モ デルプランの案が出ている。医師会の意見が十 分反映させる部分は多くはない。一番注目する のが療養病床転換についてである。医療療養病 床については、74.7%が医療療養病床に留まる、 2.1%が老健施設に転換すると答えており、介護 については、15.5%が医療療養病床に転換する、 20%が一般病床に転換する、36.3%が老健に転換すると答えている。このような現場の実態を 認識していただくということが重要である。
【日医コメント】
天本常任理事より、地域ケア整備構想に係る 具体的な内容については、「来る3月15日(木) 日本医師会館において都道府県医師会介護保険 担当理事連絡協議会を開催し、地域ケア整備構 想について各モデル地域からご報告いただくこ とになっている。また地域ケア整備構想の指針 を作成した方や厚労省にも話をしていただく。 是非ご出席いただきご議論いただきたい。」と 述べられ、また、「地域ケア整備構想において は、都道府県内における地域差が顕著であり一 律にできない。各地区の医師会の要望をお集め いただき、各地域で必要なサービスをきちっと 主張していただきたい。」と医師会の対応の必 要性が示された。
老健施設への転換が少ないことについては、 「老健施設の今後の機能や人員配置基準が見え ないので手を挙げられていないと考える。いざ 老健をやろうとした時に枠がないと言われない よう注意する必要がある。」と意見された。
【追加発言】
15万床という数が表に出てしまって、15万 床に削減しなければならないという雰囲気があ る。そこを医師会として打破していただき、現 場で必要な数はもっと多いということを日医に 力を出していただきたい。(福岡県)
【日医コメント】
15万床は根拠のない数字である。また2月に は中医協でも区分の妥当性について検討する。 15万床というのは厚労省の希望数字、これを都 道府県で割り振る必要は全くない。都道府県毎 に主張をきちっと述べていただきたい。
【追加発言】
厚労省は療養病床を減らしたいのではなく、 病床全体を減らしたいのではないか、実際に療養病床を23万床減らすのは不可能である。(熊 本県)
【日医コメント】
療養病床の再編というのは一般病床も含まれ ている。
以下、大分県が作成した「まとめ」より抜粋。
平成18年7月からの療養病床再編によって、 医療機関は存続のため仕方なく、かなりの療養 病床を一般病床に転換している。療養病床は、 長期の療養を要する患者の安全弁の役割を果た してきたが、このままでは、安全弁を失うと共 に、単価の高い一般病床増加のため医療費の削 減もできず、さらなるより厳しい削減策が実行 されるにすぎない。
「地域ケア整備構想」は、転換先の準備も全 くないまま行われる療養病床廃止・削減を正当 化、妥当化するための方策として考えられたも のであり、療養病床再編に対して見直し要求が 全国から出され、中医協で検討されている段階 で、積極的に関与するのは厚労省の案を医師会 が推進することになり、問題が極めて大きい。 現段階では、いざという時のために、資料を集 め、医師会内での検討・準備に止めておくべき と考える。しかし、九州では、熊本県、北九州 市が「地域ケア整備構想モデル団体」になって おり、地域ケア整備構想モデルプラン検討会で 両医師会に主導権を握ってもらうためには、ま た、都道府県が「地域ケア整備構想」を踏まえ て「介護保険事業支援計画」、「医療計画」、「医 療費適正化計画」を策定することになってお り、無視もできない。
それでも、まずやるべきことは、今回の療養 病床再編が国民を不幸にすることになると考え るのであれば、現場からデータを示して、見直 しを強力に要求することである。それでも叶わ ないときのために、十分練った「地域療養支援 病床」等の案を即座に提出することができるよ うに準備しておく必要もある。そのためには、今後も、各県が知恵を出し合うための十分な議 論が必要である。
4.診療報酬関連
高齢者医療では「かかりつけ医」と共に、在 宅医療の中心的役割を担う「在宅療養支援診療 所(在支援診療所)」機能の充実が期待されて いる。
