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健診・保健指導の指導者研修会

常任理事 大山 朝賢

会場風景

会場風景

去る12月20日(水)、日本医師会館大講堂に おいて、標記研修会が開催されたので、その概 要について報告する。

挨拶(唐澤人日本医師会長)

平成20年度からの医療保険者に義務付けら れ実施される健診・保健指導について、地域に おいて円滑な事業展開がなされるよう指導者研 修会を行うこととした。

医療制度改革により医療を取り巻く環境は転 換期をむかえている。財政主導の課題が先行 し、医療の質、安全の確保が十分にできないよ うな状況に追い込まれている。経済財政諮問会 議における医療費の総枠管理に対抗する具体的 な政策として、予防重視の観点から生活習慣病 対策が展開されてきたものである。国民が疾病 に罹らず健康に生活できるよう支援していくこ とが我々の大きな役割である。このためには平 成20年度までという限られた時間であるが、国 民の医療不信に繋がることがないような健診・ 保健指導の体制を医師会が中心となって構築し ていく必要あると考えている。

研修

(1)医師が行う運動指導

講師:津下一代(あいち健康の森健康科学総 合センター副センター長)

津下氏は、本人の準備度に合わせた保健指 導、個別的・具体的・実現可能な方法により、 健診から行動変容(生活習慣病予防行動)の持 続、生活習慣病の予防・改善につなげる過程と 運動指導の実際について講演された。以下概要。

○「これまでの健診・保健指導」と「これから の健診・保健指導」の違い

健診と保健指導:「健診に付加した保健指 導」⇒「保健指導対象者を抽出するた めの健診」

目的:「個別疾患の早期発見・早期治療」⇒ 「Mets に着目した早期介入・行動変 容」

内容:「健診結果の伝達、理想的な生活習慣 の情報提供」⇒「自己選択と行動変 容」

対象者:「要指導のうち、保健事業に参加し たもの」⇒「必要度に応じ階層化され た保健指導」

方法:「一時点の健診結果に基づく画一的な 指導」⇒「健診結果の経年変化や将来 予測も踏まえた保健指導、集団の健康 課題の分析、ライフスタイルを考慮」

評価:「実施回数・参加人数」⇒「介入の効 果、糖尿病患者・予備軍の減少」

○健康づくりのための運動基準2006

身体活動:23メッツ・時/週

運動  :4メッツ・時/週
       2〜10メッツ・時/週
      ※メッツ・時(エクササイズ)/週

「メッツ」(強さの単位)とは、身体活 動の強さを、安静時の何倍に相当するかを 表す単位。メッツ量に体重をかけると消費 エネルギーになる。メッツを理解しておく ことが必要。

○メタボリックシンドローム対策

内臓脂肪を減少させる運動量は、週10エク ササイズ程度かそれ以上。→速足に換算する と週に150分。1ヶ月で1〜2%の内臓脂肪減 少が期待できる。

○行動変容ステージモデル(無関心期→関心期 →準備期→実行期→維持期)を理解し、ステ ージ毎のサポート・指導を行う。

無関心期(前熟考期 病識が無く行動変化 を考えない)

関心期(熟考期 必要を感じている)

準備期(本人なりの行動変化)

実行期(行動期 適切な行動をはじめる、6ヶ月以内)

維持期(適切な行動が6ヶ月以上継続)

○身体状況・運動習慣・運動の目的を確認のう え、その人にあった運動処方、楽しく継続で きる運動指導を行う。運動後の身体状況の変 化の確認を行い運動処方にフィードバックす る。

○運動処方のポイント

1)有酸素運動を主体とする。筋力トレーニン グ・ストレッチングを組み合わせる。2)運動 強度は、3メッツ程度。高強度の運動をいき なり始めないこと。3)運動時間は、5分、10 分でもOK。トータルの時間を確保する。4) 週あたりの基準量を確保できるとよい。

○筋力トレーニング

目的に合わせた大きな筋群、中等度の負荷12 〜20RM、呼吸を止めない、負荷を漸増する。

○肥満の人に対する運動処方

運動は、有酸素運動を主体・荷重負担が少 ないものがよい。運動強度は低〜中強度。運 動時間は短くてもよく、苦痛を感じない時 間・方法を本人とともに考える。運動頻度は 1週間単位とし、歩数計や体重記録等の活用 により継続支援する。運動施設等の活用、連 携を行う。