熊本県でも約200の医療機関が「在支援診療 所」の施設基準を取得して在宅医療を行ってい るが、その診療所が行う訪問診療で「在宅時医 学総合管理料(在医総管)」の算定を巡って少 なからず混乱が起こっている。
社会保険事務局は、「在支援診療所」であっ ても「在医総管」1の「イ」又は「ロ」の算定 は、症状が不安定で医学管理を要するもの、又 は症状は比較的安定しているものの、病態の急 変が予想される者で頻回の訪問診療を必要とす る患者を対象とすることが求められ、それ以外 は「往診及び訪問看護により24時間対応体制」 を確保し患者にその旨の文書を交付しても、 「在医総管」2の「イ」又は「ロ」に査定されて いる。
「「在支援診療所」の主治医が、当該患者以 外の患者に対し・・・・・「在医総管」2を算 定する」(点数表の解釈)は「24時間対応体制」 を取る、取らないに拘わらず、同一の診療報酬 となる不合理な体系であり、「その体制」を取 っておれば患者の病態像に関係なく「在医総 管」1が算定出来ると主張する意見もある。
日医の見解と各県の状況及びその対応ついて お伺いしたい。
【補足説明】
在宅支援診療所の絶対的な要件は24時間連 携体制ということであるが、在宅時医学総合管 理料「2」について、24時間連携体制の必要は ないということであれば、点数表の解釈には記載しなくてもよいのではないか(熊本県)
【各県の回答状況】
※特に問題なく、青本の要件を満たせば可能。 (7県)
福岡県…医師が患者の状態で判断できる。日医、 社会保険事務局とも申し合わせ済み。
宮崎県…在宅時医学総合管理料の算定基準が厳 しく、在宅療養支援診療所は少ない。
沖縄県…対象患者は“居宅において療養を行っ ている患者で、通院困難な者”である。 「1」か「2」の解釈は文書を提供し ているか、いないかの差と解釈
【主な追加発言】
1)審査会と社会保険事務局では話が異なるし、 まずは審査会委員の先生方が査定しているので 審査会に話を通さなくてはいけないのではない か。特にリハビリの問題でも脳卒中の後、6ヶ 月後でもリハビリが出来る・出来ないで意見が 異なり、最終的には審査会が認めるか認めない かの問題であると思われるので、まずは審査会 との関係についても原因があるのではないかと 思われる(福岡県)
【日医・天本常任理事】
在宅時医学総合管理料の算定については都道 府県ごとに差はあるが、概ね青本どおりである と思われるが、一度持ち帰らせていただいて検 討したい。しかし、このような文章はどこにで もあると考える。
また都道府県医師会と審査会との関係につい ては、各都道府県医師会から審査会に審査委員 として出ていると思うので、先ほどのリハビリ の問題に関しても全国がそうであったとして も、地域のリハビリ専門委員の意見を確認して いただきたい。
急激な高齢化社会を迎える中、医療費削減を 目的とした病床削減が行われ、その対応のため介護施設整備を推進するとしているが、高齢者 の増加に比例し介護施設では対応できない、医 療が必要な高齢者も当然増加していくものと考 えられる。
一方、これまで地域に密着した入院施設とし て地域医療に大きな役割を果たしてきた有床診 療所は、一般病床、療養病床とも入院基本料の 設定が極端に低い点数に抑えられていることか ら次々と無床診療所へ変更せざるを得ない状況 にある。
このままでは、高齢者が入院医療を必要とし ても近隣に入院医療機関が存在しない、長期の 入院待ちという事態が現実に起こりえると考え られる。
国は有床診療所の役割をもう一度再認識し、 存続可能な入院基本料の点数設定となるよう早 急に対応する必要があると考える。
九州各県及び日医の考えと今後の対応を伺い たい。
【各県の回答状況】
※貴見の通り(7県)
熊本県…特に入院施設の未整備な山間、郡部で 有床診の果たす役割は大きい。
熊本県…日医は存続可能な診療報酬体系の設定 と、地域密着の有床診の活用を関係各 機関に要望してもらいたい。
鹿児島県…無床化する診療所が増えている。そ れぞれの役割分担を再検討し、存続可 能な点数設定を望む
沖縄県…有床診の果たした役割は大きいのに、入
院基本料は大きく減額した。看護要員
の配置、医療安全、院内感染、褥瘡対
策まで診療所に求められ負担は大きい
診療所は在宅医療の中心的役割を担 うが、改定はそのような制度設計にな っていない。果たすべき役割の十分な 議論を