○肥満の方へ指導する際の留意事項

糖尿病・高脂血症・高血圧症・高尿酸血症 などを合併している確立が高い。

膝関節・股関節などの障害、運動習慣が余 り無い人、食事・飲酒などの問題をもってい る人が多い。また、30歳代までに急に体重が 増えた人では自分の体力を過信している場合 も少なくない。

○生活習慣改善行動を起こすために必要なこと

1)健診結果の理解・体験等により、自ら行動 変容の必要性を納得できること。2)行動目標 を設定できること。3)生活習慣の改善につい てセルフチェックができること。4)成果を評 価し、本人が必要とする支援法を計画するこ と。5)健康づくりに必要な情報を継続的に提 供する。

○生活習慣病の人が安心して運動を楽しめるた め、環境整備が必要。

1)医療機関と健康増進施設との連携強化。2) 運動指導員、医師や保健師は情報共有化でき るよう研修を行う。3)リスク層別化管理体制 の整備および利用者(患者)の教育。4)運動 処方のためのメディカルチェックの推進。5) 救急体制の整備。(器材整備や救急隊と医療 機関の連携)

(2)医師が行う栄養指導

講師:伊藤千賀子

(日本糖尿病学会「健康日本21」の糖尿病 対策検討委員会委員長)

伊藤氏は、医師が行う栄養指導の実際につ いて、(1)わが国の食生活の変遷(2)生活 習慣病予防と食生活(3)Healthy Menuの 1,840kcal、1,600kcalの献立例の3点につい て講演された。以下概要。

1)わが国の食生活の変遷

国民総生産の増加・経済発展はしたが、エ ネルギー消費量は殆んど変わっていない。栄 養等摂取量をみると、動物性脂質が増加して いるが、たんぱく質やエネルギーは減少して いる。食品群別摂取量では、乳製品・肉・油 脂が増加し、米は半分に減少している。

2)生活習慣病予防と食生活

生活習慣病増加の背景として、摂取エネル ギー量は変わらないが、労働・運動による消 費エネルギー量が減少して、相対的な摂取エ ネルギー量が過剰になり、肥満(内臓肥満) が起こり、IGT・高血圧・高脂血症・糖尿病 を引き起こしている。

日本人と米国人を比較(1971年〜2000年) すると、総エネルギーに対する各栄養素摂取 比率の推移では、米国人が脂質摂取を減少さ せているにもかかわらず日本人は脂質が増加 してきており、脂質を落す必要がある。

食生活指導・栄養指導は、1)エネルギー摂 取量の是正(労働度に応じた適正量)、2)動 物性脂質・蔗糖や果糖の過剰摂取の是正、3)植物繊維摂取の奨励、4)減塩(薄味)を行 う。

3)Healthy Menuの1,840kcal、1,600kcalの 献立例

望ましい食事の取り方(朝・昼・夕食と散 歩)を指導し、外食も含め食生活チェックす る(チェック表使用)。

糖尿病食事療法のための食品交換表(日本 糖尿病学会編)を生活習慣病対策の食事療法 に活用していただきたい。食品分類表の使い 方、1,840kcal・1,600kcalの献立例について 説明。

・献立指導のポイント

1)塩分は控えめに(塩辛い食品は避け、食塩 摂取は1日7グラム以下。調理の工夫によ る減塩)

2)食物繊維を十分に(野菜・海草・きのこを たっぷり食べる。生野菜・緑黄色野菜を毎 日食べる)

3)脂肪は量と質を考えて(脂肪とコレステロ ール摂取を控えめに。動物性脂肪、植物 油、魚油をバランスよく摂取)

(3)特定健診・特定保健指導と医師会 の役割

日本医師会常任理事の内田健夫先生より、特 定健診・特定保健指導と医師会の役割について 説明があった。

先ず始めに、医師法第1条に「医師は医療およ び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上 および増進に寄与し、もって国民の健康な生活 を確保するものとする」と明記されていることか らも分かるように、医師は医療だけでなく保健 指導を行うことも非常に重要な役割であると説 明があり、平成20年4月より医療保険者に義務 付けられ実施される糖尿病等の予防に着目した 健診・保健指導の実施について、医師の積極的 な関わりが重要であるとの認識が示された。