大分県…医療・介護難民が生まれ、重症化した在 宅患者の受け皿はない。住民の身近で地 域医療・介護に重要な役割を担う有床診の入院機能は、地域医療の支援病床 として重要。長期の療養に対応する必要 があり、入院基本料の評価が必要。
【主な追加発言】
1)7:1の看護師確保問題のしわ寄せがここに 出てきている。
患者側に立った「手厚い看護」は医療の理 念であるが、看護師を確保する為には大病院 と同等な採用条件を出さなければならなくな っている。
人件費の問題から診療報酬の引き上げを提 案できるのではないか(鹿児島県)
2)日医、厚労省のスタンスがそれぞれに異な る。全ての保険点数改正は病院中心に行われ そこで決まったことを有床診療所に準用され ていると思われる。
また殆どの病院は人口の多い都心部にある が、有床診療所は全国津々浦々、医師一人で 看護師を抱えてやっている。日本の医療の原 点である。もう少し有床診療所の方に重きを 置いた考え方を日医、厚労省にも持ってもら いたい(長崎県)
3)一般病床とは言うが大都会の大病院と地域の田 舎の一般病床とでは意味が異なる。地域性にあ った点数配分をしていただきたい(佐賀県)
【大分県・新森先生】
有床診療所は地域に根ざしたものであり、それ ぞれの地域性により点数配分を行うべきである。
また近い将来、療養病床廃止に伴う療養難民 の受け皿になるのは有床診療所ではないかとい うことで、今のような低い点数では到底やって 行けない。実際、本県でも療養病床を出たが、 在宅では診れないという患者さんを有床診療所 が犠牲となって診ている状況となっている。是 非、入院基本料を引上げていただくよう強く要 請したい。
【日医・竹嶋副会長】
日医としては極めて重大に考えている。昨年 4月に執行部に就いた際にプロジェクトを有床診療所に関する検討委員会に昇格させ、そのな かで検討中である。おそらく3月中には中間報 告が出せると思う。基本的には長崎県、佐賀県 の先生方がおっしゃったとおりである。大都会 と地域の医療のあり方についてもっと触れるべ きであり、持ち帰って検討したい。
訪問看護及び訪問リハビリテーション(以下 訪問看護等)は医療保険、介護保険の両者から 提供されており、一般には介護保険が優先して 算定することになっている。
現在、療養病床の再編や患者分類の医療区分 により在宅療養者や、終末期を地域の居宅で迎 える高齢者は少しずつ増加している。
在宅療養も医療と介護に分け、生活支援に対 しては介護サービスで対応し、医療については 終末期まで含めた適切な医療を協調しつつ提供 する必要がある。
在宅医療に伴う訪問看護等は医療とは切り離 せない状況にあるのに、現在は特別な場合を除 いてケアプランの制限を受けている。現場では かかりつけ医と看護が同時に提供されているこ とから、訪問看護等はすべて医療保険で提供さ れるのが効率的であり、患者にとっても質の高 い安心できる医療を受けることができる。
各県のご意見、日医の見解をお伺いしたい。
【各県の回答状況】
※貴見のとおり。(7県)
長崎県…看護・リハビリは医療サービスの中で 重要。
福岡県…医療と介護と制度にまたがり、同じも のが存在すること自体に疑問。
福岡県…訪看を必要とする利用者は、少なから ず医療の必要性がある視点に立てば医 療保険単独で。
鹿児島県…現在の基本枠とする制度では在宅医 療の推進は困難、訪問看護等は医療保 険とすべき。
佐賀県…介護サービスとの連携を十分に確保し た上で、医療保険で統一を。
沖縄県…地域で必要とされる医療、提供される 医療には地域特性がある。全国一律で 考えることは無理。この状況でかかり つけ医がすべての在宅医療を担うのは 不可能で、各制度を複合的に活用する 必要あり。
※自立支援法で対象が増える。リハビリテーシ ョンの問題も解決できないか。
【主な追加発言】
1)医療保険、介護保険に分かれたのは政治的な 部分等いろんな要素が大きく、必ずしも医療 の現場と一致しないのが現実である。現場と しては、医療と一番関連のある訪問看護がケ アマネジャーとの関わりなしに出来るような スッキリしたシステムが必要であり、これは 統一しかないと思うので、是非一緒にしてい ただきたい(福岡県)