今回の健診・保健指導により、健診受診率の 20%向上、その成果として糖尿病等の有病者・ 予備軍の25%削減、延いては2015年には医療費2兆円の抑制を目標に掲げる等、国民の健康 増進・生活の質の向上、中長期的な医療費の適 正化が謳われているが、日医総研等の調査によ ると、健診費用、医療費等が逆に大幅に増加す る可能性がデータとして示されていることが報 告された。

健診・保健指導への医師会の関わりとして は、保険者協議会へ積極的に参加していくとと もに、医療機関が保健指導の委託を受ける際に 発生する膨大な事務作業を軽減するために、医 師会が契約代行機関として機能することが必要 であることが述べられ、また、健診・保健指導 のアウトカム評価として、今後健診データとレ セプトデータの突合が行われていくが、このこ とが管理医療や医療への介入に繋がらないよ う、医師会が厳重に監視していく必要があると の考えが示された。

生活習慣病で治療中の患者に対する健診・保 健指導については、検診項目、問診項目の整合 性、費用に関する取り決め等々、現在議論の最 中であるが、日医としては、受療中の方に対す る医師の各種指導は、特定保健指導で代替され るものではないと主張していると説明があった。

第三者評価機構については、健診・保健指導 の質を担保する上でも絶対に必要であるとの考 えが示された。

最後に、今後の課題として、統一料金設定の 検討(予防保険制度創設の是非)、健診・保健 指導の基盤整備と精度管理、各制度との関係、 被扶養者の健診・保健指導実地体制整備、アウ トソーシングの把握・評価、等々と具体的に決 まっていないことが未だ多くあるが、我々の対 応に間違いが無いよう取り組んでいかなければ ならないと述べられた。

なお、健診・保健指導に関する迅速な情報提 供を図ることを目的に、日医ホームページ内に 健診・保健指導の専用ページを来年1月に設置 予定であるとのことであった。

(4)健康スポーツ医・産業医との関わり

日本医師会常任理事の今村聡先生より、健 診・保健指導における日医認定健康スポーツ医 並びに産業医の関わりについて説明があった。

始めに、特定保健指導は、“情報提供”、“動 機づけ支援”、“積極的支援”の三層に階層化さ れた指導が行われることになっており、日医認 定健康スポーツ医並びに産業医はその内の“動 機づけ支援”、“積極的支援”の部分に関わるこ ととなるが、保健指導を行うために日医認定健 康スポーツ医並びに産業医の資格を有する必要 があるという訳ではないことをご理解いただき たいと説明があった。

日医認定スポーツ医が必要とされるケース は、医師が配置されていない運動施設等で保健 指導を実施する場合となっており、運動施設等 で保健指導を行う際の質の担保という観点か ら、日医認定健康スポーツ医の関わりが望まれ るとの考えが示された。また、日医認定健康ス ポーツ医が従来の資格のままで良いのかという 議論があり、現在カリキュラムの見直しを行っ ているところであることが説明された。

労働安全衛生法における健診・保健指導との 関係については、基本的な考え方として、「事 業者健診は保険者が行う特定健康診査に優先す る。」、「事業者は保険者から事業者健診データ の提供を求められたときはそれに応じなければ ならない。」、「保険者が行う特定保健指導は、 事業者が行う保健指導に優先する。」、「特定健 診項目のうち、事業者健診と重複する部分は事 業者負担。それ以外は保険者負担(?)。」とさ れているが、費用並びに健診項目等については 現在調整中となっていることが説明された。

また、事業者が行う保健指導は産業医に委託 されるケースが想定されることから、日医とし ては、ガイドラインに“産業医”と明記してい ただくことを主張しているが、これは産業医が 保健指導を必ず行わなければならないという訳 ではないことをご理解いただきたいと考えが示 された。

質疑応答

Q:健診・保健指導料について。その金額。そ の負担区分。

A:被保険者の自己負担分割合も含め各医療保 険者が設定する。法律等で設定するもので はない。(厚労省)

Q:各医療保険者が設定する費用はある程度の 目安はあるのか。

A:将来的には何らかの目安を出していかなけ ればならないと考えている。(厚労省)

Q:動機づけ支援、積極的支援、それぞれにお ける運動指導、栄養指導等の指導の回数と その期間の目安について。

A:動機づけ支援については原則1回の指導と なっており、6ヶ月後に評価を行うという 考え方になっている。積極的支援の回数、 内容については、現在検討中である。(厚 労省)

Q:現に主治医の下で治療中の指導対象者も同 じように指導を受けることになるのか。

A:かかりつけ医へ受診中の方に対して特定保 健指導を実施するか否かについては、検討 会で具体的に検討進めているところであ る。もう少し丁寧に議論しないといけない。 基本的には主治医に治療していただいてい る場合でも保健指導は受けていただいた方 がよいのではないかと考えている。いろい ろなケースがあるので議論を重ねる必要が ある。(厚労省)

Q:具体的なガイドラインはいつ頃示されるか。

A:年度末までには方向性がまとまればと思っ ている。3月には政省令や通知を出さなけ ればならないと考えている。(厚労省)

Q:健診項目は統一されるのか。各保険者によ って追加項目は認められるのか。

A:医療保険者が独自の判断によって健診項目 を追加することは可能であると考えてい る。(厚労省)

Q:介護予防を目的とした生活機能評価との関 係は。

A:特定健診と生活機能評価は別の制度である が、受診者の負担軽減を図る目的で市町村 との共同実施は考えられる。今後、調整し なければならない。(厚労省)

Q:40〜74歳以外の方の健診はどうなるのか。 75歳以上の方の健診の取り扱い。39歳以 下の方の健診の取り扱い。

A:先ず、40〜74歳の健診項目をどうするかが 決まった段階で75歳以上をどうするかとい う議論になる。39歳以下の方の健診は従来 通り各医療保険者において努力義務ではあ るが任意に実施される。(厚労省)

Q:保健・栄養指導に係る経費はどのようにな るのか。予算立てされる見込みはあるのか。 あればどのくらいなのか。

A:原則として保険料財源として各保険者が保 険料として徴収することになる。(厚労省)

Q:日医として、実務者の研修会開催の予定が あるのか。あればいつ頃か。

A:指導者研修は継続的定期的に開催したいと 考えている。実務者の研修会については都 道府県の対応ということでお願いしたい。 (日医)

Q:施設健診での保健指導・栄養指導はどのよ うに実施することを想定しているのか。ま た、望ましいやり方は。

A:標準的な健診・保健指導プログラム(暫定 版)の中に示しているが、健診結果に基づ いて、実施者に対して“情報提供レベル”、 “動機づけ支援レベル”、“積極的支援レベ ル”に保健指導のレベルを階層化して、“動機づけ支援レベル”、“積極的支援レベ ル”に該当した方に対して個別面談的な保 健指導を実施する。どのように保健指導を 行うかについては検討しているところであ る。“情報提供レベル”については保健指 導という言い方はしているが健診結果にい ろいろな情報を合わせて提供していただく という形になる。(厚労省)

Q:集団検診での保健指導・栄養指導はどのよ うに実施することを想定しているのか。ま た、望ましいやり方は。

A :暫定版に示しているが、健診結果に基づ き、“動機付け支援レベル”、“積極的支援 レベル”に該当した方に対して保健指導を 実施していただくということになる。どう いうふうに実施するかは引き続き検討して いく。(厚労省)

Q:メタボリックシンドロームを離脱するため の運動療法や栄養指導の具体的なガイドラ インは存在するのか。作成中なのか。

A:暫定版に参考として学習教材集をつけてい る。地域の特性にあった形に直していただ くことが大事と考える。具体的な保健指導 の内容については、対象者によって異なる と考えるので定型化することは困難と考え る。対象者のニーズに合わせ指導していた だきたい。(厚労省)

Q:行動変容のために行った運動指導中に万一 心・血管事故が起きた場合の責任の所在は。

A:自己責任の範囲等難しい問題ではあるが、 保健指導を行う機関が万一の事故に備え事 前に書面で確認するということもあり得る と考えるが、保健指導は日常生活の中で工 夫できる運動というものを今回のガイドラ インで示している。負荷の高い指導を行う ということではないということもある。(厚 労省)

Q:健診・保健指導事業に向けて、アウトソー シングされようとしている業者の実態ある いは、健診・保健指導で国からパイロット 事業で受けている実態は調査されているか どうか。(どのくらいの数があるのか)

A:具体的にアウトソーシング先となる機関の 調査は行っていない。準備事業として千葉 県、富山県、福岡県で行っている。(厚労 省)

【保健指導の医師の役割について】

Q:かかりつけ医、産業医が保健指導を行うこ とが当然であると思うが、ガイドライン (暫定版)では保健師等の役割を強調しす ぎているように思われる。医師が保健指導 する体制を構築するように、日本医師会は 強く主張してほしい。