◆事前に開催された「高齢者医療対策協議会打合 会」において協議済み。(本誌30ページ参照)
平成18年4月1日改定の介護保険法に規定さ れた「介護サービス情報の公表」については、 第1回各種協議会においても議題を提出したが、 各県とも調査等が開始されていると思われるこ とから再び提出させて頂いた。
聞くところによると既に公表制度の対象とな っている、全国老人保健施設協議会から本制度 に対して異議が唱えられているとのことであり、 調査等が進み、また対象サービスが増加するに 伴いその声は更に大きくなるものと考えられる。
本制度による調査、公表を行ってもサービス 利用者、各事業所とも有用性があるとは思われ ないことから、本制度に要する費用が無駄になる恐れが大きいと感じており、今後廃止に向け て強く働きかける必要があると考える。
九州各県及び日医の考えを伺いたい。
【各県回答】
福岡県、鹿児島県、宮崎県の3県より、介護 サービス情報の公表制度について、その理念に は賛成できるとした意見が示されたが、各県の 統一的な見解としては、その調査のあり方、費 用負担等、運営方法に問題があるとされた。ま た、当制度が医療へ波及することの懸念もある ことから、今後医師会としての対応を明確にし ておく必要性について意見がまとめられた。
【日医コメント】
天本常任理事より、介護サービス情報の公表 制度について、「当制度の趣旨は、一つは利用 者にサービスの内容を選択する際の有効な手段 とすること。もう一つの趣旨は営利企業に対す る抑制効果となっている。医療への波及につい ては今のところ全く無いが、いろんな意味で情 報公開が行われていく。特に加算においてきち っと提示しなければならない。介護サービス情 報の公表制度に係る費用については来年度見直 しすることになっている。調査員の質の問題に ついては、これは監査ではないという認識を受 ける方も行う方ももってもらいたい。」とコメ ントがあった。
◆事前に開催された「高齢者医療対策協議会打合 会」において協議済み。(本誌30ページ参照)
今回の改正で設けられ指定希望医療機関の募 集があったが、届出た医療機関数は地域により 差がある。宮崎県では届出た78医療機関の半数 が都市部に集中しており、都市部以外では少な く全域のカバーが出来ない。届出の少ない地域では従来の診療・往診で対応されており特別な 不都合は無い。全国的にも相当な地域格差がみ られる。届出をしない理由としては、患者宅が 遠すぎる、思い通りの診療が出来ない、患者の 経済的負担が増える、24時間対応が不可能等々 が挙げられる。このように指定された条件が厳 しいこともあるが、そもそも同一の診療行為で 届出の有無のみで診療報酬に差をつけるのは如 何なものか?指定条件を厳しく設定し、申請し 難くしておいて指定医療機関数が少なければ、 国の推し進めている在宅医療の充実ができるの か?国としては本当に在宅医療を進めていく意 志があるのか?日医のご意見をお伺いしたい。
【日医・天本常任理事】
在宅支援診療所は約9千程度まで増えてきて いるが、実質稼動しているかどうかは分からな い。先ほどの協議の中にもあったが、いろいろ な社会支援の有効活用、急性増悪した際の病院 との対応、24時間・365日においてのグループ 診療的な対応、それから専門医、例えば皮膚 科・歯科等いろいろな形の連携をすることが重 要になってくる。しかしながらまだ様々な課題 があり、その費用の配分をどうするか、リハビ リとの関係、在宅支援診療所を有効活用するた めに、各地区医師会において在宅支援診療所を 支援するシステム作りというものがこれからの 段階であると思う。それからもう一つ危惧して いるのは在宅療養のみをしている診療所が少し ずつ出てきているが、その中には企業が運営し ている診療所もあり、医師会に加入していない のが目に付いている。そのような診療所といろ んな意味で各地区医師会が連携し、地域内完結 が可能かどうか。先ほどもあったように、医師 会立の病院がある場合はそのバックボーンがあ る為、連携を取り易いということになる。各地 区医師会はこの辺のシステム作りについて、今 回公表した「在宅療養に関する指針」の基本ラ インをズレないような形で取り組んでいただき たい。またもう一つの問題は在宅支援診療所と 企業同士が自己完結的な形で対応していることについても危惧をしている。そのようなことで も各地区医師会においては在宅支援診療所の支 援体制についてご労力していただきたい。