A:特に医療が必要とされる方に医師が主導的 に関わっていくということで主張してい る。(日医)

【職場健診にかかわる医師の役割について】

Q:多くの医師(開業医)は労働安全衛生法に より小規模事業所の職場健診を行っている が、医療保険者による健診の導入により、 今まで医師(開業医)が行っていた健診が 中止にならないことを強く希望する。

A:従来通り労働安全衛生法における事業者の 健診が特定健診より優先しているので、今 回の特定健診が入ったからといって先生が やっておられた小規模事業所の職場健診が 中止になるということはない。(日医)

【医師会の関わりについて】

Q:現行の老人健診は地区医師会と各市町村が 委託契約を結び、医療機関が個別に健診を 行っているが、国保の特定健診は今後も継 続して医師会との契約を重視したものにし てほしい。

A:今後、この制度に対して医師会は積極的に 協力していくべきであると思うので、医師の関わりの重要性を強く主張すべきであ る。(日医)

Q:医師会立の検診センターの役割の重要性も 主張してほしい。

A:どの健診・保健指導機関と契約を結ぶかと いうことについては、保険者の判断となる。 しかし市町村における健診・保健指導は医 師会も委託を受けられるような体制作りと いうことで取り組んでいきたいし、取り組 んでいただきたいと考える。(日医)

Q:今後、国保連合会、支払基金とも膨大なレ セプト情報、健診情報を持ち、ますます管 理医療に進んでいくことを危惧する。情報 管理については罰則等を含め国民に納得い く形で制度設計をしてもらいたい。また、 保険者協議会(地域・職域連携推進協議 会)への医師の参加は当然必要と考える。

A:医療保険者においては、情報管理について 「健康保健組合等における個人情報の適切 な取り扱いのガイドライン、あるいは国民 健康保健組合における個人情報の適切な取 り扱いのためのガイドライン等々がすでに 発出されており、それに基づいて個人情報 保護の体制をとることになっている。今回 の法律改正において、個人情報の取り扱い については懲役刑を含む罰則規定の整備が 行われている。(厚労省)

Q:保険者がレセプトデータと健診データを突 合し医療費適正化の統計に利用すること は、レセプトデータの新たな利用目的とし て、医療を受ける方に対して、個人情報保 護法でいう「利用目的の通知」が必要だと 思われるが、これは保険者が行うと考えて よいか。

A:健康保健組合等における個人情報の適切な 取り扱いのためのガイドラインにおいて、 医療費分析は通常の業務で想定される主な 利用目的にあげられているので、被保険者の個別の同意は必要ない。(厚労省)

Q:個人情報保護に関する意識の高まりから、 レセプトデータや健診データがデータマイ ニングに利用されることを、患者さんや健 診受診者が拒否する場合はどうなるか。

A :医療保険者は高齢者医療法において、健 診・保健指導データの保存義務が課されて いる。したがってデータを保持しないとい う訳にはいかない。健診・保健指導を受診 するか否かは被保険者の判断である、医療 保険者が健診・保健指導データを保持する ことを理由に健診・保健指導を受診しない 場合は、それは仕方ない。また、医療保険 者が健診・保健指導データを保存する具体 的な期間については検討中である。

Q:「健診のアウトソーシング」の人員に関す る基準では「健診を適切に実施するために 必要な医師、臨床検査技師及び看護師等が 確保されていること」とされ、また精度管 理に関する基準もある。検査を外部委託し ている医療機関の扱いはどうなるか。

A:精度管理が行われている検査機関に検査を 委託しているということが条件となる、具 体的なところの表現は確定版にて文言を整 理していきたいと考えている。

Q :「保健指導のアウトソーシング」では、 「利用者の利便性の配慮(例えば、土日祝 日・夜間に行う等)をして保健指導の実施 率を上げるよう取り組む」とされている。 保健指導のためだけに新たな院内体制を組 むことは難しいと思われるが、日医のお考 えは。

A:義務ではないので対応できる範囲でご対応 できればと考えている。(日医)

Q:労働安全衛生法では、事業主に対して健診 の実施を義務付けているが、保健指導の実 施は努力義務であるため、事業主が保健指導を実施しない場合は、医療保険保険者が 事業主から健診結果の提供を受け、保健指 導を実施するとされている。

Q:医療保険者が保健指導を実施する場合、嘱 託産業医の職務である「労働者の健康を保 持するための措置」との整理はどうなる か。

A:医療保険者の保健指導はメタボリックシン ドロームを中心とした保健指導となる。当 然、労働安全衛生法に基づく健診の事後措 置と一致しないことも考えられる。医療保 険者が特定保健指導を実施した場合でも、 労働安全衛生法の観点から措置を講ずる必 要がある場合は、保健指導を行わなければ ならないということが事業主にもあるとい うことを検討していかなければならない。 (厚労省)

Q:また、事業主が単独の健保組合を持ってい るケースでは、事業主から健保組合に健診 データが提供されることにより、当該事業 所の嘱託産業医が健保組合から保健指導を 依頼される場合も考えられる。その場合は 嘱託産業医の契約とは別に、健保組合と特 定保健指導の委託契約を交わすということ でよいか。

A:考え方としてそういう考え方でよい。(厚労 省)

Q:また、当該嘱託産業医の医療機関は、「保 健指導のアウトソーシング」の委託基準を 満たしておく必要があるか。

A:医療保険者がアウトソーシング先になると いうことであれば、当然委託基準を満たし ておく必要がある。(厚労省)

Q:事業主が保健指導を実施する場合、手法は 標準的な健診・保健指導プログラムを用い るのか。その場合、一連の作業工程の中 で、嘱託産業医の位置付け、事業主との契 約はどのようになるか。

A:事業主が医療保険者から委託を受けて特定 保健指導を実施する場合には、プログラム に定める方法でやっていただかなければな らないと考える。その場合産業医として特 定保健指導を実施するということになる。 (厚労省)

Q:今回の医療保険者による健診と下記との整 理についてご教示願いたい。

Q:介護保険法に基づく地域支援事業の特定高 齢者抽出のための健診。

A:検討会にて検討していきたいと思っている。 (厚労省)

Q:学校保健法に基づく教職員の健康診断

A:労働安全衛生法と同様に、医療保険者は学 校の設置者に健診情報の結果を求めること ができ、特定健康診査を実施する必要はな い。(厚労省)

Q:保健指導は当然のことながらマンツーマン 制になり、大変な時間と労力を要すること になる。本業の診療との調整が困難になる ことが予想されるが、厚労省は指導料をど の程度と考えているのであろうか。

A:保健指導の単価については、医療保険者と 保健指導機関との契約により設置される。 (厚労省)

Q:保健指導は医師・保健師・管理栄養士が行 うこととされているが、この三者間に順位 があるのか。誰が行ってもよいのか。それ とも夫々の立場で三者が指導を行うのか。

A:特に規定していない。対象者の健診の結果 によって設定されると思われる。(厚労省)

Q:保健指導は当然のことながら対象者のデー タ改善というアウトカムを期待して行う訳 だが、その追跡も指導を行う医師の責任か。

A:暫定版では、特定保健指導を実施した場合 は3ヶ月から6ヶ月後に評価を行うことになっている。評価は保健指導を実施した機関 が確実に行うということが条件である。評 価するのが必ずしも医師であるということ ではない。(厚労省)

Q:特定保健指導は自由診療としてコストを算 定しても構わないのか。健康診断と同様に コストはやるものの方が決めてよいのか。

A:医療保険者と保健指導機関との契約で合意 のもとでコストを設定していただくことに なる。(厚労省)

Q:保健指導は診療時間以外の時間で行うべき か。

A:通常診療と保健指導を明確に分ける考え方 をしておかなければならないと考える。今 後整理していく必要がある。(厚労省)

Q:医療保険が高くなると考えるが。

A:保険診療をやっている場合と、特定健診の 保健指導をやっている場合の整理がこれか ら出てくる。誤解の起こらないような仕組 みを整理してく。(厚労省)

Q:特定保健指導を行う職種の中に糖尿病療養 指導士を入れていただくというのはどうか。 また、保険者が実施主体になると保険料が 上がってくると思うが、どの程度上がるの か。国から保険者への補助はあるのか。

A:基本的には医師、保健師、管理栄養士が中 心になる。保険料については、どの程度の 方を保健指導の対象とするのか等、保険者 の方からも同様な質問を受けているが、ま ずは対象者をどうするかということを検討 しているので、その結果が出てから来年度 のなるべく早い段階で目安を示していきた いと考えている。補助については、現段階 で詳細は決まっていないが少なくとも保健 指導については保険料で賄う、健診につい ては現在同様、国が3分の1を負担する方 向を考えている。(厚労省)