様々な課題があると思うが、日医の介護保険 委員会或いは地域医療委員会へあげていただき たい。今後の問題として在宅支援診療所をもっ と普及できるものにしないといけないと日医で は考えている。
【熊本県・米満先生(介護保険委員会委員)】
アンケート調査結果によると、医師会立病院 を持っている地区医師会は病診連携が活発で土 壌がしっかり出来ているので、今回の在宅支援 診療所の立ち上げにおいてもかなり積極的にネ ットワーク作りを行っている状況である。その ような機関を持っていないところについてはど のように連携をとるのか。中心的な公立病院が あるところはそれを活用することも可能である が、そのような病院も全くない地域については 難しい状況である。
【座長・大分県嶋田先生】
介護保険委員会でも在宅支援診療所について は地域の療養を担う中核的な役割を持っている と考えているので、是非とも皆様方も地域医療 を重視する方向で取り組んでいただきたい。
4月の改正でリハビリ日数の制限が設けられ た。予想された通りに「リハビリ難民」が多数 出現している。[効果が明白で無いまま続けさ せるのを防ぐ]としているが、症状改善のみで は無く悪化させない現状維持もリハビリの目的 の一つと考えられる。リハビリを中止すること により、現状維持はおろか悪化した例も多数報 告されている。効果があれば特例として認める との一項はあっても、現時点ではクリアすべき ハードルが高すぎて、中断せざるを得ない場合 が殆どである。要望事項として、日医は、国に 対してリハビリの日数制限を無くすか緩和させ るよう強く働きかけていただきたい。
【日医・天本常任理事】
医療保険と介護保険の継続性、あるいは一貫 性というものが十分ではないということから、 介護保険でもっと継続性を良くする為にどのよ うな不備があるのかということを現在老健局と リハビリ協会・リハビリ学会、日医も一緒にな って検討している段階である。訪問看護ステー ションにおいて積極的にリハビリを行った場合 でも、ある数に達すると訪問看護の点数が下が る等、いろんな矛盾がある。これからは病棟の 中で行うのではなく、地域の中で生活に結びつ く地域リハという考えがあるが、これを介護保 険で行うことが良いのかということについては これから議論し、高齢者医療制度の中で訪問看 護を含め、医療という中身について、どこまで を医療保険とするのか、どこから介護保険とす るのか等について先生方の意見を参考にしなが ら検討していきたいと考える。
【日医・竹嶋副会長】
日数については非常に大事なことだと思う。 昨年6月の医療制度関連法、健保の一部改正の 中で非常に重要な問題として取り組んだのは、 先程から何度も申し上げているが、療養病床の 再編問題、看護師の7:1問題、それからこの リハビリテーションの日数制限問題についてで ある。一昨年の7月にある専門団体が厚生労働 省と個別に折衝し、それから8月までの1ヶ月 ちょっとの間に残り3つの団体が個別折衝を行 ったが、そこに日医が何も関与することが出来 ず、そのまま決まってしまったということが判 明した。日医の対応の根本的な問題であると思 う。今後、中医協の中では療養病床の再編問 題、看護師の7:1問題に焦点を絞って、アン ケート調査を行い、検討する予定である。更に 先程述べた4つの団体にもヒアリングを行う予 定である。
【主な追加発言】
1)日本整形外科学会では、運動器リハビリテー ションの150日制限のために中止せざるを得なかった医療機関と患者さんのアンケート調 査を実施中である。その結果を踏まえ、日整 会では日医にもそのエビデンスをお知らせし て、今後何かとお願いすることが出てくると 思うのでよろしくお願いしたい(鹿児島県)
本件に関しては、9月30日開催の第1回医療保 険対策協議会においても熊本県と本県より提案 の上、各県のご意見と日医の見解をお伺いした。
日医より、「時代の流れとして、これを止め ることはできない。しかし、薬理作用による適 用外投与等の問題を整理する必要がある」との 見解をいただいた。
これについては、本県としても止むを得ない 部分があるとの認識を持っている。
しかし、全医療機関にオンライン化を義務付 けるのは、余りにも性急すぎる感が否めず、国 や保険者が、医療費適正化と謳い「医療給付費 の削減」のためだけにデータを管理し利用する ことは避けなければならない。
平成20年4月から段階的に導入が進められる ため、医師会として具体的に対応を検討し、会 員医療機関に対して情報を提供する時期に来て いる。
支払い側だけではなく、医療提供側、そして 何より患者さんにとって本当の意味でメリット がある形で導入が進められるべきである。
本件に関し、あらためて日医の見解とこれか らの対応についてお伺いしたい。
【日医・竹嶋副会長】
平成17年12月1日に出された医療制度改革大 綱の中でレセプトIT化の推進として「平成18 年から23年にかけて全てオンライン化して提出 する」ことになっている。その翌日、前執行部 は日医としても適正なIT化については賛成し促 進すべきであると考えるが、レセプトオンライ ン化については提案事項の中にもあるようない くつかの問題がある為、現時点での義務化は時期尚早であるとコメントを出している。平成18 年4月10日に厚労省から今後の予定が示され、 それに対して日医では6月13日の衆議院厚生労 働委員会で厚生労働議員を通じて「レセプトオ ンライン化については目標年度に完全実施を確 実にするよう努めるとともに個別の診療内容を 示した領収書の発行を努める」として、努力規 定とするよう発言をお願いした経緯がある。そ の後平成18年10月には日医の見解として、「IT 化の実現に向けて我々としては努力する」とい う建前で発表した。またIT化されることによっ て保険者側は様々な情報収集を行うはずであ る。日医ではオルカを開発し、私共なりにデー タの収集・分析を行っている状況である。この ように日医は政策で決まったことについては実 現出来るよう努力をするが、そこに何らかの条 件、要素をつけて対応していることについてご 理解いただきたい。
【主な追加発言】
最近、支払基金或いは国保連合会から、もう すぐ義務化されるので急いで準備するようパン フレットの配布や講演会が開催されているよう である。会員から「どうしたらよいか」との質 問を受けるが、どのように対応したらよいか。 日医からはっきりとしたメッセージを出してい ただきたい(熊本県)
【日医・竹嶋副会長】
まだIT化に向けてハード・ソフトが充分でな く、手書きの方が何かと柔軟な対応が出来て便 利な為、すぐに変更することは出来ないと言っ ている。各都道府県においての状況はそれぞれ 異なると思うが、熊本県と同様に支払基金、国 保連合会からの何らかの依頼があると思う。先 程も申し上げたが、政策実現の為に「努める」 という姿勢でやっていくが、その中で条件整備 を行っている状況である。会員へはそのように ご説明いただき、何かあれば日医へご連絡いた だきたい。
これまで、保険診療に関する取扱いや医療機 関に対する個別指導、集団指導の実施など各県 ごとに社会保険事務局と県医師会とが協議を行 い、地域の特性に応じた対応が図られてきた。
しかし、2008年を目途に社会保険庁が解体 され、九州各県の社会保険事務局も九州ブロッ クとして、九州厚生局1ヶ所に統合される予定 である。
これにより各県医師会と行政との連携に支障
が生じ、今後、全国統一で厚労省の方針が一方
的に優先される恐れがある。
日医の見解をお伺いしたい。
【日医・竹嶋副会長】
社会保険事務局の解体に伴い、厚生局に移行 することは既に決まっている。年金事業の改正 で行われるはずであったが、現在は廃案となっ ている為、修正して別の新しい法案が出される と思われるが、いつ頃国会に出されるのかにつ いては私共も把握していない。この件について は議員等を通じて情報収集したいと考えてい る。現在の決定状況・今後の予定については、 地域社会保険事務局は廃止され、事務が厚生局 に移行されることはハッキリしている。厚生局 はブロックで1つとなっているので九州ブロッ クは九州厚生局のあるところに設置されること になっている。また地方社会医療協議会もブロ ック毎になる。事務処理はブロック一箇所では 到底不可能な為、従来どおり各県とも何らかの 事務所が設置されると思われる。各県とも行政 との連携に支障が出てくるかもしれない。今後 は全国統一的に厚生労働省の方針が一方的に優 先されると考えられ、日医としては当然このこ とに対しては対応していきたいと考えている。