Q:ウエストが1cm減ると体重が1kg減るとい うデータはどのように出したか。メタボリ ックシンドロームの有無でのデータの違い を示してはどうか。

A:1センチが1キロに当たるということについ ては、いくつかの介入研究の成果で示され ている。階層化の中で、健診データで階層 化する部分と、運動習慣の有無別に階層化 した形で優先順位を決めていくということ が提案されている。(津下先生)

Q:特定健診が始まるきっかけは医療費の削減 ということであるが、第三者評価機関や契 約代行機関等の事務コストが増大してしま うと考えるが、どうか。

A:今後検証しなければ正確な回答はできない が、事業の質の担保という観点から考える と、第三者評価機構というのはどうしても 必要と考える。コスト上乗せという可能性 はあると認識しているが健診保健指導の質 を担保する方が大切であると考える。契約 代行機関については、個々の医療機関ある いは健診機関がそれぞれ医療保険者と契約 するということは現実的ではないと考え る。都道府県医師会が代行機関を担うとい うことはどうしても必要であると考えてい る。(日医)

Q:政府管掌の生活習慣病予防検診はどのよう に変わっていくのか。

A:今後検討していく。(厚労省)

Q:保険料の未納者は健診対象から外すのか。

A:法律上、未納者だからといって外すという ことはない。(厚労省)

Q:腹囲が減ったから良いということだけで良 いのか。保険者の評価項目は何を想定して いるか。

A:腹囲だけでなく血液のデータ等も総合して 評価する。保険者の評価については5年間後に行い、その成果により、後期高齢者支 援金の加算減算措置が10%の範囲内で設 定できるということが今回の制度改正に盛 り込まれている。健診の実施率であるの か、生活習慣病の方がどの程度減ったかと いうことを項目として検討している。(厚 労省)

Q:評価の項目を明確にする必要があるかと考 えるが。

A:評価をすべき項目のたたき台は出ているが、 分かりにくい等の指摘もある。最終的に加 算減算のシステムが平成25年から出される が、まだ5年以上も時間があるので、3月ま でには方向性を示したいと考えている。 (厚労省)

Q:健診の受託パターンとして健康スポーツ医 が示されたが、その他確定している資格等 はあるのか。

A:医療機関が健診を行う場合には特別な資格 は必要ないが、保健指導だけを運動施設等 で行う場合、特に処方に基づいて運動指導 を行う場合に健康スポーツ医のような資格 を持った方が配置されていた方が望ましい という意味合いである。(日医)

印象記

大山朝賢

常任理事 大山 朝賢

平成20年から特定健診・保健指導が始まります。従来の健診は個別の早期発見、早期治療が目 的であり、健診後の保健指導は「要精検」や「要治療」となった者に対する受診勧奨を行うこと が中心でした。しかし「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21⇒本県では“健康おき なわ2010”として運動中)」の中間評価で、糖尿病有病者の増加、および予備群として特に肥満 男性(20〜60才代)の増加が指摘された。これを受けて「医療制度改革」(平成17年12月1日政 府・与党医療改革協議会)において、「生活習慣病予防の徹底」のため、医療保険者に対して、健 診・保健指導の実施を義務づけることとした。さらに協議会は政策目標として平成27年度には平 成20年度と比較して糖尿病等の生活習慣病有病者・予備群を25%減少させることとしている。今 年3月までに議会で特定健診・保健指導の標準的プログラムが決定されると言う。健診結果から 打ち出されたデータを基に、メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)を主として、医師、保健士、 管理栄養士等が早期に介入し対象者に確実に“行動変容”を促すことをめざすとしています。メ タボリック症候群を有していても既に医師の治療を受けているものは対象外で、「要精検」や「要 治療」といわれながら“無視”している方々が対象となります。

平成18年12月20日に日本医師会館で、日本医師会常任理事の内田健夫・今村聡両先生等の研修 会を拝聴し、ことの重大さを鑑みご両人に本県でのご講演を依頼しましたところ快諾を得ました。 1月27日パシフィックホテルで宮城県医師会長や玉城副会長も参加され、両先生による研修会は 盛況でした。この紙面を借りて両先生に改めて御礼を申しあげます。ありがとうございました。