【総評 日医・竹嶋副会長】
いろいろな問題が現場で起きている。このよ うなものを受けて日医では各都道府県・各ブロックのご意見を出来るだけ収集したい。現在日 医では、療養病床問題、7:1の看護師確保問 題等を検討する際、保険医療担当理事、介護保 険担当理事、地域医療担当理事の3名の先生方 と事務局、そして日医総研が入り、常に一緒の 場で検討し、データを作ろうと取り組んでい る。診療報酬改定の影響については4〜7月の 間に先生方に急遽アンケートを取らさせていた だき、しっかりとした資料をいただくことが出 来た。また引続き8月には療養病床の影響につ いて同様にアンケートを行い、データを収集す ることが出来た。これまでのご協力に感謝申し 上げ、今後も引き続き日医の取組みいついてご 理解いただけるようお願い申し上げる。
印象記
副会長 小渡 敬
平成18年度第2回各種協議会が平成19年1月20日に大分全日空ホテルで開催され、高齢者医療 対策協議会という形で介護保険と医療保険が合同で行われた。今回は、各県の担当理事および日 医の担当理事の先生方が参加し会議が行われたが、人数がかなりの数となったため広い会場で大 会議となってしまった。そのため、各議題を充分に議論する時間がとれず報告会形式になってし まい、各理事ともいささか不完全燃焼であったような印象を受けた。
協議事項としては、1)高齢者医療制度について、2)在宅医療関連、3)地域ケア関連、4)診療報 酬関連、5)日医への意見、6)その他等々の協議議題で各県から20項目の質問事項が提出されてい た。協議の場にはマスコミが入るため、沖縄県が提出した「診療報酬改定に対する要望取り纏め の前倒し開催について」と、長崎県提出の「個別指導における投薬、処置、理学療法等について」 の2題は、事前に協議がなされた。診療報酬改定に対する要望については、従来秋頃に提出され ていたが、その時期には中医協での議論がある程度煮詰まっているので、我々の要望が充分反映 されないと考えられるため、今後は出来るだけ早く4月頃までには取り纏める方向で決まった。
協議の中で重要な項目は、来年4月から動き出す後期高齢者の医療制度の創設、在宅医療と地 域での高齢者の自立支援体制の構築(在宅療養支援診療所について)等が、今後重要になってく ると思われる。これらの項目についての詳細は、本文を一読して頂きたい。
日医からは、現在問題になっている7対1看護について、中医協で日医の竹嶋副会長が中心とな り、現状のままでは地方では看護師不足が深刻化し、中小病院では看護師の確保が困難となり地 域医療体制が崩壊する危機にあることを強く訴え、中医協から厚労大臣に建議を提出したことが 報告された。この建議はめったに出されることはなく最近では十年程前に提出されただけである。 その意味でも看護の7対1問題の重大さを知ることができる。
印象記
理事 今山 裕康
今回、初の試みとして、医療保険対策協議会と介護保険対策協議会が合同で高齢者医療対策協 議会として開催された。
当県としては、診療報酬改定に対する要望とりまとめの前倒し開催を提案したところ、満場一 致で合意された。早速、地区医師会へ要望を募り、沖縄県としての要望を取りまとめたいと考え ている。
また、高齢者医療、特に介護医療にまたがる諸問題を、合同で協議出来たことは、非常に有意 義であった。特に、医療、介護、福祉を合わせた供給体制をどうしていくかについて、問題点が 少し見えてきたような気がした。
沖縄県は、県全体が島嶼県であり、在宅医療に対する依存度は大きいと考えられるが、医療機 関同士および各サービスの連携が充分とはいいきれず、これからの課題と考えられた。
今後は、次期診療報酬改定、ならびに次期医療供給制度の基礎となる「地域ケア構想」、地域医 療計画等の議論に積極的に参加していきたい。